上 下
50 / 133

王都での吸血鬼

しおりを挟む
 


夢中で本の鑑定をし続けていたら、誰かが来たようなので振返った。

「あの~もう日が暮れかかってるので閉館をします。失礼ですが退出をお願いします」

「え!もうそんな時間ですか」手に持っていた本を戻した。

館内に響く足音は、俺と彼女しか響かない程に静かすぎいるぞ。


出口付近では男性が待構えている。
一瞬、何事かと考えた。
そして男性によって体のすみずみまでまさぐられる羽目に。

「中には良からぬ者も居るから諦めろ」と言われた。

そうだよな・・・紹介状があっても俺なんか信用できないよなー。

「それでは失礼します」と言って王立図書館を出た。



なんなんだ・・・この違和感は。
あ!思い出した。吸血鬼の独特の気配だ。

俺は画面を注視。
あ、微かに吸血鬼の表示が消えたり現れたりを繰り返した。
もう太陽は沈んで、俺はヤバイ状態だ。

路地裏に入って、奴ら誘う事に・・・
もう暗い路地は、ひと気もなくなっただろう。

前から男女が現れた。

後ろには数名の男が道をふさいでいる。

「あんた、魔人に興味があるみたいだな。もうこれ以上探るのはやめな」

「嫌だと言ったら」

「殺せ」

十字剣をパッと取り出した。

「1人は、必ず生きたまま捕まえろ!」

一瞬で動いた十字剣は、後ろの全ての男の首をねた。
そして空へ飛び跳ねた男の心臓を突き刺した。

男の体は一瞬で消え失せた。

女1人が逃げるタイミングを逃していた。
十字剣の淡い光によって、身動きが出来ない状態にされてるぞ。

「私をどうする積りよ」

「さあ、ヴァンパイアの居場所を言え」

「私は何も知らないのよ、知っていても言えるはずがないでしょ」

鑑定した結果も知らないようだ。
しかし、貴族で吸血鬼にされている人物は分かった。

更に鑑定をし続けた。

十字剣が俺をかばうように、何かを無数に弾いた。
地面には、俺が売ったナイフが無数に落ちていた。

十字剣は、空へ飛んで何かを斬っている。
更に飛び回って斬っていた。

「来るな化け物が・・・やめてくれ!!」

空ではそんな声が響いている。

俺は、思い出したように女を見た。
心臓に突き刺さったナイフを握り絞めて苦しんでいる。

「しまった・・・俺では、なかったのか」

「あ、あ、・・・」と言葉を残して女は崩れ去った。


『戦いは終わったぞ』

終わったのか・・・もうここに居ては狙われるだけだ。

「お前の乗って、ここから逃げ去る事はできるか」

『逃げたいのだな・・・仕方ない・・・乗れ』

俺は、剣にまたがって柄部分を握った。
尻が切れないか心配したが、触っても切れない。

急に浮かび上がった。

「俺を振り落とすなよ」

『心配ならしっかりと掴まれ』と言い放って飛んだ。

王都が遠ざかってゆく。



アルポスの街へ戻ってきた時には、門も閉まって街中も暗く静まり返っていた。
こんな真夜中に、壁を乗越えてギルド前で開けてくれと騒いでもダメみたいだな。

今回は外で野宿だ。

普通なら平気で野宿していただろう。
しかし、今日は無理だ。十字剣にお願いするしかない。

「夜は吸血鬼の世界だ。一晩中、見張り頼む・・・」

『仕方ない・・・ゆっくりと眠れ』

その言葉を聞いて、気が緩んで眠気が襲ってきた。
毛布を取り出して、草むらで包まったらそのまま寝てしまった。




『起きろ!起きろ!』

「誰だよ、こんな朝パッから大きい声で起こすのは」

『せっかく起こしてやったのに、文句をいうのか・・・』

ようやく思い出した。



もう門の前には列が並んでるぞ。

吸血鬼の事は、ここは門番に言ってもらちが明かないだろう。
間違って投獄される恐れもあるし・・・

信用のあるギルドマスターに言うしかない。


ギルドに入っても満員だ。
俺は、はやる気持ちで並ぶ後から「ギルドマスターに至急会いたい」と怒鳴った。

「誰だ誰だ、マナーを守らないのは、あ、あんたは・・・」

俺に気付いた冒険者は、「どうぞどうぞ」と道をあけだした。
もう俺の活躍は有名で、俺の噂話がちらほら聞こえ出している。
そんな俺に受付のおっさんが、笑いながら言い放った。

「なんだ、あんたか・・・勝手に2階に上がりな」

「それじゃごめんよ」



「すると何か!吸血鬼が居たんだな!」

「間違いなく吸血鬼を退治して、逃げ帰っるしか・・・仕方がなかった。図書館で魔人について調べてたら襲われたんだ。誰を信用していいのか分からない状態だから、ギルドマスターだけが頼りだ」

「それ以上言わなくてもいいぞ。吸血鬼か・・・厄介だな」

「俺の事は、表立ってしないでくれ。また襲われるのは御免だ」

困った顔をしながら「分かってるよ。ドランゴンの1件で十分に分かってる」



領主に報告されて、近隣の領主が集められた。

「それは、本当なのか・・・」

「疑いがある貴族でもっと近いのは、ロウレン男爵だ。皆で行って吸血鬼の血の儀式で確認すれば分かる事だ」

「あの儀式をするのか・・・もう100年もされてない儀式だ。それでもやるのか」

「時間が経てば、こっちが不利なるのは分かり切っている事だ」





【吸血鬼の血の儀式】

指先を切って、皿に血を垂らして火を近づけると、生き物のように血が火から逃げる。
それで判定する方法であった。

主に夜に行なう儀式だ。

吸血鬼の疑惑があれば、この呼び方で皆の協力を仰ぐのが昔からの習わしであった。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

殿下、それは私の妹です~間違えたと言われても困ります~

恋愛 / 完結 24h.ポイント:5,136pt お気に入り:5,287

伯爵令嬢は執事に狙われている

恋愛 / 完結 24h.ポイント:2,882pt お気に入り:458

旦那様!単身赴任だけは勘弁して下さい!

恋愛 / 完結 24h.ポイント:3,152pt お気に入り:182

クレイジーサイコホモに殺される

BL / 完結 24h.ポイント:14pt お気に入り:176

エステル家のお姫様は、今日も大切に愛される。

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:92pt お気に入り:389

処理中です...