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第6話 トラブル
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深琴は案内されて宿屋にいくと、そこは先ほど訪れた風変わりの店の裏隣りにあった。外観は三階建ての宿で、風変わりの店の外観とは違い綺麗な感じの印象を受けた。店主は宿屋も経営していると深琴に話し連れて来ていたのでこの宿も店主の好みが入っているのかもしれない。部屋に入ると持っていた荷物を置き、履いていた靴も、腰に付けていた剣も外す。身軽になった深琴は部屋に用意されていた履き物に変えると、兄の置いて行った荷物にふと目をやった……一つの袋に包まれた筒で 中身に興味を持った深琴は開けてみることにした。
「中身は何かしら?」
「え? この紙だけ? 何も書いてないじゃない……これを渡すのにこの街にいるわけ? でも……大切な物だって言ってたし、なんなのかしら」
ちょっと膨れっ面になった深琴が紙を机の上に置く……しばらくすると、その紙が光りだした!
「え? 何? 紙が光っているの?」
深琴はその紙を恐る恐る手にする。やはり光ってるだけで文字も何も書かれてる様子はない……しかし深琴はその光から優しい暖かさを感じ、幼かった頃のおぼろげな記憶が断片的に浮かんで見えていた。その記憶には三人の姿があった。一人は男性、もう一人は女性、そして自分以外の少女の姿が微かに感じられた。
(この景色……どこだっけ? あ~この人たち……誰だったかしら?)
紙から光りが消えた途端に深琴の感じていた情景も消えてしまった。
「何だったのかしら? 今のは?」
あごに手をやり、考えている姿勢だったが、瞬時に気分を変え紙を筒に戻すと、部屋にある風呂場に向かった。
「ま! いっか、これを渡せばセテの村に戻れるんだし、とりあえずお風呂入ろ~っと!」
深琴は風呂の中で体を洗いながら、兄が無事に村へ向かっているかを考えている。
「兄様無事に向かってるかしら?」
その頃、オルトは馬を走らせながら独り言を呟いていた。
「このままだと、やはり時間がかかり過ぎるな――」
馬で向かってはいるが時間という現実を鑑みオルトは思案すると、ふと何かを思い出したかのように走っている馬の足を止めた。
「あ!そうだそうだ!」
そして、馬から降りると直ぐに地面に向かって魔法陣をちょっと楽しそうに書き始めた。
「一刻を争うのだからな……馬はここで手放して行くしかないが仕方ない……」
魔法とは基本的に素質のある者が学校や術者、師範などに教わり訓練しないと使えないもので、高度な魔法ほど特別な条件が多数必要になる。それに魔法を使うと自身の精神的な労度が増していくので高位者レベルの術者でなければ易々と術を連続使用などできない。
オルトは術の準備が終わり、召喚魔法を唱えた。
「パーシオン!」
その呼びかけで近くの空が光りその中から白馬が現れた。
「久しいな……元気だったか?」
現れた白馬を撫でながら声をかけている。
「すまぬが私をセテの村まで乗せてってくれるか?」
そう告げると、白馬は理解したような雰囲気を示すと、白馬の背中には光と共に鞍と手綱が現れる。
オルトが跨ると白馬から羽が現れ、そのまま空に駆け上がり森を飛び越えるように村に向かっていくペガサスとなった。
セテを旅立った深琴と偶然イリノアの街で遭遇したオルトが、妹の代わりに急いでセテの村まで薬材を届けてくれたおかげで、翌日の朝方にはファブルの調合した薬を村の子どもたち全員に分け与えることができた。
「なんとか間に合ったようじゃの」
ファブルが汗を拭きながらつぶやくと、それを聞いた親たちは一安心したようにみんなで喜んだ。
「ありがとうオルト! あなたと深琴ちゃんのおかげで子供たちが助かったわ」
母親の一人が言うと、ほかの親も口々に感謝を述べていく。
「街で妹に出会っていなければ、私は何もできなかったよ」
オルトが母親たちに言うとファブルが飲み物を飲んで一息つきながら言った。
「あたりまえじゃ、あの子がイリノアの街に行ってくれなかったら、村の子供たちはどうなっていたことか……ところで深琴はどうしたんじゃ?」
「ああ、イリノアの街で私の代わりに用事を頼んだんだ……終えたら戻ってくる」
「そうか、あの子は自分の事を顧みない振る舞いをするからな……出来の良い妹を持ってよかったな、おまえは」
「どこがいいものか……」
オルトはイリノアの街で再会した場面を思い出しながら言葉にしていた。
ブツブツ独り言を発しながらファブルが彼を伴い病室から外にでると、
外は今日も穏やかに晴れていた。
「あとはあの子が無事に帰って来てくれればいいだけじゃよ」
イリノアの街がある方角を見上げるファブル。それにつられるようにオルトも同じ空を見上げた。
「中身は何かしら?」
「え? この紙だけ? 何も書いてないじゃない……これを渡すのにこの街にいるわけ? でも……大切な物だって言ってたし、なんなのかしら」
ちょっと膨れっ面になった深琴が紙を机の上に置く……しばらくすると、その紙が光りだした!
「え? 何? 紙が光っているの?」
深琴はその紙を恐る恐る手にする。やはり光ってるだけで文字も何も書かれてる様子はない……しかし深琴はその光から優しい暖かさを感じ、幼かった頃のおぼろげな記憶が断片的に浮かんで見えていた。その記憶には三人の姿があった。一人は男性、もう一人は女性、そして自分以外の少女の姿が微かに感じられた。
(この景色……どこだっけ? あ~この人たち……誰だったかしら?)
紙から光りが消えた途端に深琴の感じていた情景も消えてしまった。
「何だったのかしら? 今のは?」
あごに手をやり、考えている姿勢だったが、瞬時に気分を変え紙を筒に戻すと、部屋にある風呂場に向かった。
「ま! いっか、これを渡せばセテの村に戻れるんだし、とりあえずお風呂入ろ~っと!」
深琴は風呂の中で体を洗いながら、兄が無事に村へ向かっているかを考えている。
「兄様無事に向かってるかしら?」
その頃、オルトは馬を走らせながら独り言を呟いていた。
「このままだと、やはり時間がかかり過ぎるな――」
馬で向かってはいるが時間という現実を鑑みオルトは思案すると、ふと何かを思い出したかのように走っている馬の足を止めた。
「あ!そうだそうだ!」
そして、馬から降りると直ぐに地面に向かって魔法陣をちょっと楽しそうに書き始めた。
「一刻を争うのだからな……馬はここで手放して行くしかないが仕方ない……」
魔法とは基本的に素質のある者が学校や術者、師範などに教わり訓練しないと使えないもので、高度な魔法ほど特別な条件が多数必要になる。それに魔法を使うと自身の精神的な労度が増していくので高位者レベルの術者でなければ易々と術を連続使用などできない。
オルトは術の準備が終わり、召喚魔法を唱えた。
「パーシオン!」
その呼びかけで近くの空が光りその中から白馬が現れた。
「久しいな……元気だったか?」
現れた白馬を撫でながら声をかけている。
「すまぬが私をセテの村まで乗せてってくれるか?」
そう告げると、白馬は理解したような雰囲気を示すと、白馬の背中には光と共に鞍と手綱が現れる。
オルトが跨ると白馬から羽が現れ、そのまま空に駆け上がり森を飛び越えるように村に向かっていくペガサスとなった。
セテを旅立った深琴と偶然イリノアの街で遭遇したオルトが、妹の代わりに急いでセテの村まで薬材を届けてくれたおかげで、翌日の朝方にはファブルの調合した薬を村の子どもたち全員に分け与えることができた。
「なんとか間に合ったようじゃの」
ファブルが汗を拭きながらつぶやくと、それを聞いた親たちは一安心したようにみんなで喜んだ。
「ありがとうオルト! あなたと深琴ちゃんのおかげで子供たちが助かったわ」
母親の一人が言うと、ほかの親も口々に感謝を述べていく。
「街で妹に出会っていなければ、私は何もできなかったよ」
オルトが母親たちに言うとファブルが飲み物を飲んで一息つきながら言った。
「あたりまえじゃ、あの子がイリノアの街に行ってくれなかったら、村の子供たちはどうなっていたことか……ところで深琴はどうしたんじゃ?」
「ああ、イリノアの街で私の代わりに用事を頼んだんだ……終えたら戻ってくる」
「そうか、あの子は自分の事を顧みない振る舞いをするからな……出来の良い妹を持ってよかったな、おまえは」
「どこがいいものか……」
オルトはイリノアの街で再会した場面を思い出しながら言葉にしていた。
ブツブツ独り言を発しながらファブルが彼を伴い病室から外にでると、
外は今日も穏やかに晴れていた。
「あとはあの子が無事に帰って来てくれればいいだけじゃよ」
イリノアの街がある方角を見上げるファブル。それにつられるようにオルトも同じ空を見上げた。
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