だって僕はNPCだから 2nd GAME

枕崎 純之助

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第一章 魔道拳士アリアナ

第4話 潜入! 亡者の廃城

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「ぎょわわわあぁぁぁ~!」
「いやぁぁぁぁぁ!」

 ちかけた廃城に僕とアリアナの叫び声が響き渡る。
 今、僕と彼女は必死の形相ぎょうそうでゾンビの集団から逃げ回っていた。

 え?
 勇ましく乗り込んで来たくせに逃げ回ってるのかって?
 そりゃあゾンビのはびこる城に乗り込むってあらかじめ分かってたし、覚悟は決めてきたよ。
 でもこんなひどい状態だとは思わなかったんだ!
 問題点は4つ。

 1、まず予想してたよりもゾンビの数が多い!
 数十体はいるかと思っていたけど、そんなもんじゃなくて1000体以上はいる。

 2、そしてゾンビの動きが超速い!
 ゾンビって確か敏捷度最低クラスのノロノロ・モンスターなのに、どうやらこの廃城による能力増強ブーストがかかってるらしく、ものすごく元気に追いかけてくるんだ。

 3、さらに見た目が超絶キモイ!
 モンスターカタログ写真の3割増しくらいにグロテスクなんだ。
 見本写真より実物がダイナミックってそんなのアリですか!

 4、そして何より、意気込んでミッションへの挑戦を申し出たアリアナが、ゾンビの集団を見た途端にまったくの役立たずと化した。
 アリアナは涙目でゾンビから逃れようと、僕を置いていかんばかりの勢いで必死に逃げている。

「キャアアアアア!」
「ちょっとアリアナ! キャーキャー言ってないでゾンビやっつけてよ!」

 話が全然違いますよ!
 自慢の拳で亡者どもを蹴散けちらしてほしいのに!

「無理無理無理無理! 絶対無理! キモ過ぎるぅぅぅぅぅ!」

 か、完全に戦意喪失しちゃてるよ、この人。
 一体どうすんのさ、この状況。
 ゾンビたちはもう口々に「ヒャッホウ!」言いながら追いかけてくるよ。
 死者なのになんて生き生きしてるんだ。

 廃城の中を逃げ回るうちに、僕らは徐々に追い詰められていく。
 アリアナはもう壁の端にしゃがみ込んで頭を抱えながらブルブル震えている。
 僕はそんな彼女を何とか奮い立たせようと必死に声を上げた。

「ア、アリアナ! 戦わないと! Aランクになるんでしょ!」

 この前言ったけど、今の僕はミランダがメンテナンス中のためタリオも装備できず、戦う機能は備わってない。
 アリアナを手伝ってあげることは出来ないんだ。
 だから単独挑戦必須のこのミッションに一緒について来られたんだけど。

「何でこんなミッションにしたのよぉ!」
「決めたのは自分でしょうが!」

 ツッコミを入れる僕を無視してアリアナはしゃがみ込んだまま震え続けている。
 まずいぞ。
 このままじゃゾンビに囲まれてゲームオーバーだ。

「くっ……こうなったら」

 僕は自分の兵服のそでを破り、それを帯状にして、震えているアリアナの両目を目隠しした。
 アリアナはビックリして僕のほうを振り仰ぐ。

「な、なに? 何なの?」
「これでゾンビの姿を見なくて済むよ!」

 ひどく古典的な方法だけど、これなら手っ取り早いぞ。
 要するに彼女はゾンビの見た目を怖がっているわけだから。

「さあ! 早くゾンビをやっつけて!」

 だけど僕の言葉にもアリアナは頭を抱えたまま泣きそうな声で言う。

「何も見えない。真っ暗だわ。これが死というやつなのね」

 馬鹿なことを言ってないで早くゾンビを攻撃して下さい!

「もう死ぬんだわ! 彼氏も出来たことないのに私、こんなところで冴えない兵士と一緒に人生の最後を迎えるんだわ!」

 やかましい!
 冴えない兵士で悪かったな!
 しかし、これはいかん!
 何か刺激を与えなければ!
 ショック療法的な何かを……ハッ!
 そうだ!
 僕は咄嗟とっさに彼女の背中に手をかけた。

「ウォォォォォ(ゾンビのうめき声のつもり)」
「いやぁぁぁ! 触らないで!」

 僕の狙い通り、ゾンビに触れられたかと思ったアリアナは弾かれたように振り返って拳を繰り出した。
 僕に向かって。

「ぐはあっ!」

 強烈なパンチが僕の顔面にヒットする。
 僕は大きく吹き飛ばされて廃城の床に転がった。
 ふぐえぇぇぇぇぇぇ!
 強烈な痛みが顔面を襲い、クラクラとした眩暈めまいに気を失いそうになった。
 タリオを装備しておらず、ライフゲージのない今の僕だから死ぬことはないけど、攻撃されたら当然痛い。
 だけど僕の捨て身の行為が功を奏したのか、ついにアリアナが攻撃を開始した。

「いやぁぁぁ! 来ないでぇぇぇぇぇ!」

 アリアナは鋭い拳を目にも止まらぬ速さで繰り出して、次々と迫り来るゾンビを打ち倒していく。
 おおっ!
 すごいぞ!
 これだよこれ!
 アリアナのパンチは強烈で、一撃でゾンビを倒すことできる。
 だ、だけど……。

「オエッ!」

 僕は吐き気をこらえた。
 アリアナに殴られたゾンビは、頭や胴体が粉々になっていく。
 うぅ。
 その絵面えづらが非情に気持ち悪くて見ていられないぞ。
 これはアリアナに目隠しをしておいて正解だった。
 あんなのアリアナ自身が見たりしたら、ショック死しかねないよ。

 アリアナがゾンビをガンガン打ち倒していく間に僕は難を逃れるべく、必死に壁の出っ張りに手足をかけてよじ登った。
 壁面には煌々こうこうと明かりの灯る蝋燭ろうそくの置かれた石造りの燭台しょくだいが設けられていて、僕一人が両手をかけてぶら下がることくらいは出来そうだった。

「よっと」

 僕はそこにぶら下がってアリアナの奮闘ぶりを見つめた。
 この高さならゾンビも僕に届かないぞ。
 高みの見物みたいで少し罪悪感があるけど、僕は戦えないし仕方ないよね。

 目隠し状態のアリアナは近寄る者すべてを破壊する小さな嵐のようだった。
 捕食本能のみでアリアナに襲いかかるゾンビの群れはことごとく粉々にされていく。
 強い。
 ステータスの高さはダテじゃない。
 おそらく恐怖心がアリアナの力をより一層引き出しているんだろう。

 だけど1分、2分経ち、その後もそうした戦いが続いてもゾンビの数は一向に減らない。
 徐々にアリアナも肩で息をし始め、ゾンビを打ち倒す勢いも次第に弱まっていく。
 まずいぞ。
 このままじゃ、いずれやられてしまう。
 さっきまでゾンビに追われて逃げ回っていた僕は、そこで初めて今、僕らがいる廃城の広間の全容をながめることが出来た。
 少し高い位置から見下ろす広間の奥に、ちかけた玉座が残されている。

「あれは……」

 薄暗い廃城の中で目を凝らし、僕は玉座の前から続々とゾンビが湧き出していることに気が付いたんだ。
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