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第三章
第30話 想像・努力・自滅
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最初は力を入れずにボールを投げてみる。
これだと能力は発動しないが、数メートル程度の距離じゃないとパスが届きそうにない。
なので、能力が発動しない程度に軽く走って勢いを加えながらボールを投げると、10メートルくらいには飛距離が伸びた。
しばらく練習を繰り返し、パスは問題ないと確信できたので、次はシュート練習を始めたが、そこで壁にぶち当たった。
「ダメだ、シュートに全然勢いがない……」
能力を発動させないように加減してシュートすると、運動神経の無い俺でさえ簡単に捕れるくらいの遅い球になってしまう。
沢村との練習でこんなボールを投げたら、手抜きしているとしか思われないだろう。
仕方ない。能力発動の危険があるけど、もっと力を込めてボールを投げてみるか。
今までよりも力を入れてボールを投げ――その直後、顔面に強い衝撃が襲いかかった。
「ふげっ!!」
俺は身体ごと勢いよく後ろに回転して、地面に後頭部を激しく打ち付けた。
痛みにもだえていると、俺の近くにボールが転がって来る。
そ、そうか、能力で凶悪な威力になったボールがシールドに跳ね返って、顔面に直撃したんだ……。
今のを人にぶつけたら殺人確定だ。おまけにボールが早すぎて、自分で投げたのにロクに見えやしないし。
身体が頑丈になっているから怪我はしないが、それでも痛いものは痛い。
同じ目にあわないよう今度は力を弱めて投げてみるが、今度は弱すぎて話にならなかった。かといってちょっと力を強めて投げたら、たちまち殺人シュートに変貌して俺の腹に突き刺さる。
いてて……このままシュートを続けても、誰でも捕れる球か殺戮兵器になるかの2択だ……。何か他に方法はないのか。
そういえば、全力を出して必殺技になった時は、俺のイメージが多少なりとも反映されていたよな。じゃあボールがゆっくり飛んでいくようにイメージしながら全力で投げたらどうなるんだろうか。
今のままじゃ手詰まりだし、試しにやってみよう。
ゆっくり……ゆっくりボールが進むように……。
「たりゃあ!!」
投げたボールは俺のイメージが反映されて、不自然なくらいに遅いスピードでヘロヘロと飛んでいく。
「おっ、これは良い感じじゃないか?」
今回はスピードを遅くしすぎたけど、融通の利かない剛速球よりはずっとマシだ。
これを普通にボールを投げるのと同じくらいの速度に調整できれば、沢村との練習だって問題なくできるように――。
そう考えていると、投げたボールが地面に触れた。
その瞬間、凄まじい突風と衝撃破が爆音と共に巻き起こり、俺は後ろに吹き飛ばされてゴロゴロと転がる。風が収まると、ボールが当たった場所を中心として地面にクレーターができあがっていた。
「何でゆっくり飛んで行ったボールがこんな威力になるんだああああ!!!!」
あまりに理不尽な現象に、俺は叫ばずにはいられなかった。
× × ×
今度は普通の速さで飛ぶようにイメージしながら全力で投げてみる。
スピードはイメージ通りにできたが、シールドにボールが当たると、威力の凶悪さを物語るようにドガンと凄まじい音が立ち、空気の振動が俺の方にまで伝わってくる。
スピードが無くてもこの威力……。必殺技になったせいでボールに強烈なエネルギーが宿ったとしか思えない。このエネルギーを消さないと、どうにもならなさそうだ。
ひとまず、ボールが進むのと戻るの、両方をイメージして、お互いの力を打ち消せないかやってみよう。
「だりゃあ!!」
イメージしながら全力で投げたボールは目にも止まらぬ速さで飛んで行き、シールドにぶつかる直前でボールがピタリと空中で止まった。
何だ? と思っていると――。
「ぐはあ!!」
今までとは比べ物にならない程の強烈な一撃が俺のみぞおちに直撃して、猛烈な勢いで吹き飛び、シールドの壁に叩きつけられて地面に落下した。
い、いてえ……。
あまりの痛みに起き上がれず、うめくことしかできない。
前進と後退、両方の力を加えたらお互いが打ち消しあわずに、前に進んだ後、俺の方に戻ってきた必殺シュートをモロにくらったのだ。
チート能力を使ってここまで自滅する奴なんて俺ぐらいのもんじゃないだろうか……。
幸い骨は折れてはいないようだが、受けたダメージが半端じゃない。
早くセレスに回復魔法を掛けてもらおう……。
「セ、セレス……。悪いけど、シールドを解いて回復魔法を頼む……」
痛みのせいで弱々しくなっている声でセレスに呼びかけてみるが、反応が返ってこない。
「セレス? セレスー……」
地面を這いつくばって、シールドの所まで進み、ガンガンとシールドを叩いてみるが、それでも状況は変わらなかった。どうしてだ? どうして反応が返ってこない?
あ、そういやセレスが、このシールドは音声も遮断するって言ってたな……。
じゃあ、俺がシールドの中でどう騒いでも、セレスには伝わりようがないじゃないか。
回復ができないと分かり、しがみついていたシールドからズルズルと崩れ落ちる。
凄いと思っていた音声遮断にまさかこんな欠点があるとは。シールドの張る時間を30分と短めに頼んでおいてよかった……。
もし3時間とか言っていたら、一切融通がきかずに時間終了まで閉じ込められていたところだ。
少しして何とか痛みから立ち直り、ヨロヨロと起き上がる。
このままじゃ身が持たない。何か身を守る手段はないか……。
その時、地面に転がっているボールに目が止まった。
そうだ。セレスが防御魔法を掛けたように、自分に防御の必殺技を使えばいいんだ。
そうと分かれば、ボールと同じ光が自分を覆うようにイメージして……。
「シールド!!」
俺が叫ぶと、白い光の膜が俺の全身を包み込む。
よし、上手くいったな。これで安心して練習ができる。
「あれ!?」
ホッとして集中を解いた瞬間、俺を覆っている防御の光が消え去った。
慌てて集中しなおすと、再び防御の光が現れる。
もしかして集中していないと、この防御を維持できないのか?
どうもこの能力、防御はそんなに得意じゃないらしい。
とはいえ、無いよりはマシだ。
防御状態を維持するよう気をつけながら、ボールを手に取り全力で投げてみる。
「ん!?」
全力を出したのに必殺シュートではなく、剛速球の殺人シュートに戻っていた。
防御がしっかり効いているおかげで、跳ね返ったボールに当たっても全然痛くはないがどういうことだ? 何度か試してみても結果は変わらない。
そういえば、防御に意識を向け過ぎて、必殺シュートをイメージしていなかった。
防御とシュート、両方に集中しないとダメなのか。
さて、今度はどんなイメージでシュートするか。
さっきはボールの進行方向に力を加えてひどい目にあったからな……。
ボールの回転に力を加えるなら、こっちにボールが飛んで来ないだろう。
「てやっ!」
右回転と左回転、両方をイメージしながらボールを全力で投げる。
するとボールが回転しながら右にカーブして、円のような軌道を描きながらこっちへ戻ってきた。
ちょっと、待て!! ボールが回転するだけじゃなくて軌道まで回転するのかよ!!
あっ、今度はボールを投げる方に意識を集中しすぎたせいで防御が解け……。
「ぶふぇっ!!」
ボールが横っ腹に直撃して、俺は縦回転をしながら再び空中を舞い、シールドに激突した後、頭から地面に打ち付けた。
な、何で、普通にボールを投げようと練習するだけで、こんな目に遭わなきゃいけ……ない……んだ……。
度重なるダメージに目がかすんでいき、俺はそのまま意識を失った。
これだと能力は発動しないが、数メートル程度の距離じゃないとパスが届きそうにない。
なので、能力が発動しない程度に軽く走って勢いを加えながらボールを投げると、10メートルくらいには飛距離が伸びた。
しばらく練習を繰り返し、パスは問題ないと確信できたので、次はシュート練習を始めたが、そこで壁にぶち当たった。
「ダメだ、シュートに全然勢いがない……」
能力を発動させないように加減してシュートすると、運動神経の無い俺でさえ簡単に捕れるくらいの遅い球になってしまう。
沢村との練習でこんなボールを投げたら、手抜きしているとしか思われないだろう。
仕方ない。能力発動の危険があるけど、もっと力を込めてボールを投げてみるか。
今までよりも力を入れてボールを投げ――その直後、顔面に強い衝撃が襲いかかった。
「ふげっ!!」
俺は身体ごと勢いよく後ろに回転して、地面に後頭部を激しく打ち付けた。
痛みにもだえていると、俺の近くにボールが転がって来る。
そ、そうか、能力で凶悪な威力になったボールがシールドに跳ね返って、顔面に直撃したんだ……。
今のを人にぶつけたら殺人確定だ。おまけにボールが早すぎて、自分で投げたのにロクに見えやしないし。
身体が頑丈になっているから怪我はしないが、それでも痛いものは痛い。
同じ目にあわないよう今度は力を弱めて投げてみるが、今度は弱すぎて話にならなかった。かといってちょっと力を強めて投げたら、たちまち殺人シュートに変貌して俺の腹に突き刺さる。
いてて……このままシュートを続けても、誰でも捕れる球か殺戮兵器になるかの2択だ……。何か他に方法はないのか。
そういえば、全力を出して必殺技になった時は、俺のイメージが多少なりとも反映されていたよな。じゃあボールがゆっくり飛んでいくようにイメージしながら全力で投げたらどうなるんだろうか。
今のままじゃ手詰まりだし、試しにやってみよう。
ゆっくり……ゆっくりボールが進むように……。
「たりゃあ!!」
投げたボールは俺のイメージが反映されて、不自然なくらいに遅いスピードでヘロヘロと飛んでいく。
「おっ、これは良い感じじゃないか?」
今回はスピードを遅くしすぎたけど、融通の利かない剛速球よりはずっとマシだ。
これを普通にボールを投げるのと同じくらいの速度に調整できれば、沢村との練習だって問題なくできるように――。
そう考えていると、投げたボールが地面に触れた。
その瞬間、凄まじい突風と衝撃破が爆音と共に巻き起こり、俺は後ろに吹き飛ばされてゴロゴロと転がる。風が収まると、ボールが当たった場所を中心として地面にクレーターができあがっていた。
「何でゆっくり飛んで行ったボールがこんな威力になるんだああああ!!!!」
あまりに理不尽な現象に、俺は叫ばずにはいられなかった。
× × ×
今度は普通の速さで飛ぶようにイメージしながら全力で投げてみる。
スピードはイメージ通りにできたが、シールドにボールが当たると、威力の凶悪さを物語るようにドガンと凄まじい音が立ち、空気の振動が俺の方にまで伝わってくる。
スピードが無くてもこの威力……。必殺技になったせいでボールに強烈なエネルギーが宿ったとしか思えない。このエネルギーを消さないと、どうにもならなさそうだ。
ひとまず、ボールが進むのと戻るの、両方をイメージして、お互いの力を打ち消せないかやってみよう。
「だりゃあ!!」
イメージしながら全力で投げたボールは目にも止まらぬ速さで飛んで行き、シールドにぶつかる直前でボールがピタリと空中で止まった。
何だ? と思っていると――。
「ぐはあ!!」
今までとは比べ物にならない程の強烈な一撃が俺のみぞおちに直撃して、猛烈な勢いで吹き飛び、シールドの壁に叩きつけられて地面に落下した。
い、いてえ……。
あまりの痛みに起き上がれず、うめくことしかできない。
前進と後退、両方の力を加えたらお互いが打ち消しあわずに、前に進んだ後、俺の方に戻ってきた必殺シュートをモロにくらったのだ。
チート能力を使ってここまで自滅する奴なんて俺ぐらいのもんじゃないだろうか……。
幸い骨は折れてはいないようだが、受けたダメージが半端じゃない。
早くセレスに回復魔法を掛けてもらおう……。
「セ、セレス……。悪いけど、シールドを解いて回復魔法を頼む……」
痛みのせいで弱々しくなっている声でセレスに呼びかけてみるが、反応が返ってこない。
「セレス? セレスー……」
地面を這いつくばって、シールドの所まで進み、ガンガンとシールドを叩いてみるが、それでも状況は変わらなかった。どうしてだ? どうして反応が返ってこない?
あ、そういやセレスが、このシールドは音声も遮断するって言ってたな……。
じゃあ、俺がシールドの中でどう騒いでも、セレスには伝わりようがないじゃないか。
回復ができないと分かり、しがみついていたシールドからズルズルと崩れ落ちる。
凄いと思っていた音声遮断にまさかこんな欠点があるとは。シールドの張る時間を30分と短めに頼んでおいてよかった……。
もし3時間とか言っていたら、一切融通がきかずに時間終了まで閉じ込められていたところだ。
少しして何とか痛みから立ち直り、ヨロヨロと起き上がる。
このままじゃ身が持たない。何か身を守る手段はないか……。
その時、地面に転がっているボールに目が止まった。
そうだ。セレスが防御魔法を掛けたように、自分に防御の必殺技を使えばいいんだ。
そうと分かれば、ボールと同じ光が自分を覆うようにイメージして……。
「シールド!!」
俺が叫ぶと、白い光の膜が俺の全身を包み込む。
よし、上手くいったな。これで安心して練習ができる。
「あれ!?」
ホッとして集中を解いた瞬間、俺を覆っている防御の光が消え去った。
慌てて集中しなおすと、再び防御の光が現れる。
もしかして集中していないと、この防御を維持できないのか?
どうもこの能力、防御はそんなに得意じゃないらしい。
とはいえ、無いよりはマシだ。
防御状態を維持するよう気をつけながら、ボールを手に取り全力で投げてみる。
「ん!?」
全力を出したのに必殺シュートではなく、剛速球の殺人シュートに戻っていた。
防御がしっかり効いているおかげで、跳ね返ったボールに当たっても全然痛くはないがどういうことだ? 何度か試してみても結果は変わらない。
そういえば、防御に意識を向け過ぎて、必殺シュートをイメージしていなかった。
防御とシュート、両方に集中しないとダメなのか。
さて、今度はどんなイメージでシュートするか。
さっきはボールの進行方向に力を加えてひどい目にあったからな……。
ボールの回転に力を加えるなら、こっちにボールが飛んで来ないだろう。
「てやっ!」
右回転と左回転、両方をイメージしながらボールを全力で投げる。
するとボールが回転しながら右にカーブして、円のような軌道を描きながらこっちへ戻ってきた。
ちょっと、待て!! ボールが回転するだけじゃなくて軌道まで回転するのかよ!!
あっ、今度はボールを投げる方に意識を集中しすぎたせいで防御が解け……。
「ぶふぇっ!!」
ボールが横っ腹に直撃して、俺は縦回転をしながら再び空中を舞い、シールドに激突した後、頭から地面に打ち付けた。
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