要らねえチート物語

汐乃タツヤ

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第二章

第21話 挨拶は丁寧に

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 スマホを確認してみると、三浦からのRAINで『飯田君とは上手く話せた?』と書いてあった。
 
 そういえばセレスをどうやって家に置いてもらうかばっかりを考えていて、事情を話して動画を送ってもらった三浦に連絡をするのを忘れていた。
 
『動画を送ってもらったおかげで、俺が能力で今までやってきたことを一樹かずきに早く信じてもらえたし、俺を気味悪がらずに受け入れてもらえた。おかげで助かったよ。ありがとう』と送ると、『そっか、飯田君に分かってもらえて本当に良かったね』と返ってきた。

 ……悪い、三浦。俺と一樹かずきの話し合い自体は上手くいったけど、一樹かずきの三浦に対するイメージは改善されるどころか、より悪化してしまった。
 このまま終わらせるのも申し訳ないし、何か三浦の好きそうな話題は……。

『それと、信じられないかもしれないけど、能力で騒動を起こさないために、セレスがこっちの世界に来てるんだ。ただ元の世界から離れたせいで弱体化した上に、住む所が無いから、生き返らせてもらった恩もあってウチに住むことになったよ。使えなくなった魔法は結構あるらしいけど、回復魔法は普通に使えてたし、防御魔法もまだ使えるらしい』
 
 三浦が好きであろう魔法の話題を混ぜつつ、現状を伝えてみる。すると、いきなり三浦からRAIN通話が掛かってきた。
 少し驚きながらも、母さんとセレスに「電話が来たから」と言って、一旦リビングから出た後、RAINの通話をタップする。

「はい、もし……」
「女神が今、家にいるの!? 魔法を使った時はどんな感じだった!?」
 
 俺の言葉が言い終わらない内に、テンションが上がり切った三浦の声が響く。

「あ、ああ……セレスが母さんに回復魔法を掛けたら、柔らかい光に包まれて腰の具合が良くなったって感じ。そういや、魔法を使う時に詠唱とかはしてなかったな」
「本当!? 私も行く!! 吉村君の家ってどこにあるの!? 住所教えて!!」

 え、話に食いつくとは思っていたけど、今から家に来んの?
 
「ちょっと待った、もう6時を過ぎてるんだけど今から出てきて大丈夫なの?」
「全然大丈夫!! 私のことは気にしないでいいから!! 早く場所を教えて!!」
 
 三浦の勢いが全く止まりそうにない。
 ……まあいいや。俺が三浦をきつけるような発言をしたわけだし、家に来られて別に困るわけじゃないからな。
 
 結局電車でやって来る三浦を駅まで迎えに行って、家まで案内することになった。

「あ、突然で悪いんだけど、家に人が来るからちょっと駅まで迎えに行ってくる」

 三浦との通話を終えた後、リビングのドアを開けて母さんにそう伝える。

「またいきなりねえ。人って誰よ?」
「……クラスメイト。ただし女子」

 少し悩んだ後、そう言い残して玄関に向かった。

 俺と三浦の関係性は正直微妙だ。
 友達という訳ではないが、俺の能力を知った上で色々と協力してくれている。
 とはいえ協力者って言い方も何か変な気がする。
 だから単なるクラスメイトではないけれど、クラスメイトとしか表現できなかった。

 駅に着いて改めてRAINを確認すると、『5分後に到着する電車に乗ってるから』と三浦からメッセージが来ていた。
 改札口近くで待っていると、電車が駅に到着したアナウンスが聞こえてくる。
 
 今気づいたけど、今日はセレスに会うだけだし、流石に魔法使いの恰好で来たりとかは無いよな……?
 
「吉村君!」
 
 声を掛けられた方向を見ると、改札口越しに三浦が俺に向けて手を挙げていた。 
 幸い俺の心配は杞憂きゆうに終わり、三浦の服装は黒の長袖ブラウスにひざ丈まである濃い茶色のスカートといった服装だった。
 
 ……三浦ってこうしていると洒落っ気のある美人だよな。
 少しぼうっとして三浦を見ていると、改札を通ってこちらに駆け寄って来た。

「お待たせ、じゃあ家まで案内をお願い!! 早く!!」

 三浦の興奮は収まっておらず、こちらに食いつかんばかりの勢いで距離を詰めてくる。
 ギラついた目と鬼気迫る感じが正直怖い。
 
 ……少し見惚れたのは気の迷いだな、きっと。

× × ×

「天使の件があるから言っておくけど、セレスに会うなり暴走してスマホで撮影したりはしないでくれよ。親もいるんだし」

 家に戻った辺りで、小さい天使を召喚した時に三浦がいきなり天使を連続撮影しだした前科を思い出し、釘を刺しておく。
 三浦を家に呼ぶまではいいとして、余りに暴走されるのは流石にいただけない。

「あ、うん。今度はそんなことしないから。挨拶もしっかりする」

 そう返事した三浦は駅で会った直後とは違い今は落ち着いている……ように見えるが実際の所は分からない。

 普通女子を家に上げるって凄い緊張するはずなのに、どうして相手が何かしでかすんじゃないかと心配しなきゃならないんだろうか。

 リビングのドアを開けると、セレスと母さんが何事かを話している最中だった。
 
「ただいま、さっき言った通りクラスメイトが来たよ」

 俺の言葉に、2人が俺の方に振り返る。
 その後、三浦がリビングに入ってきた。

「遅い時間に失礼します。私、吉村君と同じクラスの三浦みうら玲奈れいなです。前に、吉村君からセレスさんの話を聞いていました。さっきセレスさんがこちらに来ていると教えてもらいまして、実際にお会いしたくなりお邪魔しました」
 
 三浦が母さんに頭を下げた後に、そう言って挨拶する。

 宣言通り、三浦が礼儀正しく落ち着いた挨拶をしたのをホッとしながら見ていると、今度はセレスに向かって頭を下げ始めた。

「初めまして、あなたがセレスさんですか?」
「あ、はい。そうですけれど」

 そうセレスが返事をすると、三浦がいきなりセレスに駆け寄って両肩をつかみだした。

「セレスさんが来た世界ってどこですか!? やっぱり死後の世界!? それとも神界ですか!? 魔法を使ったって聞きましたけど、今着ている服にも何か魔法がかかっていたりするんですか!? それから使っている魔法の術式ってどんな感じなんです!?」

 挨拶を終わらせたとたんに、三浦が速攻で理性を吹っ飛ばしやがった!!
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