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第二章 クレイジー・パーティー・イン・ホスピタル
第1話 Fからのメール
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新宮総合病院。
都内における先進医療の担い手であるこの病院に一人の医師がやってきたのはつい一週間前のことだった。
医師の名は氷上恭一。
年齢は三十代半ばであり、専門は脳外科。
東南アジアにおける専門的医療機関で腕を磨いてきた氷上は中央の医療機関のみならず、地域医療でさまざまな患者の診療を行ってきた地道な実績が買われ、いくつかの日本の専門医療機関から誘われていた。
そんな彼が日本での一ヶ月間の研修期間の勤務先として選んだのがこの新宮総合病院だった。
赴任してからの一週間で彼は精力的に外来患者の診察補佐を行ってきた。
清潔な白衣に身をつつみ、眼鏡をかけた理知的な顔立ちとは裏腹に人当たりはよく、患者へ対応も抜群に良いため、周囲からの評判は上々だった。
この日、午前中からの勤務をこなす氷上は与えられた個室でパソコンを開いていた。
メールチェックを行う彼の眼に鋭い光が宿る。
氷上は一件の受信メールに目を留めた。
【米国からの客人について】
そこに記されたメールの差出人は【F】というアルファベット一文字で表されている。
メールの内容に目を通すと氷上はフンッと鼻を鳴らして薄笑みを浮かべた。
「カントルムのエージェントが来日か……面白い。やはり本物のプロフェッショナルを相手にしないと自分の本当の実力は量れないからな」
そう言う氷上の目には野心的な光が宿っていた。
その時、部屋のドアをノックする音が響き、彼は静かにノートパソコンを閉じる。
「どうぞ」
部屋に入ってきたのは看護士長の女性で、本日のスケジュールを氷上に伝えた。
「氷上先生。本日は担当医の先生がお休みですので、申し訳ございませんが単独での診察をお願いできますでしょうか?」
それを聞くと氷上は先ほどまでとは一変した爽やかな笑みを浮かべてこれを快諾した。
「ええ。喜んで」
安堵の表情で看護士長が出て行った後、氷上はボソリとつぶやいた。
「いい実験体に出会える喜びは何にも勝る」
そうつぶやく氷上の顔に浮かぶ笑みは、先ほど看護士長に向けられた爽やかなそれとはまるで異なる、陰湿で邪悪な笑みだった。
都内における先進医療の担い手であるこの病院に一人の医師がやってきたのはつい一週間前のことだった。
医師の名は氷上恭一。
年齢は三十代半ばであり、専門は脳外科。
東南アジアにおける専門的医療機関で腕を磨いてきた氷上は中央の医療機関のみならず、地域医療でさまざまな患者の診療を行ってきた地道な実績が買われ、いくつかの日本の専門医療機関から誘われていた。
そんな彼が日本での一ヶ月間の研修期間の勤務先として選んだのがこの新宮総合病院だった。
赴任してからの一週間で彼は精力的に外来患者の診察補佐を行ってきた。
清潔な白衣に身をつつみ、眼鏡をかけた理知的な顔立ちとは裏腹に人当たりはよく、患者へ対応も抜群に良いため、周囲からの評判は上々だった。
この日、午前中からの勤務をこなす氷上は与えられた個室でパソコンを開いていた。
メールチェックを行う彼の眼に鋭い光が宿る。
氷上は一件の受信メールに目を留めた。
【米国からの客人について】
そこに記されたメールの差出人は【F】というアルファベット一文字で表されている。
メールの内容に目を通すと氷上はフンッと鼻を鳴らして薄笑みを浮かべた。
「カントルムのエージェントが来日か……面白い。やはり本物のプロフェッショナルを相手にしないと自分の本当の実力は量れないからな」
そう言う氷上の目には野心的な光が宿っていた。
その時、部屋のドアをノックする音が響き、彼は静かにノートパソコンを閉じる。
「どうぞ」
部屋に入ってきたのは看護士長の女性で、本日のスケジュールを氷上に伝えた。
「氷上先生。本日は担当医の先生がお休みですので、申し訳ございませんが単独での診察をお願いできますでしょうか?」
それを聞くと氷上は先ほどまでとは一変した爽やかな笑みを浮かべてこれを快諾した。
「ええ。喜んで」
安堵の表情で看護士長が出て行った後、氷上はボソリとつぶやいた。
「いい実験体に出会える喜びは何にも勝る」
そうつぶやく氷上の顔に浮かぶ笑みは、先ほど看護士長に向けられた爽やかなそれとはまるで異なる、陰湿で邪悪な笑みだった。
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