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第一章 換金士の少年と黒鬼の巫女
第12話 ハイリスク・ハイリターン! ランクAの大仕事
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一日が過ぎていく。
日は西に傾き、道ゆく人々の影を少しずつ伸ばし始めていた。
雷奈と響詩郎は本日の授業を終えてすぐに学校を後にする。
級友として同じ教室で半日過ごした二人だが、何となく喋りにくくてあまり多くは言葉を交わさなかった。
それでも二人共に並んで下校するその歩調は変わらない。
やがて重苦しい空気を嫌った響詩郎の方から雷奈に声をかけた。
「何だか居心地悪いよな。そろそろ普通に喋らないか?」
響詩郎がそう口火を切ると、雷奈も同じ事を感じていたようで大きくため息をついた。
「はぁ……今朝のこと、香桃さんに相談するの?」
「いや。言いたくないだろ?」
「そりゃそうよ。あんなの最低。死にたくなるわ」
そう言って眉間にシワを寄せる雷奈を見て響詩郎は恐る恐る尋ねた。
「お、怒ってんのか?」
あんな姿を見られてしまい、雷奈が女子としてどれだけ屈辱的だったのかを想像できないほど響詩郎も鈍感ではない。
恐らく穴があったら入りたいくらいなのだろう。
だが雷奈は悄然とした表情でうなだれた。
「あんたのことは怒ってない。響詩郎はいつも通りに霊力分与してくれただけだもん。変なのは私よ」
「……何やら珍しく殊勝な物言いだな。ま、あれだ。俺としては出来れば普通に話してもらいたいな。パートナーなんだし、意思疎通が出来ないと困る」
「私のあんな恥ずかしい姿を見ておいて普通に私と話そうっていうの? ふ~ん。あんたってそんな女慣れした奴だっけ?」
そう言うと雷奈はギロリと響詩郎を睨みつけた。
刃のように鋭い視線を向けてくる彼女に響詩郎は思わず首をすくめる。
「や、やっぱり怒ってんだろ?」
「ええ。怒ってるわ。私の頭をあんたの頭に100万回打ち付けて互いの記憶を消去できるなら、そうしたいくらい」
「お、おいおい」
「……冗談よ。普通に話してくれると助かるわ。変に気を遣ったら逆にぶっ飛ばすから」
ようやくそこでわずかばかりの笑顔を見せた雷奈に、響詩郎はやっと肩の荷が少しは軽くなるのを感じて明るい調子の声を出す。
「フゥ~! それでこそ雷奈さんだ。で、桃先生には……」
「香桃さんには私から相談するわ。あんたは黙ってて」
「了解。それでいこう」
そう言うと響詩郎は雷奈とパチンと手を打ち合わせるのだった。
そこからは二人で今後の霊力分与の対応についてひとしきり話しながら地下鉄と徒歩で移動を続け、30分ほどで二人は東京の古書店街にある『桃源堂』を訪れていた。
入口の扉をノックすると、引き戸がガラリと開いて中から小学生くらいの女の子が一人、姿を現した。
東南アジア系の浅黒い肌を持つ黒髪の少女だった。
「時間通りネ。二人とも」
少女はその黒い瞳で高校の制服姿の二人を見ると、朗らかな笑みをたたえてそう告げた。
「よう。ルイラン。配達の仕事がんばってるか?」
響詩郎がそう言って笑顔を向けると、ルイランと呼ばれた少女は細い腕に力こぶを作るような真似をしながら得意げに口を開く。
「もちろんネ。ルイラン超がんばってるヨ」
響詩郎の隣では、雷奈がルイランに笑顔を向ける。
「元気そうね。ルイラン」
ルイランは雷奈の姿を足先から頭まで眺め、親指を立ててニッと白い歯を見せた。
「雷奈サン。制服姿もイケてるね。盗撮して動画サイトにアップしたらアクセスうなぎ上り間違い無しネ」
そう言って悪戯な笑みを浮かべるルイランに雷奈も笑顔を崩さずに言った。
「ありがと。でもそんなことしたら鼻血が止まらなくなるくらい顔面パンチしてあげるわよ」
その迫力にルイランは思わず瞼をひくつかせながら一歩後ずさる。
「じ、児童に空手パンチとか虐待ネ」
「アタシの倍も生きてるくせに何言ってるの。ほら。さっさとお茶でも淹れなさい」
そう言うと雷奈は無遠慮に店の中へと足を踏み入れた。
ルイランは響詩郎ににじり寄るとささやき声で言う。
「響サン。嫁が強くて大変ネ」
「強いのは確かだが断じて嫁じゃねえよ。カンベンしてくれ」
決して雷奈に聞こえないように低く抑えたささやき声でそう言葉を交わすと、二人は雷奈の後について店の廊下を通り抜け、奥の部屋へと入っていった。
そこはこぢんまりとした応接スペースで、店の主人である趙香桃がソファーにゆったりと腰をかけて雷奈と響詩郎を待っていた。
「こんにちは。香桃さん」
「お世話になってます。桃先生」
そう言って頭を下げる二人に香桃は穏やかな笑みを浮かべた。
彼女の切れ長の目は何も見ていないようにも何かをじっくりと見ているようにも見える不思議な色をたたえていると雷奈は思った。
雷奈にとって香桃は祖母の旧友として幼い頃から面識はあったが、ちゃんと話をするようになったのは悪路王を背負うようになったこの一ヶ月あまりのことだった。
一方、響詩郎にとっては香桃は幼い頃から霊能力の師であり、離れて暮らす両親の代わりとも呼べる存在だった。
現在の家であるバスハウスに住む前は香桃のマンションでともに暮らしていたが、中学卒業と同時に自立するために響詩郎は家を出たのだった。
雷奈と響詩郎が応接スペースのソファーに腰を下ろし、ルイランがお茶を淹れに部屋を出て行くと、彼らの対面に座る香桃がまずは話の口火を切った。
「さて、猿の一件はご苦労だったね。つつがなく処理してくれて安心したよ。コンビを組んでからこの一ヶ月足らずの間に二人が処理した案件はこれで12件。新人としちゃ、なかなかいいペースだ。そろそろ慣れた頃合だろう。次は報酬ランクの高い仕事を頼みたい」
香桃の話に二人の顔がほころぶ。
「ありがとうございます。Cランクですか?」
響詩郎はそう尋ねた。
彼らがこれまで主にこなしてきた仕事はD~Eランクであり、報酬はそれほど高くない。
二人でさばける依頼件数には限りがあるため、出来れば高ランクの仕事で効率よく稼ぎたいところだった。
だが、香桃の言葉は二人の予想を大きく上回るものだった。
「Aだよ」
あっさりとそう言う香桃に雷奈は驚いて声を上げた。
「Aですって? 私たちに?」
Aランクとは報酬100万イービル、またはそれに準ずる報酬の大仕事を意味する。
その一件の報酬だけで、二人が今のペースで稼げるおよそ一ヶ月分もの収入になる。
まだ駆け出しの雷奈らには雲の上の依頼だ。
信じられないといった顔をする雷奈に香桃は落ち着いた笑みを浮かべて話を続けた。
「警視庁からの仕事依頼だよ。受けるかい?」
香桃の話に雷奈は響詩郎の顔を見た。
少し考え込むような顔をしていた響詩郎は雷奈の視線を受けて香桃の顔を見つめると、口を開いた。
「桃先生。無名の俺たちに回ってくるAランクの仕事。何か事情があるんですね?」
響詩郎の疑念の眼差しに香桃は当然という顔をした。
「ああ。そうさ」
そう言うと香桃は背もたれから腰を浮かせ、身を乗り出した。
彼女の美しい金色の髪がはらりとその胸の上に落ちる。
「妖魔の密入国が年々増えていてね。警察の妖魔対策課も手を焼いているらしい」
正式に入国許可を受けることなく不正な手段を用いて上陸する妖魔らは後を断たない。
彼らの多くは他国で命の危険にさらされて安住の地を求めてやってくる者や犯罪行為を生業としている者たちだった。
「密航者の取り締まりに当たっている警察幹部からの情報でね。密航者の情報を得て現場に駆けつけるも空振りに終わるケースが増えているらしい。どうも警察内部の情報が外部に漏れているようなんだ」
その話に雷奈は眉を潜めた。
「内通者がいるってことですね」
「そういうことだね」
そこまで聞くと雷奈は得心した様子で香桃に問う。
「それを炙り出すのが私達への依頼ですか?」
だが、香桃の意図は雷奈の考えとは異なっていた。
「いや。それはこっちで処理する。おまえ達に依頼したいのは、その内通者から情報を得て密航の手引きをしている側の黒幕を仕留めることだ」
香桃の言葉に響詩郎は頷いた。
「なるほど。あまり有名な仕事屋に依頼すれば目立ちますからね。俺達みたいな無名の駆け出しのほうが動きやすい。まあ、警察内部のことなんて俺達に手出しできるわけないですし、掃除屋仕事のほうが性に合ってますよ」
そう言う響詩郎に釘を刺すように香桃は告げる。
「ただし、掃除屋仕事と言ってもAランクだ。それだけ厄介な案件ってことさ。どうする? 自信が無いなら他を当たるが」
穏やかな口調でそう言う香桃を前にして、雷奈は決然と立ち上がった。
「いえ。やります!」
響詩郎の懸念をよそに雷奈は勢いよく声を上げた。
香桃は張り切った様子の雷奈に頷き返すと次に響詩郎を見やる。
「響詩郎はどうだい?」
香桃に視線を向けられ響詩郎は素早く頭の中で考えをまとめて頷いた。
考えもなしに依頼を受けるものではないが、返答に詰まってしまえば自信がないと思われる。
この業界では即決即断も必要なスキルのひとつだった。
「分かりました。お受けします。ただ、2日間ほど準備期間をいただけますか? こちらとしてもありがたいお話ですが、慎重に対応したい。それに今夜は数日前に依頼してもらった港湾火災の案件がありますから」
「ああ。あれはちょうど今夜だったね」
そう言うと香桃はテーブルの上に今回の依頼についての資料を置いた。
「分かった。ではこちらの件は3日後から開始してくれ」
日は西に傾き、道ゆく人々の影を少しずつ伸ばし始めていた。
雷奈と響詩郎は本日の授業を終えてすぐに学校を後にする。
級友として同じ教室で半日過ごした二人だが、何となく喋りにくくてあまり多くは言葉を交わさなかった。
それでも二人共に並んで下校するその歩調は変わらない。
やがて重苦しい空気を嫌った響詩郎の方から雷奈に声をかけた。
「何だか居心地悪いよな。そろそろ普通に喋らないか?」
響詩郎がそう口火を切ると、雷奈も同じ事を感じていたようで大きくため息をついた。
「はぁ……今朝のこと、香桃さんに相談するの?」
「いや。言いたくないだろ?」
「そりゃそうよ。あんなの最低。死にたくなるわ」
そう言って眉間にシワを寄せる雷奈を見て響詩郎は恐る恐る尋ねた。
「お、怒ってんのか?」
あんな姿を見られてしまい、雷奈が女子としてどれだけ屈辱的だったのかを想像できないほど響詩郎も鈍感ではない。
恐らく穴があったら入りたいくらいなのだろう。
だが雷奈は悄然とした表情でうなだれた。
「あんたのことは怒ってない。響詩郎はいつも通りに霊力分与してくれただけだもん。変なのは私よ」
「……何やら珍しく殊勝な物言いだな。ま、あれだ。俺としては出来れば普通に話してもらいたいな。パートナーなんだし、意思疎通が出来ないと困る」
「私のあんな恥ずかしい姿を見ておいて普通に私と話そうっていうの? ふ~ん。あんたってそんな女慣れした奴だっけ?」
そう言うと雷奈はギロリと響詩郎を睨みつけた。
刃のように鋭い視線を向けてくる彼女に響詩郎は思わず首をすくめる。
「や、やっぱり怒ってんだろ?」
「ええ。怒ってるわ。私の頭をあんたの頭に100万回打ち付けて互いの記憶を消去できるなら、そうしたいくらい」
「お、おいおい」
「……冗談よ。普通に話してくれると助かるわ。変に気を遣ったら逆にぶっ飛ばすから」
ようやくそこでわずかばかりの笑顔を見せた雷奈に、響詩郎はやっと肩の荷が少しは軽くなるのを感じて明るい調子の声を出す。
「フゥ~! それでこそ雷奈さんだ。で、桃先生には……」
「香桃さんには私から相談するわ。あんたは黙ってて」
「了解。それでいこう」
そう言うと響詩郎は雷奈とパチンと手を打ち合わせるのだった。
そこからは二人で今後の霊力分与の対応についてひとしきり話しながら地下鉄と徒歩で移動を続け、30分ほどで二人は東京の古書店街にある『桃源堂』を訪れていた。
入口の扉をノックすると、引き戸がガラリと開いて中から小学生くらいの女の子が一人、姿を現した。
東南アジア系の浅黒い肌を持つ黒髪の少女だった。
「時間通りネ。二人とも」
少女はその黒い瞳で高校の制服姿の二人を見ると、朗らかな笑みをたたえてそう告げた。
「よう。ルイラン。配達の仕事がんばってるか?」
響詩郎がそう言って笑顔を向けると、ルイランと呼ばれた少女は細い腕に力こぶを作るような真似をしながら得意げに口を開く。
「もちろんネ。ルイラン超がんばってるヨ」
響詩郎の隣では、雷奈がルイランに笑顔を向ける。
「元気そうね。ルイラン」
ルイランは雷奈の姿を足先から頭まで眺め、親指を立ててニッと白い歯を見せた。
「雷奈サン。制服姿もイケてるね。盗撮して動画サイトにアップしたらアクセスうなぎ上り間違い無しネ」
そう言って悪戯な笑みを浮かべるルイランに雷奈も笑顔を崩さずに言った。
「ありがと。でもそんなことしたら鼻血が止まらなくなるくらい顔面パンチしてあげるわよ」
その迫力にルイランは思わず瞼をひくつかせながら一歩後ずさる。
「じ、児童に空手パンチとか虐待ネ」
「アタシの倍も生きてるくせに何言ってるの。ほら。さっさとお茶でも淹れなさい」
そう言うと雷奈は無遠慮に店の中へと足を踏み入れた。
ルイランは響詩郎ににじり寄るとささやき声で言う。
「響サン。嫁が強くて大変ネ」
「強いのは確かだが断じて嫁じゃねえよ。カンベンしてくれ」
決して雷奈に聞こえないように低く抑えたささやき声でそう言葉を交わすと、二人は雷奈の後について店の廊下を通り抜け、奥の部屋へと入っていった。
そこはこぢんまりとした応接スペースで、店の主人である趙香桃がソファーにゆったりと腰をかけて雷奈と響詩郎を待っていた。
「こんにちは。香桃さん」
「お世話になってます。桃先生」
そう言って頭を下げる二人に香桃は穏やかな笑みを浮かべた。
彼女の切れ長の目は何も見ていないようにも何かをじっくりと見ているようにも見える不思議な色をたたえていると雷奈は思った。
雷奈にとって香桃は祖母の旧友として幼い頃から面識はあったが、ちゃんと話をするようになったのは悪路王を背負うようになったこの一ヶ月あまりのことだった。
一方、響詩郎にとっては香桃は幼い頃から霊能力の師であり、離れて暮らす両親の代わりとも呼べる存在だった。
現在の家であるバスハウスに住む前は香桃のマンションでともに暮らしていたが、中学卒業と同時に自立するために響詩郎は家を出たのだった。
雷奈と響詩郎が応接スペースのソファーに腰を下ろし、ルイランがお茶を淹れに部屋を出て行くと、彼らの対面に座る香桃がまずは話の口火を切った。
「さて、猿の一件はご苦労だったね。つつがなく処理してくれて安心したよ。コンビを組んでからこの一ヶ月足らずの間に二人が処理した案件はこれで12件。新人としちゃ、なかなかいいペースだ。そろそろ慣れた頃合だろう。次は報酬ランクの高い仕事を頼みたい」
香桃の話に二人の顔がほころぶ。
「ありがとうございます。Cランクですか?」
響詩郎はそう尋ねた。
彼らがこれまで主にこなしてきた仕事はD~Eランクであり、報酬はそれほど高くない。
二人でさばける依頼件数には限りがあるため、出来れば高ランクの仕事で効率よく稼ぎたいところだった。
だが、香桃の言葉は二人の予想を大きく上回るものだった。
「Aだよ」
あっさりとそう言う香桃に雷奈は驚いて声を上げた。
「Aですって? 私たちに?」
Aランクとは報酬100万イービル、またはそれに準ずる報酬の大仕事を意味する。
その一件の報酬だけで、二人が今のペースで稼げるおよそ一ヶ月分もの収入になる。
まだ駆け出しの雷奈らには雲の上の依頼だ。
信じられないといった顔をする雷奈に香桃は落ち着いた笑みを浮かべて話を続けた。
「警視庁からの仕事依頼だよ。受けるかい?」
香桃の話に雷奈は響詩郎の顔を見た。
少し考え込むような顔をしていた響詩郎は雷奈の視線を受けて香桃の顔を見つめると、口を開いた。
「桃先生。無名の俺たちに回ってくるAランクの仕事。何か事情があるんですね?」
響詩郎の疑念の眼差しに香桃は当然という顔をした。
「ああ。そうさ」
そう言うと香桃は背もたれから腰を浮かせ、身を乗り出した。
彼女の美しい金色の髪がはらりとその胸の上に落ちる。
「妖魔の密入国が年々増えていてね。警察の妖魔対策課も手を焼いているらしい」
正式に入国許可を受けることなく不正な手段を用いて上陸する妖魔らは後を断たない。
彼らの多くは他国で命の危険にさらされて安住の地を求めてやってくる者や犯罪行為を生業としている者たちだった。
「密航者の取り締まりに当たっている警察幹部からの情報でね。密航者の情報を得て現場に駆けつけるも空振りに終わるケースが増えているらしい。どうも警察内部の情報が外部に漏れているようなんだ」
その話に雷奈は眉を潜めた。
「内通者がいるってことですね」
「そういうことだね」
そこまで聞くと雷奈は得心した様子で香桃に問う。
「それを炙り出すのが私達への依頼ですか?」
だが、香桃の意図は雷奈の考えとは異なっていた。
「いや。それはこっちで処理する。おまえ達に依頼したいのは、その内通者から情報を得て密航の手引きをしている側の黒幕を仕留めることだ」
香桃の言葉に響詩郎は頷いた。
「なるほど。あまり有名な仕事屋に依頼すれば目立ちますからね。俺達みたいな無名の駆け出しのほうが動きやすい。まあ、警察内部のことなんて俺達に手出しできるわけないですし、掃除屋仕事のほうが性に合ってますよ」
そう言う響詩郎に釘を刺すように香桃は告げる。
「ただし、掃除屋仕事と言ってもAランクだ。それだけ厄介な案件ってことさ。どうする? 自信が無いなら他を当たるが」
穏やかな口調でそう言う香桃を前にして、雷奈は決然と立ち上がった。
「いえ。やります!」
響詩郎の懸念をよそに雷奈は勢いよく声を上げた。
香桃は張り切った様子の雷奈に頷き返すと次に響詩郎を見やる。
「響詩郎はどうだい?」
香桃に視線を向けられ響詩郎は素早く頭の中で考えをまとめて頷いた。
考えもなしに依頼を受けるものではないが、返答に詰まってしまえば自信がないと思われる。
この業界では即決即断も必要なスキルのひとつだった。
「分かりました。お受けします。ただ、2日間ほど準備期間をいただけますか? こちらとしてもありがたいお話ですが、慎重に対応したい。それに今夜は数日前に依頼してもらった港湾火災の案件がありますから」
「ああ。あれはちょうど今夜だったね」
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