だって僕はNPCだから 2nd GAME

枕崎 純之助

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第二章 闇の魔女ミランダ

第10話 大激怒! ケンカ上等!

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「あのケモノ女ぁぁぁぁぁぁ!」

 ミランダは怒りの声を上げるとドンッとテーブルの上に乗っかってモニターをにらみつける。
 ちょ……やばいぞ。

「お、落ち着いて。ミランダ」
「どきなさい! アルッ! 売られたケンカは買ってやる!」

 僕はミランダを落ち着かせようとしたけど、彼女はもう怒りのスイッチが入ってしまったみたいで、歯をむき出しにしてえるような声を上げた。
 爆弾鳥クラッシュ・バードの爆風によって傷ついた彼女の額にはわずかに血がにじんでいたけれど、怒りに興奮する彼女はそんな傷の痛みすら感じていないようだった。
 さらにまずいことに騒ぎを聞きつけた店員さんたちが駆け寄ってくる。

「お客様! おケガはございませんか?」

 ミランダはそんな店員さんたちを見下ろすと、怒りでゆがんだ笑みをその顔に浮かべ、テーブルの上にしゃがみ込む。

「おケガですって? この私が? ククク……」

 彼女はのどを鳴らして笑うと、壊れたメガネを拾い上げてそれを自分のアイテム・ストックにしまい込んだ。
 そして再び立ち上がり、怒りをふりまくように店員さんたちを怒鳴りつける。

「そんなもんあるわけないでしょ! 私を誰だと思ってんの!」

 ゲッ!
 ミ、ミランダ?
 ちょ、ちょっと待っ……。

 ミランダは僕の制止を振り切ると、怒りのままに町娘風の装備を解除して、本来の彼女の装いである深闇の黒衣ヘカテーを装備してしまった。
 途端に彼女の雰囲気がガラリと変わり、いつもの迫力満点の魔女ミランダがその場の雰囲気すらもガラリと変えてしまう。
 凶悪無比とうたわれた魔女の姿を間近で見た女性店員さんが、腰を抜かしたようにその場にへたり込んだ。

「や、やみの魔女……ミランダ」

 すっかりおびえてうめくようにそう声を絞り出す女性店員さんを見下ろすと、ミランダは不機嫌さを隠そうともせず、とうとう禁断のセリフを口にしてしまった。

「ええそうよ。我こそは……我こそはやみの魔女・ミランダ! この砂漠の街を砂とちりになるまで滅ぼしてやる!」

 ……あちゃあ。
 ミランダが完全にボス・モードになっちゃった。
 必死に正体を隠してた今までの努力が水の泡だ。

「ミランダだ……」
「あれがやみの魔女か」
「襲撃は明日なのにどうして?」

 その場にいた他のお客さんたちからもどよめきの声が上がり始め、店内はざわめきに包まれた。
 そんなことはお構いなしにミランダはモニターをにらみつけると、画面上の双子を指差して怒声を上げる。

「そこの双子! どうせすぐ近くにいるんでしょ? だったらここでケンカの第2ラウンドといこうじゃないの。二度と私にちょっかい出せないよう、前以上にコテンパンにしてやるわ! さっさと出て来なさいっ!」
 
 こうなるともうミランダは止まらない。
 僕も腹を据えた。
 メインシステムを呼び出して装備しているかぶとをアイテムストックに戻すと、呪いの蛇剣・タリオを握り締めた。
 僕もミランダと一緒に戦うしかない。
 そして念のため、今は遠く離れているジェネットに緊急事態発生のメールを送っておいた。

 モニターの中では双子が互いに目配せをしてニヤリと笑っている。
 僕は直感した。
 ミランダの言ったことは本当みたいだ。
 あの2人はどこかからミランダを監視していたんだ。
 お忍びでこの街を歩き回るミランダを。

「おまえがこっちに出向くんだよ。アタシたちはおまえの足の下にいるんだからなぁ」
「何ですって?」

 キーラの言葉に眉根を寄せて、ミランダは下を向いた。
 すると彼女が乗っているテーブルの表面に、緑色に輝く円形の不思議な魔法陣が出現したんだ。
 そして一瞬にして、足元の魔法陣にミランダが吸い込まれていく。

「ミ、ミランダッ!」
 
 僕は慌ててミランダを引き留めようとその魔法陣に向かって身を投げ出したけど、ミランダはあっという間に消えてしまって間に合わなかった。
 そして魔法陣もすぐに消えてしまった。
 そ、そんな……。
 テーブルに突っ伏した僕はすぐに顔を上げると、モニターの中の双子をにらみつけて精一杯の怒鳴り声を上げた。

「ミランダをどこにやったんだ!」

 すると双子が映るモニターが別の画面に切り替わる。
 そこはどこかの地下空洞のようで、その中に一人、ミランダが立っていた。

「ミランダ!」

 僕は声を上げた。
 彼女が立っている広い場所はゴツゴツとした岩肌の地面であり、その背後には透き通った水面が広がっていた。
 すると画面はそのままでキーラの声が鳴り響く。

『そこはこのジェルスレイムの地下に広がる地底湖だ。そこなら広さも十分だし誰にも邪魔されずにやり合えるぜ』

 その声はミランダにも聞こえているようで、画面の中で彼女は不機嫌そうに腕組みをしたまま言い放つ。

『あっそ。いいからさっさと降りてきなさい。今度は泣きながら土下座させてあげる』

 ミランダは怒ってはいるけれど、決しておくしたり気負ったりはしていなかった。
 いつもの彼女だ。
 だけど僕は不安を覚えた。
 あそこは敵が用意した敵の舞台だ。
 どんなわなが仕掛けられているか分からないぞ。
 あの双子の狡猾こうかつさを前にして絶対に油断は禁物だった。

『相変わらず威勢のいいことだな。けどおまえの相手をするのはアタシらじゃねえよ』

 キーラがそう言うやいなや、ミランダの前方10数メートルのところにさっきと同じ魔法陣が現れ、そこから一人のキャラクターが出現した。
 その姿を見て僕は信じられない思いで声を漏らした。
 そ、そんな……。

「ア……アリアナ」

 そう。
 ミランダの対戦相手として地底湖に現れたのは双子ではなく、あろうことか魔道拳士アリアナだったんだ。
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