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第29話
しおりを挟む「ん?…あぁ、水無月か」
俺を認識した委員長は、普段通りの硬い表情を少し緩めた。
それはまるで、昔から親しい友人に会った様な反応で。
どうしてそんな表情をされるのか、出会って2年目の俺には未だに分からなくて。どうしていいのか困った末に、結局いつも通り気づかないふりをして俺を演じる。
「委員長がここに来るなんて珍しいね~。どうしたのぉ?」
「何も無いとは思うが、一応見回りをしていたところだ」
「へぇ~。見回りごくろ~さまぁ~」
やはり見回りか。
風紀委員も大変そうだな。
「水無月は?ここで何をしていた?」
「俺ぇ?ん~…ひ・み・つ☆」
「ほぅ…つまり言えない事をしていた、ということか?」
「ち、違うって~!?ただお昼を食べてただけだよぉ!!」
「冗談だ」
「真顔で言わないでよぉ…」
真顔で言われる冗談ほど心臓に悪いものは無いと今学んだ。
魔王はって?あぁ、あれは既にそういう次元でないからな。
「じゃっ、見回りの邪魔になるし俺はもう行くね~」
ちゃんと俺をできたし、これ以上引き留めているのも悪いので、さっさと退散することにした、のだが。
「…あぁ、少し待ってくれ」
その言葉がかけられたのと同時に、すぐ横を通り過ぎようとした俺の腕が掴まれた。
「…どうしたの~、委員長?まだ何か用ぉ?」
一体どうしたのかと振り返ると、意外とすぐ近くに彼の顔があって、思わず少しだけのけぞる。そんな俺を不思議そうに委員長は見ていた。
うん、これ、チワワちゃん達だったら絶対顔を真っ赤にさせていただろうなぁ。
しかもこの人、自分の容姿に無頓着で無自覚な部分があるから尚更質が悪い。
イケメンな顔を見ながら、軽く現実逃避でそんなことを考える。
「──…って。おい、聞いてるか?」
あ、聞いてなかった。
「ごっめ~ん。聞いてなかったぁ」
「はぁ…もう1度だけ言う。早くて明日、遅くとも来週までに、1年に転入生が来る」
「ぇ、早くて明日って…ちょっと早すぎない~?準備が間に合わないんだけど~。しかも、なんで今来るわけぇ?」
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「えぇ~……そんな子入れて大丈夫なの~?」
「理事長の甥のようだ。それで、どうしてもここに編入させろと弟夫婦に自宅まで特攻されたらしい」
「あぁ、なるほどねぇ」
入学式から1週間ぐらいしか経ってないのに、問題を起こして退学。しかも、理事長の甥って…。すごく面倒くさくて、厄介そうな気配しかしないんだけど。できるだけ関わりたくないな。
というか
「なんで委員長が俺にそんな話をしてるの~?」
嫌な予感しかしないんだが。
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