甘×恋クレイジーズ

枕崎 純之助

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第三章 トロピカル・カタストロフィー

第15話 地下道を行く

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 等間隔とうかんかくに配置された非常灯ひじょうとうの明かりだけが頼りの薄暗うすぐらい地下道を、恋華れんかは早足で歩き続けていた。
 地上で甘太郎あまたろうと別れてから、なるべく感染者の少ない路地ろじを選び、パンフレットに描かれた地下道の入口から彼女は地下に降りていた。

「アマタローくんはきっとここから一番近くの入口を使って地下に降りたはず。すぐ会える」

 薄暗うすぐらい地下を一人で歩き続ける心細さを振り払うように、恋華れんかは自分にそう言い聞かせた。
 そして数分ほど移動した後、ふいに恋華れんかは遠くから近づいてくるさけび声を聞いた。

「……感染者だわ」

 恋華れんかは立ち止まって耳をませる。
 地下道に入ってからここまでは一本道だった。
 彼女がここに入ってくる際に利用した入口はまだ工事中でふさがっていたため、そのわきに作られていた作業員用の非常口を使った。
 そのとびらにはかぎがついており、恋華れんかは中に入ってから施錠せじょうしてきたため、後ろから感染者がやって来ることはまずないだろうと考えた。

「前と後ろからはさみ撃ちされるのが一番危険だもんね」

 そう言うと彼女はバッグの中からアンブレラ・シューターを取り出す。
 彼女のバッグの中にはペイント弾の補充液ほじゅうえきがたっぷりとストックされていた。
 空港についてから甘太郎あまたろうが異界から取り寄せた品だ。

「この中にいる感染者は多くない。全員修正してあげる」

 決然とそう言うと、恋華れんかは感染者らをむかえ撃つべく気を引き締めて足を進めた。
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