孤独な蝶は仮面を被る

緋影 ナヅキ

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第48話

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 一応会長と協商を結んでしまっている為、順番的にも流れ的にも、魔王様降臨寸前の副会長に話しかけたり、注意をこちらに向かせたりと、何かとアクションをしなければならない。

 あぁ嫌だ。憂鬱だ。
 そうか、俺の1番嫌いな天気だったのはこれがあるからだったのか。いや、多分このことではないのだろうけど。
 
 とまぁ、いくらそんな現実逃避していても、時は無情なことに皆へ平等に過ぎ、また訪れる。


「(おい真琴、さっさと逝け。俺様はもう終わったからな)」

「(………ねぇ会長。ほんと~に、しないといけないのぉ?)」

「(あぁ、じゃねぇとお前の仕事を今の倍にする)」

「(な、なんて卑怯なぁ!!会長の鬼!ヘタレ!シスコン~ッ!)」

「(おいシスコンは関係ねぇだろ。つか俺様のどこがヘタレだ)」

 チッ、ヘタレまで完璧に解ったのか。まぁわざとだけどさw

 でも会長って一応俺様だけど、絶対ヘタレだろ。
 好きな人とかの前だとめっちゃキョドりそう。あと、スマートに告れなさそうだし、付き合えたとしても中々口付けできなさそう。で、相手を心配にさせる。
 会長の場合、1度できたら開き直りそうではあるけれどね。


 それは兎も角。

 魔王様寸前の副会長に近付きたくないっていうのは、心の底からの本音なわけで。与えられた使命を果たさなくては、と勇者マコトが脳内で主張しているが、正直な体は全く行動を起こそうとしない。むしろ、この場から退却しようと足が背後にある扉へと下がりつつあった。

 副会長に近付きたい人は言ってくれ、喜んで代わるから。というか、こちらから頼み込む。


「…チッ」

 どうやらそんな俺にしびれを切らしたらしい。視界の隅に、たった今舌打ち会長が背後へ回ったのが見えた。
 ………なんだか嫌な予感がする。

「会ちょ…っ!」

 振り返り、何をしようとしているのか確かめようとした、その刹那だった。

「こうすりゃアイツは止まんだろ……多分な」

 トンッと、何かに背中を力強く押される感覚と共に、会長のそんな呟きが聞こえた。

「へ…?」

 余りにも突然のことに足を踏ん張る余裕もなく、慣性の法則に従って前方へと突っ込んだ。

 で、まぁそこには近付くな危険状態の副会長が立っていて。短距離だったため完全には自然の摂理に抗うことができず、必然的に俺は副会長の脇腹に抱き着く形となってしまった。
 因みに俺と副会長だと、副会長の方が5センチ程背が高い。なので、俺の顔は副会長の肩にぶち当たってしまった。いくらか勢いは殺せてたとはいえ微妙に痛い。



 ………あぁ今日が命日だったらしい。


 俺がそう思ったのも仕方ないと思う。

 とりあえず全ての元凶である会長には、最愛の妹に嫌いと言われる呪いをかけようと思った。それがヤツには1番キく。何故ならシスコンだから。
 ははははは、精々落ち込むといいさ。でも流石に沢山言われるのは可哀想だから、1回目以外は夢で言われるようにしよう。




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