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第三章 神の啓示
第5話 結成! ミランダ討伐隊
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追いすがる僕の声もむなしくミランダが去ってしまった後の港町シェラングーンに姿を現したのは、憎たらしいサポートNPCのリードだった。
「おまえ。ミランダを追ってここまで来たのか? まるで捨てられたのにご主人様に未練たっぷりの忠犬だな」
そう言うとリードは下品な高笑いを響かせる。
彼の悪意たっぷりの口ぶりにも、僕は今の状況に愕然としていたため、腹を立てる気力すらなく掠れた声で答えた。
「……リードこそ、どうしてここに?」
そんな僕をあざ笑いながらリードは鋭い視線を僕に投げかけて言う。
「マヌケ野郎が。テメーの愛しい魔女様をぶち殺しに来たんだよ」
ど、どうしてリードがそんな……。
僕は彼の言葉に驚いて目を見開いた。
「まさか……じゃあリードは」
僕が顔色を変えたのを面白がるようにリードはわざと大仰に言ってみせる。
「そうだ。ご乱心の魔女を討つよう本部様から仰せつかってな」
「じゃあその後ろの人たちは……」
そう言って僕がリードの背後に立っている人達に視線を送るとリードは得意げに答えた。
「運営本部が直轄するミランダ討伐隊だ」
「と、討伐隊だって?」
僕は顔から血の気が引くのを感じた。
恐れていたことが現実になってしまったんだ。
そんな僕の反応を敏感に感じ取ったのか、リードは嬉々として両手を広げる。
「そうとも。志願プレイヤーと俺たちサポートNPCの混成チームだが精鋭ぞろいだぜ。俺たちと同様のグループが他にも複数あるから、ミランダも近いうちに必ず討ち取られるだろうよ。もちろんミランダの首を獲るのは俺たちのチームだけどな」
意気揚々としたリードの話しぶりに僕は不快感を覚えて呻いた。
「そ、それじゃまるで……」
運営本部はミランダを獲物に見立て、複数の討伐隊に競わせて、まるで狩りを楽しんでいるかのようだった。
いや、その言い方は正確じゃないかもしれない。
多くのプレイヤーたちを楽しませるために、ミランダの討伐をショーに見立てている。
何のために?
「そうだ。これはパーティーだ。ま、本部のお偉方は自分たちの不手際で生じたこの危機的状況を、まんまとチャンスにすりかえたってことさ。本来なら自分たちがやるべきミランダの消去を景品にしてプレイヤーたちに押し付けたんだから、なかなか面の皮の厚い連中だよ。多額の報酬やゲーム内での優遇措置をエサにして……」
「しょ、消去? 消去ってどういうことだ?」
僕は彼の口上の中で飛び出たその言葉に心臓をつかまれたような気がして、反射的に声を上げていた。
僕に言葉を遮られたリードは途端に不機嫌そうな表情を浮かべた。
「ああ? そのまんまの意味さ。俺たち討伐隊には全員、ミランダを消去するための特別プログラムが施されてる。その俺たちに倒されれば、ミランダはプログラムを消去されて文字通りこのゲームから消え去る。死ぬってことさ。そしてもう二度と生き返らない」
ウ、ウソだ。
そんなことって……。
「し、死ぬ? そんな……彼女を止めてそれで修正パッチを施せば済むことじゃないか!」
声を荒げる僕にリードは嫌悪感をむき出しにして舌打ちした。
「チッ。そんなもん知らねえよ。ただ一つ言えるのは運営本部にとってミランダはもうコンテンツでもなんでもない。ただのゴミだってことだな。ハハハ!」
「黙れ!」
僕は思わずリードを睨みつけながら叫び声を上げていた。
だけどリードは余裕の表情を浮かべて口の端を吊り上げ、歪な笑みを見せる。
「黙っていられねえな。修正パッチ? 野暮なこと言うなよ」
蔑みの視線を僕に向けたままリードは得意げな口調で言う。
「こういうリアリティーがゲームに緊迫感と面白味を持たせるんだよ。プレイヤー達の間じゃ、どのチームがミランダを倒すのか賭けの対象として大いに盛り上がってるらしいぜ」
そう言うとリードは再びゲラゲラと不愉快な笑い声を立てた。
ミランダが消える。
そして二度と甦らなくなる。
二度と……会えなくなる。
そんなこと、そんなことが認められるか。
僕は首を横に振った。
そんな僕にかまわずリードは視線を僕の背後に向けた。
その顔に冷酷な笑みが浮かぶ。
リードは周囲を見回し、他のプレイヤーたちが少し離れた場所にいることを確認すると声を落として僕に言った。
「ところであそこに転がってるのは、あの小生意気なジェネットとか言うシスターだな」
僕は思わず振り返った。
そこには先ほどミランダに敗れて絶命したジェネットの亡骸が横たわっている。
おそらくあと数十秒でデータとしての彼女はこの場から消え、別の場所で復活するだろう。
リードは足早に僕の横をすり抜けて、ジェネットの亡骸の前に立った。
「いい気になってミランダを倒そうとして返り討ちにあったのか。ざまあないな」
そんなことを言うリードに僕は激しい怒りを覚えた。
ジェネットがどんな思いでここに来たかも知らないくせに。
「まったく。この俺に説教たれやがって生意気なんだよ」
そう言うとリードはあろうことかジェネットの亡骸に向かって足を振り上げた。
やめろ。
やめろ。
何をする気だ。
「やめろ!」
僕は思わず叫びながら駆け出していた。
そして身を投げ出すようにしてジェネットの亡骸に覆いかぶさり、リードの足から彼女を守った。
リードの足が僕の背中を蹴りつける。
「何やってんだオラ。どけ。このモグラ野郎。どうせこのクソ尼はそのうちどこかで甦るだろ。そんなことしてどうするつもりだ? 気持ち悪い奴だな」
そう言いながらリードは僕の背中を何度も何度も踏みつけた。
ライフゲージはなくても痛みくらいは感じる。
だけど僕は歯を食いしばって必死に耐えた。
勇敢に戦って倒れたジェネットの亡骸を踏みつけるなんて絶対に許せなかった。
彼女の信念が踏みにじられるくらいなら、僕の背中をいくらでも踏んづけていればいい。
「どけコラ。小癪なシスターのケツを蹴り飛ばしてやる」
「やめろ! やめろ!」
僕は必死に声を上げるしかなかった。
すると僕たちの騒ぎに気付いたみたいで周囲にいたプレイヤー達がこちらに視線を向ける。
そのことを感じ取ったのか、リードは僕から足を離して舌打ちした。
「チッ! 少し前まで魔女のケツにひっついてやがったくせに、今度は尼の抜け殻にご執心かよ。つくづくキモイ野郎だな。一生やってろ。カスが」
僕の背中に向かってそう吐き捨てると、リードは去っていった。
僕はそのまま少しの間、動けずにいた。
背中に鈍い痛みが残り、胸の中には怒りと悔しさがくすぶっている。
僕の体の下ではジェネットが静かに目を閉じたまま横たわっていた。
その顔は眠っているかのように穏やかだったけど、そんな彼女の顔を見るうちにとても悲しく申し訳ない思いが僕の胸に忍び寄ってきた。
「ジェネット。ごめんよ。君がこんな目に遭う必要なんてなかったのに」
そう言う僕の目の前でジェネットの体が眩い光を放ち始め、実体を失い始める。
一定時間が過ぎたために肉体が消滅し、データとして再び所定の場所に戻されるんだ。
ライフが0になったキャラクターは皆そうなる。
そうしてジェネットも消えていった。
だけど僕はそこで起きたある異変に目を見張った。
ジェネットが消え去ったその後、地面に一本の剣が突き立っていたんだ。
そこに残されていたのはジェネットが浄化したはずの呪いの剣『タリオ』だった。
「おまえ。ミランダを追ってここまで来たのか? まるで捨てられたのにご主人様に未練たっぷりの忠犬だな」
そう言うとリードは下品な高笑いを響かせる。
彼の悪意たっぷりの口ぶりにも、僕は今の状況に愕然としていたため、腹を立てる気力すらなく掠れた声で答えた。
「……リードこそ、どうしてここに?」
そんな僕をあざ笑いながらリードは鋭い視線を僕に投げかけて言う。
「マヌケ野郎が。テメーの愛しい魔女様をぶち殺しに来たんだよ」
ど、どうしてリードがそんな……。
僕は彼の言葉に驚いて目を見開いた。
「まさか……じゃあリードは」
僕が顔色を変えたのを面白がるようにリードはわざと大仰に言ってみせる。
「そうだ。ご乱心の魔女を討つよう本部様から仰せつかってな」
「じゃあその後ろの人たちは……」
そう言って僕がリードの背後に立っている人達に視線を送るとリードは得意げに答えた。
「運営本部が直轄するミランダ討伐隊だ」
「と、討伐隊だって?」
僕は顔から血の気が引くのを感じた。
恐れていたことが現実になってしまったんだ。
そんな僕の反応を敏感に感じ取ったのか、リードは嬉々として両手を広げる。
「そうとも。志願プレイヤーと俺たちサポートNPCの混成チームだが精鋭ぞろいだぜ。俺たちと同様のグループが他にも複数あるから、ミランダも近いうちに必ず討ち取られるだろうよ。もちろんミランダの首を獲るのは俺たちのチームだけどな」
意気揚々としたリードの話しぶりに僕は不快感を覚えて呻いた。
「そ、それじゃまるで……」
運営本部はミランダを獲物に見立て、複数の討伐隊に競わせて、まるで狩りを楽しんでいるかのようだった。
いや、その言い方は正確じゃないかもしれない。
多くのプレイヤーたちを楽しませるために、ミランダの討伐をショーに見立てている。
何のために?
「そうだ。これはパーティーだ。ま、本部のお偉方は自分たちの不手際で生じたこの危機的状況を、まんまとチャンスにすりかえたってことさ。本来なら自分たちがやるべきミランダの消去を景品にしてプレイヤーたちに押し付けたんだから、なかなか面の皮の厚い連中だよ。多額の報酬やゲーム内での優遇措置をエサにして……」
「しょ、消去? 消去ってどういうことだ?」
僕は彼の口上の中で飛び出たその言葉に心臓をつかまれたような気がして、反射的に声を上げていた。
僕に言葉を遮られたリードは途端に不機嫌そうな表情を浮かべた。
「ああ? そのまんまの意味さ。俺たち討伐隊には全員、ミランダを消去するための特別プログラムが施されてる。その俺たちに倒されれば、ミランダはプログラムを消去されて文字通りこのゲームから消え去る。死ぬってことさ。そしてもう二度と生き返らない」
ウ、ウソだ。
そんなことって……。
「し、死ぬ? そんな……彼女を止めてそれで修正パッチを施せば済むことじゃないか!」
声を荒げる僕にリードは嫌悪感をむき出しにして舌打ちした。
「チッ。そんなもん知らねえよ。ただ一つ言えるのは運営本部にとってミランダはもうコンテンツでもなんでもない。ただのゴミだってことだな。ハハハ!」
「黙れ!」
僕は思わずリードを睨みつけながら叫び声を上げていた。
だけどリードは余裕の表情を浮かべて口の端を吊り上げ、歪な笑みを見せる。
「黙っていられねえな。修正パッチ? 野暮なこと言うなよ」
蔑みの視線を僕に向けたままリードは得意げな口調で言う。
「こういうリアリティーがゲームに緊迫感と面白味を持たせるんだよ。プレイヤー達の間じゃ、どのチームがミランダを倒すのか賭けの対象として大いに盛り上がってるらしいぜ」
そう言うとリードは再びゲラゲラと不愉快な笑い声を立てた。
ミランダが消える。
そして二度と甦らなくなる。
二度と……会えなくなる。
そんなこと、そんなことが認められるか。
僕は首を横に振った。
そんな僕にかまわずリードは視線を僕の背後に向けた。
その顔に冷酷な笑みが浮かぶ。
リードは周囲を見回し、他のプレイヤーたちが少し離れた場所にいることを確認すると声を落として僕に言った。
「ところであそこに転がってるのは、あの小生意気なジェネットとか言うシスターだな」
僕は思わず振り返った。
そこには先ほどミランダに敗れて絶命したジェネットの亡骸が横たわっている。
おそらくあと数十秒でデータとしての彼女はこの場から消え、別の場所で復活するだろう。
リードは足早に僕の横をすり抜けて、ジェネットの亡骸の前に立った。
「いい気になってミランダを倒そうとして返り討ちにあったのか。ざまあないな」
そんなことを言うリードに僕は激しい怒りを覚えた。
ジェネットがどんな思いでここに来たかも知らないくせに。
「まったく。この俺に説教たれやがって生意気なんだよ」
そう言うとリードはあろうことかジェネットの亡骸に向かって足を振り上げた。
やめろ。
やめろ。
何をする気だ。
「やめろ!」
僕は思わず叫びながら駆け出していた。
そして身を投げ出すようにしてジェネットの亡骸に覆いかぶさり、リードの足から彼女を守った。
リードの足が僕の背中を蹴りつける。
「何やってんだオラ。どけ。このモグラ野郎。どうせこのクソ尼はそのうちどこかで甦るだろ。そんなことしてどうするつもりだ? 気持ち悪い奴だな」
そう言いながらリードは僕の背中を何度も何度も踏みつけた。
ライフゲージはなくても痛みくらいは感じる。
だけど僕は歯を食いしばって必死に耐えた。
勇敢に戦って倒れたジェネットの亡骸を踏みつけるなんて絶対に許せなかった。
彼女の信念が踏みにじられるくらいなら、僕の背中をいくらでも踏んづけていればいい。
「どけコラ。小癪なシスターのケツを蹴り飛ばしてやる」
「やめろ! やめろ!」
僕は必死に声を上げるしかなかった。
すると僕たちの騒ぎに気付いたみたいで周囲にいたプレイヤー達がこちらに視線を向ける。
そのことを感じ取ったのか、リードは僕から足を離して舌打ちした。
「チッ! 少し前まで魔女のケツにひっついてやがったくせに、今度は尼の抜け殻にご執心かよ。つくづくキモイ野郎だな。一生やってろ。カスが」
僕の背中に向かってそう吐き捨てると、リードは去っていった。
僕はそのまま少しの間、動けずにいた。
背中に鈍い痛みが残り、胸の中には怒りと悔しさがくすぶっている。
僕の体の下ではジェネットが静かに目を閉じたまま横たわっていた。
その顔は眠っているかのように穏やかだったけど、そんな彼女の顔を見るうちにとても悲しく申し訳ない思いが僕の胸に忍び寄ってきた。
「ジェネット。ごめんよ。君がこんな目に遭う必要なんてなかったのに」
そう言う僕の目の前でジェネットの体が眩い光を放ち始め、実体を失い始める。
一定時間が過ぎたために肉体が消滅し、データとして再び所定の場所に戻されるんだ。
ライフが0になったキャラクターは皆そうなる。
そうしてジェネットも消えていった。
だけど僕はそこで起きたある異変に目を見張った。
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