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最終章 決戦! 天樹の塔
第4話 爆発! 怒りのアリアナ
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アリアナの閉じ込められているその場所は、ジェネットのいた牢獄からちょうど天樹の正反対に当たる場所にあった。
通気口の中から見える牢獄にはアリアナの姿が確かにあった。
微動だにせず鎮座していたジェネットとは違い、アリアナは鉄格子の前をウロウロと歩き回りながら不安げな表情を浮かべている。
そんな様子を見ると僕はすぐに彼女を助けてあげたくなった。
鳥姿の僕はダクトから少しだけ顔を出すと用心深く周囲を見回す。
ジェネットの牢屋前とは違い、こっちには見張りの堕天使が一人もいない。
無人の牢屋前を見て僕とブレイディは顔を見合わせた。
『こ、こっちは誰もいないよ?』
『おかしいな。さっきはびっしりと堕天使たちが並んでいたのに』
『もしかしてジェネットの方の騒ぎを聞きつけて、そっちに加勢に回ったのかな』
『だとしたらラッキーだね。ジェネットなら堕天使が何人いようと神聖魔法で一網打尽にできるけど、こっちはそうもいかないだろう?』
確かにブレイディの言う通りだ。
ジェネットのほうに負担がかかってしまうなら心配だけど、達人の彼女のことを心配している場合ではなかった。
Eガトリングを使う際に、僕の体には明らかな変調が起き始めているからだ。
ここに来る前にEガトリングを使った際は足の力が抜けて転倒してしまったし、先ほどの異常な頭痛と全身の震えは尋常じゃなかった。
元よりこの銃を使うために感情のチャージを続けると、脳の疲労が積み重なることは実感していたけれど、その感情のチャージという奇妙な仕組みがここにきて僕の体に大きな負担をかけているのは明白だった。
今もう一度堕天使たちと対戦するとなると、戦い抜ける自信がない。
少し頭を休ませる時間が必要だった。
「とにかく今のうちだ。アルフレッド君」
そう言うとブレイディは先ほどと同じように原点回帰で元の姿に戻り、僕のことも薬液で元に戻してくれる。
そんな僕らの姿を見たアリアナが鉄格子に体を押しつけるようにして歓喜の声を上げた。
「ア、アル君!」
「助けにきたよ。遅くなってごめんね。アリアナ」
「アル君だ! 本当にアル君だ!」
アリアナは鉄格子の間から手を伸ばして僕の手を取ると、泣きそうな顔でブンブンと腕を振るった。
「シーッ! て、敵にバレるから少し静かにしててね」
「だって……だって嬉しくて」
そう言うとアリアナは顔を伏せた。
実力はピカイチなのに気の弱いアリアナだから、こんなところに1人で閉じ込められて、よっぽど心細かったんだろうね。
僕らがそうしている間にもブレイディは鉄格子横のパネルを操作して、アリアナを救い出そうとしている。
だけどその時……僕はゾクッとうなじを這い上る悪寒に思わず声を上げたんだ。
「伏せてブレイディ!」
その声にブレイディは咄嗟に身を屈めた。
そんな彼女のすぐ頭の上を炎の柱のような物がゴオッと通過する。
その衝撃でブレイディは後方へ飛ばされて転がってしまった。
「うわっ!」
「ブレイディ!」
それはほんの数秒前までブレイディが操作していた鉄格子横のパネルを貫いて壁に突き立った。
それを見て僕は、思わず心臓が跳ね上がるのを感じてしまう。
それは……真っ赤に燃え盛る一本の矛だったんだ。
「ま、まさか……」
僕は自分がどうして悪寒を感じたのかすぐに理解できた。
僕に忘れられない強烈な恐怖と苦痛を味わわせた当人がすぐ近くにいたからだ。
それは少し前に僕をさんざん痛めつけた恐ろしい女性だった。
僕はそんな彼女に本能的な恐怖を感じずにはいられない。
「フン。やはりやって来たか。貴様ら2人だけとは都合のいいことだ」
「ロ、ローザ……」
そう。
そこに現れたのは女悪魔のローザだったんだ。
ノアの槍で心臓を一突きされてゲームオーバーになった彼女が、マットと同様にコンティニューで再び現れた。
僕は体を縛り付ける恐怖をこらえてEガトリングを握り締めた。
「堕天使どもの見張りを取り払えば、貴様らマヌケどもが喜び勇んで現れると思ったが、こうも簡単とはな」
「くっ……」
牢屋前が無人だったのはローザの罠だったのか。
何てことだ。
この状況でローザを相手にするのは、堕天使7人を相手にするよりずっとキツイ。
だけど僕は歯を食いしばってEガトリングの銃口をローザに向けた。
もちろんこの銃がローザに効かないことは僕だって分かっている。
だけど今の僕にはこれしか武器がないし、どんなに状況は悪くても戦うしかないんだ。
視界の端ではブレイディがヨロヨロと起き上がるのが見える。
「ブレイディ! 大丈夫?」
「だ、大丈夫。だが、操作パネルが破壊されてしまった。これじゃあアリアナ嬢が……」
ブレイディの言う通り、このままじゃ鉄格子を解錠することが出来ず、アリアナを救出することは叶わない。
そのアリアナは鉄格子の中から悲痛な叫び声を上げた。
「2人とも逃げて!」
「そうはいかない」
壁に突き立っていたローザの武器、灼熱黒矛がパッと消え、持ち主である彼女の手の中に再び現れた。
その燃え盛る黒い矛を見ると、肉をえぐるように突き刺され、肌を焼かれたあの時の痛みと恐怖が甦ってくる。
そんな僕の恐怖を感じ取ったのか、ローザの顔に邪悪な悦びの色が浮かぶ。
「私が怖いか? そうだろうよ。貴様のことは散々なぶってやったからな。楽しい時間だったよなぁ? この灼熱黒矛で焼かれ、突き刺され、恐怖におののき苦痛に呻く貴様の姿をもう一度見てみたいものだ」
ローザの言葉に僕は恐ろしさと怒りとで唇が震えるのを抑えられなかった。
だけど……僕はそこで恐怖とは別の寒気を背中に感じてゾクッと身を震わせたんだ。
すさまじい冷気が僕の背後から忍び寄る。
そんな僕の背中越しに牢屋を見たローザの表情が驚愕に歪んだ。
「な、なにっ?」
僕は思わず背後を振り返り、目を見開いた。
牢屋の中に立ったまま下を向くアリアナの体中から真っ白な凍気が吹き出していた。
彼女は鉄格子を両手で握り締めたままフルフルと体を震わせている。
「アル君を……アル君をいじめたのね」
「ア、アリアナ……」
アリアナが握り締める鉄格子が白く凍結していく。
そして彼女の握力によって鉄格子の表面にピシッと亀裂が入り始めた。
それを見たブレイディが声を上げる。
「パネルが壊れたせいで、牢屋の制限が解除されて力が使えるようになったんだ!」
牢屋の中では腕力も魔力も奪われて無力化されてしまうんだけど、その制約が消えたってことか?
そ、それなら……。
「アル君を……アル君を傷つける人は……絶対に許さないっ!」
珍しく憤怒の表情でそう吠えたアリアナは、凍てつく両手で鉄格子を粉々にしてしまった。
や、やった!
「おのれ……」
ローザは呻き声を漏らしてアリアナを睨みつける。
そんなローザにアリアナは憤然と人差し指を突きつけた。
「あなたは絶対に許さない!」
「小癪な! 燃え尽きろ! 災火の矛!」
怒りの声を発してローザは猛烈な勢いで灼熱黒矛を投げつける。
それは火を噴き流星のように高速で宙を流れてアリアナを襲った。
ああっ!
「アリアナァァァ!」
避ける間もなく、灼熱黒矛がアリアナの顔面に直撃してしまった!
ま、まずい……い、いや。
僕は信じ難い光景に目を見張った。
目にも止まらぬ速度で飛来した燃え盛る矛を、アリアナは凍てつく両手で真剣白刃取りしてしまったんだ。
あまりにも高度なアリアナの技量に僕やブレイディは声を失ったけれど、それ以上に愕然として立ち尽くしていたのはローザだった。
「ば、馬鹿な……」
燃え盛る矛を凍てつく両手で挟み込んでいるため、アリアナの手からものすごい勢いで水蒸気が発生し、周囲を白く埋め尽くす。
だけど、それだけにはとどまらなかったんだ。
アリアナの両手はさらに白い凍気を強め、ついにローザの灼熱黒矛は完全に凍りついてしまった。
そして氷の塊と化した矛をアリアナは両手でへし折ってしまった。
「今度はこっちの番だから」
「くっ! 調子に……」
ローザが何かを言い終えるのを待つことなく、アリアナは信じられないくらいの脚力で一瞬にしてローザの間合いに飛び込んだ。
「なっ……」
「はぁぁぁぁぁぁぁぁあぁっ!」
アリアナの氷結拳がローザの腹、胸、顎、頬、眉間に次々とヒットしていく。
10発、20発……そして30連撃を浴びせたところで勝負は決した。
アリアナの凍てつく拳の弾幕を浴びるたびにローザの体は凍りついていき、最終的に彼女は氷像と化して……粉々に砕け散った。
アリアナの完勝だった。
す、すごい。
今まで見た中で一番すごいアリアナの猛攻だった。
普段は気弱な彼女だけど、秘めたポテンシャルは本当にすさまじい。
底力を見せた彼女は、それこそ鬼神のごとき強さだった。
「すごいよ! アリアナ!」
僕がそう言うとアリアナは振り返った。
その表情が怒りのそれから泣きそうな顔に変化する。
アリアナはすぐに駆け寄ってきてガバッと僕に抱きつくと、苦しいくらいに力いっぱい僕を抱きしめてくれた。
「アル君。どうしてアル君は私のいないところで辛い思いばっかりしてるの。いつも私のそばにいてくれれば、いつでもアル君を守ってあげられるのに」
「く、苦しいよ。アリアナ」
「牢屋にいる間ずっとアル君のことばっかり考えてたんだからね。もうアル君と会えなくなるのかと思ったんだからね」
「そんなことないよ。アリアナが困ってる時は僕、いつでも助けに来るから。ね?」
その言葉に嘘偽りはない。
彼女は僕の大切な友達だ。
だからアリアナの窮地にはいつでも駆けつけるつもりだ。
そんな僕らをブレイディはまたもや半眼で見つめながら言う。
「あ~コホン。アルフレッド君。これを言うのは二度目になるが、あまり時間がないことは分かってるね? アリアナとイチャついていたことを魔女殿と聖女様に言いつけるよ?」
「い、イチャついてないから!」
それから僕は手短に状況をアリアナに説明すると、ブレイディの薬液を使って鳥に変身し、再びジェネットの元に向かった。
ジェネットは今頃、痩せ悪魔のマットと戦っているはずだ。
ジェネット。
すぐに行くから待っててね!
通気口の中から見える牢獄にはアリアナの姿が確かにあった。
微動だにせず鎮座していたジェネットとは違い、アリアナは鉄格子の前をウロウロと歩き回りながら不安げな表情を浮かべている。
そんな様子を見ると僕はすぐに彼女を助けてあげたくなった。
鳥姿の僕はダクトから少しだけ顔を出すと用心深く周囲を見回す。
ジェネットの牢屋前とは違い、こっちには見張りの堕天使が一人もいない。
無人の牢屋前を見て僕とブレイディは顔を見合わせた。
『こ、こっちは誰もいないよ?』
『おかしいな。さっきはびっしりと堕天使たちが並んでいたのに』
『もしかしてジェネットの方の騒ぎを聞きつけて、そっちに加勢に回ったのかな』
『だとしたらラッキーだね。ジェネットなら堕天使が何人いようと神聖魔法で一網打尽にできるけど、こっちはそうもいかないだろう?』
確かにブレイディの言う通りだ。
ジェネットのほうに負担がかかってしまうなら心配だけど、達人の彼女のことを心配している場合ではなかった。
Eガトリングを使う際に、僕の体には明らかな変調が起き始めているからだ。
ここに来る前にEガトリングを使った際は足の力が抜けて転倒してしまったし、先ほどの異常な頭痛と全身の震えは尋常じゃなかった。
元よりこの銃を使うために感情のチャージを続けると、脳の疲労が積み重なることは実感していたけれど、その感情のチャージという奇妙な仕組みがここにきて僕の体に大きな負担をかけているのは明白だった。
今もう一度堕天使たちと対戦するとなると、戦い抜ける自信がない。
少し頭を休ませる時間が必要だった。
「とにかく今のうちだ。アルフレッド君」
そう言うとブレイディは先ほどと同じように原点回帰で元の姿に戻り、僕のことも薬液で元に戻してくれる。
そんな僕らの姿を見たアリアナが鉄格子に体を押しつけるようにして歓喜の声を上げた。
「ア、アル君!」
「助けにきたよ。遅くなってごめんね。アリアナ」
「アル君だ! 本当にアル君だ!」
アリアナは鉄格子の間から手を伸ばして僕の手を取ると、泣きそうな顔でブンブンと腕を振るった。
「シーッ! て、敵にバレるから少し静かにしててね」
「だって……だって嬉しくて」
そう言うとアリアナは顔を伏せた。
実力はピカイチなのに気の弱いアリアナだから、こんなところに1人で閉じ込められて、よっぽど心細かったんだろうね。
僕らがそうしている間にもブレイディは鉄格子横のパネルを操作して、アリアナを救い出そうとしている。
だけどその時……僕はゾクッとうなじを這い上る悪寒に思わず声を上げたんだ。
「伏せてブレイディ!」
その声にブレイディは咄嗟に身を屈めた。
そんな彼女のすぐ頭の上を炎の柱のような物がゴオッと通過する。
その衝撃でブレイディは後方へ飛ばされて転がってしまった。
「うわっ!」
「ブレイディ!」
それはほんの数秒前までブレイディが操作していた鉄格子横のパネルを貫いて壁に突き立った。
それを見て僕は、思わず心臓が跳ね上がるのを感じてしまう。
それは……真っ赤に燃え盛る一本の矛だったんだ。
「ま、まさか……」
僕は自分がどうして悪寒を感じたのかすぐに理解できた。
僕に忘れられない強烈な恐怖と苦痛を味わわせた当人がすぐ近くにいたからだ。
それは少し前に僕をさんざん痛めつけた恐ろしい女性だった。
僕はそんな彼女に本能的な恐怖を感じずにはいられない。
「フン。やはりやって来たか。貴様ら2人だけとは都合のいいことだ」
「ロ、ローザ……」
そう。
そこに現れたのは女悪魔のローザだったんだ。
ノアの槍で心臓を一突きされてゲームオーバーになった彼女が、マットと同様にコンティニューで再び現れた。
僕は体を縛り付ける恐怖をこらえてEガトリングを握り締めた。
「堕天使どもの見張りを取り払えば、貴様らマヌケどもが喜び勇んで現れると思ったが、こうも簡単とはな」
「くっ……」
牢屋前が無人だったのはローザの罠だったのか。
何てことだ。
この状況でローザを相手にするのは、堕天使7人を相手にするよりずっとキツイ。
だけど僕は歯を食いしばってEガトリングの銃口をローザに向けた。
もちろんこの銃がローザに効かないことは僕だって分かっている。
だけど今の僕にはこれしか武器がないし、どんなに状況は悪くても戦うしかないんだ。
視界の端ではブレイディがヨロヨロと起き上がるのが見える。
「ブレイディ! 大丈夫?」
「だ、大丈夫。だが、操作パネルが破壊されてしまった。これじゃあアリアナ嬢が……」
ブレイディの言う通り、このままじゃ鉄格子を解錠することが出来ず、アリアナを救出することは叶わない。
そのアリアナは鉄格子の中から悲痛な叫び声を上げた。
「2人とも逃げて!」
「そうはいかない」
壁に突き立っていたローザの武器、灼熱黒矛がパッと消え、持ち主である彼女の手の中に再び現れた。
その燃え盛る黒い矛を見ると、肉をえぐるように突き刺され、肌を焼かれたあの時の痛みと恐怖が甦ってくる。
そんな僕の恐怖を感じ取ったのか、ローザの顔に邪悪な悦びの色が浮かぶ。
「私が怖いか? そうだろうよ。貴様のことは散々なぶってやったからな。楽しい時間だったよなぁ? この灼熱黒矛で焼かれ、突き刺され、恐怖におののき苦痛に呻く貴様の姿をもう一度見てみたいものだ」
ローザの言葉に僕は恐ろしさと怒りとで唇が震えるのを抑えられなかった。
だけど……僕はそこで恐怖とは別の寒気を背中に感じてゾクッと身を震わせたんだ。
すさまじい冷気が僕の背後から忍び寄る。
そんな僕の背中越しに牢屋を見たローザの表情が驚愕に歪んだ。
「な、なにっ?」
僕は思わず背後を振り返り、目を見開いた。
牢屋の中に立ったまま下を向くアリアナの体中から真っ白な凍気が吹き出していた。
彼女は鉄格子を両手で握り締めたままフルフルと体を震わせている。
「アル君を……アル君をいじめたのね」
「ア、アリアナ……」
アリアナが握り締める鉄格子が白く凍結していく。
そして彼女の握力によって鉄格子の表面にピシッと亀裂が入り始めた。
それを見たブレイディが声を上げる。
「パネルが壊れたせいで、牢屋の制限が解除されて力が使えるようになったんだ!」
牢屋の中では腕力も魔力も奪われて無力化されてしまうんだけど、その制約が消えたってことか?
そ、それなら……。
「アル君を……アル君を傷つける人は……絶対に許さないっ!」
珍しく憤怒の表情でそう吠えたアリアナは、凍てつく両手で鉄格子を粉々にしてしまった。
や、やった!
「おのれ……」
ローザは呻き声を漏らしてアリアナを睨みつける。
そんなローザにアリアナは憤然と人差し指を突きつけた。
「あなたは絶対に許さない!」
「小癪な! 燃え尽きろ! 災火の矛!」
怒りの声を発してローザは猛烈な勢いで灼熱黒矛を投げつける。
それは火を噴き流星のように高速で宙を流れてアリアナを襲った。
ああっ!
「アリアナァァァ!」
避ける間もなく、灼熱黒矛がアリアナの顔面に直撃してしまった!
ま、まずい……い、いや。
僕は信じ難い光景に目を見張った。
目にも止まらぬ速度で飛来した燃え盛る矛を、アリアナは凍てつく両手で真剣白刃取りしてしまったんだ。
あまりにも高度なアリアナの技量に僕やブレイディは声を失ったけれど、それ以上に愕然として立ち尽くしていたのはローザだった。
「ば、馬鹿な……」
燃え盛る矛を凍てつく両手で挟み込んでいるため、アリアナの手からものすごい勢いで水蒸気が発生し、周囲を白く埋め尽くす。
だけど、それだけにはとどまらなかったんだ。
アリアナの両手はさらに白い凍気を強め、ついにローザの灼熱黒矛は完全に凍りついてしまった。
そして氷の塊と化した矛をアリアナは両手でへし折ってしまった。
「今度はこっちの番だから」
「くっ! 調子に……」
ローザが何かを言い終えるのを待つことなく、アリアナは信じられないくらいの脚力で一瞬にしてローザの間合いに飛び込んだ。
「なっ……」
「はぁぁぁぁぁぁぁぁあぁっ!」
アリアナの氷結拳がローザの腹、胸、顎、頬、眉間に次々とヒットしていく。
10発、20発……そして30連撃を浴びせたところで勝負は決した。
アリアナの凍てつく拳の弾幕を浴びるたびにローザの体は凍りついていき、最終的に彼女は氷像と化して……粉々に砕け散った。
アリアナの完勝だった。
す、すごい。
今まで見た中で一番すごいアリアナの猛攻だった。
普段は気弱な彼女だけど、秘めたポテンシャルは本当にすさまじい。
底力を見せた彼女は、それこそ鬼神のごとき強さだった。
「すごいよ! アリアナ!」
僕がそう言うとアリアナは振り返った。
その表情が怒りのそれから泣きそうな顔に変化する。
アリアナはすぐに駆け寄ってきてガバッと僕に抱きつくと、苦しいくらいに力いっぱい僕を抱きしめてくれた。
「アル君。どうしてアル君は私のいないところで辛い思いばっかりしてるの。いつも私のそばにいてくれれば、いつでもアル君を守ってあげられるのに」
「く、苦しいよ。アリアナ」
「牢屋にいる間ずっとアル君のことばっかり考えてたんだからね。もうアル君と会えなくなるのかと思ったんだからね」
「そんなことないよ。アリアナが困ってる時は僕、いつでも助けに来るから。ね?」
その言葉に嘘偽りはない。
彼女は僕の大切な友達だ。
だからアリアナの窮地にはいつでも駆けつけるつもりだ。
そんな僕らをブレイディはまたもや半眼で見つめながら言う。
「あ~コホン。アルフレッド君。これを言うのは二度目になるが、あまり時間がないことは分かってるね? アリアナとイチャついていたことを魔女殿と聖女様に言いつけるよ?」
「い、イチャついてないから!」
それから僕は手短に状況をアリアナに説明すると、ブレイディの薬液を使って鳥に変身し、再びジェネットの元に向かった。
ジェネットは今頃、痩せ悪魔のマットと戦っているはずだ。
ジェネット。
すぐに行くから待っててね!
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