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幕間1
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ゼレシウガルから剣を教わり、身体術を覚え約2ヶ月。
ゼレシウガルは考える。弟子と仲良くするにはどうしたらいいか、と。
強くなるのは賛成だし、弟子もそのつもりなのか泣き言一つ言わない。だが、気の所為でなければ彼は人付き合いが苦手なのかもしれない。今は二人だが何時か信者が増えた時あれでは駄目だろう。
「………釣りだ」
「…………はい?」
「今日は精神統一………内容は、釣りだ」
何言ってんだこいつと言う弟子の目は敢えて見ないことにする。ゼレシウガルはそのまま歩きだし、困惑しながらもついてくる弟子にうむ、と頷く。
「………苛立ちを抑えよ。魚が逃げる」
「………………」
現在、ゼレシウガル6匹。弟子0匹。
落ち着かずソワソワしている弟子の気配を感じ取っているのか魚は一向にかからない。
「精神統一って……よく聞くけど本当に意味あるのかよ」
「実力を上げるという意味では意味はない。だが、実力を発揮するという意味では意味がある。緊張、恐怖、高揚、それらで真の実力を発揮しきれず死した仲間も多くいた。実践では、以下に己の力を発揮できるかまで含めて実力と呼ぶのだ」
「…………………」
一理あると感じてくれたのか怒気が薄まる。一度針を上げ、また別の場所に投げ入れた。
「時に、お前はなぜイーナイマーヤ様の信者になった」
「何でって………まあ無理矢理というか」
「私はあの方を信仰する地に生まれたのが理由の一つ」
「あ、話聞いてねえな?」
何か言ってるが話を続ける。
「かの時代、多くの神々が人類を救うため武具を与え、時には降臨し導いたと聞く。イーナイマーヤ様もその一人。私が子供だった頃、まだ全盛期に比べ信仰はそれほど広まって居なかったが邪竜は、ともかく亜竜、残忍な妖精達の襲撃は受けた事がない。妖精も軽い悪戯をしてしまうが人間が好きな者達ばかり訪れ、平和な所だった」
「へえ……少し歩くと化け物が住んでるのに」
チラリと背後を見る弟子。そこには先程襲いかかってきたので逆に狩った5メートルほどの獲物が木に逆さまに立てかけられている。首からは血がすっかり流れきっていた。
「………化け物か。そうだな、お前はまだ未熟」
「ぬ……」
「だが強くなれる。あの方に選ばれたのだから………」
「彼奴曰く元の世界に未練がないのが条件だそうだけど………実際、家族失ったとはいえ、俺もよく馴染んだもんだ………彼奴の言う異常者っての、否定できん」
彼奴とはまさかイーナイマーヤ様の事であろうか? であるなら叱るべきか?
嫌しかし嫌っているようでも見下しているようでもない。
「まあ俺の首切ったあんたにこうして話してる時点で異常者か……」
「? 今、何と……」
「あんたにゃ、解らねえことだよ」
「うっま」
「この時期は、脂が乗っている………そう、妻もよく好んで食べな。あの頃は」
「ああ、長くなるなこりゃ………」
「そうか……そんな、事が………いい奥さんだな」
「ああ。そうだ……だから、無駄にしてはならない。彼女が死んでしまった意味を……無意味などには、そう。させるものか………」
「……………………そう言えば、師匠の剣変わってるよな? なんだろ、鉄とか石ともまた違って見えるけど」
何故妻が死んでしまったのか、それが思い出せない。思い出そうとすると弟子がそんな事を聞いてきた。
「ああ、これか……そうだな。最強の剣だ………私に何かあった時は、お前に讓ろう」
「…………………」
「準備万端かな?」
「ああ……」
「その剣、持ってくんだね…」
ゼレシウガルが使っていた、光沢のある漆黒の両刃の大剣。邪竜殺しの際元々の武器は折れ、その後新たに作られた一品。身体術でそれなりに昇華したマコトの力を持ってしてもズシリと重量感を感じる。
「何で出来てんだこれ」
「邪竜の死体」
「……………」
「? 邪竜の死体だよ」
なんか、呪われそうな武器だな、とマコトは思ったが邪竜の魂はとっくに消滅してるらしい。
「ちなみにどの部分?」
「全部」
「………………」
「まあ正確には一部の肉や油を燃やした炉に死体を突っ込んで、特殊な方法で圧縮して、戦闘中に折れた牙や爪、剥がれたり砕かれたりした鱗で数年かけて削って形を整えたんだけどね」
「最強の邪竜だっけ? その死体から作られた、最強の剣か………俺が使って………いや」
─ああ、これか……そうだな。最強の剣だ………私に何かあった時は、お前に讓ろう
「相応しくなれるよう、頑張るか」
「精進したまえ。私をゼレシウガルの代わりに守るならね。ところで移動面倒だから、君の中に入っていい?」
「…………は?」
「こうやって」
トン、と胸に手を置いてくるイーナ。その腕がズブリと沈み込む。痛みは、ない。
「!?!!!?」
混乱しているマコトを無視してイーナの姿が完全に中に入り込む。
『じゃあ、改めて出発進行~♪ 邪竜に出会わないよう、気をつけていこうね』
ゼレシウガルは考える。弟子と仲良くするにはどうしたらいいか、と。
強くなるのは賛成だし、弟子もそのつもりなのか泣き言一つ言わない。だが、気の所為でなければ彼は人付き合いが苦手なのかもしれない。今は二人だが何時か信者が増えた時あれでは駄目だろう。
「………釣りだ」
「…………はい?」
「今日は精神統一………内容は、釣りだ」
何言ってんだこいつと言う弟子の目は敢えて見ないことにする。ゼレシウガルはそのまま歩きだし、困惑しながらもついてくる弟子にうむ、と頷く。
「………苛立ちを抑えよ。魚が逃げる」
「………………」
現在、ゼレシウガル6匹。弟子0匹。
落ち着かずソワソワしている弟子の気配を感じ取っているのか魚は一向にかからない。
「精神統一って……よく聞くけど本当に意味あるのかよ」
「実力を上げるという意味では意味はない。だが、実力を発揮するという意味では意味がある。緊張、恐怖、高揚、それらで真の実力を発揮しきれず死した仲間も多くいた。実践では、以下に己の力を発揮できるかまで含めて実力と呼ぶのだ」
「…………………」
一理あると感じてくれたのか怒気が薄まる。一度針を上げ、また別の場所に投げ入れた。
「時に、お前はなぜイーナイマーヤ様の信者になった」
「何でって………まあ無理矢理というか」
「私はあの方を信仰する地に生まれたのが理由の一つ」
「あ、話聞いてねえな?」
何か言ってるが話を続ける。
「かの時代、多くの神々が人類を救うため武具を与え、時には降臨し導いたと聞く。イーナイマーヤ様もその一人。私が子供だった頃、まだ全盛期に比べ信仰はそれほど広まって居なかったが邪竜は、ともかく亜竜、残忍な妖精達の襲撃は受けた事がない。妖精も軽い悪戯をしてしまうが人間が好きな者達ばかり訪れ、平和な所だった」
「へえ……少し歩くと化け物が住んでるのに」
チラリと背後を見る弟子。そこには先程襲いかかってきたので逆に狩った5メートルほどの獲物が木に逆さまに立てかけられている。首からは血がすっかり流れきっていた。
「………化け物か。そうだな、お前はまだ未熟」
「ぬ……」
「だが強くなれる。あの方に選ばれたのだから………」
「彼奴曰く元の世界に未練がないのが条件だそうだけど………実際、家族失ったとはいえ、俺もよく馴染んだもんだ………彼奴の言う異常者っての、否定できん」
彼奴とはまさかイーナイマーヤ様の事であろうか? であるなら叱るべきか?
嫌しかし嫌っているようでも見下しているようでもない。
「まあ俺の首切ったあんたにこうして話してる時点で異常者か……」
「? 今、何と……」
「あんたにゃ、解らねえことだよ」
「うっま」
「この時期は、脂が乗っている………そう、妻もよく好んで食べな。あの頃は」
「ああ、長くなるなこりゃ………」
「そうか……そんな、事が………いい奥さんだな」
「ああ。そうだ……だから、無駄にしてはならない。彼女が死んでしまった意味を……無意味などには、そう。させるものか………」
「……………………そう言えば、師匠の剣変わってるよな? なんだろ、鉄とか石ともまた違って見えるけど」
何故妻が死んでしまったのか、それが思い出せない。思い出そうとすると弟子がそんな事を聞いてきた。
「ああ、これか……そうだな。最強の剣だ………私に何かあった時は、お前に讓ろう」
「…………………」
「準備万端かな?」
「ああ……」
「その剣、持ってくんだね…」
ゼレシウガルが使っていた、光沢のある漆黒の両刃の大剣。邪竜殺しの際元々の武器は折れ、その後新たに作られた一品。身体術でそれなりに昇華したマコトの力を持ってしてもズシリと重量感を感じる。
「何で出来てんだこれ」
「邪竜の死体」
「……………」
「? 邪竜の死体だよ」
なんか、呪われそうな武器だな、とマコトは思ったが邪竜の魂はとっくに消滅してるらしい。
「ちなみにどの部分?」
「全部」
「………………」
「まあ正確には一部の肉や油を燃やした炉に死体を突っ込んで、特殊な方法で圧縮して、戦闘中に折れた牙や爪、剥がれたり砕かれたりした鱗で数年かけて削って形を整えたんだけどね」
「最強の邪竜だっけ? その死体から作られた、最強の剣か………俺が使って………いや」
─ああ、これか……そうだな。最強の剣だ………私に何かあった時は、お前に讓ろう
「相応しくなれるよう、頑張るか」
「精進したまえ。私をゼレシウガルの代わりに守るならね。ところで移動面倒だから、君の中に入っていい?」
「…………は?」
「こうやって」
トン、と胸に手を置いてくるイーナ。その腕がズブリと沈み込む。痛みは、ない。
「!?!!!?」
混乱しているマコトを無視してイーナの姿が完全に中に入り込む。
『じゃあ、改めて出発進行~♪ 邪竜に出会わないよう、気をつけていこうね』
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