【フリー台本】夜明けに咲く言の葉-短編小説集

きなこ

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卒業-先生へ

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卒業式の日、教室には淡い光が差し込み、もうすぐ別れの時間が訪れる。彼女は窓の外をぼんやりと眺めていた。白い制服、少し肩が凝ったその姿勢、でもその瞳はどこか決意に満ちている。

今まで、何度も何度もこの瞬間を想像してきた。どうしても言いたいことがあったから。彼女の心は、この日のためにずっと温めてきた。

先生に告白したい――それが彼女の唯一の願いだった。先生は、クラス担任としていつも優しく接してくれた。彼女が悩んでいるときも、きっと他の誰かよりも早く気づいて声をかけてくれる、そんな存在だった。放課後、ふたりきりで話した時間も何度かあった。彼女にとって、先生はただの教師ではなく、支えてくれる大切な人になっていた。

でも、ずっと言えなかった。言ったら、この特別な関係が壊れてしまうのではないかという不安があったし、あまりにも大人すぎて、彼にとってはただの生徒でしかないという現実があったから。だから、思いを告げるべきかどうか迷い続けた。

卒業式の朝、彼女は自分に言い聞かせた。最後の日だからこそ、伝えなければならない気がした。それは告白というよりも、感謝の気持ちを素直に伝えたかったから。

式の後、みんなが教室を出ていく中で、彼女は最後まで残った。教室の中に残ったのは彼女と先生だけだった。先生は黒板の片付けをしている。彼女はしばらくその背中を見つめてから、ゆっくりと立ち上がった。

「先生、少しだけお話してもいいですか?」

彼女の声に、先生は振り返り、驚いたように微笑んだ。

「どうした、まだ何か片付けがあるのか?」

「いえ、今日は…卒業の日だから、少しだけ…」

彼女はゆっくりと歩み寄り、目を合わせると、すっと息を吐いた。

「今まで、たくさんお世話になりました。先生のおかげで、いろんなことが乗り越えられました。いつも支えてくれて、ありがとう…」

その言葉が、心の中でどれほど膨らんでいたかを先生はきっと感じ取っただろう。その瞬間、彼女の胸の中にあふれていた感謝の気持ちが、まっすぐに伝わっていったような気がした。

「それは良かった。君が頑張ったからだよ。でも、君の頑張りに少しでも力になれたなら、僕は嬉しい。」

彼女は少し照れくさそうに笑った。たった一言で、心が軽くなったような気がした。あれほど悩んでいた自分が、どうしても言えなかったことを、やっと言えた。

「先生には、感謝しかないです。私、これからも頑張ります。」

その言葉に、先生は少しだけ真剣な表情を浮かべ、頷いて言った。

「君なら、きっと素晴らしい未来を作っていけるよ。」

その言葉を胸に、彼女はほんの少しだけ背筋を伸ばした。告白という形ではなくても、この瞬間が彼女にとっては何よりも大切なことだった。

「ありがとうございます、先生。」

彼女は静かに頭を下げ、そして教室を出る準備をした。足元が軽く感じた。心の中の重荷が少しだけ降りたような、清々しい気持ちが広がった。

振り返ることなく、彼女は卒業式へと向かっていった。



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