孤独な蝶は仮面を被る

緋影 ナヅキ

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第95話 (no side)

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 マイクの電源を入れ直したのち、今度こそ完璧な笑みを貼り付けた副会長が再び口を開く。

『永瀬兄弟、説明ありがとうございました。次は、皆さんが気になっていると思われる鬼ごっこのご褒美についての説明になります。では、会計の水無月と書記の花ヶ崎、よろしくお願いします』

 会計とその隣に座っていた書記が立ち上がり、副会長のいる舞台中央へと足を向ける。歩く2人の距離は前後30cm程離れており、会計は書記の方を一度も振り返らなかった。

 その様子を見て、ほんの小さな違和感を、しかし確かなほころびを、一体何人が覚え感じ取っただろうか?

 もしもこの時、その綻びを察した人物が居たのなら、あの結末は避けられたのだろうか?
 

『皆やっほ~。今から俺、水無月真琴と~』

『おれ、花ヶ、さき…けい、です…』

『この2人でごほーびの説明をするねぇ~。よぉく聞いててよ~?』

 会計が己の片耳に手を当て、持っていたマイクを舞台下生徒達の方へ向ける。良く躾けられた生徒達はその意図を正確に受け止め、「はーい!」やら「オッケー」やら「ウォォォオッ!」などと様々な方法で一斉に返事をした。

 それに機嫌を良くしたらしい会計は更に軽薄な笑みを深め、弾むような声音で言葉を舞台下へと降らしてゆく。

『まずは“動物”と“飼い主”、共通のごほーびについて説明するねぇ。えぇ~っと、ごほーびは“学食無料券90食分(無期限)”と“購買で使える金券10万円分”でしょ~。あとは“授業免除7日分”と~、“無条件外出許可証5回分”だよ~』

『“どう、つ”げ、て…ごほ、び……。…えと、“す…なひと、デート…きる、け…り”と、“役しょ…てる、ひとに、おねが…で、る…けん、り…”』

『あ、“好きな人とデートできる権利”だけど~、なんと!俺達生徒会からも選べるよ~!あとあと!!“役職持ちにお願いできる権利”は1人しか指名できないしぃ、お願いも1つだけだからねぇ。もちろん常識の範囲内のものだけだよ~』

 理解わかりにくい書記の言葉に対して、あからさまに翻訳するのでなく、補足というていで会計がフォローを入れる。
 おかげでご褒美として挙げられた事の内容を生徒が把握できないという事態はまぬがれ、順調に説明は続く。

『“飼い…し”げん、て、ご褒美……。…“ペアな…たひと、デート…でき、る、権利”と、“ペア…った、ひと…に命れ…で、る…けん、り”だよ…』
 
『またまた補足~!“ペアの人とデートできる権利”なんだけど~、する日を前もって風紀に報告してねぇ。じゃないと外出できないよ~?で、“ペアの人に命令できる権利”の方は~、こっちも常識の範囲内でのみ1つだけ命令できるって感じだからねぇ~』

『“どうぶ…”の、しょ、り、条け……鬼ご、こ…捕ま、なこと…。そ、たら、ご褒、び…もら、る…』

『まっ、捕まらなければいいだけだからぁ、鬼ごっこ中ずっと隠れてるってのも有りではあるよ~』 

『“飼い主”、は…は、く…捕まえ…ひと、…きょ、つ、ごほ、びと、め、れ…けん、か、得…できる…』

『早く捕まえた人っていうのは、ここに戻ってきたのが早かった上位10人までのことねぇ。それ以外でペアをゲット出来た人はぁ、ペアの子とのデートだけになるから注意ちゅ~い~。意中の子を捕まえないとぉ…ぷぷっ、大変なことになるねぇ(笑)』

『え、と……終わった、ひと…ここ、で映ぞ、観る…。お菓子、よ、い…あるか、ら…みんな、で、お茶会…楽し、でね…』

『お菓子と飲み物はバイキング方式だよ~。まだ鬼ごっこをしてる子達のライブ映像を観ながら、終わるまでの~んびりしてねぇ~』

『説め…ここまで、だ、よ…』

『静かに聞いててくれてありがとねぇ~』

 両者とも非常に整った顔に、種類の異なる笑顔を浮かべてマイクの電源を切る。そして書記は控えめに、会計はヒラヒラと適当に、各々手を振りながら舞台中央を後にした。 



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