13 / 72
第一章 『堕天使の森』
第12話 パメラの辿ってきた道
しおりを挟む
「そもそも拙者、村を守るつもりはござらん」
「……へっ?」
きっぱりと言い切るパメラにティナは呆気に取られて戸惑いの声を漏らす。
「え? でもパメラさん。農村を守る依頼は……」
「それはもちろん責任を果たすでござるよ。ですが拙者1人ではそもそも村を守りきれないでござる。だから逆に敵の拠点に乗り込んでヒルダを討ち取るほうが村を守れると思ったでござるよ」
そういうことかよ。
ヒルダを含めた堕天使どもはエネミーNPCという種別のNPCであり、天使や悪魔を操作するプレイヤーどもにとって敵役となる。
その堕天使どもはゲームオーバーになると、このアメイジア大陸の各所にランダムでコンティニューされてバラバラに再配置される。
そこが天国の丘か地獄の谷なるかは、その時次第だ。
その後、元の盗賊団として再集結することはほとんどなく、それぞれが再配置先の土地で新たな暮らしをするようになるんだ。
だからヒルダたちを全滅させてしまえば、次に盗賊団がこの土地に現れない以上、天使どもの農村には平和な時間が訪れるというわけだ。
パメラは話を続け、己の考えを述べる。
「まずティナ殿が農村に赴き、農民たちに事の次第を伝え、襲撃時刻までに避難を済ませておくよう手配するでござる。その間に拙者とバレット殿でアジトに向かう準備をしようではござらんか。座標は確認できたものの、そこに向かうまでの最短ルートを確認してから向かうほうが確実でござるよ」
パメラはそう言うとティナを促す。
「さあティナ殿。時間がもったいないでござる。早々に用事を済まされよ」
「は、はい。と、とにかく村人たちに用件を伝えてきます」
そう言うパメラに急かされてティナはそそくさと農村へ向かって行った。
そんなティナを見送りながら俺はパメラに言う。
「最初から敵陣を突くつもりだったのか」
「そうでござる。まずは農村で情報を得ようと思ったのでござるが、思わぬ形でヒルダの根城の情報を得られたのは幸運でござった。今回の場合は攻めるより守るほうが難しいでござる。ならば攻めの一手で一気に敵陣を落とすべきでこざろう」
確かにこいつの言う通りだ。
堕天使どもから村を守るのに、この3人だけでは現実的に無理がある。
それは、大したことのない堕天使の野盗集団を相手に俺たちが負けちまうって意味じゃない。
仮に堕天使どもが100人いようが俺が負けることはねえ。
だが、村に損害を出さずに守りきるのは不可能だ。
周囲を取り囲まれて一斉にかかられたら、30分もせずに村は全滅するだろうよ。
拠点防衛はこちらにも最低限の人数がいなければままならない。
ましてや天使どもの農村は防壁のある要塞とは違って無防備だからな。
それにしても……。
「天使の農民どもはアホだな。街の武術大会まで出向いておきながら、パメラにしか声をかけなかったのかよ。仮にパメラが敵のアジトに乗り込むのと入れ違いに堕天使どもが村を攻めてきたら、パメラは無人のアジトで空振り、村は堕天使に襲われて全滅。何の意味もなくなる」
俺の言葉にパメラは顔を曇らせる。
「大勢を雇う資金が足りなかったのでござろう。実際、農民たちは拙者の他にも数人に声をかけていたようでこざったが、提示額が不満だったのか、断られていたでござる」
「そういうことか。なら、おまえも二束三文で仕事を引き受けたわけだな。たった1人。大した見返りもない。よくもまあそんな状況で安請け合いしたもんだな」
そう言う俺にパメラはきっぱりと言葉を返した。
「バレット殿。拙者にとって大事なのは報酬の高い安いではござらん。サムライとは信じるものや守りたいもののために刀を振るうものなのでござるよ。困難な状況でも己の腕でそれを乗り越えた時に手に入る経験こそが何よりの報酬でござる」
「ケッ。綺麗事ぬかしやがって」
そう言って睨む俺にパメラは泰然とした視線を返してきた。
こいつは本心からそう言ってやがるんだ。
馬鹿な小娘だぜ。
だが、そうは言うもののパメラの言うことは俺にも理解できる。
俺は金のために動くことはない。
金が今の俺の人生にとってそれほど重要ではないからだ。
たとえば二束三文の仕事でも、それを引き受けることで俺自身の実力が上がるなら、それは俺に取っちゃ十分においしい仕事だ。
ケンカの腕前を上げることが人生において一番重要視すべき価値観である俺にはな。
おそらくパメラも似たようなものなのだろう。
「それにしても無謀に過ぎるぜ。おまえはたった1人。そして5分しか戦えない。手持ちの手札が少な過ぎるその状況で、どう山場を乗り切るつもりだったのか。お聞かせ願おうか」
「いえ、バレットどの。そもそも拙者は1人ではござらん。ちゃんと協力者を募ったのでござるよ」
「なに?」
「地方大会の会場で農民より話を聞かされた際、堕天使の規模についてはある程度把握していたでござる。正直なところ拙者1人では困難だと思い、同じ大会に出ていた成績上位者たち7名に依頼して協力を仰いだのでござる」
武術大会には予選を勝ち抜いたパメラを含む8名が決勝トーナメントを争った。
こいつは自分以外の7人に声をかけたらしい。
「待て待て。さっき天使の農民どもが他の参加者にも声をかけたが断られたと言ったな。そいつらにおまえが改めて声をかけたってことか?」
「左様」
平然とそう言うパメラに俺は何だか嫌な予感がして聞いた。
「そいつらを納得させる報酬は誰が払うんだ?」
「無論のこと、彼らへの依頼の成功報酬は拙者が負担したでござるよ」
……やっぱりそういうことかよ。
俺の嫌な予感は当たっていたし、俺がどうしてそう感じたのかも分かった。
こいつは根っこのところがティナに似ていてお人好し過ぎるんだ。
いくら金を重要視していないったって、自腹を切ってまで他人を助けようとするか?
俺には理解できん。
「相応の金を払ったってことか」
「優勝賞金を7等分して彼らに譲り渡す条件でござるよ。もちろんその7人に着手金として相応の前金を払ったでござる。おかげで7人のNPCたち全員が快く契約し、引き受けてくれたのでござるよ」
「……だろうな」
アホだ。
ここにアホがいるぞ
農民から受け取った1人分の用心棒代に比べて、7人分の報酬という出費。
言うまでもなく完全に赤字だ。
それだけじゃねえ。
俺はジロッとパメラを見やると尋ねた。
「で、金で雇った奴らはいつ馳せ参じてくれるんだ」
俺の言葉にパメラは表情を曇らせる。
「それが……その彼らとの待ち合わせ場所は、バレット殿らと最初に出会ったあの森だったでござるよ。しかし彼らは現れず代わりに現れたのは堕天使の盗賊たちだったでござる」
なるほどな。
あの時にパメラを襲っていた連中か。
パメラのあんまりな世間知らずぶりに、他人事ながら俺は苛立って吐き捨てた。
「パメラ。ハメられたんだよオマエは。前金泥棒だ。奴らはもらった着手金で今ごろ酒でも飲みながら、オマエのことをマヌケな田舎もんだと笑ってやがるぞ」
「し、しかし、堕天使の襲撃を退ければ成功報酬が入るのでござるよ。前金4割に対して後金6割。彼らにとっても悪い話ではないはずでござらんか? もちろん契約書も交わしたでござるよ。だというのに7人全員が拙者を謀ったということでござるか?」
「大会優勝者だから賞金で潤っているとでも思われたのかもな。ま、おまえは見るからにヨソ者だし、7人が結託してハメたんじゃねえか。優勝者へのやっかみも含めてな」
俺の言葉にパメラは意気消沈して肩を落とす。
フンッ。
高い勉強料だったな。
だが……妙な部分もある。
堕天使どもを排除するだけで小遣い稼ぎが出来るなら、7人全員とは言わねえが数人は引き受けそうなもんだ。
どの程度のレベルの大会かは分からねえが、上位に入るような連中ならおそらく実力的に言っても堕天使相手に怖気づくようなことはねえだろう。
「皆、志ある武人に見えたのでござるが、拙者の目が曇っていたのでござろうか」
「真相はどうだか分からんがな。結果として奴らは待ち合わせ場所に現れず、おまえは金をドブに捨てることになったってわけだ」
「いや、金のことはいいのでござるよ。拙者の見る目が無かったことのほうが無念でござるよ」
そう言うパメラは腑に落ちない顔をしているが、すぐに気を取り直した。
「過ぎたことは仕方がござらん。とにかく拙者だけでも依頼を全うせねばならぬでござる。バレット殿とティナ殿が助太刀して下されば百人力でござるよ」
「フンッ。勘違いするな。俺は天使の農民どもなんざどうでもいい。だが、あのヒルダだけは俺がこの手で仕留めなきゃ気が済まん。ナメられたままじゃ終わらせねえ」
「理由はどうあれバレット殿が共に戦ってくれるのは拙者にとって幸運でござるよ。その調子で頼むでござる」
「ケッ。事が片付いたら俺と一戦交える話を忘れるなよ」
「無論でござる。さあ、それよりヒルダのアジトへの道すじを……」
俺たちがそんな話をしていると、思ったより随分と早くティナの奴が戻ってきた。
だが、何やら様子がおかしい。
ティナは青ざめた顔で髪を振り乱し、大慌てでこちらに飛んでくる。
そして俺たちの手前で急停止すると息も絶え絶えに言った。
「た、大変です! 農村が……襲撃されています!」
「なに? 襲撃は夜のはずだろう。あの小僧、テキトーなことを……」
「違います! 堕天使じゃありません! 悪魔と天使の奇妙な数人組がいきなり無差別に村人を襲い始めて……とにかくすぐ来て下さい!」
そう言うとティナはすぐに踵を返して、今来た道を全速力で舞い戻って行く。
悪魔と天使の数人組が天使の村を襲っている?
何だそりゃ。
ワケが分からねえぞ。
ティナの剣幕にただならぬ雰囲気を感じたようで、パメラがいち早く駆け出した。
チッ。
天使どもの村なんざ行きたくねえが、とりあえず様子を見に行くしかねえか。
俺は急かすティナの後を追って宙を舞った。
「……へっ?」
きっぱりと言い切るパメラにティナは呆気に取られて戸惑いの声を漏らす。
「え? でもパメラさん。農村を守る依頼は……」
「それはもちろん責任を果たすでござるよ。ですが拙者1人ではそもそも村を守りきれないでござる。だから逆に敵の拠点に乗り込んでヒルダを討ち取るほうが村を守れると思ったでござるよ」
そういうことかよ。
ヒルダを含めた堕天使どもはエネミーNPCという種別のNPCであり、天使や悪魔を操作するプレイヤーどもにとって敵役となる。
その堕天使どもはゲームオーバーになると、このアメイジア大陸の各所にランダムでコンティニューされてバラバラに再配置される。
そこが天国の丘か地獄の谷なるかは、その時次第だ。
その後、元の盗賊団として再集結することはほとんどなく、それぞれが再配置先の土地で新たな暮らしをするようになるんだ。
だからヒルダたちを全滅させてしまえば、次に盗賊団がこの土地に現れない以上、天使どもの農村には平和な時間が訪れるというわけだ。
パメラは話を続け、己の考えを述べる。
「まずティナ殿が農村に赴き、農民たちに事の次第を伝え、襲撃時刻までに避難を済ませておくよう手配するでござる。その間に拙者とバレット殿でアジトに向かう準備をしようではござらんか。座標は確認できたものの、そこに向かうまでの最短ルートを確認してから向かうほうが確実でござるよ」
パメラはそう言うとティナを促す。
「さあティナ殿。時間がもったいないでござる。早々に用事を済まされよ」
「は、はい。と、とにかく村人たちに用件を伝えてきます」
そう言うパメラに急かされてティナはそそくさと農村へ向かって行った。
そんなティナを見送りながら俺はパメラに言う。
「最初から敵陣を突くつもりだったのか」
「そうでござる。まずは農村で情報を得ようと思ったのでござるが、思わぬ形でヒルダの根城の情報を得られたのは幸運でござった。今回の場合は攻めるより守るほうが難しいでござる。ならば攻めの一手で一気に敵陣を落とすべきでこざろう」
確かにこいつの言う通りだ。
堕天使どもから村を守るのに、この3人だけでは現実的に無理がある。
それは、大したことのない堕天使の野盗集団を相手に俺たちが負けちまうって意味じゃない。
仮に堕天使どもが100人いようが俺が負けることはねえ。
だが、村に損害を出さずに守りきるのは不可能だ。
周囲を取り囲まれて一斉にかかられたら、30分もせずに村は全滅するだろうよ。
拠点防衛はこちらにも最低限の人数がいなければままならない。
ましてや天使どもの農村は防壁のある要塞とは違って無防備だからな。
それにしても……。
「天使の農民どもはアホだな。街の武術大会まで出向いておきながら、パメラにしか声をかけなかったのかよ。仮にパメラが敵のアジトに乗り込むのと入れ違いに堕天使どもが村を攻めてきたら、パメラは無人のアジトで空振り、村は堕天使に襲われて全滅。何の意味もなくなる」
俺の言葉にパメラは顔を曇らせる。
「大勢を雇う資金が足りなかったのでござろう。実際、農民たちは拙者の他にも数人に声をかけていたようでこざったが、提示額が不満だったのか、断られていたでござる」
「そういうことか。なら、おまえも二束三文で仕事を引き受けたわけだな。たった1人。大した見返りもない。よくもまあそんな状況で安請け合いしたもんだな」
そう言う俺にパメラはきっぱりと言葉を返した。
「バレット殿。拙者にとって大事なのは報酬の高い安いではござらん。サムライとは信じるものや守りたいもののために刀を振るうものなのでござるよ。困難な状況でも己の腕でそれを乗り越えた時に手に入る経験こそが何よりの報酬でござる」
「ケッ。綺麗事ぬかしやがって」
そう言って睨む俺にパメラは泰然とした視線を返してきた。
こいつは本心からそう言ってやがるんだ。
馬鹿な小娘だぜ。
だが、そうは言うもののパメラの言うことは俺にも理解できる。
俺は金のために動くことはない。
金が今の俺の人生にとってそれほど重要ではないからだ。
たとえば二束三文の仕事でも、それを引き受けることで俺自身の実力が上がるなら、それは俺に取っちゃ十分においしい仕事だ。
ケンカの腕前を上げることが人生において一番重要視すべき価値観である俺にはな。
おそらくパメラも似たようなものなのだろう。
「それにしても無謀に過ぎるぜ。おまえはたった1人。そして5分しか戦えない。手持ちの手札が少な過ぎるその状況で、どう山場を乗り切るつもりだったのか。お聞かせ願おうか」
「いえ、バレットどの。そもそも拙者は1人ではござらん。ちゃんと協力者を募ったのでござるよ」
「なに?」
「地方大会の会場で農民より話を聞かされた際、堕天使の規模についてはある程度把握していたでござる。正直なところ拙者1人では困難だと思い、同じ大会に出ていた成績上位者たち7名に依頼して協力を仰いだのでござる」
武術大会には予選を勝ち抜いたパメラを含む8名が決勝トーナメントを争った。
こいつは自分以外の7人に声をかけたらしい。
「待て待て。さっき天使の農民どもが他の参加者にも声をかけたが断られたと言ったな。そいつらにおまえが改めて声をかけたってことか?」
「左様」
平然とそう言うパメラに俺は何だか嫌な予感がして聞いた。
「そいつらを納得させる報酬は誰が払うんだ?」
「無論のこと、彼らへの依頼の成功報酬は拙者が負担したでござるよ」
……やっぱりそういうことかよ。
俺の嫌な予感は当たっていたし、俺がどうしてそう感じたのかも分かった。
こいつは根っこのところがティナに似ていてお人好し過ぎるんだ。
いくら金を重要視していないったって、自腹を切ってまで他人を助けようとするか?
俺には理解できん。
「相応の金を払ったってことか」
「優勝賞金を7等分して彼らに譲り渡す条件でござるよ。もちろんその7人に着手金として相応の前金を払ったでござる。おかげで7人のNPCたち全員が快く契約し、引き受けてくれたのでござるよ」
「……だろうな」
アホだ。
ここにアホがいるぞ
農民から受け取った1人分の用心棒代に比べて、7人分の報酬という出費。
言うまでもなく完全に赤字だ。
それだけじゃねえ。
俺はジロッとパメラを見やると尋ねた。
「で、金で雇った奴らはいつ馳せ参じてくれるんだ」
俺の言葉にパメラは表情を曇らせる。
「それが……その彼らとの待ち合わせ場所は、バレット殿らと最初に出会ったあの森だったでござるよ。しかし彼らは現れず代わりに現れたのは堕天使の盗賊たちだったでござる」
なるほどな。
あの時にパメラを襲っていた連中か。
パメラのあんまりな世間知らずぶりに、他人事ながら俺は苛立って吐き捨てた。
「パメラ。ハメられたんだよオマエは。前金泥棒だ。奴らはもらった着手金で今ごろ酒でも飲みながら、オマエのことをマヌケな田舎もんだと笑ってやがるぞ」
「し、しかし、堕天使の襲撃を退ければ成功報酬が入るのでござるよ。前金4割に対して後金6割。彼らにとっても悪い話ではないはずでござらんか? もちろん契約書も交わしたでござるよ。だというのに7人全員が拙者を謀ったということでござるか?」
「大会優勝者だから賞金で潤っているとでも思われたのかもな。ま、おまえは見るからにヨソ者だし、7人が結託してハメたんじゃねえか。優勝者へのやっかみも含めてな」
俺の言葉にパメラは意気消沈して肩を落とす。
フンッ。
高い勉強料だったな。
だが……妙な部分もある。
堕天使どもを排除するだけで小遣い稼ぎが出来るなら、7人全員とは言わねえが数人は引き受けそうなもんだ。
どの程度のレベルの大会かは分からねえが、上位に入るような連中ならおそらく実力的に言っても堕天使相手に怖気づくようなことはねえだろう。
「皆、志ある武人に見えたのでござるが、拙者の目が曇っていたのでござろうか」
「真相はどうだか分からんがな。結果として奴らは待ち合わせ場所に現れず、おまえは金をドブに捨てることになったってわけだ」
「いや、金のことはいいのでござるよ。拙者の見る目が無かったことのほうが無念でござるよ」
そう言うパメラは腑に落ちない顔をしているが、すぐに気を取り直した。
「過ぎたことは仕方がござらん。とにかく拙者だけでも依頼を全うせねばならぬでござる。バレット殿とティナ殿が助太刀して下されば百人力でござるよ」
「フンッ。勘違いするな。俺は天使の農民どもなんざどうでもいい。だが、あのヒルダだけは俺がこの手で仕留めなきゃ気が済まん。ナメられたままじゃ終わらせねえ」
「理由はどうあれバレット殿が共に戦ってくれるのは拙者にとって幸運でござるよ。その調子で頼むでござる」
「ケッ。事が片付いたら俺と一戦交える話を忘れるなよ」
「無論でござる。さあ、それよりヒルダのアジトへの道すじを……」
俺たちがそんな話をしていると、思ったより随分と早くティナの奴が戻ってきた。
だが、何やら様子がおかしい。
ティナは青ざめた顔で髪を振り乱し、大慌てでこちらに飛んでくる。
そして俺たちの手前で急停止すると息も絶え絶えに言った。
「た、大変です! 農村が……襲撃されています!」
「なに? 襲撃は夜のはずだろう。あの小僧、テキトーなことを……」
「違います! 堕天使じゃありません! 悪魔と天使の奇妙な数人組がいきなり無差別に村人を襲い始めて……とにかくすぐ来て下さい!」
そう言うとティナはすぐに踵を返して、今来た道を全速力で舞い戻って行く。
悪魔と天使の数人組が天使の村を襲っている?
何だそりゃ。
ワケが分からねえぞ。
ティナの剣幕にただならぬ雰囲気を感じたようで、パメラがいち早く駆け出した。
チッ。
天使どもの村なんざ行きたくねえが、とりあえず様子を見に行くしかねえか。
俺は急かすティナの後を追って宙を舞った。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
転生先はご近所さん?
フロイライン
ファンタジー
大学受験に失敗し、カノジョにフラれた俺は、ある事故に巻き込まれて死んでしまうが…
そんな俺に同情した神様が俺を転生させ、やり直すチャンスをくれた。
でも、並行世界で人々を救うつもりだった俺が転生した先は、近所に住む新婚の伊藤さんだった。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる