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それについては黙っておいて
大社君の話(#3)
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「うわ、すっかり忘れてた!バイト先に寄ってから、五段坂んち行くわ。」
「俺は一度うちに戻ってから行く。なんかあったのか?」
「貰った生菓子をバイト先の冷蔵庫に入れっぱなしでさ。賞味期限が今日までだって、連絡が入ってた。社員さんがみんなに買ってきてくれて、包装に名前が書いてあるんだよ。」
「それは忘れてるやつ一目瞭然だな。いてら~。またあとで!」
今夜の集いは五段坂んちだ。
近くまで西国と帰ってきたが、
そういうわけで一旦別れる。
西国のバイト先は
五段坂んちに近く、
五段坂んちと俺んちは近い。
いつものように、
小さな公園を通り抜けていく。
静まり返った公園のベンチから、
歌声が聴こえてきた。
“甘くておいしいシュークリーム”
そんなフレーズが耳に入る。
シュークリームの歌?
聴いたことねーし。
即興っぽいな。
へんてこりんな歌だが、
ハスキーボイスで
なかなか聴かせてくれる。
「わんこ君?」
「おにーさん?」
歌声が途切れ、
ベンチに座る人影と目が合う。
「約束!本名教えて!」
「大社だけど。」
「あ!わんこ君、シュークリーム食べる?」
聞いておいて、スルー!
しかも、そっちで呼ぶのかよ!
教えた意味なし!
「貰い物だけど、甘くておいしいから!」
鼻先にぐいぐいと、
食べかけのシュークリーム
を押しつけられる。
鼻にクリームがついたが、
気にしたら負けな気がして、
黙ってもぐもぐ食べる。
「クリームがついちゃったね。なにか拭くものないかなぁ。あ!」
シュークリームが
包装してあった小袋で
がさがさと拭われる。
これ拭くものじゃねーよ!
「うぐぐ。地味にヒリヒリする。」
「あーごめんね!痛かったよね。わんこをいじめちゃった気分。」
おにーさんの胸元に
頭を引き寄せられ、
よしよしされる。
ふんわり
いい香りがした。
「わんこ君、いつもここ通るの?」
「そうだよ。すぐ近くに住んでっから。」
「そっかぁ!いいこと聞いた。また会おうね!」
笑顔で手を振りながら、
おにーさんは暗闇に消えていった。
俺が五段坂んちに着くと、
西国がシュークリームに
かじりついていた。
おにーさんが食べていたのと、
同じメーカーのやつだ。
「貰った生菓子ってこれだけど、大社も一口食う?なんか鼻先赤くね?」
「さっき食ったばっかりだからいーわ、さんきゅ~!これは、ちょっとこすっちゃって。」
鼻先をさすりながら答える。
まだほんの少しヒリつく。
「西国の他にも生菓子のこと忘れてたやついた?」
「不思議さん!俺が行くちょっと前、取りに来てたらしい。」
「二人ともポヤッとしてんな!」
「あ!噂をすれば、不思議さんからメールだ。」
「不思議さんなんだって?」
西国が、
シュークリームを飲み込んだ後、
メールを読み上げる。
「わんこ君とつい先ほどばったり会えました。本名は神社君でした。だって!」
「わんこ系男子と必然の出会いか。」
「神社って名前、ずいぶん変わってるな!」
「五段坂がそれ言えなくね?」
「大社じゃなかったな。」
いや、たぶん俺だ。
これまでの情報を整理すると、
おにーさんが、不思議さんだろう。
名前を間違えるってのも、
おにーさんなら十分ありだ。
大社と神社。
確かに似てっけど!
「恋かどうかもわかったのか?」
「三回会えたらわかるって言ってたもんな。」
「あ、続きがまだあった!」
「お!なに?なに?」
「不思議さんなんだって?」
胸がどきどきする。
なんだこれ?!
「わんこ君の家はバイト先から近そうです。家にあげて貰うまで会いに行きます。恋する男より。だって!」
「お~!不思議さんがんばれ!」
「ビバ!恋する男!不思議さんの外見じゃ、迫られても悪い気しねーぞ!」
「神社君が落ちるのも時間の問題か?」
「すでに落ちかけてたりして?」
落ちるのか?俺?!
さっきのどきどきは、
落ちかけてるって証拠?
俺が神社君だってこと。
それについては
黙っておいて。
でも、近いうちにきっと、
こいつらにバレそうだな。
おにーさんは自由人だから、
今後の予測がまったくできないけど!
「俺は一度うちに戻ってから行く。なんかあったのか?」
「貰った生菓子をバイト先の冷蔵庫に入れっぱなしでさ。賞味期限が今日までだって、連絡が入ってた。社員さんがみんなに買ってきてくれて、包装に名前が書いてあるんだよ。」
「それは忘れてるやつ一目瞭然だな。いてら~。またあとで!」
今夜の集いは五段坂んちだ。
近くまで西国と帰ってきたが、
そういうわけで一旦別れる。
西国のバイト先は
五段坂んちに近く、
五段坂んちと俺んちは近い。
いつものように、
小さな公園を通り抜けていく。
静まり返った公園のベンチから、
歌声が聴こえてきた。
“甘くておいしいシュークリーム”
そんなフレーズが耳に入る。
シュークリームの歌?
聴いたことねーし。
即興っぽいな。
へんてこりんな歌だが、
ハスキーボイスで
なかなか聴かせてくれる。
「わんこ君?」
「おにーさん?」
歌声が途切れ、
ベンチに座る人影と目が合う。
「約束!本名教えて!」
「大社だけど。」
「あ!わんこ君、シュークリーム食べる?」
聞いておいて、スルー!
しかも、そっちで呼ぶのかよ!
教えた意味なし!
「貰い物だけど、甘くておいしいから!」
鼻先にぐいぐいと、
食べかけのシュークリーム
を押しつけられる。
鼻にクリームがついたが、
気にしたら負けな気がして、
黙ってもぐもぐ食べる。
「クリームがついちゃったね。なにか拭くものないかなぁ。あ!」
シュークリームが
包装してあった小袋で
がさがさと拭われる。
これ拭くものじゃねーよ!
「うぐぐ。地味にヒリヒリする。」
「あーごめんね!痛かったよね。わんこをいじめちゃった気分。」
おにーさんの胸元に
頭を引き寄せられ、
よしよしされる。
ふんわり
いい香りがした。
「わんこ君、いつもここ通るの?」
「そうだよ。すぐ近くに住んでっから。」
「そっかぁ!いいこと聞いた。また会おうね!」
笑顔で手を振りながら、
おにーさんは暗闇に消えていった。
俺が五段坂んちに着くと、
西国がシュークリームに
かじりついていた。
おにーさんが食べていたのと、
同じメーカーのやつだ。
「貰った生菓子ってこれだけど、大社も一口食う?なんか鼻先赤くね?」
「さっき食ったばっかりだからいーわ、さんきゅ~!これは、ちょっとこすっちゃって。」
鼻先をさすりながら答える。
まだほんの少しヒリつく。
「西国の他にも生菓子のこと忘れてたやついた?」
「不思議さん!俺が行くちょっと前、取りに来てたらしい。」
「二人ともポヤッとしてんな!」
「あ!噂をすれば、不思議さんからメールだ。」
「不思議さんなんだって?」
西国が、
シュークリームを飲み込んだ後、
メールを読み上げる。
「わんこ君とつい先ほどばったり会えました。本名は神社君でした。だって!」
「わんこ系男子と必然の出会いか。」
「神社って名前、ずいぶん変わってるな!」
「五段坂がそれ言えなくね?」
「大社じゃなかったな。」
いや、たぶん俺だ。
これまでの情報を整理すると、
おにーさんが、不思議さんだろう。
名前を間違えるってのも、
おにーさんなら十分ありだ。
大社と神社。
確かに似てっけど!
「恋かどうかもわかったのか?」
「三回会えたらわかるって言ってたもんな。」
「あ、続きがまだあった!」
「お!なに?なに?」
「不思議さんなんだって?」
胸がどきどきする。
なんだこれ?!
「わんこ君の家はバイト先から近そうです。家にあげて貰うまで会いに行きます。恋する男より。だって!」
「お~!不思議さんがんばれ!」
「ビバ!恋する男!不思議さんの外見じゃ、迫られても悪い気しねーぞ!」
「神社君が落ちるのも時間の問題か?」
「すでに落ちかけてたりして?」
落ちるのか?俺?!
さっきのどきどきは、
落ちかけてるって証拠?
俺が神社君だってこと。
それについては
黙っておいて。
でも、近いうちにきっと、
こいつらにバレそうだな。
おにーさんは自由人だから、
今後の予測がまったくできないけど!
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