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第59話
しおりを挟む「なあなあ、そういえば零斗はどこにいるんだよ!!!!!!アイツも生徒会の人なんだろっ!!!!!!!あ、もしかして仲間はずれか!!!!いけないんだぞ!!!!友達は一緒にいないといけないんだからな!!!!!」
突然キョロキョロと周りを見渡し始めたかと思うと、そんな内容のことを柳瀬クンは言った。
別称“女神”と呼ばれる、副会長のことまでも呼び捨てにするのが耳に入った一般生徒達は、一気に柳瀬クンへと向ける侮蔑の視線と暴言を強める。副会長は基本、名前で呼ばれることを避けることもあってか、より一層すごいことになっていた。
しかし、柳瀬クンはやはりそれらへ歯牙もかけずに、あくまでマイペースに、自己中に振る舞っている。その態度が余計顰蹙を買っているのだが、彼はまるで気にしない。
「「あれー?本当だ!一緒に来たのに、れいれいがいない!!」」
「れいれいどこに行ったんだろー?」
「れいれいどこに消えたんだろう?」
「「ねぇねぇどこ!!?」」
今になってようやく副会長の不在に気付いたらしい双子は、未だ柳瀬クンにしがみつきながら同じく周りを見渡す。
その姿が、まるで親コアラに抱き着いて離れない子コアラのようだったという事は、本人達には黙っておこうと思う。意外と2人は自分達が小さいことを気にしているのだ。
しかし、副会長が現在何処にいるのかを教えてしまってもいいのだろうか。それも、彼が関わりたくないと宣言していた柳瀬クンもいるここで。
「あ~っとねぇ~…」
「「マコちゃん知ってるの!?教えて教えてー!」」
「オレも零斗がどこにいるのか知りたいんだぞ!!!!!!」
言葉を濁しつつ、横目でチラッと会長を見る。その顔は「(絶対に言うな)」とめちゃくちゃ必死だった。もし言ったら顔面蒼白にして、冷や汗を大量にかくであろう顔だった。下手したら卒倒するかもしれない。
流石の生徒会の癒やし要員で天使な慶も、それを見て少し引いた様子だった。無意識なのか、若干会長のいるのとは逆方向に身体を引いている。
そのような会長の異常な様子が、俺と慶にしか分からなかったのは救いか。おかげで本日も会長は、完璧無敵な俺様何様生徒会長様のイメージを保てている。
「会計さん、春人が聞いているでしょう??教えて貰えません?」
爽やかそうなイケメンが後押ししてきた。
敬語で話しかけてきているだけマシだが、こちらを馬鹿にし、見下しているのがありありと分かる態度だ。全く爽やかでない。どのような時でも爽やかな颯クンを見習って欲しい。
「俺は教えてもい~んだけどねぇ…。でもさぁ、降臨なされる可能性が高いんだよねぇ~」
その言葉を耳にした途端、双子は笑顔のまま見事に石化を果たした。が、次の瞬間には2人揃って石化は解け、素晴らしいまでに掌をひっくり返してみせた。
「やっぱりいいやー!!」
「教えなくていいよ!!」
「「だからそれだけは勘弁してー!!」」
顔を引きつらせながらも、なんとか笑みは保持している双子の肌を、冷や汗らしき滴が少し湿らせていた。
それはそうだ。あれを知る者なら、誰だって降臨阻止したいだろう。何故なら、自ら死地を作り出すようなものだからだ。
…いや、そういやいたな。1度でいいから、副会長に蔑んだ目で見下して欲しい、と昨年の短冊に書いていた奴が。流石の会長と双子も、あれを見た瞬間全力で引いてたのを覚えている。
見た瞬間、即で慶の目を手で覆ったのは素晴らしい判断だったと今でも思う。あれはどう考えても慶の教育に悪い。
その時、当の副会長といえば、それを目にした瞬間から、実に素晴らしいアルカイックスマイルを浮かべていた。一般生徒の前にも関わらず目が一切笑っておらず、背後からは冷気が漂っていたのを覚えている。
俺達からすればただただ恐怖でしかなかったが、それを見てヤバい信者も真っ青になるであろう真剣さで、何かに全力で祈りを捧げているのが数名いた。
ある意味怖すぎて、思わず通報した程だ。
閑話休題。
「と、いうことだからごめんねぇ~」
「はあ?!!!なんでだよ!!!!!友達には教えないといけないんだぞ!!!!隠しごとなんてしたらいけないんだ!!!!!!」
無理だと言った途端、柳瀬クンは相変わらずの大声で喚いた。あぁ、念のため耳栓をしたままで良かった。でないと鼓膜へのダメージが今の比ではなかった。
というか、俺はいつの間に友達認定されたのだろうか。
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