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第四章 竜神ノア
第16話 迷走する真実
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堕天使らに襲われて逃げてきた馬車に乗っていたのはキャメロンだった。
彼は御者台で懸命に手綱を握り、必死の形相で歯を食いしばっている。
いつでも余裕を感じさせていた彼の表情はそこには皆無だった。
ど、どうして彼が……堕天使に追われているんだ?
今回の一件の黒幕かもしれない人物との唐突な再会に何と言っていいか分からずに立ち尽くす僕を、ミランダが一喝する。
「ボサッとしないっ! 堕天使がこっちに向かってくるわよ!」
その声にハッとして身構える僕の両脇からヴィクトリアとノアが各々の武器を手に飛び出していく。
その間にも堕天使たちはキャメロンの馬車を狙って次々と火矢を射る。
火矢は荷馬車を引っ張る栗毛の若い馬の頭部を貫き、さらに別の火矢は馬車の車輪を直撃した。
バランスを崩した馬車は大きく跳ね上がって無残に横転する。
その衝撃でキャメロンの細い体が宙に投げ出され、彼は地面に激突した。
そのまま動かなくなるキャメロンに堕天使の一人が急降下していく。
「させるかよ!」
猛烈な勢いで突進したヴィクトリアが嵐刃戦斧で堕天使の胴をなぎ払う。
剛腕から繰り出される横一閃の一撃を受けた堕天使は、無残にも上半身と下半身を切り離されて息絶えた。
さらにその頭上では空気を切り裂いて飛び上がったノアが蛇竜槍で猛然と突きかかり、堕天使の首を一撃で貫いた。
2人の実力を見て取った堕天使らは空中で旋回して距離を取ろうとしたけれど、それよりも早くヴィクトリアの投じた羽蛇斧が堕天使を切り裂いて撃墜する。
間髪入れずにノアが口から光のブレスを噴射し、輝く粒子に包まれた堕天使は落下して地面に激突した。
残った数人の堕天使は自分たちでは手に負えぬと思ったのかすぐに逃げようとする。
僕は反射的にEガトリングをアイテム・ストックから取り出し、それを構えて機動した。
そして両手の親指を2つの【Prompt】ボタンに当てる。
「逃がさない!」
僕が構えたEガトリングの銃口から虹色の光弾が次々と射出され、堕天使たちを背中から打ち抜いた。
墜落して喘ぐ堕天使たちにヴィクトリアとノアが追撃をかけ、トドメを刺していく。
こうして堕天使たちは全滅した。
うん。
ヴィクトリアとノアのコンビがどうなるか心配だったけれど、とりあえず問題はなさそうだ。
思えば犬猿の仲であるミランダとジェネットもいざ戦闘になると息を合わせて戦っていた。
彼女たちくらいの達人になると好き嫌いは関係なく相手と呼吸をそろえることが出来るんだろうね。
安堵しつつ僕は倒れているキャメロンに目をやった。
彼は地面に投げ出されたまま起き上がれなかったけれど、まだわずかに動いていた。
とにかく彼に話を聞かないと。
そう思い、Eガトリングをストックに格納してキャメロンの元に歩き出そうとした僕は、踏み出した足にふいに力が入らなくなり、ガクッとその場に転倒してしまった。
「アイタッ!」
きゅ、急に足に力が……。
僕は地面に膝を打ち付けてすりむいてしまった。
そんな僕を見下ろしてミランダが怪訝そうな表情を浮かべる。
「何やってんのよ? 馬鹿ね」
「う、うん。躓いただけだよ。それよりキャメロンを」
「あんたたちは近付くんじゃないわよ。私に任せなさい」
そう言うとミランダは黒鎖杖を構えたままキャメロンの傍にズカズカと近付いていく。
そしてうつ伏せに倒れているキャメロンをぞんざいに足で転がして仰向けにすると、その眼前に無遠慮に黒鎖杖を突き付けた。
「キャメロン。わざわざ目の前に現れてくれるなんて手間が省けたわ。今から天樹に攻め込んであんたをブッ潰そうと思っていたから。イエスかノーで答えなさい。一連の事件はあんたが仕組んだのね?」
有無を言わさぬ調子でそう言うミランダを見上げ、キャメロンは疲れ切った顔で笑みを浮かべた。
「答えは……ノーです。ですが……あなた方がワタクシを疑う理由は……ゴホッゴホッ! り、理解しています」
「嘘でこの場を切り抜けようっての? あんたの秘書の女が私たちに随分とナメた真似をしてくれたことをあんたが知らないとは言わせないわよ」
「それは……もちろん知っています。ほ、本当に申し訳ないことを……で、ですがそれでも答えはノーです。う、嘘ではないことを証明するのは……ウッ。む、難しそうですね」
キャメロンのライフは残り5%を切り、体を苛む傷の痛みがその残り少ないライフを無慈悲に削り取っていく。
苦しげに言葉を紡ぐキャメロンの姿に僕はたまらなくなり、ミランダの傍に駆け寄って、黒鎖杖を持つ彼女の腕を掴んだ。
「ミ、ミランダ! ちょ、ちょっと待って!」
「な、何よ。あっちに行ってなさい!」
ミランダは声を荒げるけれど、僕は首を横に振り、アイテム・ストックから回復ドリンクを取り出した。
このままじゃ彼は死への下り坂を転げ落ちていくだけだ。
「このままじゃ彼のライフが尽きちゃうよ、それじゃあ話も聞けないし……それにこんなのフェアじゃない。まずは回復を」
そう言って僕は回復ドリンクをキャメロンに差し出した。
「アル! 何がフェアよ。馬鹿なことを……」
「ミランダ。僕に任せて」
ミランダには悪いけれど、これは譲れない。
もしキャメロンが黒幕ではないとしたら、僕らは彼にとんでもない不義理をすることになる。
彼が本当に僕らを助けるために奔走していてくれたのだとしたら……。
何らかの理由で堕天使に追われながら必死に逃げてきて、その挙句に僕らにこんな仕打ちを受けるなんて理不尽すぎる。
「キャメロン。僕は君の口から本当のことが聞きたい。だからとにかくこれを飲んで」
「アルフレッド様……」
背後で舌打ちするミランダの苛立ちを背中に感じつつ、僕は横たわるキャメロンに回復ドリンクを飲ませた。
だけど……。
「えっ?」
回復ドリンクを目の前で飲んだキャメロンのライフがこれっぽっちも回復していかない。
ど、どういうことだ?
僕は思わずもう一本、回復ドリンクを取り出したけれど、背後からその手を誰かに止められた。
エマさんだった。
「オニーサン。わたしに任せて」
そう言うエマさんが回復魔法・癒やしの手でキャメロンを回復させにかかった。
だけど、エマさんの光る両手で触れられてもキャメロンのライフは一向に回復しない。
「わ、わたしの魔法でもダメなの?」
ど、どうして……。
戸惑って顔を見合わせる僕らに、キャメロンは苦しげな顔で言った。
「お、おそらく……システム異常の影響かと。その前兆は先ほどからありましたが、今このゲームでは回復という概念が揺らいでいるのでしょう。ま、魔法にせよ、アイテムにせよ、ライフを回復する手段は……断たれたと思っておくべきです」
「そ、そんな…」
それは恐ろしいことだった。
回復手段が無くなるだけでゲームの難易度は格段に上がり、戦闘でゲームオーバーになってしまう恐れが爆発的に上昇する。
キャメロンのライフが回復しない様子を目の当たりにした僕ら一行に、冷たい緊張感が走った。
そんな僕にキャメロンは苦しげな顔で言った。
「き、聞いて下さい。ワタクシは……部下であるローザとマットの2人に思わぬ裏切りをされ、このような醜態を晒すことになりました。さ、さっきの堕天使たちはワタクシを殺すための……刺客です」
「う、裏切り? ローザだけじゃなくてマットも?」
「ええ。彼らはワタクシを裏切り、天使長イザベラと結託しました」
僕はキャメロンの言葉に声を失った。
イ、イザベラさんと?
どういうことだ?
一瞬、思考を失った僕とは違い、ミランダは即座にキャメロンを問い詰めた。
「へぇ。じゃああんたは一連の事件の黒幕は自分じゃなくて天使長イザベラだって言うわけ?」
「え、ええ。確信しております」
「フン。で、自分は潔白だと。随分と虫のいい話に聞こえるけれど。私、あんたのこと1ミリも信用できないわ」
「仕方が……ありませんね。今のワタクシでは身の潔白を証明する材料がありませんから……」
そう言ったその時、キャメロンは口から血をゴホッと吐き出しながら何度もむせた。
彼のライフがとうとう0になろうとしているんだ。
「キャメロン!」
「い、いよいよ限界のようです。か、回復が出来ないこの異常なゲーム状態の中でゲームオーバーになったら一体どうなってしまうのかワタクシにも分かりません」
「キャ、キャメロン……」
「アルフレッド様もお気をつけ下さい。天使長イザベラには決して心を許してはなりません」
そう言うキャメロンが自らのアイテム・ストックから何かを取り出した。
それは一枚の地図だ。
「ア、アルフレッド様に……これを」
「こ、これは?」
「天樹内部の裏MAPです。こ、今回のサーバーダウンで……内部のMAPが大きく書き換えられてしまいましたから、ワタクシが新たに描いた地図です」
あ、悪魔の坑道と同じだ。
内部が大きく変化してしまっているなら、エマさんが持ってきてくれていた従来のMAPは役に立たなくなる。
「あ、あまり時間がありませんでしたが……やれるだけやりました」
「キャ、キャメロン。どうして君はそこまで?」
「ワタ……クシは……可能性が見たいのです。NPCが独自の力で進化するその可能性が」
掠れた声でそう言うキャメロンの目から光が消えていく。
命が尽きようとしていた。
「Eライフルを……あのように変化させるアルフレッド様の力。それは……我々NPCにとっての……希望」
掠れた声でそう言うとキャメロンはフッと笑みを浮かべて目を閉じた。
そのライフがついに0になり、彼は光の粒子をまき散らしながら消えていった。
キャメロンが消え去った。
ゲームオーバーとなった彼が今このゲーム状況の中でコンティニュー出来るかどうかは分からない。
僕は皆を見回した。
全員が困惑の表情を浮かべている。
黒幕だと思っていたキャメロンの死。
その意味を量りかねて、明確だったはずの向かう先に暗雲が立ち込める。
僕らは一体誰と……何と戦うのか。
皆が踏み出す次の足を躊躇するその中で、たった1人声を上げたのはミランダだった。
「……行くわよ。天樹の塔に。そこに行かなけりゃ真実は何も分からない」
……そうだ。
ミランダの言う通りだった。
結局はそうするしかないんだ。
それに天樹へ行かなければジェネットとアリアナを救い出すことも出来ない。
僕は皆を見回した。
ミランダの言葉に一同は気を取り直し、表情を改めて頷く。
「行こう」
そして僕らは天樹の塔への進軍を再開した。
疑惑に満ちた暗雲を振り払うために。
彼は御者台で懸命に手綱を握り、必死の形相で歯を食いしばっている。
いつでも余裕を感じさせていた彼の表情はそこには皆無だった。
ど、どうして彼が……堕天使に追われているんだ?
今回の一件の黒幕かもしれない人物との唐突な再会に何と言っていいか分からずに立ち尽くす僕を、ミランダが一喝する。
「ボサッとしないっ! 堕天使がこっちに向かってくるわよ!」
その声にハッとして身構える僕の両脇からヴィクトリアとノアが各々の武器を手に飛び出していく。
その間にも堕天使たちはキャメロンの馬車を狙って次々と火矢を射る。
火矢は荷馬車を引っ張る栗毛の若い馬の頭部を貫き、さらに別の火矢は馬車の車輪を直撃した。
バランスを崩した馬車は大きく跳ね上がって無残に横転する。
その衝撃でキャメロンの細い体が宙に投げ出され、彼は地面に激突した。
そのまま動かなくなるキャメロンに堕天使の一人が急降下していく。
「させるかよ!」
猛烈な勢いで突進したヴィクトリアが嵐刃戦斧で堕天使の胴をなぎ払う。
剛腕から繰り出される横一閃の一撃を受けた堕天使は、無残にも上半身と下半身を切り離されて息絶えた。
さらにその頭上では空気を切り裂いて飛び上がったノアが蛇竜槍で猛然と突きかかり、堕天使の首を一撃で貫いた。
2人の実力を見て取った堕天使らは空中で旋回して距離を取ろうとしたけれど、それよりも早くヴィクトリアの投じた羽蛇斧が堕天使を切り裂いて撃墜する。
間髪入れずにノアが口から光のブレスを噴射し、輝く粒子に包まれた堕天使は落下して地面に激突した。
残った数人の堕天使は自分たちでは手に負えぬと思ったのかすぐに逃げようとする。
僕は反射的にEガトリングをアイテム・ストックから取り出し、それを構えて機動した。
そして両手の親指を2つの【Prompt】ボタンに当てる。
「逃がさない!」
僕が構えたEガトリングの銃口から虹色の光弾が次々と射出され、堕天使たちを背中から打ち抜いた。
墜落して喘ぐ堕天使たちにヴィクトリアとノアが追撃をかけ、トドメを刺していく。
こうして堕天使たちは全滅した。
うん。
ヴィクトリアとノアのコンビがどうなるか心配だったけれど、とりあえず問題はなさそうだ。
思えば犬猿の仲であるミランダとジェネットもいざ戦闘になると息を合わせて戦っていた。
彼女たちくらいの達人になると好き嫌いは関係なく相手と呼吸をそろえることが出来るんだろうね。
安堵しつつ僕は倒れているキャメロンに目をやった。
彼は地面に投げ出されたまま起き上がれなかったけれど、まだわずかに動いていた。
とにかく彼に話を聞かないと。
そう思い、Eガトリングをストックに格納してキャメロンの元に歩き出そうとした僕は、踏み出した足にふいに力が入らなくなり、ガクッとその場に転倒してしまった。
「アイタッ!」
きゅ、急に足に力が……。
僕は地面に膝を打ち付けてすりむいてしまった。
そんな僕を見下ろしてミランダが怪訝そうな表情を浮かべる。
「何やってんのよ? 馬鹿ね」
「う、うん。躓いただけだよ。それよりキャメロンを」
「あんたたちは近付くんじゃないわよ。私に任せなさい」
そう言うとミランダは黒鎖杖を構えたままキャメロンの傍にズカズカと近付いていく。
そしてうつ伏せに倒れているキャメロンをぞんざいに足で転がして仰向けにすると、その眼前に無遠慮に黒鎖杖を突き付けた。
「キャメロン。わざわざ目の前に現れてくれるなんて手間が省けたわ。今から天樹に攻め込んであんたをブッ潰そうと思っていたから。イエスかノーで答えなさい。一連の事件はあんたが仕組んだのね?」
有無を言わさぬ調子でそう言うミランダを見上げ、キャメロンは疲れ切った顔で笑みを浮かべた。
「答えは……ノーです。ですが……あなた方がワタクシを疑う理由は……ゴホッゴホッ! り、理解しています」
「嘘でこの場を切り抜けようっての? あんたの秘書の女が私たちに随分とナメた真似をしてくれたことをあんたが知らないとは言わせないわよ」
「それは……もちろん知っています。ほ、本当に申し訳ないことを……で、ですがそれでも答えはノーです。う、嘘ではないことを証明するのは……ウッ。む、難しそうですね」
キャメロンのライフは残り5%を切り、体を苛む傷の痛みがその残り少ないライフを無慈悲に削り取っていく。
苦しげに言葉を紡ぐキャメロンの姿に僕はたまらなくなり、ミランダの傍に駆け寄って、黒鎖杖を持つ彼女の腕を掴んだ。
「ミ、ミランダ! ちょ、ちょっと待って!」
「な、何よ。あっちに行ってなさい!」
ミランダは声を荒げるけれど、僕は首を横に振り、アイテム・ストックから回復ドリンクを取り出した。
このままじゃ彼は死への下り坂を転げ落ちていくだけだ。
「このままじゃ彼のライフが尽きちゃうよ、それじゃあ話も聞けないし……それにこんなのフェアじゃない。まずは回復を」
そう言って僕は回復ドリンクをキャメロンに差し出した。
「アル! 何がフェアよ。馬鹿なことを……」
「ミランダ。僕に任せて」
ミランダには悪いけれど、これは譲れない。
もしキャメロンが黒幕ではないとしたら、僕らは彼にとんでもない不義理をすることになる。
彼が本当に僕らを助けるために奔走していてくれたのだとしたら……。
何らかの理由で堕天使に追われながら必死に逃げてきて、その挙句に僕らにこんな仕打ちを受けるなんて理不尽すぎる。
「キャメロン。僕は君の口から本当のことが聞きたい。だからとにかくこれを飲んで」
「アルフレッド様……」
背後で舌打ちするミランダの苛立ちを背中に感じつつ、僕は横たわるキャメロンに回復ドリンクを飲ませた。
だけど……。
「えっ?」
回復ドリンクを目の前で飲んだキャメロンのライフがこれっぽっちも回復していかない。
ど、どういうことだ?
僕は思わずもう一本、回復ドリンクを取り出したけれど、背後からその手を誰かに止められた。
エマさんだった。
「オニーサン。わたしに任せて」
そう言うエマさんが回復魔法・癒やしの手でキャメロンを回復させにかかった。
だけど、エマさんの光る両手で触れられてもキャメロンのライフは一向に回復しない。
「わ、わたしの魔法でもダメなの?」
ど、どうして……。
戸惑って顔を見合わせる僕らに、キャメロンは苦しげな顔で言った。
「お、おそらく……システム異常の影響かと。その前兆は先ほどからありましたが、今このゲームでは回復という概念が揺らいでいるのでしょう。ま、魔法にせよ、アイテムにせよ、ライフを回復する手段は……断たれたと思っておくべきです」
「そ、そんな…」
それは恐ろしいことだった。
回復手段が無くなるだけでゲームの難易度は格段に上がり、戦闘でゲームオーバーになってしまう恐れが爆発的に上昇する。
キャメロンのライフが回復しない様子を目の当たりにした僕ら一行に、冷たい緊張感が走った。
そんな僕にキャメロンは苦しげな顔で言った。
「き、聞いて下さい。ワタクシは……部下であるローザとマットの2人に思わぬ裏切りをされ、このような醜態を晒すことになりました。さ、さっきの堕天使たちはワタクシを殺すための……刺客です」
「う、裏切り? ローザだけじゃなくてマットも?」
「ええ。彼らはワタクシを裏切り、天使長イザベラと結託しました」
僕はキャメロンの言葉に声を失った。
イ、イザベラさんと?
どういうことだ?
一瞬、思考を失った僕とは違い、ミランダは即座にキャメロンを問い詰めた。
「へぇ。じゃああんたは一連の事件の黒幕は自分じゃなくて天使長イザベラだって言うわけ?」
「え、ええ。確信しております」
「フン。で、自分は潔白だと。随分と虫のいい話に聞こえるけれど。私、あんたのこと1ミリも信用できないわ」
「仕方が……ありませんね。今のワタクシでは身の潔白を証明する材料がありませんから……」
そう言ったその時、キャメロンは口から血をゴホッと吐き出しながら何度もむせた。
彼のライフがとうとう0になろうとしているんだ。
「キャメロン!」
「い、いよいよ限界のようです。か、回復が出来ないこの異常なゲーム状態の中でゲームオーバーになったら一体どうなってしまうのかワタクシにも分かりません」
「キャ、キャメロン……」
「アルフレッド様もお気をつけ下さい。天使長イザベラには決して心を許してはなりません」
そう言うキャメロンが自らのアイテム・ストックから何かを取り出した。
それは一枚の地図だ。
「ア、アルフレッド様に……これを」
「こ、これは?」
「天樹内部の裏MAPです。こ、今回のサーバーダウンで……内部のMAPが大きく書き換えられてしまいましたから、ワタクシが新たに描いた地図です」
あ、悪魔の坑道と同じだ。
内部が大きく変化してしまっているなら、エマさんが持ってきてくれていた従来のMAPは役に立たなくなる。
「あ、あまり時間がありませんでしたが……やれるだけやりました」
「キャ、キャメロン。どうして君はそこまで?」
「ワタ……クシは……可能性が見たいのです。NPCが独自の力で進化するその可能性が」
掠れた声でそう言うキャメロンの目から光が消えていく。
命が尽きようとしていた。
「Eライフルを……あのように変化させるアルフレッド様の力。それは……我々NPCにとっての……希望」
掠れた声でそう言うとキャメロンはフッと笑みを浮かべて目を閉じた。
そのライフがついに0になり、彼は光の粒子をまき散らしながら消えていった。
キャメロンが消え去った。
ゲームオーバーとなった彼が今このゲーム状況の中でコンティニュー出来るかどうかは分からない。
僕は皆を見回した。
全員が困惑の表情を浮かべている。
黒幕だと思っていたキャメロンの死。
その意味を量りかねて、明確だったはずの向かう先に暗雲が立ち込める。
僕らは一体誰と……何と戦うのか。
皆が踏み出す次の足を躊躇するその中で、たった1人声を上げたのはミランダだった。
「……行くわよ。天樹の塔に。そこに行かなけりゃ真実は何も分からない」
……そうだ。
ミランダの言う通りだった。
結局はそうするしかないんだ。
それに天樹へ行かなければジェネットとアリアナを救い出すことも出来ない。
僕は皆を見回した。
ミランダの言葉に一同は気を取り直し、表情を改めて頷く。
「行こう」
そして僕らは天樹の塔への進軍を再開した。
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【異世界ショッピング】。
一見チートだが、完成された日用品も、人が口にできる食べ物も飲料水もない。買えるのは素材と道具、作業関連品、農作業関連の品や種、苗等だ。
魔物を倒して魔石をポイントに換えなければ、
水一滴すら買えない。
ダンジョン最奥スタートの、ハード・・・どころか鬼モードだった。
そんな中、盾だけが違った。
傷はあっても、バンドの残った盾はいくつも使えた。
両手に円盾、背中に大盾、そして両肩に装着したL字型とスパイク付きのそれは、俺をリアルザクに仕立てた。
盾で殴り
盾で守り
腹が減れば・・・盾で焼く。
フライパン代わりにし、竈の一部にし、用途は盛大に間違っているが、生きるためには、それが正解だった。
ボス部屋手前のセーフエリアを拠点に、俺はひとりダンジョンを生き延びていく。
――そんなある日。
聞こえるはずのない女性の悲鳴が、ボス部屋から響いた。
盾のまちがった使い方から始まる異世界サバイバル、ここに開幕。
【AIの使用について】
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