異界の異邦人〜俺は精霊の寝床?〜

オルカキャット

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4章 鉱山都市グランデ

36話 ダンジョンアタック?

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 白亜の殿堂ラトーナ商会の三階建石造りの建物。
 建物前の広場には大駐車場。
 奥には厩舎。道産子たちがのんびりしている。

 ラトーナ商会の受付は、商会と冒険者ギルドの二つに分かれている。
 事務の人が依頼の説明をしているのか、パラパラと周りを取り囲む人々。

「……というわけで緊急討伐依頼となります。三番坑道と四番坑道に魔物が発生しました。現在確認されているものは、ワームとクローラーです。速やかに駆除願います」

 ワーム……ミミズ? クローラー……芋虫? 駆除って、害虫駆除なの?

 受付を終えたドワーフ族、獣人族、人間族の冒険者たちが気合を入れて出発していく。
 アドラーブルから来た冒険者たちは引き受けていない。休暇中だし、害虫駆除だし。

「おお、来たか。いくぞトーマ」

 やっぱりいたんだバルカンさん。

「待ってください。俺まだ受付も終わってないし」

 書類はお前の分も手に入れてきたぞ。坑道の入り口でカードを見せれば契約完了だ。

「いや俺今武器がないんです」
「格闘家に武器はいらんだろ」

 久しぶりに聞いた。回し蹴りの弊害。

「報酬は半日一人一ゴルド。宴会つき。飲み放題食い放題だ!」
「行きます!」

 俺は思わず害虫駆除に参加してしまった。
『害虫駆除の簡単なお仕事の訳がない』パターンだろうなあとは思うけど。

 石造りの町並みを抜けて山道に入る。しかし道は鉱石を運ぶためなんだろう、しっかり石畳が敷き詰められている。

 三番坑道の出入り口に着く。岩山をくり抜いて木枠で補強された横掘りの鉱山らしい。
 周りにプレハブ小屋が何棟も建てられていて、慌ただしく人々が出入りしている。
 普段は休息や食事をしたりする所なんだろう。

「トーマこっちじゃ!」

 バルカンさんは元気だ。ドワーフっていつもこんなにテンションが高いのだろうか。

「書類は出しておいた。あとは冒険者カード受付で見せるだけじゃ」

 バルカンさんの仕切りで小屋中に入って受付の人にカードを見せる。

「はい確認しました~、次の方~」

 なんと簡単な。

 ふと見ると、小屋の中には鉱山作業の道具が山済みされている。
 手押し車、背負いかご。ツルハシやハンマーやピッケルや木刀や……木刀?

 あそうか、これはツルハシやハンマーの柄だ。
 折れたら交換するためのもの……

「あのここの道具貸してもらませんか」
「いいよ~」

 いいんかい。

 長さが八十センチくらいのまっすぐな硬い木、切り口が楕円型で先に向かってやや細くなっている。
 うん、木刀だ。よし、武器ゲット。

「いくぞトーマ!」
「はーい」

 俺は気合の入ったバルカンさんに連れられて、入り口に大きく『三』と書かれた坑道へと入っていく。この数字は読める。

 坑道は岩を掘り抜いた坑道掘り。幅と高さがが三メートルくらいで、手掘りの跡がわかるゴツゴツした岩がむき出しの壁。天井はややアーチ型。

 思ったよりも明るい。壁には一定の間隔で光源が埋め込まれている。アドラーブルにも魔石を使った街灯があった。
 鉱石を運ぶための線路はないが、地面は平らに整地されている。
 俺はバルカンさんをガイドにどんどん中へ進む。

 進んでいくと大きく切り広げられた作業場がある。
 作業服のおっちゃん達やエプロン姿のおばちゃん達が、棍棒で逃げ惑う芋虫、いやクローラーを殴ってる。

「逃すなよおばちゃん、蛹になったら大変じゃ。トドメさしとけよ」
「わかってるわよ、こんなおいしい仕事ひさしぶりなんだから」

 あ、この人たちこの街の見習いさんなんだ。この人たちが引き受ける仕事ということはそんなに危険な仕事じゃないのかも……

「大変だ!ワームがウジャウジャ出て来たぞ!」

 奥から大声がする。
 うん、甘い考えは捨てよう。

「潰せ潰せ!」

 バルカンさんがツルハシを構えながら突撃していく。
 俺も付いていかなくちゃいけないんだろうな。

 坑道が二つ別れる広場で冒険者達が武器を振るっている。
 戦っているのは……ミミズ? いや一メートル弱のワームが奥からウジャウジャと湧いてきている。

 片っ端から倒していく冒険者さんたち。
 あれ? これも結構弱い。

「トーマ、奥へ行くぞ!」

 バルカンさんはワームを無視して右側の坑道に進んでいく。
 左側には別の冒険者達が……

「居たぞ」

 そこには数匹の鎧をまとったような一メートルくらいの……芋虫?

「ランドクローラーじゃ。クローラーが蛹になってランドクローラーに進化する。じゃからクローラーは逃すと厄介なことになるんじゃ」
「強いんですか」
「いや、大したことない」
「は?」
「ただこいつらは、魔石喰いじゃ。岩壁を勝手に掘って見つけた魔石を食い尽くす。大量発生した鉱山は閉鎖に追い込まこともある、我らの天敵じゃ」

 バルカンさん解説ありがとう。

「早く倒そうぜ!」
「待て。このランドクローラー卵を持ってるぞ」
「卵?」
「とぐろを巻いて卵を守ってるんだ」
「それは……卵じゃない……」

 バルカンさんが息を飲む。

「精霊石じゃ」
「精霊石……あの精霊石なのか」
「うおおおおおおおっ! 大金持ちじゃー!」

 冒険者達が我先にとランドクローラに突撃をする。
 寄ってたかって武器の洗礼を受けてバラバラになる哀れなランドクローラーさん。合唱。

 後には彼らが守っていた卵型の石が……

「バルカン、やっぱり精霊石なんだな」
「ああ、型は歪で小さいが……でもやばい」
「何が」
「精霊石が光ってる」
「え?」
「離れろ! 生まれるぞ!」

 ええっ

「だめだやめろ生まれたら売れないぞ」
「それどころじゃない! 何が出てくるかわからないんだぞ!」
「誰か契約できるやつを呼んでこい」

 ミャ?

 ジャケットの中でモゾモゾする馬鹿猫。
 ……まさか俺?

 その時、卵が光に包まれ粒子の塊になる。その粒子が変形して……ランドクローラーになった。

 唖然、絶句、ため息、落胆。

「使えねえ……」

 いきなりバルカンさんがツルハシを振り下ろし生まれたばかりのランドクローラーを処分する。

「おそらく、ここは小さなマナ溜まりだったんじゃろうな。魔物が活性化したのはこのマナに影響されたんじゃ」

「お開きお開き。さあ跡片付けして引き上げるぞ」
「あのまま精霊石を持ち帰れたら大金持ちだったのに……」
「型が歪で小さなやつだったからそんなに高くは売れないよ」
「でも精霊石だぜ、俺初めて見た」
「ハズレの精霊石などよくあることじゃ」

 ブツブツ言いながら引き上げていく冒険者達。

 やっぱり、精霊石ってあのサラマンダーが死んだ時にできた卵型の石なのか。
 闇の精霊おねーさんが粒子にして空に返したあの石と同じ……。

 とにかく。
 うん、魔物を駆除するだけの簡単なお仕事だった。
 
 ていうか俺なーんにも活躍してなかったな。
 これでお金もらって飲み放題食い放題って……うん、ラトーナ商会は儲かってるんだなあ。

 ダンジョンアタック? 何でしたっけ。



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