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第35話 きっかけ
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場所を移したオルトは兵の修練所にチェスターを連れて来ていた。目的は兵士の状態と奪還作戦の帰還兵から話を聞こうと思ったからだ。
ここに来る前にクラウスと国王の三人で話をした……
「オルト、兵力はどのくらい必要ですか?」
「今まで奪還に擁した兵力は?」
「当初は三千から始まり二度目は六千、三度目の奪還作戦では一万二千を用いましたが」
「当然相手の情報はその都度、集めてからの奪還作戦だったんだろう?」
「その様に指示はしてありましたが――多くの情報は得られぬままの作戦実行だった様です」
ため息交じりのオルトだった。
「ふう……で作戦を指揮をしていた者は?」
「一度目と二度目の遠征作戦の者は戻って来ませんでした。三度目の指揮の者は帰還後に亡くなっています」
「三度の遠征軍で無事帰還出来たものは?」
「……総数で三千名もいません」
遠征軍の散々たる結果を聞き、こうして修練所にやって来たのは帰還兵から話を聞くことで打開できる情報があるかも知れないと思ってのことだ。帰還兵から話を聞いたオルトは現状での奪還の難しさを感じていた。
王都ウォーセン方面方からファルドに向かう道はいくつかあるのだが小道が多く、大きな道に関しては二つしかなかった。それもファルドを占拠した者たちの手回しで、一つを塞がれ、もう一つの道も怪物モンスターや道幅を狭くする妨害工作で大兵力をかけても、その場所で進行と兵力の格差を補われ、まともな戦闘にならなかった事が解ったのだった。
その打開策を修練所のベンチに腰をかけながら考えたオルト――そんなオルトをみていたチェスターから言葉をかけてきた。
「オルト、良ければ稽古をつけてもらえませんか?」
その言葉にはオルトに気分転換を与えたい思いがあり、チェスターの気持ちを察して彼の提案をオルトは受けることにした。
「そうだな……気分を変えた方が良い案も浮かぶかもしれないな」
「私もそう思います」
二人は何も言わずに剣を交えた。
修練所での情報を得たオルトはチェスターとの剣の稽古で気分を変えた事で、良いファルド攻略の案を思いつき、それを伝えようと国王とクラウスのいる場所に来ていた。
「オルト、何か解りましたか?」
「なかなかファルドの相手は厄介だという事はわかったよ……」
その答えに二人は困惑した顔となる。
「だが手が無いわけでは無いことをチェスターのおかげで思いついたよ」
そう伝えた彼にクラウスが尋ねた。
「そうですか――で、兵はどのぐらい必要ですか?」
「ウォーセンからは私が選ぶ千の兵だけで良いだろう」
その数を聞いた二人は驚いた。今までの奪還戦での兵力の数を大きく下回った数であったからだった。
「オルト! その少ない兵力で平気なのか?」
「一応は考えての事だ、さしあたっての選んでほしい者の基準なのだが……」
そう言ってクラウスとヒース国王に見せた紙には文章が書かれていた。そして、その内容を見てもはっきりとした狙いは解らない二人はオルトへ心配を口にした。
「これは?……」
「その内容で選ぶ――ファルド奪還の者を」
答えるオルトは心配している二人を余所に自信のある言い方であった。
「この基準で――ですか?」
「ウォーセンからは千の兵で出るが、ラスグーン、シーグーンの立ち寄りに際して兵は増強するつもりだ……それに、ここから大軍で出発したとしてファルドに着くのに時間がかかりすぎると相手側に準備されて奪還が困難になるからな」
「移動の問題ですか?」
クラウスの問いかけにオルトは続けて答えた。
「それもある――だが、今回は相手側の情報が少なすぎる、ましてモファト教皇国などの動きもどう動いてくるか不明だ――それに備える為にもウォーセンから出す兵は少ない方がいいだろう……ラスグーンとシーグーンには先に使者をだしておいてくれ」
「わかりました」
クラウスが言うとヒース国王はオルトに伝えることがあった――それは出来るなら話したくはないといった表情だった。
「オルト――実は先程グリード大公から申し入れがあって……」
「グリード?―- 彼がどうかしたのか?」
「オルトの身分は問題ないが、その……」
話をしずらそうな国王に代わり、クラウスが説明をした。
「オルトの腕前がどの程度あるかを見せてもらいたいと、親善試合を申してきまして」
「あの人物はそんな面倒なのか?」
オルトが問うと二人は顔を見合わせて苦笑いをして頷いたのを見てオルトはため息をついた。
「はぁ~わかった で、いつ行うのだ?」
「はい、明後日の昼に競技場で行いたいと申してきました」
「出来るだけ早い段階に王都を出発するつもりだ、兵の手配などクラウスに任せて平気か?」
「はい」
「その申し入れは了承した――では、あとの事は頼んだぞ」
「わかりました……どちらへ行くのですか?」
「王都は久々なのでな、セントパレスの街に出向いてみたい……それと自分の準備もしなくてはならないからな」
オルトは二人と分かれ王都の中心街であるセントパレスの街へ向かった。
ここに来る前にクラウスと国王の三人で話をした……
「オルト、兵力はどのくらい必要ですか?」
「今まで奪還に擁した兵力は?」
「当初は三千から始まり二度目は六千、三度目の奪還作戦では一万二千を用いましたが」
「当然相手の情報はその都度、集めてからの奪還作戦だったんだろう?」
「その様に指示はしてありましたが――多くの情報は得られぬままの作戦実行だった様です」
ため息交じりのオルトだった。
「ふう……で作戦を指揮をしていた者は?」
「一度目と二度目の遠征作戦の者は戻って来ませんでした。三度目の指揮の者は帰還後に亡くなっています」
「三度の遠征軍で無事帰還出来たものは?」
「……総数で三千名もいません」
遠征軍の散々たる結果を聞き、こうして修練所にやって来たのは帰還兵から話を聞くことで打開できる情報があるかも知れないと思ってのことだ。帰還兵から話を聞いたオルトは現状での奪還の難しさを感じていた。
王都ウォーセン方面方からファルドに向かう道はいくつかあるのだが小道が多く、大きな道に関しては二つしかなかった。それもファルドを占拠した者たちの手回しで、一つを塞がれ、もう一つの道も怪物モンスターや道幅を狭くする妨害工作で大兵力をかけても、その場所で進行と兵力の格差を補われ、まともな戦闘にならなかった事が解ったのだった。
その打開策を修練所のベンチに腰をかけながら考えたオルト――そんなオルトをみていたチェスターから言葉をかけてきた。
「オルト、良ければ稽古をつけてもらえませんか?」
その言葉にはオルトに気分転換を与えたい思いがあり、チェスターの気持ちを察して彼の提案をオルトは受けることにした。
「そうだな……気分を変えた方が良い案も浮かぶかもしれないな」
「私もそう思います」
二人は何も言わずに剣を交えた。
修練所での情報を得たオルトはチェスターとの剣の稽古で気分を変えた事で、良いファルド攻略の案を思いつき、それを伝えようと国王とクラウスのいる場所に来ていた。
「オルト、何か解りましたか?」
「なかなかファルドの相手は厄介だという事はわかったよ……」
その答えに二人は困惑した顔となる。
「だが手が無いわけでは無いことをチェスターのおかげで思いついたよ」
そう伝えた彼にクラウスが尋ねた。
「そうですか――で、兵はどのぐらい必要ですか?」
「ウォーセンからは私が選ぶ千の兵だけで良いだろう」
その数を聞いた二人は驚いた。今までの奪還戦での兵力の数を大きく下回った数であったからだった。
「オルト! その少ない兵力で平気なのか?」
「一応は考えての事だ、さしあたっての選んでほしい者の基準なのだが……」
そう言ってクラウスとヒース国王に見せた紙には文章が書かれていた。そして、その内容を見てもはっきりとした狙いは解らない二人はオルトへ心配を口にした。
「これは?……」
「その内容で選ぶ――ファルド奪還の者を」
答えるオルトは心配している二人を余所に自信のある言い方であった。
「この基準で――ですか?」
「ウォーセンからは千の兵で出るが、ラスグーン、シーグーンの立ち寄りに際して兵は増強するつもりだ……それに、ここから大軍で出発したとしてファルドに着くのに時間がかかりすぎると相手側に準備されて奪還が困難になるからな」
「移動の問題ですか?」
クラウスの問いかけにオルトは続けて答えた。
「それもある――だが、今回は相手側の情報が少なすぎる、ましてモファト教皇国などの動きもどう動いてくるか不明だ――それに備える為にもウォーセンから出す兵は少ない方がいいだろう……ラスグーンとシーグーンには先に使者をだしておいてくれ」
「わかりました」
クラウスが言うとヒース国王はオルトに伝えることがあった――それは出来るなら話したくはないといった表情だった。
「オルト――実は先程グリード大公から申し入れがあって……」
「グリード?―- 彼がどうかしたのか?」
「オルトの身分は問題ないが、その……」
話をしずらそうな国王に代わり、クラウスが説明をした。
「オルトの腕前がどの程度あるかを見せてもらいたいと、親善試合を申してきまして」
「あの人物はそんな面倒なのか?」
オルトが問うと二人は顔を見合わせて苦笑いをして頷いたのを見てオルトはため息をついた。
「はぁ~わかった で、いつ行うのだ?」
「はい、明後日の昼に競技場で行いたいと申してきました」
「出来るだけ早い段階に王都を出発するつもりだ、兵の手配などクラウスに任せて平気か?」
「はい」
「その申し入れは了承した――では、あとの事は頼んだぞ」
「わかりました……どちらへ行くのですか?」
「王都は久々なのでな、セントパレスの街に出向いてみたい……それと自分の準備もしなくてはならないからな」
オルトは二人と分かれ王都の中心街であるセントパレスの街へ向かった。
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