序列学園

あくがりたる

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学園戦争の章《承》

第104話~反逆者、集結~

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 リリアが倒れた。
 一足遅かったかと思ったが、つかさが近付いてみるとリリア自身には致命傷となるような怪我はなく、むしろリリアを介抱していたあかり詩歩しほの方が相当な怪我をしていた。
 燈は周りに倒れている黒い布を顔に巻いている男達や遺体となった剣特師範の袖岡そでおか太刀川たちかわについて駆け付けたつかさに詳しく説明してくれた。
 一通りの説明を終えると燈はふらついて膝を付いた。それと同時に詩歩も崩れ落ちた。2人とも立っているのが不思議なくらいの怪我なのだ。
 つかさは共に駆けて来た綾星あやせ東堂とうどうなどのほかの槍特生に、リリアと、燈、そして詩歩を運ぶように言った。

「袖岡師範も太刀川師範も敵とはいえ、私達の恩師だった人。2人の遺体は運んでそれ以外の遺体は集めてそこに積んでおいて。後で火をかけて焼いちゃおう」

 つかさは迷う事なく槍特生達に指示を出した。
 東堂が黒い男達の遺体をほかの槍特生達と手早く集めて山積みにした。そして、つかさに完了の報告をするとリリア、燈、詩歩をつかさ、綾星、東堂の馬にそれぞれ乗せ、袖岡と太刀川の遺体はほかの槍特生の馬に乗せた。

「みんなご苦労様。それじゃあ、私達は弓特寮に向かうわよ!  遅れないでね!」

 つかさが言うと槍特生は皆威勢の良い声で返事をし、そして弓特寮へ馬を駆けさせた。




 弓特寮に全員が集まったのは日没の少し前だった。
 鏡子きょうこ達弓特の生徒はまりかの神眼のお陰ですぐに合流し、弓特寮に集合したのだ。
 弓特寮の鏡子の部屋を訪れたのは2度目である。1度目は茉里まつりと初めて会った時に舞冬まふゆと訪れた。カンナは鏡子の部屋の前に来るとあの時の舞冬の笑顔を思い出してしまう。

「澄川さん、どうぞ、入ってください」

 茉里が心配そうにぼーっとしているカンナに声を掛けてきた。
 カンナが茉里に背中を押され広々とした学園序列2位、美濃口鏡子みのぐちきょうこの部屋に入った。
 大きなグランドピアノが部屋の隅に置かれており、かなりの存在感を示していた。
 鏡子の後に続き続々と学園に反旗を翻した生徒達が部屋に入って来た。
 弓特寮で一番広い部屋が鏡子の部屋だ。しかし、部屋に入って来たのは負傷したリリア、燈、詩歩を抜いても総勢20名を超える大人数だった。流石に広々とした部屋もその容量ぎりぎりといったところだった。

御影みかげ先生。リリアさん達の具合はどうですか?」

 後から部屋に入って来た御影にカンナは恐る恐る聞いた。

「命に別状はないけど、燈ちゃんと詩歩ちゃんが重傷よ。あの2人はもう戦わせないようにしないと死ぬわ。今は下の階の茉里ちゃんの部屋で小牧君が看病しているわ」

「そうですか……」

「大丈夫よ。安静にしていればいいんだから。リリアちゃんはすぐに動けるようになると思うわ。あの子は怪我というより、疲労で倒れたみたいだから」

 カンナはそれを聞いてほっと胸を撫で下ろした。

「みんな、今から現在の状況の確認とこれからの事について伝えるわよ」

 鏡子の鶴の一声で部屋にいた生徒達全員が鏡子の方を見た。鏡子の隣りには斑鳩いかるががいた。

魅咲みさき叶羽とわは悪いけど外で見張りをお願い」

「畏まりました」

 鏡子は弓特の生徒を2名、外の見張りにやった。
 カンナの隣りにはつかさ、光希みつき、茉里、蔦浜つたはま、キナが近付いてきた。そして、ギシギシと音を立てながらまりかが松葉杖をついて歩いて来た。

「右脚に出来るだけ負担かけないようにって御影先生がさー。右手も痛いから松葉杖も辛いんだけどなー」 

「だったら下でリリアちゃん達と大人しくしてなさい」

 まりかが文句を言ったので御影はまりかの頭をポンポンと叩いた。まりかは口を尖らせてムッとしていた。

「まず、ここに集まってくれた皆。手を貸してくれてありがとう。俺達は学園の陰謀を知り、それに立ち向かう為にここにいる。青幻は我々の敵。その青幻と裏で繋がっていた学園は俺達を利用していた。その過程でこの学園の仲間が犠牲になった。その事実を知った以上、この学園で今まで通りの生活など出来ない。必ず総帥を倒し、この学園を真の楽園にしよう!」

 斑鳩の演説が終わると歓声が上がった。カンナも声を出した。

「では、今の学園側の戦力を整理しましょう」

 今度は斑鳩の隣りの鏡子が話し始めた。
 弓特の生徒達はまるで軍隊のようなきびきびとした動きで鏡子に注目した。

「まず、ここにいない生徒。彼らは学園側に自分の意思で従っているのか、ただ命令に従っているだけなのか定かではない。けれど、あちら側にいる以上は敵として構えなさい。もし、こちら側に加わりたいという生徒がいたら受け入れましょう」

 鏡子は学園側の生徒達の名を1人1人列挙していった。

「今まで挙げた生徒達は正直問題ではないわ。問題は序列4位の影清と序列1位の神髪瞬花かみがみしゅんかの2名だけ。外園伽灼ほかぞのかやはおそらく学園側ではないでしょうけど、こちらに協力してくれるかは分からない。あまり期待はしない方がいいけど、動向には注意する必要があるわね。まず今は、神髪瞬花と影清。この2人は他の生徒達と格が違う。おそらく、影清を倒せるのは私だけ。神髪瞬花に関しては誰も勝てないわ」

「じゃあどうするんですか!?」

 キナが手を挙げて言った。

「1人では勝てないけど、私達が協力すれば可能性はあるわ。現に剣特両師範をリリア、燈、詩歩の3人で倒したという事実があるのだから」

 鏡子の言葉に場が騒然とした。
 カンナも同意見だった。今まで格上の敵と戦ってきたが、1人では勝てない戦いも、仲間と共に戦って勝ってきたのだ。
 影清との制裁仕合も、解寧かいねいとの戦いも、まりかとの戦いも全て仲間達と共に勝利してきた。
 今は1人ではない。大勢の仲間がいる。今は不思議と負ける気がしない。周りにいる仲間達の顔は闘志に満ち溢れていた。

「生徒以外の残存戦力としては、師範が4人。槍特・東鬼しのぎ師範。体特・重黒木じゅうくろき師範。馬術・南雲なくも師範、大甕おおみか師範。そして、栄枝さかえだ先生以下医療班部隊。その他、総帥統括の暗殺部隊はどれくらい残っているかは不明。勿論、割天風かつてんぷう総帥自身は健在」

 鏡子が続けて残存戦力を列挙すると、場は静まり返った。それもそのはずだ。学園側の残存戦力の方がこちら側よりも明らかに強力なのである。

「補足、いいですかー?」

 突然静寂を破り、カンナの隣りのまりかが松葉杖を支えながら左手を上げた。

「なに?」

 鏡子が冷たい視線を送りまりかの発言を許した。

「剣特でただ1人学園側に残ってる人がいるんですけど、その人にはここにいる下位序列の生徒達じゃ適わないから気をつけた方がいいわよ」

「序列19位、四百苅奈南しおかりななみか」

 鏡子が目を細めて呟いた。
 四百苅奈南。その生徒にはカンナは一度だけ会った事があった。響音ことねと同室の学園最年長の女性で鉄で出来た剣程の長さの棒である”べん”を2本操る双鞭そうべんの使い手だと聞く。とても落ち着いた雰囲気の女性で、当時狂気に支配されていた響音が唯一逆らわなかった生徒である。

「奈南さんは序列に興味がないからって序列仕合を行わず、現在の序列19位に留まっているわ。だけど、その実力は序列10位以内に食い込むもの。油断してあっという間に殺されないように気を付けてね」

 まりかの発言に場の静寂はより深まった。
 序列5位を持って注意を促される程の人物。カンナは鳥肌が立つのを感じた。

「あの、四百苅さんをこちら側に引き込むのは難しいんでしょうか?  四百苅さんだけじゃなく、まずは学園側の残存戦力と交渉して……」

 カンナが手を挙げて言った。

「奈南さんは上位序列の言う事しか聞かないわ。それも恐らく自分が実力を認めた人しかね。その他の生徒達についてはこちら側に引き込める可能性はあるけど、師範達や栄枝先生達医療担当は難しいでしょうね」

 まりかはいつになく真剣な口調で言った。

「説得出来るなら極力説得しましょう。無駄な血を流す必要は無いわ。まりか。あなたなら奈南さんを説得出来る?」

 鏡子が言った。

「いや~、どうでしょうね……。私、響音さんに酷い事しちゃったから奈南さんに嫌われてるだろうし。でも、やるだけやってみましょうか?  無理ならそのままぶっ潰せばいいんですもんね?」

「じゃあ、頼んだわよ。まりか。くれぐれも、殺したりしないでね?  同じ生徒なのだから」

 鏡子は穏やかな口調でまりかに頼んだが、そのまりかを見る目は完全には信用仕切っていないように見えた。

「あと残っている生徒は体特だけだな。その説得はかかえと蔦浜でやれ」

「はい!!」

 斑鳩の指示に、キナは元気良く返事をした。キナの隣りの蔦浜は恥ずかしそうに頬を掻いていた。

「いいか、皆。この戦いは、敵を殺戮する事が目的ではない。目的はただ1つ。総帥を倒す事だ」

 斑鳩がまた話し出すと、場は静まり返った。カンナも息を飲んだ。

「総帥を倒せば学園のトップを倒した事になり、この戦いの勝利だ。総帥は美濃口さんと俺で倒す。その為に、こちら側に靡かなかった生徒達と師範を他で引き付けておいてほしい」

「ちょっと待ってください、斑鳩さん!  いくら美濃口さんと斑鳩さんの2人とはいえ、総帥に勝てる見込みはあるんですか??」

 カンナが聞いた。斑鳩はカンナを見た。

「勿論だ。作戦は美濃口さんと2人で話し合った。これならいけると結論づけた」

 斑鳩の表情は真剣そのものだった。
 斑鳩の言葉は力強かったが、そうは言われても心配だった。どれ程の力を持っているのか想像も出来ない絶対的な存在。それが”学園総帥”なのだ。
 しかし、カンナは斑鳩の言葉にそれ以上異議を挟めなかった。

畦地あぜち。残存戦力の位置の補足はお前に頼んでいいか?」

「え~?  どーしよーかなー?」

 まりかが空気を読まず悪ふざけをしたが、鏡子と斑鳩は冷たくまりかを見詰めただけで何も言わなかった。

「嘘です~ごめんなさいー、やります、やらせてください」

 その視線と空気に耐えかねたまりかは慌ててその任務を承諾した。

「よし。畦地が補足した残存戦力の場所にこちらで指定したメンバーのチームを派遣する。派遣されたらその相手を倒すか足止めしろ。その間に美濃口さんと俺で総帥を倒す。細かい事はこの後チームの発表と共に話す」

 斑鳩が話し終わっても誰も質問してこなかった。自分が誰の元へ派遣されるのか、それが気になる所だろう。カンナも不安しかなかったが、斑鳩の指示に従うしかなかった。出来れば斑鳩と共に行動したい。しかし、そうはいかないのだろう。ここで我儘を言うわけにはいかない。カンナは斑鳩を見詰めていた。

「カンナ。大丈夫だよ。私達がついてる。必ず、生き残ろう!」

 カンナの不安げな様子を見てつかさが励ましてくれた。

「ありがとう!  つかさ!」

 カンナの周りには、今まで数々の戦いを共に戦ってきた仲間達が皆カンナを見て頷いた。

「みんな!  必ず生き残ろう!  そして、またこの学園で暮らそう!!」

 カンナの言葉に、皆が声を揃えて返事した。
 
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