要らねえチート物語

汐乃タツヤ

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第一章

第4話 犯人は目の前にいる

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 次の日の朝、俺が教室に入ると、クラスのみんなが一か所に集まって何事かを話していた。

「よう一樹かずき、みんな何を騒いでいるんだ?」
「おう聖也まさや。昨日、学校近くの塀に人の形をした大穴が空けられてたんだってよ」 

 考えるまでもなく俺がやらかした件だ。
 話を聞いた瞬間、胃がギュっと締め付けられる。

「そ、そんなことがあったんだ……。原因とか分かってるのか?」

 俺は全身が震えるのを必死で抑え込みながら、事態をどこまで把握されてるのか確認してみる。

「いや、まるで見当がつかないらしいぜ。1メートル以上の大穴みたいだから、誰かのイタズラでできる規模じゃないって話だ」
「そ、そうなんだ……」

 他の人の会話に耳を傾けて確認してみると、「これって、もしかして宇宙人のしわざ?」とか「何かの超常現象じゃね?」といった憶測おくそくばかりが聞こえてくる。
 とりあえず、塀を壊した犯人が俺だとはバレていないみたいだ。
 
「常識では考えられない塀の壊され方、やはりこれは大いなる力を持ちし者の仕業……」

 つぶやきにギクリとして声をした方を見てみると、いつの間にか三浦が近くに来ていた。

「それは……いや、うーん……でもなあ……、もし車が衝突したって人型の穴なんて空きはしないよなあ……」

 一樹かずきまで三浦の意見を一蹴せずに考え始める。

 まずい、確かにあんな漫画みたいな穴の空き方なら、車が原因って考える方が不自然だ。これに他の情報が加わったらまずいことになるんじゃ……。
 
「そうだ!! 昨日、帰りに歩いてたら、俺の横をビュンって何かが通り過ぎて行ったんだよ。速すぎて何だったのか分かんなかったけど」
「それ、アタシも!! その後におっきな音がしたんだよね」
「それなら塀を壊したのって、その凄え速い何かじゃね?」
  
 俺の思いも虚しく、別の集団から次々と目撃情報が聞こえてきた。

 ……はい、その通りです。
 高速で走っていた存在が俺だと特定はされなかったが、真相の一部を言い当てられて全身から冷や汗がふき出してくる。

「そんな現象まであったなんて……。やはり大いなる力を持ちし者が存在するのは確定的!!」

 そんな話に後押しされたのか三浦が真顔で叫んだ。
 
 ……うん、目の前にいるんだけどな。知らずに持たされた強大な力に振り回されてるのが正しいんだけど。
 
「なあ、聖也まさやはどう思うよ?」
「お、俺!?」
 
 動揺しまくっていた状態で一樹かずきに話題を振られて、明らかに上ずった声が出てきた。

 落ち着け!! ここで俺が変なそぶりを見せたら不審がられるぞ!!

「い、いやあ、人の形をした穴が塀に空いたりとか、その……高速で動く何か? って漫画やアニメみたいだなと思うけど、原因は想像もつかねえなあ……」

 ああ、我ながらセリフが白々しい。

「確かに、しかし本当に最近は変わった出来事が多いよな。お前が死んだって話がいきなり出てくるし、バレーでスパイクしたらボールが破裂したりとか」

 一樹かずきの言葉に三浦がピクリと反応すると何かに思い当たったように俺の方を見てきた。

 やめろ一樹かずき!! 三浦をそれ以上刺激しないでくれ!!
 
 三浦が何か言おうとしたが、その時チャイムが鳴り何とか事なきを得る。
 しかし、席に戻る際に三浦が俺の方をチラッと見てきた。

 まずい、こんな状況で美少女とはいえ、よりによって厨二病をこじらせた三浦に目を付けられるとは。
 こんな状況じゃなくて、普通の美少女に興味を持たれたら俺も舞い上がったかもしれないが、今の俺にはさらなる受難の幕開けにしか思えなかった。

「吉村君、ちょっといいかしら?」

 授業が終わって休み時間になった途端、三浦が俺に話しかけてきた。

「いいけど何?」

 そう言いながら俺は内心身構える。
 普通なら常識的にためらって質問しないような話題でも、人目を気にせず奇行を繰り返す三浦なら構わず聞きかねない。

「今回の一連の騒動から察するに……吉村君、あなた闇の力に目覚めたのね?」
「何をどう察したら、そんな結論が出てくる?」

 多少厨二病を患った人間でも言わないことを何のためらいもなく質問してきた。
 というか、闇の力って何だよ。

「そうね。騒動とあなたの関連に気が付いたからかしら?」
「……関連って何さ」

 動揺が顔に出ないように必死になりながら三浦に聞き返す。

「最初の騒動は、吉村君が車にはねられて死んだという情報が警察から確かに来ていたのに、実際には怪我1つさえ無かった。次にバレーボールが粉々に破裂した時、ボールを叩いたのはあなただという話だった……。騒動の内、少なくとも2つは確実にあなたが関与しているのよ」

 ぐっ、嫌なところに気が付きやがった!

「いやいや、だからって俺が力に目覚めたって結論は飛躍しすぎだって」
「そうでもないわよ。考えてみれば、丈夫なバレーボールがそこまで破裂するなんて通常あり得ない話。ならば人知を超えた力が加わったと考えるのが自然、でもあなたは力を使ったのに、それを誇示しているわけでもなかった」

 俺だってこんな力を渡されたなんて知らなかったからな、できれば知りたくもなかったよ。

「だからボールを割ったのは意図的ではなく、大いなる力を抑え切れなかった結果によるもの。そして抑え切れない程の大いなる力といえば闇の力に他ならない、どうしてあなたがそんな力を持つに至ったか……、それは車にはねられ、死の淵に立った時に闇の力に目覚めてこの世に蘇ったからよ!」

 普段こんな妄想を聞かされたらドン引きするところだが、闇の力以外の部分が大体合ってるせいで妙に不安になってくる。

 すると三浦が何を思ったかいきなり俺の耳元に顔を近づけてきた。

「そしてそれだけの力があれば、高速で移動したり塀に大穴を開けたりもできるでしょうね……」

 三浦の確信めいたささやきに俺の心臓が一気に跳ね上がった。

 待て、いくら俺の状況が疑わしくても具体的な証拠を掴まれたわけじゃない。ここはむしろ強気に押し返すべきだ!

「大体俺が闇の力に目覚めたって前提がおかしいだろ!! そもそも俺は車にはねられてなんかいない!!」

 思いのほか大きな声が出てしまい、何事かとクラスの皆がこちらを振り返る。

「……ふーん、そう……」

 少しの間の後、三浦が返事をすると俺から離れていく。

 しかし俺は安堵するよりも、あの三浦があっさり引き下がった事にむしろ嫌な予感を覚えた。
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