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第49話
しおりを挟む……………………ん?
おかしい。予想では、瞬で引き離されて、色々言われながらとても蔑むような目で見られると思っていたんだが…。
「何を…っ!?」
こちらへ視線を寄越した副会長は、くっついて見上げている俺を認めた途端、何故か顔を微かに赤らめてピキリッと硬直してしまった。まるで副会長の周りだけ時間が停止してしまったかのようだ。
先程まで散々副会長を表情で煽っていた双子も、双子がそんなことをしているとは知らずに頭を撫でていた慶も、そんな副会長を見て目を見開き、ポカンとしている。
なんだかよく分からないが、魔王様化を止められたし、何もなかったから良かった、のか…?
そう思いながら、ゆっくりと慎重に、細心の注意を払って副会長から離れる。折角の飛び火回避チャンスなのに、急に動いて元に戻ってしまったら最悪だからな。
運のいいことに(?)、完全に離れて会長の隣に避難できた今も、未だ時は止まったままだ。
その事に少しホッとする。そして、あくまで涼しい顔をしている会長を見上げながらジト目で睨みつけた。
「もうぉなんてことするのぉ~!?何故か副会長の時が止まったおかげで魔王様化は防げたしぃ、無事帰還できたから良かったけどさぁ。ちょっとヒドすぎなぁい!?」
抗議は勿論会長にのみ聞こえる範囲での声量でだ。もし普通の声量で話して魔王様降臨の後押しをしてしまえば、折角細心の注意を払って離れたのに元も子もない。
本当は先程までの方法で訴えたかったのだが、今回は会長の視線が他所にあるため、目線での会話は採用できなかった。というか、どこ見てるんだ?
そっと視線の先を見てみたが、背が15センチ以上違うのもあってよく分からなかった。
「……やはり予測通りか…。ということはまさか…いやでも…」
しかし会長はそんな俺には目もくれず、1人で何やらブツブツと呟いていた。所々聞こえるが、内容はさっぱり分からない。
そんな会長を見て思った。
ふむ、やはり会長を呪うのは確定事項だな…と。
心の声が聞こえたのか、それとも野生の勘で察したのかは分からないが、会長がブルッと少しだけ震えた気がした。
__________________
さて。
このままでいたい気持ちも山々だが、いくら何でもずっとこの状況でいるわけもいかないだろう。
それに、転入生の様子がどうだったのかを知りたい。俺は簡単に情報を集めることができるが、あくまでそれだけだ。実際に見て接して感じた印象の方が、初期時点での対策を練るのに有益だったりすることもある。
恐らくだが、今回のは後者のタイプだと思う。
調べた情報だと転入生は、かわいい系美少年な容姿をしており、数教科特化ではあるが満点をとる程勉学に優れている。しかもこの学園内では強い、理事長の甥という立場。
しかし、入学してから1週間程度で退学させられる事態を起こした超がつく問題児でもある。
そんな人物だと情報だけでは、何か起こる前と後の対策がどうしても不十分になってしまうだろう。
生徒達の感じた印象によっては、親衛隊ができるかもしれないし、逆に制裁対象となってしまうかもしれないのだから。
もし後者の方だった場合。
転入生の経歴を見たかぎり、大人しくやられるだけではいないだろう。寧ろ相手を過度に返り討ちにし、余計に事態を悪化させかねない。まぁ、正当防衛だと言われてしまえばそれまでなのだが。そうなれば、風紀でも過度にやり過ぎないようにと、その程度の注意ぐらいしか出来ないだろうし。
だからそんな最悪な事態を起こさせないよう対策を練るために、副会長から印象を聞き出さなければ。
そう自分に何度も何度も言い聞かせながら、固まったままの副会長に声をかけた。
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