要らねえチート物語

汐乃タツヤ

文字の大きさ
5 / 50
第一章

第3話 不本意過ぎるチート無双

しおりを挟む
「ああ疲れた……」
 
 どうにか学校を無事終えたが、うっかり力を入れて能力が発動しないようにずっと気を張り詰めっぱなしだったせいで、俺は精神的にヘトヘトになりながら家路についていた。
 
 漫画やアニメとかで女神から能力をもらったなら、それを使って大活躍するもんだよな。それなのに何で俺は活躍どころか逆に苦労しなきゃいけないんだ?
 
 あのまま死んでいたら苦労も何もあったものじゃないし、生き返っただけでもありがたいとは分かってはいる。しかし、この先ずっとこの能力と付き合っていかなきゃいけないと考えると、やりきれない気分になってくる。
 
 やめよう、深く考えるのは。今は早く家に帰ってゆっくりしたい……。

 そうして歩いていると、先の方で横断歩道の信号が点滅しているのが見えた。
 信号が変わる前に横断歩道を渡ろうと走り出す。

「うわああ!!」

 その瞬間、凄まじい早さで目の前の景色が過ぎていった。
 
 こ、このスピードを俺が出しているのか!? ちょっと待て!! この能力って単に力が強くなるだけじゃ無かったのかよ!?

 俺が戸惑っていると、いつの間にか塀の近くにまで差し掛かる。

 このままじゃ塀にぶつかる!!
 そう思った瞬間には、もう塀に激突していた。

「うえぇっ!?」

 塀にぶつかっても、俺は止まるどころかあっさり塀をぶち破った。
 その弾みでバランスを崩してすっ転ぶ。
 転んだ後もすぐには止まれず、ゴロゴロ回転しながらしばらく進み続けてようやく止まった。 

「いてててて……」

 起き上がった後、自分の身体の具合を確かめてみる。
 あれだけの勢いでぶつかったのに骨折どころか怪我1つ無かった。
 これも能力なんだろうか……。
 
 そうだ、塀はどうなった!?

「うわ……」

 後ろを振り返ると、塀の一部分に人型の大穴が開いていた。

 ……やってしまった。
 文句なしに器物破損だ。
 
 ていうか、こういう場合ぶつかる前に急ブレーキを掛けて止まれるもんじゃないのか!? 何で自分が出したスピードに全く反応できなくて塀にぶつかってるんだよ!!

「あの女神、余計な能力をどんだけ俺に渡してんだああぁぁ!!!!」

 生き返らせてもらった恩があっても、俺はそう叫ばずにはいられなかった。

 
× × ×

 家に着くなり、俺は自分のベッドに横になった。
 そして新たな困難に頭を抱える。

 まさか力だけでなくスピードまで強化されたとは思わなかった。
 止まることもできないまま、ぶつかったものを破壊していくなんて、まるで走る災害だ。
 
 塀を壊してしまったのを名乗り出る勇気は俺には無かった。
 それに、「駆け足の勢いが余って塀にぶつかったら、壊してしまいました」なんて言っても信じられないだろうし、かといって再度実演すれば、新たな被害が生まれるだけだ。
 
 これだとうかつに走るわけにもいかない。
 うう……また足枷あしかせが増えてしまった。
 これからどうしようかと悩むが、結論が出てこない。
 
 こうなったらゲームで現実逃避でもしよう……
 思えば、昨日は車にはねられたり、警察から聞き取り調査を受けたりでゲームができなかったからな。

 おとといクリアしたRPGを、強さを引き継いだ2周目をプレイしようと考えながら、ゲーム本体の電源を入れる。

 ――待てよ。現実では無駄に強くて、制御の利かないチート能力に振り回されているんだ。それならゲームの方だけでも非力さを楽しもう……。
 
 そう思い直した俺は、引継ぎなしの状態から、さらに強キャラや最強装備を使わないと自主的にルールを決めて、ゲームをスタートさせる。

「あれ?」

 ゲームを進めていて変だと気づいたのは、オープニング後の強制戦闘の時だった。
 
 初期状態で始めたのに、自キャラのヒットポイントがカンストしている。
 敵を攻撃すれば、今まで見たことも無い大ダメージを叩き出して、戦闘があっさり終了した。
 
 間違えて強さを引き継いで、最初から始めたか?
 一瞬そう思ったが、クリアした時でさえここまでパラメータは高くなかったはずだ。
 
 首をひねりながらアイテム欄を見てみる。すると、貴重な全回復アイテムや終盤に1つだけしか手に入らない強力な武器を含めた全種類のアイテムをそれぞれ99個ずつ持っていた。

「何だ!? このチート状態は!!」
 
 普通にゲームをプレイしていたら絶対にありえない光景を目の当たりにして、思わず叫んでしまう。その直後に嫌な考えが頭をよぎる。
 
 まさか能力のせいで、ゲームの方までチート状態になったのかよ!?

「いや……まさかなー……」

 嫌な予感を押し殺しながら、リセットをして再び最初からやり直す。
 
 何も変化なし。現実は非情だった。
 俺には弱さを楽しむ自由すらないのか……。

× × ×

「あんまりだああぁぁ!!!!」
 
 その後さまざまなジャンルのゲームをプレイしたが、どれも散々だった。

 アクションゲームをやれば、敵の攻撃をいくら受けてもライフが全く減らない。逆にこっちの攻撃を当てたらボスだろうと一撃で撃破する。わざと落とし穴に落ちてもミスにならず、ジャンプすれば簡単に落とし穴から脱出できてしまう。
 
 落ち物パズルゲームをすれば、ブロックを列に揃えて消すまでもなく、ブロックを適当な場所に置いたら全ブロックが消えてゲームクリアになる。
 
 対戦格闘ゲームをやったら、対戦相手がワンパンで沈んだ。
 
 こんなチート状態でゲームをやって何が楽しいんだよ……。
 キャラクターが成長する楽しさも、高難易度に挑戦してクリアした時の達成感もあったものじゃない。
 俺の生きがいであるゲームがまともにできなくなり、魂が抜ける思いだった。
 
「……ああ、もう宿題だ!! 宿題!!」
 
 ショックでしばらく抜け殻になっていたが、俺はほとんどやけっぱちになって宿題に取り掛かった。
 
 こんなチート状態になったんなら、せめて勉強ぐらいには活かしてやる!
 そうして宿題を始めて3分後。

 ――知力は死ぬ前と何一つ変わっていないと判明した。
 
 そういえば能力を発動させないことばかり考えていて忘れてたけど、授業中だって何も変化がなかったじゃないか。
 どうして役に立たない所だけチートになって、肝心な部分は何も変わってないんだよ!!
 そういきどおった瞬間力が入り、握っていたシャーペンが砕けて床に散らばった。

 ……この能力本当に使えねぇ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

その狂犬戦士はお義兄様ですが、何か?

行枝ローザ
ファンタジー
美しき侯爵令嬢の側には、強面・高背・剛腕と揃った『狂犬戦士』と恐れられる偉丈夫がいる。 貧乏男爵家の五人兄弟末子が養子に入った魔力を誇る伯爵家で彼を待ち受けていたのは、五歳下の義妹と二歳上の義兄、そして王都随一の魔術後方支援警護兵たち。 元・家族の誰からも愛されなかった少年は、新しい家族から愛されることと癒されることを知って強くなる。 これは不遇な微魔力持ち魔剣士が凄惨な乳幼児期から幸福な少年期を経て、成長していく物語。 ※見切り発車で書いていきます(通常運転。笑) ※エブリスタでも同時連載。2021/6/5よりカクヨムでも後追い連載しています。 ※2021/9/15けっこう前に追いついて、カクヨムでも現在は同時掲載です。

扱いの悪い勇者パーティを啖呵切って離脱した俺、辺境で美女たちと国を作ったらいつの間にか国もハーレムも大陸最強になっていた。

みにぶた🐽
ファンタジー
いいねありがとうございます!反応あるも励みになります。 勇者パーティから“手柄横取り”でパーティ離脱した俺に残ったのは、地球の本を召喚し、読み終えた物語を魔法として再現できるチートスキル《幻想書庫》だけ。  辺境の獣人少女を助けた俺は、物語魔法で水を引き、結界を張り、知恵と技術で開拓村を発展させていく。やがてエルフや元貴族も加わり、村は多種族共和国へ――そして、旧王国と勇者が再び迫る。  だが俺には『三国志』も『孫子』も『トロイの木馬』もある。折伏し、仲間に変える――物語で世界をひっくり返す成り上がり建国譚、開幕!

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

処理中です...