甘×恋クレイジーズ

枕崎 純之助

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第二章 クレイジー・パーティー・イン・ホスピタル

第25話 Fの名を持つ女

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 東南アジアの都市国家『ポルタス・レオニス』。
 この国で最も高い高層ビルの最上階に一人の女がいた。

氷上ひかみの奴、失敗したようね。準備万端じゅんびばんたんにお膳立ぜんだてしてあげたのに。まあ、しょせんは人間か」

 そう言うと女はクスクスと小気味の良い笑い声を立てた。
 浅黒いはだと銀色のかみを持つ若いその女は、修道女しゅうどうじょの服装に身を包んでいるものの、首からげているそれは銀のロザリオではなく、禍々まがまがしい雰囲気ふんいきただよわせた漆黒しっこく宝石ほうせきだった。

 女の名はフランチェスカ。
 ビルの最上階にある豪華ごうかな部屋でフランチェスカは街の様子を見下ろしていた。
 真夜中の街は静けさを保っている。
 全方位にガラス張りの大きな窓を持つこの部屋からだと、小さな都市国家であるこの国の全域を見渡すことが出来る。
 フランチェスカは薄笑うすえみを浮かべてつぶやいた。

「けれど氷上ひかみは役に立ったわ。あの男の脳外科医のうげかいとしての知識があればこそ、私の能力もここまで発展することが出来た。そのことは素直すなおに感謝しないとね」
 
 彼女の横には中年の白人男性が立っている。
 高価そうなスーツに身を包み、黙然もくぜんとそこに立ちくしているのは、この部屋の持ち主であり、この国のトップ企業を経営する男だった。
 このポルタス・レオニスで最も豊かな個人資産を持つ富豪ふごうでもある彼は、今やフランチェスカの操り人形と化していた。
 うつろな目をした男の顔に生気は無く、まるでろう人形のようにまゆ一つ動かさずにそこにじっと立っている。
 フランチェスカはそんなとなりの男に冷笑れいしょうじりの視線を送ると冷ややかな声で命じた。

「役に立ったという点ではあなたも功労者の一人ね。人生最後の大仕事としてアンテナと監視かんしカメラの大役を任せるわ。しっかりと下準備をしなさい。あと数日で祭の本番よ」

 フランチェスカは整然とそうげ、数日後には狂気きょうき混乱こんらんいろどられるであろう街の様子を満足げに見下ろした。
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