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第一章
第3話 不本意過ぎるチート無双
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「ああ疲れた……」
どうにか学校を無事終えたが、うっかり力を入れて能力が発動しないようにずっと気を張り詰めっぱなしだったせいで、俺は精神的にヘトヘトになりながら家路についていた。
漫画やアニメとかで女神から能力をもらったなら、それを使って大活躍するもんだよな。それなのに何で俺は活躍どころか逆に苦労しなきゃいけないんだ?
あのまま死んでいたら苦労も何もあったものじゃないし、生き返っただけでもありがたいとは分かってはいる。しかし、この先ずっとこの能力と付き合っていかなきゃいけないと考えると、やりきれない気分になってくる。
やめよう、深く考えるのは。今は早く家に帰ってゆっくりしたい……。
そうして歩いていると、先の方で横断歩道の信号が点滅しているのが見えた。
信号が変わる前に横断歩道を渡ろうと走り出す。
「うわああ!!」
その瞬間、凄まじい早さで目の前の景色が過ぎていった。
こ、このスピードを俺が出しているのか!? ちょっと待て!! この能力って単に力が強くなるだけじゃ無かったのかよ!?
俺が戸惑っていると、いつの間にか塀の近くにまで差し掛かる。
このままじゃ塀にぶつかる!!
そう思った瞬間には、もう塀に激突していた。
「うえぇっ!?」
塀にぶつかっても、俺は止まるどころかあっさり塀をぶち破った。
その弾みでバランスを崩してすっ転ぶ。
転んだ後もすぐには止まれず、ゴロゴロ回転しながらしばらく進み続けてようやく止まった。
「いてててて……」
起き上がった後、自分の身体の具合を確かめてみる。
あれだけの勢いでぶつかったのに骨折どころか怪我1つ無かった。
これも能力なんだろうか……。
そうだ、塀はどうなった!?
「うわ……」
後ろを振り返ると、塀の一部分に人型の大穴が開いていた。
……やってしまった。
文句なしに器物破損だ。
ていうか、こういう場合ぶつかる前に急ブレーキを掛けて止まれるもんじゃないのか!? 何で自分が出したスピードに全く反応できなくて塀にぶつかってるんだよ!!
「あの女神、余計な能力をどんだけ俺に渡してんだああぁぁ!!!!」
生き返らせてもらった恩があっても、俺はそう叫ばずにはいられなかった。
× × ×
家に着くなり、俺は自分のベッドに横になった。
そして新たな困難に頭を抱える。
まさか力だけでなくスピードまで強化されたとは思わなかった。
止まることもできないまま、ぶつかったものを破壊していくなんて、まるで走る災害だ。
塀を壊してしまったのを名乗り出る勇気は俺には無かった。
それに、「駆け足の勢いが余って塀にぶつかったら、壊してしまいました」なんて言っても信じられないだろうし、かといって再度実演すれば、新たな被害が生まれるだけだ。
これだとうかつに走るわけにもいかない。
うう……また足枷が増えてしまった。
これからどうしようかと悩むが、結論が出てこない。
こうなったらゲームで現実逃避でもしよう……
思えば、昨日は車にはねられたり、警察から聞き取り調査を受けたりでゲームができなかったからな。
おとといクリアしたRPGを、強さを引き継いだ2周目をプレイしようと考えながら、ゲーム本体の電源を入れる。
――待てよ。現実では無駄に強くて、制御の利かないチート能力に振り回されているんだ。それならゲームの方だけでも非力さを楽しもう……。
そう思い直した俺は、引継ぎなしの状態から、さらに強キャラや最強装備を使わないと自主的にルールを決めて、ゲームをスタートさせる。
「あれ?」
ゲームを進めていて変だと気づいたのは、オープニング後の強制戦闘の時だった。
初期状態で始めたのに、自キャラのヒットポイントがカンストしている。
敵を攻撃すれば、今まで見たことも無い大ダメージを叩き出して、戦闘があっさり終了した。
間違えて強さを引き継いで、最初から始めたか?
一瞬そう思ったが、クリアした時でさえここまでパラメータは高くなかったはずだ。
首をひねりながらアイテム欄を見てみる。すると、貴重な全回復アイテムや終盤に1つだけしか手に入らない強力な武器を含めた全種類のアイテムをそれぞれ99個ずつ持っていた。
「何だ!? このチート状態は!!」
普通にゲームをプレイしていたら絶対にありえない光景を目の当たりにして、思わず叫んでしまう。その直後に嫌な考えが頭をよぎる。
まさか能力のせいで、ゲームの方までチート状態になったのかよ!?
「いや……まさかなー……」
嫌な予感を押し殺しながら、リセットをして再び最初からやり直す。
何も変化なし。現実は非情だった。
俺には弱さを楽しむ自由すらないのか……。
× × ×
「あんまりだああぁぁ!!!!」
その後さまざまなジャンルのゲームをプレイしたが、どれも散々だった。
アクションゲームをやれば、敵の攻撃をいくら受けてもライフが全く減らない。逆にこっちの攻撃を当てたらボスだろうと一撃で撃破する。わざと落とし穴に落ちてもミスにならず、ジャンプすれば簡単に落とし穴から脱出できてしまう。
落ち物パズルゲームをすれば、ブロックを列に揃えて消すまでもなく、ブロックを適当な場所に置いたら全ブロックが消えてゲームクリアになる。
対戦格闘ゲームをやったら、対戦相手がワンパンで沈んだ。
こんなチート状態でゲームをやって何が楽しいんだよ……。
キャラクターが成長する楽しさも、高難易度に挑戦してクリアした時の達成感もあったものじゃない。
俺の生きがいであるゲームがまともにできなくなり、魂が抜ける思いだった。
「……ああ、もう宿題だ!! 宿題!!」
ショックでしばらく抜け殻になっていたが、俺はほとんどやけっぱちになって宿題に取り掛かった。
こんなチート状態になったんなら、せめて勉強ぐらいには活かしてやる!
そうして宿題を始めて3分後。
――知力は死ぬ前と何一つ変わっていないと判明した。
そういえば能力を発動させないことばかり考えていて忘れてたけど、授業中だって何も変化がなかったじゃないか。
どうして役に立たない所だけチートになって、肝心な部分は何も変わってないんだよ!!
そう憤った瞬間力が入り、握っていたシャーペンが砕けて床に散らばった。
……この能力本当に使えねぇ。
どうにか学校を無事終えたが、うっかり力を入れて能力が発動しないようにずっと気を張り詰めっぱなしだったせいで、俺は精神的にヘトヘトになりながら家路についていた。
漫画やアニメとかで女神から能力をもらったなら、それを使って大活躍するもんだよな。それなのに何で俺は活躍どころか逆に苦労しなきゃいけないんだ?
あのまま死んでいたら苦労も何もあったものじゃないし、生き返っただけでもありがたいとは分かってはいる。しかし、この先ずっとこの能力と付き合っていかなきゃいけないと考えると、やりきれない気分になってくる。
やめよう、深く考えるのは。今は早く家に帰ってゆっくりしたい……。
そうして歩いていると、先の方で横断歩道の信号が点滅しているのが見えた。
信号が変わる前に横断歩道を渡ろうと走り出す。
「うわああ!!」
その瞬間、凄まじい早さで目の前の景色が過ぎていった。
こ、このスピードを俺が出しているのか!? ちょっと待て!! この能力って単に力が強くなるだけじゃ無かったのかよ!?
俺が戸惑っていると、いつの間にか塀の近くにまで差し掛かる。
このままじゃ塀にぶつかる!!
そう思った瞬間には、もう塀に激突していた。
「うえぇっ!?」
塀にぶつかっても、俺は止まるどころかあっさり塀をぶち破った。
その弾みでバランスを崩してすっ転ぶ。
転んだ後もすぐには止まれず、ゴロゴロ回転しながらしばらく進み続けてようやく止まった。
「いてててて……」
起き上がった後、自分の身体の具合を確かめてみる。
あれだけの勢いでぶつかったのに骨折どころか怪我1つ無かった。
これも能力なんだろうか……。
そうだ、塀はどうなった!?
「うわ……」
後ろを振り返ると、塀の一部分に人型の大穴が開いていた。
……やってしまった。
文句なしに器物破損だ。
ていうか、こういう場合ぶつかる前に急ブレーキを掛けて止まれるもんじゃないのか!? 何で自分が出したスピードに全く反応できなくて塀にぶつかってるんだよ!!
「あの女神、余計な能力をどんだけ俺に渡してんだああぁぁ!!!!」
生き返らせてもらった恩があっても、俺はそう叫ばずにはいられなかった。
× × ×
家に着くなり、俺は自分のベッドに横になった。
そして新たな困難に頭を抱える。
まさか力だけでなくスピードまで強化されたとは思わなかった。
止まることもできないまま、ぶつかったものを破壊していくなんて、まるで走る災害だ。
塀を壊してしまったのを名乗り出る勇気は俺には無かった。
それに、「駆け足の勢いが余って塀にぶつかったら、壊してしまいました」なんて言っても信じられないだろうし、かといって再度実演すれば、新たな被害が生まれるだけだ。
これだとうかつに走るわけにもいかない。
うう……また足枷が増えてしまった。
これからどうしようかと悩むが、結論が出てこない。
こうなったらゲームで現実逃避でもしよう……
思えば、昨日は車にはねられたり、警察から聞き取り調査を受けたりでゲームができなかったからな。
おとといクリアしたRPGを、強さを引き継いだ2周目をプレイしようと考えながら、ゲーム本体の電源を入れる。
――待てよ。現実では無駄に強くて、制御の利かないチート能力に振り回されているんだ。それならゲームの方だけでも非力さを楽しもう……。
そう思い直した俺は、引継ぎなしの状態から、さらに強キャラや最強装備を使わないと自主的にルールを決めて、ゲームをスタートさせる。
「あれ?」
ゲームを進めていて変だと気づいたのは、オープニング後の強制戦闘の時だった。
初期状態で始めたのに、自キャラのヒットポイントがカンストしている。
敵を攻撃すれば、今まで見たことも無い大ダメージを叩き出して、戦闘があっさり終了した。
間違えて強さを引き継いで、最初から始めたか?
一瞬そう思ったが、クリアした時でさえここまでパラメータは高くなかったはずだ。
首をひねりながらアイテム欄を見てみる。すると、貴重な全回復アイテムや終盤に1つだけしか手に入らない強力な武器を含めた全種類のアイテムをそれぞれ99個ずつ持っていた。
「何だ!? このチート状態は!!」
普通にゲームをプレイしていたら絶対にありえない光景を目の当たりにして、思わず叫んでしまう。その直後に嫌な考えが頭をよぎる。
まさか能力のせいで、ゲームの方までチート状態になったのかよ!?
「いや……まさかなー……」
嫌な予感を押し殺しながら、リセットをして再び最初からやり直す。
何も変化なし。現実は非情だった。
俺には弱さを楽しむ自由すらないのか……。
× × ×
「あんまりだああぁぁ!!!!」
その後さまざまなジャンルのゲームをプレイしたが、どれも散々だった。
アクションゲームをやれば、敵の攻撃をいくら受けてもライフが全く減らない。逆にこっちの攻撃を当てたらボスだろうと一撃で撃破する。わざと落とし穴に落ちてもミスにならず、ジャンプすれば簡単に落とし穴から脱出できてしまう。
落ち物パズルゲームをすれば、ブロックを列に揃えて消すまでもなく、ブロックを適当な場所に置いたら全ブロックが消えてゲームクリアになる。
対戦格闘ゲームをやったら、対戦相手がワンパンで沈んだ。
こんなチート状態でゲームをやって何が楽しいんだよ……。
キャラクターが成長する楽しさも、高難易度に挑戦してクリアした時の達成感もあったものじゃない。
俺の生きがいであるゲームがまともにできなくなり、魂が抜ける思いだった。
「……ああ、もう宿題だ!! 宿題!!」
ショックでしばらく抜け殻になっていたが、俺はほとんどやけっぱちになって宿題に取り掛かった。
こんなチート状態になったんなら、せめて勉強ぐらいには活かしてやる!
そうして宿題を始めて3分後。
――知力は死ぬ前と何一つ変わっていないと判明した。
そういえば能力を発動させないことばかり考えていて忘れてたけど、授業中だって何も変化がなかったじゃないか。
どうして役に立たない所だけチートになって、肝心な部分は何も変わってないんだよ!!
そう憤った瞬間力が入り、握っていたシャーペンが砕けて床に散らばった。
……この能力本当に使えねぇ。
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