蛮族女王の情夫《ジゴロ》 第一部【ブリジットの章】

枕崎 純之助

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第47話 色情地獄

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 それはボルドにとって地獄のような時間だった。
 5人の女たちが群がり、あの手この手でボルドをはずかしめる。
 彼女たちの指が、くちびるが、舌がボルドの体をい回っていく。
 
 ボルドが黒髪で美しい顔立ちをしていること。
 ブリジットの情夫であること。
 子犬のようにおびえていること。
 
 それらが明らかに華隊はなたいの女たちを興奮させていた。
 彼女たちは紅潮した顔でボルドの体をむさぼるようにめ回す。
 その刺激と嫌悪感にボルドは歯を食いしばって耐えた。

 暴れようにも両手を縛られていて、なおかつ戦士のように屈強くっきょうではないとはいえ、自分より背の高い女5人に押さえつけられてしまえばボルドにはどうすることも出来ない。
 女たちはそんなボルドをもてあそび、彼の体に性的刺激しげきを与えてはその反応を楽しんだ。
 
「我慢することないのよ。ヤリたくて仕方ないんでしょ」
「男の欲望を吐き出しちゃえばいいのに」
「ワタシたち5人の誰にする? ワタシにしとく?」

 そうボルドの耳元でささやくと女たちはクスクス笑う。
 ボルドはそれが嫌で嫌でとにかくこの場から逃げたくて仕方なかったが、そんな感情とは裏腹に彼のそれは雄々しくそそり立つ。
 バーサに無理やり塗られた媚薬びやくの効果が続いていた。
 女たちは競うようにしてボルドのそれを奪い合う。
 ボルドがその刺激に懸命に耐えられたのは、常に頭の中でブリジットのことを思い浮かべていたからだ。

― おまえはアタシのものだ ―

 ブリジットは常々そう言っていた。
 最初は戸惑ったその言葉が、最近では何より嬉しく感じるようになっていたのだ。
 だからこそこの屈辱的くつじょくてきな状況がボルドには耐えがたかった。
 好き勝手に自分の体に触れられることが悔しくてたまらなかった。

(この体も手足も肌もすべて彼女のものなのに……)

 特にボルドは黒髪を女たちに触れられるのを激しく嫌がった。
 ブリジットが好んでくれた黒髪に触れられたくなかった。
 そんなボルドの態度がしゃくさわったのだろう。
 女の1人が舌打ちをして言った。

「この坊や。ブリジットのことを考えているみたいよ。ワタシたちの前だってのに失礼しちゃう」

 その言葉に別の女が鼻で笑った。

「フンッ。よっぽど女王様のことが恋しいってわけ?」
無駄無駄むだむだ。今頃ブリジットはもう新しい情夫を迎えてヨロシクやってるわよ」
「そうそう。あんたのことなんかキレイさっぱり忘れてね」

 そう言うと女たちはけたたましい笑い声を上げた。
 もうブリジットが自分の事を切り捨てている。
 そう考えると胸がズキンと痛むが、ボルドはそれならそのほうがいいと思った。
 自分の事で彼女に負担をかけたくなかったからだ。

 だがボルドは短くも濃密な時間をブリジットと過ごし、彼女の人柄ひとがらを彼なりに理解している。
 ブリジットがダニアの長としての判断でボルドの救出を断念したとしても、その内心は穏やかではないだろう。
 心を痛めるはずだ。
 これが自分の自惚うぬぼれであってほしいとボルドは思い、こんな状況になってしまった運命を呪った。
 そんなボルドの内心などつゆ知らず、女たちは彼にまとわりつき、誘惑の言葉をささやく。

「だからもう割り切ってワタシらと楽しみなよ。ここで種馬として生きられるなら衣食住を保証されるし、貢献すればそれなりの報酬ももらえるわよ。誰か偉い人の情夫にしてもらえるかもね」

 その言葉にボルドはくちびるを震わせ、声をしぼり出す。

「……いやです。私はブリジット以外の誰の情夫にもなりません。絶対に。あなたたちにどんなにはずかしめられても、私の心がブリジットのものであることは変わりません」

 それはボルドが今出来る精一杯の抵抗だった。
 ボルドはここに自分の進退がきわまったことを悟る。
 こんなことをされてしまえば、たとえ他の女と交わらなかったとしても、自分が再びブリジットの情夫に戻れるはずがない。
 そもそも他の女と交わらなかったという証明は不可能だ。
 人質になってしまった時点でボルドの命運は尽きたと言えるだろう。
 一度汚された情夫では、ブリジットの名誉に傷が付く。
 だからボルドは心の中で祈った。

(ブリジット。どうか来ないで下さい。どうか私を見捨てて下さい。それが私の最後の願いです)

 そう祈るとボルドは覚悟を決める。
 この色情地獄でどのような目にあおうとも、最後まで絶対に心は売り渡さないと。
 それが彼にとって唯一、ブリジットのために出来ることだった。
 そんなボルドの決然とした表情を見て、女たちはますます燃える。

「面白いじゃない。その強がりがいつまでもつか見ものね」
「そうそう。まだまだ先は長いわよ」
数多あまたの男たちを色で狂わせてきた華隊はなたいをナメないでほしいわね」 

 そう言うと女たちは皆、夜着を脱ぎ捨てて一糸いっしまとわぬ姿となる。
 そして必死に耐えるボルドに一斉にまとわりつき、その全身を余すことなくしゃぶり尽くしていった。
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