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第三章 神の啓示
第7話 闇の胎動
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それから一日また一日と過ぎていき、三日めの朝を迎えていた。
この洞窟には王城から毎日必ず見回りの兵士らが5~6人の集団で訪れていた。
ミランダが洞窟に戻ってきていないかどうかをチェックするためだ。
僕にも報告義務が課せられていたけど、「ミランダは戻ってない」という同じ報告を繰り返すばかりだった。
この日も朝から兵士たちが来ていて僕の持っている巡回表に見回り済のサインをしていった。
その巡回表には日付ごとに訪れる予定のメンバーの名前が記されていて、それによると明日の巡回業務担当者の中にはリードの名前が含まれていた。
その名前を見ると、シェラングーンでの出来事を思い返して怒りがこみ上げてくる。
いつも顔を合わせたくない相手だけど、今は特にその気持ちが強かった。
「リードか……また色々と言ってくるんだろうな」
またミランダやジェネットのことを悪く言われるようなら僕だってもう黙っちゃいられない。
だけど今は騒ぎを起こして運営本部に睨まれるようなことは出来ないんだ。
「ガマンしなくちゃな。何を言われても今はガマンだ」
そう自分に言い聞かせ、拳を強く握り締めた。
相変わらず僕は掲示板での情報収集にかかりきりだったけど成果のほうはサッパリだった。
先日僕が立てたスレッド【闇の魔女ミランダがこの先もこのゲームに存続しうる可能性について】[無断転載禁止]には初日こそ多くの人の書き込みで溢れていたけど、時間の経過とともにだんだんと訪れる人が少なくなっていった。
僕はジリジリと募る焦りを必死にこらえていた。
ここでこうしている間にも各地でミランダは襲撃を繰り返し、一日に何度もそのニュースがメインメニューのニュース速報を介して飛び込んでくる。
ゲーム内では日に日にミランダに対するバッシングが苛烈さを増していき、これに呼応するかのように運営本部は討伐隊を増員してミランダを取り押さえにかかっていた。
各地から様々なプレイヤーやサポートNPCの猛者たちがミランダを狩るべく集結していた。
どんなに強い人たちが集まっても今のミランダが簡単に負けるとは思えない。
だけど、これはどう考えても多勢に無勢すぎるよ。
ミランダ。
もうやめるんだ。
これ以上やったらきっと手痛いシッペ返しを食らうよ。
何か良くないことが起きる。
そんな気がして仕方ないんだ。
僕はそんな焦りに苛まれ、それでいて何も出来ない自分が歯がゆくて、思わずテーブルを手の平が痛くなるほど叩いた。
むなしく鳴り響く音。
その音に僕は小さくため息をついた。
「……少し頭を冷やさないと」
僕はそう言うと立ち上がり、宿直室を後にして洞窟の中に歩み出た。
ひんやりとした空気が心地いい。
ずっと部屋に篭って画面を見つめていたから、思考も肩も凝りまくっているみたいだ。
僕は頭の疲労をやわらげるべく、考えるのを止めてボーッと前方を見つめながら歩き続ける。
するとすぐに洞窟の最深部である闇の祭壇へとたどり着いた。
以前までだったら恐ろしい闇の魔女・ミランダが鎮座していた場所だ。
そこでは闇の玉座がひっそりと主の帰りを待ち続けていた。
どこか寂しげなその様子がまるで自分自身を見ているかのように思えて僕は思わずブンブンと首を横に振った。
「違う違う。僕はイスじゃないぞ」
僕はそう言うと闇の玉座にドカッと座ってふんぞり返った。
普段だったら絶対にやらない向こう見ずな行為だったけど、戻らないミランダに腹立たしい思いを抱いていたので、つい気持ちが大きくなっていた。
どうだ。
座ってやったぞミランダめ。
いつまでも帰ってこないからだ。
ザマーミロ!
「……って、何やってんだ僕は」
あまりに馬鹿馬鹿しい自分の行いにさすがに呆れてしまい、僕は背もたれに深く背中を預けて虚空を見つめながらポツリとつぶやいた。
「ミランダ……僕ごときに玉座を乗っ取られていいのか。今すぐに戻ってきておっかない顔で僕を叱りつけてみろよ」
僕の言葉が洞窟内の薄闇に溶けていくその時だった。
突如として闇の玉座が真っ黒な霧を噴出し始め、ガタガタッと揺れ始める。
同時に僕の手に握られていた呪いの剣が激しく振動し始めたんだ。
「ひえっ! ごぉめんなすぁぁい! つ、つい出来心で。悪気はないんです!」
本当にミランダが帰ってきたのかと思い、僕はそりゃあもうビックリしたよ。
心臓に氷を押し付けられたかのように僕は心底驚いて飛び上がり、その拍子に玉座の横に転げ落ちてしまった。
「い、いてっ! ……あ、あれ?」
しこたま腰をぶつけて苦痛に顔を歪めつつ、そこで僕はあることに気が付いたんだ。
闇の玉座に変化が生じていた。
つい先ほどまで何の変哲もなかったその玉座が、魔力に満ちて黒いオーラを漂わせていた。
いや、変化が生じたというのは正確じゃない。
ミランダがいた頃、もともとこの玉座はこうだった。
魔力の根源であるかのような姿を取り戻したんだ。
今の姿こそが本来のそれだった。
かつてはミランダがここに座ることで、まるで魔力を充電しているかのように見えたものだ。
「な、何だこれ……どうして急に」
そこで僕はふと思い立って玉座の背後に回り、そこに設けられた収納スペースを探った。
「ない。何もない」
玉座の後ろにはミランダを倒したキャラクターに褒賞として贈られるはずの『呪いの武器』シリーズが隠されていなかった。
それは本来ここにあるべきものであり、ミランダが倒されて設定がリセットされた後は必ず新たに配備されるものだった。
それが無い。
「一体どういうことなんだ?」
僕が首を捻っていると、突然、目の前にメインメニュー画面が浮かび上がった。
そこにはある表示がなされていて、それは掲示板で特定の書き込みに対する個人的レスポンスが書き込まれたことを示していた。
要するに僕に宛てられた僕だけが見ることの出来るメッセージだ。
そこにはこう書かれていた。
『欠品だ。その褒賞アイテムが再配備されないことと、ミランダに生じている致命的なシステムエラーには関連性がある』
この洞窟には王城から毎日必ず見回りの兵士らが5~6人の集団で訪れていた。
ミランダが洞窟に戻ってきていないかどうかをチェックするためだ。
僕にも報告義務が課せられていたけど、「ミランダは戻ってない」という同じ報告を繰り返すばかりだった。
この日も朝から兵士たちが来ていて僕の持っている巡回表に見回り済のサインをしていった。
その巡回表には日付ごとに訪れる予定のメンバーの名前が記されていて、それによると明日の巡回業務担当者の中にはリードの名前が含まれていた。
その名前を見ると、シェラングーンでの出来事を思い返して怒りがこみ上げてくる。
いつも顔を合わせたくない相手だけど、今は特にその気持ちが強かった。
「リードか……また色々と言ってくるんだろうな」
またミランダやジェネットのことを悪く言われるようなら僕だってもう黙っちゃいられない。
だけど今は騒ぎを起こして運営本部に睨まれるようなことは出来ないんだ。
「ガマンしなくちゃな。何を言われても今はガマンだ」
そう自分に言い聞かせ、拳を強く握り締めた。
相変わらず僕は掲示板での情報収集にかかりきりだったけど成果のほうはサッパリだった。
先日僕が立てたスレッド【闇の魔女ミランダがこの先もこのゲームに存続しうる可能性について】[無断転載禁止]には初日こそ多くの人の書き込みで溢れていたけど、時間の経過とともにだんだんと訪れる人が少なくなっていった。
僕はジリジリと募る焦りを必死にこらえていた。
ここでこうしている間にも各地でミランダは襲撃を繰り返し、一日に何度もそのニュースがメインメニューのニュース速報を介して飛び込んでくる。
ゲーム内では日に日にミランダに対するバッシングが苛烈さを増していき、これに呼応するかのように運営本部は討伐隊を増員してミランダを取り押さえにかかっていた。
各地から様々なプレイヤーやサポートNPCの猛者たちがミランダを狩るべく集結していた。
どんなに強い人たちが集まっても今のミランダが簡単に負けるとは思えない。
だけど、これはどう考えても多勢に無勢すぎるよ。
ミランダ。
もうやめるんだ。
これ以上やったらきっと手痛いシッペ返しを食らうよ。
何か良くないことが起きる。
そんな気がして仕方ないんだ。
僕はそんな焦りに苛まれ、それでいて何も出来ない自分が歯がゆくて、思わずテーブルを手の平が痛くなるほど叩いた。
むなしく鳴り響く音。
その音に僕は小さくため息をついた。
「……少し頭を冷やさないと」
僕はそう言うと立ち上がり、宿直室を後にして洞窟の中に歩み出た。
ひんやりとした空気が心地いい。
ずっと部屋に篭って画面を見つめていたから、思考も肩も凝りまくっているみたいだ。
僕は頭の疲労をやわらげるべく、考えるのを止めてボーッと前方を見つめながら歩き続ける。
するとすぐに洞窟の最深部である闇の祭壇へとたどり着いた。
以前までだったら恐ろしい闇の魔女・ミランダが鎮座していた場所だ。
そこでは闇の玉座がひっそりと主の帰りを待ち続けていた。
どこか寂しげなその様子がまるで自分自身を見ているかのように思えて僕は思わずブンブンと首を横に振った。
「違う違う。僕はイスじゃないぞ」
僕はそう言うと闇の玉座にドカッと座ってふんぞり返った。
普段だったら絶対にやらない向こう見ずな行為だったけど、戻らないミランダに腹立たしい思いを抱いていたので、つい気持ちが大きくなっていた。
どうだ。
座ってやったぞミランダめ。
いつまでも帰ってこないからだ。
ザマーミロ!
「……って、何やってんだ僕は」
あまりに馬鹿馬鹿しい自分の行いにさすがに呆れてしまい、僕は背もたれに深く背中を預けて虚空を見つめながらポツリとつぶやいた。
「ミランダ……僕ごときに玉座を乗っ取られていいのか。今すぐに戻ってきておっかない顔で僕を叱りつけてみろよ」
僕の言葉が洞窟内の薄闇に溶けていくその時だった。
突如として闇の玉座が真っ黒な霧を噴出し始め、ガタガタッと揺れ始める。
同時に僕の手に握られていた呪いの剣が激しく振動し始めたんだ。
「ひえっ! ごぉめんなすぁぁい! つ、つい出来心で。悪気はないんです!」
本当にミランダが帰ってきたのかと思い、僕はそりゃあもうビックリしたよ。
心臓に氷を押し付けられたかのように僕は心底驚いて飛び上がり、その拍子に玉座の横に転げ落ちてしまった。
「い、いてっ! ……あ、あれ?」
しこたま腰をぶつけて苦痛に顔を歪めつつ、そこで僕はあることに気が付いたんだ。
闇の玉座に変化が生じていた。
つい先ほどまで何の変哲もなかったその玉座が、魔力に満ちて黒いオーラを漂わせていた。
いや、変化が生じたというのは正確じゃない。
ミランダがいた頃、もともとこの玉座はこうだった。
魔力の根源であるかのような姿を取り戻したんだ。
今の姿こそが本来のそれだった。
かつてはミランダがここに座ることで、まるで魔力を充電しているかのように見えたものだ。
「な、何だこれ……どうして急に」
そこで僕はふと思い立って玉座の背後に回り、そこに設けられた収納スペースを探った。
「ない。何もない」
玉座の後ろにはミランダを倒したキャラクターに褒賞として贈られるはずの『呪いの武器』シリーズが隠されていなかった。
それは本来ここにあるべきものであり、ミランダが倒されて設定がリセットされた後は必ず新たに配備されるものだった。
それが無い。
「一体どういうことなんだ?」
僕が首を捻っていると、突然、目の前にメインメニュー画面が浮かび上がった。
そこにはある表示がなされていて、それは掲示板で特定の書き込みに対する個人的レスポンスが書き込まれたことを示していた。
要するに僕に宛てられた僕だけが見ることの出来るメッセージだ。
そこにはこう書かれていた。
『欠品だ。その褒賞アイテムが再配備されないことと、ミランダに生じている致命的なシステムエラーには関連性がある』
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