要らねえチート物語

汐乃タツヤ

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第一章

第7話 物怖じされないありがたさ

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 授業が終わった途端に、三浦が教室を出ていった。
 俺も慌てて三浦を追って屋上に向かう。
 
 屋上に着くなり、三浦が辺りをきょろきょろと見渡した。

「うん、他に人はいない……っと、ちょっと待ってて」

 三浦が周りの確認を終えると手早くスマホを操作し始める。 少しして、「はい」と言って画面を見せてきた。

「こ、これは……」
 
 画面を見て、俺の口から驚きの声がもれる。
 能力の制御が上手くいかずに俺が石を握っては砕きまくっている動画が流れていたからだ。さらに全力で空に投げた石が急降下して地面にクレーターを作った場面が流れ、そして超必殺技をぶっ放して大爆発を引き起こした場面が流れる。
 最後に、俺が慌ててその場を離れる光景が映し出されて動画が終わった。
 
「闇の力に目覚めたと思っていたけど、まさか世界を滅ぼせる程の力を持っていたなんてね……。これなら塀を容易く壊したのも納得だわ」
「ちょっと待て、何で俺の行動の一部始終が映ってるんだ!?」
 
 人が来ないだろうからあの森を選んだのに、まるで三浦が最初からいたかの……ように……。

「ま、まさか……」
「あなたに何か思惑とあると感じたから、後をつけさせてもらったけど、ここまで上手くいくとは思わなかったわ」

 いくらなんでも尾行までするか!? 普通!!
 こうなったら、三浦のスマホを奪い取って、動画を削除してしまえば……。
 
「あ、動画は他の所にも保存してるから、この動画を消しても無駄だからね?」

 三浦が俺の考えを見透かしたかのように、牽制けんせいしてきた。

「……それで俺にどうしろと?」

 観念して三浦が何を企んでいるのか尋ねる。
 流石に三浦の身に関わるような脅しで、口封じをするつもりにはなれなかった。

「そうね、まずは闇の力に目覚めた時の話を聞かせてもらえる?」
「闇の力じゃないんだけどな……。話すのはいいけど、聞いても信じられないと思うぞ?」
「実際にあれだけの能力を見たんだから、信じないわけがないでしょ」

 何の迷いもなく三浦が答えた。

 いくら能力を見たからってそこまでスパッと信じられるもんなのか?
 少し疑問に思ったが、三浦の希望通り説明を始める。
 
「そもそもは俺が車にはねられて、1回死んだ時のことだったんだけれども」
「昨日はさんざんシラを切っていたけど、やっぱり車にはねられてたんだ」
「いや、1回死んだけど生き返った、なんて普通言えないから、そこは許してくれよ」
「まあいいや。それで?」
「それで死後の世界みたいな所にセレスって新米女神がいて、その女神に生き返らせてもらったんだけど、その時に『間違えた!!』って叫んでて何だと思ってたら、ロクに制御もできないこんな能力を渡されてた」
「えっ、じゃあ女神の力なの?  それ」
 
 そう言うと三浦はいぶかしげな表情をした。

 なんでそこに引っかかるんだ。
 三浦の言ってる闇の力と大差ないと思うぞ。

「だって制御できない強大な力を渡すって、どう考えても邪神なんじゃ……」
「いや……相当なポンコツだったけど、邪神じゃないと思う……」

 そもそも俺が死んだ原因は俺自身にあるし、セレスが俺を生き返らせたのも、俺が掛けた迷惑の尻拭いだったわけだし。
 ……だけど、世界中を騒がせる原因になったって言われたら否定できないな……。

「生き返った時に、そのセレスって女神に契約とか結ばされてない?『この世に混沌こんとんをもたらす使徒となれ。さもなくばなんじの魂は冥界めいかいにて永遠の苦痛にさいなまれるだろう』とか」

 セレスのことをぼんやりと考えていた俺に、三浦が心配そうに尋ねてきた。

「そんな世界の脅威になるような命令なんか受けてないから! 生き返ったのは完全に無条件!!」
「そう? ならいいんだけど。それならせっかくの能力を何かに活かしたりできないの?」
「活かせる程、上手く能力を扱えていたらこんな騒ぎなんか起こしてないって……。力は強すぎるし、ロクに制御できないし、知力みたいに役に立ちそうなところは全く変わってないから、正直邪魔にしかなってない」

 これがモンスターのいる異世界だったら、まだ使いようがあると思う。だけど、異世界に行ったら行ったで、何かしら周りに迷惑を掛けそうな気がしてならない。

「ふーん……。ところで制御ができない時って右腕とかうずいたりする?」

 そう言いながら三浦が左手で右腕を掴んでみせる。
 『くっ、静まれ俺の右腕よ……』という厨二病お決まりの動作のつもりだろう。

「そんな前兆も無いから困ってるんだよ。多少力を入れただけで勝手に能力が発動するんだぜ? その発動を抑える手段も見つからないし」
「じゃあ力を抑えるために眼帯を着けた上で腕に包帯を巻いてみるのは?」
「それただの眼帯と包帯だから絶対効かないって。そんなので抑えられるなら、昨日の試行錯誤の時点で何とかなってると思う」
「ええー、試しにやってみればいいのに。身体に出てきた紋章とかを包帯で封印すれば違うかもしれないよ?」

 紋章って、どこまで厨二病の発想で進めるつもりだよ。

「能力を渡されても、身体に紋章なんか浮き上がらなかったよ。外見に変化は全然無い」
「え、紋章とか何も無いの?本当に?」
 
 そう言うと、本当に身体に変化がないのか確かめるように、三浦が顔を近づけて俺をジロジロと見始めた。

 ……そこまで真顔で俺の方を見てくると怖いんだけど。
 何で三浦はこれ程までにガンガン突っ込んでくるんだ。
 そう考えていると、1つの疑問が出てきた。

「なあ、三浦はこんな力を持っている俺を恐ろしいとか思わないのか?」

 化け物みたいな俺の力を昨日あれほど見ていたのに、三浦が俺に怯える様子はない。むしろ普段よりも距離感が近くなっている。
 三浦が重度の厨二病という点を差し引いても、能力に振り回されて色々な騒ぎを起こしている俺に、ここまで近づくのが不思議に思えた。
 普通に考えれば俺を危険人物と見なして、距離を置くか邪険じゃけんにするだろうに。

「恐ろしいとは思わないかな。空に投げた石を急降下させたり、光線を出して大爆発を起こした時は流石に驚いたけど、それで人が死んだ訳でもないし、意識して撃とうとすれば撃てるって話で、いきなり暴発したりはしないんでしょ?」
「確かに何もない状態から暴発はしないけど……」
 
 力を入れずに行動すれば、ひとまず能力は発動しない。
 ただ大爆発で死人が出なかったのは、光線を撃った時にたまたま空に向けて撃っただけに過ぎないから、下手したら大量殺人犯になっていたかもしれない。

「それにあの時だって、試しにやってみたら撃てちゃったって感じだったから、意図的に撃ちたかったわけじゃないんでしょ?」
「そうだよ!! ああなるって分かってたら絶対にやらなかった!!」
「そうだよね。能力を手に入れても、それを振りかざすどころか、普段よりも大人しくなってる感じだったから別に怖くないし、私自身特殊な能力を持てるなら持ちたいって思うタイプだから、私から恐れられてるって心配はしなくていいよ」
 
 人畜無害と言われている気がしなくもないが、俺の能力を知っても普通に接してくれるのは本当にありがたかった。
 でも三浦と同じように考えてくれる人が果たしてどれだけいるんだろうか……。
「それよりも能力で他に何ができるの?」

 気分が沈みかけていた俺に、三浦が質問してきた。

「え? 後は走った時に勝手にもの凄いスピードが出るようになったけど、スピードに目も反射神経もついていかないから、まともに扱えない」
「じゃあ塀を壊した原因って……」
「猛スピードで走り出した時に塀に差し掛かったんだけど、ぶつかるって思った時にはもう塀に激突してた。おまけに能力で身体が頑丈になったせいで、ぶつかった瞬間に塀があっさり壊れたよ」
「うーん……。能力を得てもなかなか上手くいかないものね」
「この場合、渡された能力の融通ゆうずうが効かな過ぎるからだと思うけど」
 
 なにせどれも力が強すぎるし、一旦能力が発動したら抑えられないからな。
 何故かゲームは力を入れなくても勝手にチート状態になっちまうし。

「さてと、色々聞かせてもらったし満足かな。そろそろ授業が始まるから教室に戻ろう。あ、能力の事とかは周りに話すつもりは無いから安心してね」
 
 三浦が俺にそう言うと、教室に戻って行った。

 ……最初三浦に呼び出された時にはどうなるかと思ったけど、俺の能力を知っても普通に接してくれるし、能力について口外しないと言ってくれたから助かったな。

 俺は重くなっていた心が少し軽くなったのを感じながら屋上の階段を下りて行った。
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