だって僕はNPCだから

枕崎 純之助

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第三章 神の啓示

第1話 ついに現れた闇の魔女

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「我が名はミランダ。永劫えいごうの闇と苦痛を貴様らに刻み付ける闇の魔女なり」

 宙に舞うミランダの声が朗々と響き渡る。
 洞窟内でもよく口にしていた彼女の得意の口上だ。

「ミ、ミランダ!」

 ミランダは僕の声に気付いてこちらを見ると、意外そうな顔をした。

「あん? あんた私の洞窟の見張りの兵士じゃない。こんなところで何してるのかしら?」

 話しかけてくる彼女に僕は思わず身をすくめた。
 やっぱり闇の魔女は怖い。
 その言葉の一音一音や向けられる視線が鋭利な刃物のようで、それらが僕の心臓に突き刺さるような気がしてしまう。
 ミランダと直接話をしたことなんてほとんどないし、上手く話せるかどうか分からないけど僕は勇気を振り絞って必死に声を張った。
 ジェネットも隣にいるし、怖くなんかないぞ。
 いざとなったらジェネットが助けてくれる(最低)。

「こ、こんなところで何してるって? それは僕のセリフだよっ!」

 口調だけは威勢良く聞こえるけど、思った以上にの鳴くような声だった。
 ヘタレッ! 
 このヘタレNPC! 
 僕は内心で自分を罵倒しつつミランダの言葉を待った。

「私は出張襲撃サービス中よ。っていうか私がどこで何してようが、あんたにとやかく言われる筋合いないんだけど?」

 そう言うとミランダは僕をジロリとにらみつける。
 僕は素早く目をらした。
 しかし言うべきことは言うぞぉ!

「そ、そのサービスはまだ始まっていないはずだろ」

 緊張で口の中がカラカラに乾いてしまい、ハフハフと吐息まじりのフニャフニャした弱っちい声しか出ません(涙)。
 口をパクパクさせるばかりの情けない僕に代わってジェネットが代弁してくれた。

「あなたのその役目はまだ運用開始前です。ミランダ。速やかに所定の洞窟に戻りなさい」
「そうだそうだ(小声)」

 腰巾着こしぎんちゃくな僕はジェネットに同意して二度三度とうなづいた。

「お断りよ。私は誰の指図も受けないわ。やりたいようにやらせてもらうから」

 ミランダはそう言い放つと地面に降り立って僕らと相対した。
 僕の隣に立つジェネットが錫杖しゃくじょう懲悪杖アストレア』を構える音がする。
 広場にはミランダの放つ黒い魔力がきりとなって漂い、異様な緊張感をかもし出していた。

「闇の意思によって選定され、今ここにこの街は私の闇の洗礼を受けることになったわ。自分たちの不運をせいぜい呪いなさい」

 ミランダは嬉々とした声でそう告げる。
 え? 
 ちょっと待って。
 ミランダはさっきこの町を襲ったばかりじゃないか。
 何で初めて訪れたような口ぶりなんだ?

 僕は驚いた顔で思わず隣にいるジェネットに視線を向けると、彼女も少しだけこちらを見てうなづいた。
 ミランダの様子がおかしいことにジェネットも気が付いている。
 ミランダは自分がさっきこの街を襲ったことを忘れているのか?

「何らかの不具合がミランダの身に生じているようですね。ですが今は彼女を捕縛ほばくすることだけに集中しましょう」

 ジェネットは前を見据えてミランダに注意を払ったまま、隣にいる僕に小声でそう言った。
 確かにそうだ。
 僕もうなづいた。

「闇の魔女ミランダ。街を襲い無辜むこの人々らを傷つける狼藉ろうぜき。神は許しません」

 ミランダを前にしてもジェネットは冷静さを失わず、落ち着いた口調でそう告げる。
 ジェネットのその言葉にミランダは口の端をゆがめて邪悪な笑みを浮かべた。

「フン。尼僧にそうごときが私と張り合おうっての? いいわ。自分の信徒がいかに無力であるかを神とやらに思い知らせてあげようじゃないの」

 そう挑発するミランダにジェネットは真っ向から対抗する。

「ご心配なく。命までは奪いません。あなたを捕らえて、あるべき場所に帰して差し上げます」

 ジェネットの言う通りだった。
 ここで倒してしまうと、ミランダは再びリセットされる。
 元通りに闇の洞窟内に再配置されれば何も問題はないんだけど、これまでの経緯を考えればそんな保証はどこにもない。
 またどこかに消え去ってしまい、再びこうして無差別に街を襲うかもしれない。
 そんなことになってしまえば元も子もない。

 ジェネットはミランダを倒さないように戦ってその身柄を拘束し、闇の洞窟に連れ帰らなければならない。
 それは倒すよりも難しいことだろう。
 僕は固唾かたずを飲んで二人の戦いを見守った。
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