孤独な蝶は仮面を被る

緋影 ナヅキ

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第46話

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 ここは生徒会室。

 俺は今日も朝のホームルームにも出ず、一直線にここへ来ていた。勿論、仕事をするためである。

 昨日あんな事があったため多少心配していたが、双子はいつもと変わらない態度で俺達に接してきた。2人の間にもギクシャクした空気はない。

 珍しく俺より早く来ていた会長も、その様子にどこかホッと安堵した雰囲気だった。
 慶も嬉しそうな笑顔で、心做こころなしかほわほわとした空気を纏っている。

 あまりにも双子がいつも通り過ぎて、それがかえって不気味だったが、何も気付いていないふりをして、俺も普段通りに振る舞った。

「そういえば、れいれい遅いねー」

「ねー。どうしたんだろう?ハッ、もしかして…」

「「…風邪でも引いた?!」」

 普段なら既に来ているはずの副会長が未だ来ていないことに、不信感を抱いたらしい何も知らない双子は、あれかこれかと理由を予想しては言い合っている。

「ん~…副会長は転入生の迎えになってたからぁ、それで遅いんだと思うよぉ~」

「「あー…れいれいがそれになったんだねー!」」

「ふん、いい気味だよな」

「会長…めっ…!」

 ドヤった会長は、すかさず天使わんこに注意された。
 ははは、会長ザマァww




「ほんっと、最悪ですよ!」

 噂をすればなんとやら。
 遅れて来た副会長は、ズカズカと中に入ってきたかと思うと、出し抜けにそう吐き捨てた。非常にピリピリとした空気を纏っており、怒気を隠そうともしない。

「ど、…たの…?そ…なに…ぉこ、珍し…」

「副会長どったの~?」

「お前のそんな姿を見るのは新鮮だな」

 実にいいモノを見た、と言わんばかりの表情で腕を組み、ふむと頷く会長。副会長がそれを見ていなくて良かったな、会長。もし見られていたら、確実に仕事を普段の倍以上に増やされてた。


「「れいれいがそんな怒ってるの珍しいね!」」

「きっと朝からイチャつくリア充にあてられたんだよ」

「きっと朝からゴーカン現場に遭遇したんだよ」

「「どっちでも災難だねー!」」

 一方の双子はきゃらきゃら笑いながら、平気で煽るような事を交互に言っていく。あぁもうそんなにして、何かあっても知らないからな。

 案の定キレた副会長は、しかし珍しく物理に訴えていた。2人相手に同時にヘッドロックを仕掛けて、的確に首を締めている。らしくないな。本当にどうしたのだろうか?

 技をかけられた2人は「ギブギブ!」だなんて言っているが、顔は笑っている。なるほど、まだまだ余裕そうだ。

 副会長も同じことを思ったのだろう。
「フフフ、まだまだ余裕そうですね?」と実にイイ笑顔で告げた次の瞬間には、首を締める腕の力を更に強めていた。

 双子、強く生きろよ。

 俺は確実に首が締まってゆく光景を見ながら、内心でサムズアップした。あいつらならきっと平気だろう、うん。それに…

「おい零斗。そろそろ止めてやれ」

 どうせ丁度いいぐらいの頃に、会長が止めてくれるしな。




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