孤独な蝶は仮面を被る

緋影 ナヅキ

文字の大きさ
66 / 138

第59話

しおりを挟む

「なあなあ、そういえば零斗はどこにいるんだよ!!!!!!アイツも生徒会の人なんだろっ!!!!!!!あ、もしかして仲間はずれか!!!!いけないんだぞ!!!!友達は一緒にいないといけないんだからな!!!!!」

 突然キョロキョロと周りを見渡し始めたかと思うと、そんな内容のことを柳瀬クンは言った。

 別称“女神”と呼ばれる、副会長のことまでも呼び捨てにするのが耳に入った一般生徒達は、一気に柳瀬クンへと向ける侮蔑の視線と暴言を強める。副会長は基本、名前で呼ばれることを避けることもあってか、より一層すごいことになっていた。

 しかし、柳瀬クンはやはりそれらへ歯牙もかけずに、あくまでマイペースに、自己中に振る舞っている。その態度が余計顰蹙ひんしゅくを買っているのだが、彼はまるで気にしない。


「「あれー?本当だ!一緒に来たのに、れいれいがいない!!」」

「れいれいどこに行ったんだろー?」

「れいれいどこに消えたんだろう?」

「「ねぇねぇどこ!!?」」

 今になってようやく副会長の不在に気付いたらしい双子は、未だ柳瀬クンにしがみつきながら同じく周りを見渡す。

 その姿が、まるで親コアラに抱き着いて離れない子コアラのようだったという事は、本人達には黙っておこうと思う。意外と2人は自分達が小さいことを気にしているのだ。

 しかし、副会長が現在何処にいるのかを教えてしまってもいいのだろうか。それも、彼が関わりたくないと宣言していた柳瀬クンもいるここで。

「あ~っとねぇ~…」

「「マコちゃん知ってるの!?教えて教えてー!」」

「オレも零斗がどこにいるのか知りたいんだぞ!!!!!!」

 言葉を濁しつつ、横目でチラッと会長を見る。その顔は「(絶対に言うな)」とめちゃくちゃ必死だった。もし言ったら顔面蒼白にして、冷や汗を大量にかくであろう顔だった。下手したら卒倒するかもしれない。

 流石の生徒会の癒やし要員で天使な慶も、それを見て少し引いた様子だった。無意識なのか、若干会長のいるのとは逆方向に身体を引いている。

 そのような会長の異常な様子が、俺と慶にしか分からなかったのは救いか。おかげで本日も会長は、完璧無敵な俺様何様生徒会長様のイメージを保てている。


「会計さん、春人が聞いているでしょう??教えて貰えません?」

 爽やかそうなイケメンが後押ししてきた。
 敬語で話しかけてきているだけマシだが、こちらを馬鹿にし、見下しているのがありありと分かる態度だ。全く爽やかでない。どのような時でも爽やかな颯クンを見習って欲しい。

「俺は教えてもい~んだけどねぇ…。でもさぁ、降臨なされる可能性が高いんだよねぇ~」

 その言葉を耳にした途端、双子は笑顔のまま見事に石化を果たした。が、次の瞬間には2人揃って石化は解け、素晴らしいまでに掌をひっくり返してみせた。

「やっぱりいいやー!!」
 
「教えなくていいよ!!」

「「だからそれだけは勘弁してー!!」」

 顔を引きつらせながらも、なんとか笑みは保持している双子の肌を、冷や汗らしきしずくが少し湿らせていた。

 それはそうだ。あれを知る者なら、誰だって降臨阻止したいだろう。何故なら、自ら死地を作り出すようなものだからだ。

 …いや、そういやいたな。1度でいいから、副会長に蔑んだ目で見下して欲しい、と昨年の短冊に書いていた奴が。流石の会長と双子も、あれを見た瞬間全力で引いてたのを覚えている。

 見た瞬間、即で慶の目を手で覆ったのは素晴らしい判断だったと今でも思う。あれはどう考えても慶の教育に悪い。

 その時、当の副会長といえば、それを目にした瞬間から、実に素晴らしいアルカイックスマイルを浮かべていた。一般生徒の前にも関わらず目が一切笑っておらず、背後からは冷気が漂っていたのを覚えている。
 
 俺達からすればただただ恐怖でしかなかったが、それを見てヤバい信者も真っ青になるであろう真剣さで、何かに全力で祈りを捧げているのが数名いた。
 ある意味怖すぎて、思わず通報した風紀呼んだ程だ。

 
 閑話休題。


「と、いうことだからごめんねぇ~」

「はあ?!!!なんでだよ!!!!!友達には教えないといけないんだぞ!!!!隠しごとなんてしたらいけないんだ!!!!!!」

 無理だと言った途端、柳瀬クンは相変わらずの大声で喚いた。あぁ、念のため耳栓をしたままで良かった。でないと鼓膜へのダメージが今の比ではなかった。
というか、俺はいつの間に友達認定されたのだろうか。



しおりを挟む
感想 46

あなたにおすすめの小説

メインキャラ達の様子がおかしい件について

白鳩 唯斗
BL
 前世で遊んでいた乙女ゲームの世界に転生した。  サポートキャラとして、攻略対象キャラたちと過ごしていたフィンレーだが・・・・・・。  どうも攻略対象キャラ達の様子がおかしい。  ヒロインが登場しても、興味を示されないのだ。  世界を救うためにも、僕としては皆さん仲良くされて欲しいのですが・・・。  どうして僕の周りにメインキャラ達が集まるんですかっ!!  主人公が老若男女問わず好かれる話です。  登場キャラは全員闇を抱えています。  精神的に重めの描写、残酷な描写などがあります。  BL作品ですが、舞台が乙女ゲームなので、女性キャラも登場します。  恋愛というよりも、執着や依存といった重めの感情を主人公が向けられる作品となっております。

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?

名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。 そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________ ※ ・非王道気味 ・固定カプ予定は未定 ・悲しい過去🐜のたまにシリアス ・話の流れが遅い ・本格的に嫌われ始めるのは2章から

【完結】観察者、愛されて壊される。

Y(ワイ)
BL
一途な同室者【針崎澪】×スキャンダル大好き性悪新聞部員【垣根孝】 利害一致で始めた″擬装カップル″。友人以上恋人未満の2人の関係は、垣根孝が澪以外の人間に関心を持ったことで破綻していく。 ※この作品は単体でも読めますが、 本編「腹黒王子と俺が″擬装カップル″を演じることになりました」(腹黒完璧風紀委員長【天瀬晴人】×不憫な隠れ腐男子【根津美咲】)のスピンオフになります。 **** 【あらすじ】 「やあやあ、どうもどうも。針崎澪くん、で合ってるよね?」 「君って、面白いね。この学園に染まってない感じ」 「告白とか面倒だろ? 恋人がいれば、そういうの減るよ。俺と“擬装カップル”やらない?」 軽い声音に、無遠慮な笑顔。 癖のあるパーマがかかった茶色の前髪を適当に撫でつけて、猫背気味に荷物を下ろすその仕草は、どこか“舞台役者”めいていた。 ″胡散臭い男″それが垣根孝に対する、第一印象だった。 「大丈夫、俺も君に本気になんかならないから。逆に好都合じゃない? 恋愛沙汰を避けるための盾ってことでさ」 「恋人ってことにしとけば、告白とかー、絡まれるのとかー、無くなりはしなくても多少は減るでしょ? 俺もああいうの、面倒だからさ。で、君は、目立ってるし、噂もすぐ立つと思う。だから、ね」 「安心して。俺は君に本気になんかならないよ。むしろ都合がいいでしょ、お互いに」 軽薄で胡散臭い男、垣根孝は人の行動や感情を観察するのが大好きだった。 学園の恋愛事情を避けるため、″擬装カップル″として利害が一致していたはずの2人。 しかし垣根が根津美咲に固執したことをきっかけに、2人の関係は破綻していく。 執着と所有欲が表面化した針崎 澪。 逃げ出した孝を、徹底的に追い詰め、捕まえ、管理する。 拒絶、抵抗、絶望、諦め——そして、麻痺。 壊されて、従って、愛してしまった。 これは、「支配」と「観察」から始まった、因果応報な男の末路。 【青春BLカップ投稿作品】

平凡ハイスペックのマイペース少年!〜王道学園風〜

ミクリ21
BL
竜城 梓という平凡な見た目のハイスペック高校生の話です。 王道学園物が元ネタで、とにかくコメディに走る物語を心掛けています! ※作者の遊び心を詰め込んだ作品になります。 ※現在連載中止中で、途中までしかないです。

優しい檻に囚われて ―俺のことを好きすぎる彼らから逃げられません―

無玄々
BL
「俺たちから、逃げられると思う?」 卑屈な少年・織理は、三人の男から同時に告白されてしまう。 一人は必死で熱く重い男、一人は常に包んでくれる優しい先輩、一人は「嫌い」と言いながら離れない奇妙な奴。 選べない織理に押し付けられる彼らの恋情――それは優しくも逃げられない檻のようで。 本作は織理と三人の関係性を描いた短編集です。 愛か、束縛か――その境界線の上で揺れる、執着ハーレムBL。 ※この作品は『記憶を失うほどに【https://www.alphapolis.co.jp/novel/364672311/155993505】』のハーレムパロディです。本編未読でも雰囲気は伝わりますが、キャラクターの背景は本編を読むとさらに楽しめます。 ※本作は織理受けのハーレム形式です。 ※一部描写にてそれ以外のカプとも取れるような関係性・心理描写がありますが、明確なカップリング意図はありません。が、ご注意ください

ビッチです!誤解しないでください!

モカ
BL
男好きのビッチと噂される主人公 西宮晃 「ほら、あいつだろ?あの例のやつ」 「あれな、頼めば誰とでも寝るってやつだろ?あんな平凡なやつによく勃つよな笑」 「大丈夫か?あんな噂気にするな」 「晃ほど清純な男はいないというのに」 「お前に嫉妬してあんな下らない噂を流すなんてな」 噂じゃなくて事実ですけど!!!?? 俺がくそビッチという噂(真実)に怒るイケメン達、なぜか噂を流して俺を貶めてると勘違いされてる転校生…… 魔性の男で申し訳ない笑 めちゃくちゃスロー更新になりますが、完結させたいと思っているので、気長にお待ちいただけると嬉しいです!

ひみつのモデルくん

おにぎり
BL
有名モデルであることを隠して、平凡に目立たず学校生活を送りたい男の子のお話。 高校一年生、この春からお金持ち高校、白玖龍学園に奨学生として入学することになった雨貝 翠。そんな彼にはある秘密があった。彼の正体は、今をときめく有名モデルの『シェル』。なんとか秘密がバレないように、黒髪ウィッグとカラコン、マスクで奮闘するが、学園にはくせもの揃いで⁉︎ 主人公総受け、総愛され予定です。 思いつきで始めた物語なので展開も一切決まっておりません。感想でお好きなキャラを書いてくれたらそことの絡みが増えるかも…?作者は執筆初心者です。 後から編集することがあるかと思います。ご承知おきください。

ヴァレンツィア家だけ、形勢が逆転している

狼蝶
BL
美醜逆転世界で”悪食伯爵”と呼ばれる男の話。

処理中です...