37 / 50
第三章
第35話 練習を終えて
しおりを挟む
比較的地面が荒れていない場所を選んでビニールシートを敷き、おにぎりに卵焼きやウインナーが詰め込まれたバスケットと大きめの水筒を取り出して昼ご飯にする。練習に一樹も参加すると知った母さんがわざわざ用意してくれたのだ。
セレスがバスケットの蓋を開けると、一樹が目を輝かせる。
「このお弁当、セレスさんが作ってくれたんですか!?」
「いえ、カズキさんも練習に加わると聞いて、マサヤのお母様が用意して下さったんです。」
「えっ、そうなんですね! いやー、おばさんには感謝しないといけないなー……」
一樹が取り繕うものの、期待が外れてテンションが落ちたのは隠しきれていなかった。まあ気持ちは分かるけどな。
「カズキさん、お茶を入れますか?」
「はい、お願いします!」
セレスがお茶を入れると一樹が一気飲みしてプハーッと息を吐く。
「ありがとうございます! 美味しかったです!!」
「そ、そうですか……」
いくらセレスが入れたお茶だからってそのリアクションはオーバーだろ。当のセレスも反応に困ってるし。
そんなこんなで昼休みも終わり、守備練習を再開する。
能力の暴発を避けるため、とにかくボールを反射的によけないように、そして腕に力を入れ過ぎないように気をつけながら一樹の投げるボールに対処する。
能力の発動はしないで済んでいるけど、ボールがなかなか捕れない。
「お?」
偶然、ボールを上半身で受け止めながら捕る形になり、今までで一番上手くキャッチできた。
そうか、むやみに腕を使うよりも、胴体で受け止めてからボールを捕る方がやりやすいんだ。頑丈になってるこの身体なら他の人間のシュートなんて当たっても痛くもないし、腕だけの力で捕るよりもボールを潰す危険も少ない。次からはこうしよう。
やり方を変えてから、だんだんボールを捕れるようになり守備に少し自信が付いたところで、シュートの練習に戻る。
あれからさらに距離を縮め、4メートルまで近づいてもエネルギーを使い切れるようになった。しかしそれより近づいてボールを投げると、どれだけ集中したとしても光線が残ってしまう。
それでもかなりの成果だと割り切り、後は光線が見えないようにした上で、4メートル程離れていれば確実に成功できるように練習を重ねた。
そして――。
「じゃあ、行くぞ」
いよいよ周りを囲んでいたシールドとボールに掛けた防御魔法を解除し、実際の状況に近づけた上で、土壁に向けてボールを投げる。
ボールは何事もなく飛んでいき……土壁に当たると普通に跳ね返ってきた。
よっしゃ!! セレスの魔法が無い状況でも成功したぞ!!
それから何度か同様に試し、問題がないのを確認できてホッとしていると、一樹《かずき》が覚悟を決めたような表情でセレスに話しかけた。
「セレスさん、俺に掛かっている防御魔法を解除してください」
「え!? 魔法を外せばあなたの身を守るものが無くなってしまいますよ!?」
「それは分かってます。ただ、本番は魔法無しで聖也がボールを投げなきゃいけないから、どうしてもやる必要があるんです」
「わ、分かりました……」
一樹の言ってることは正しい。だからこそ、被害を出さないようにするためにここまで練習してきたんだし、実際に防御魔法が無くても上手くいった。
だけど、それは命に関わる心配が無いからまだ安心して投げられたって話だ。
防御魔法が無い状態で必殺シュートのエネルギーを受けたら確実に死ぬ。そんな状況では俺にかかるプレッシャーが半端じゃなかった。
そしてセレスが一樹の防御魔法を本当に解除する。
マ、マジでやるのか……。
「大丈夫だって! これまで何回も成功させたじゃねえか!!」
勇気づけるように一樹が俺を励ました。
正直こんな後の無い状況でボールを投げたくなかった。しかし、ここでやめると今まで練習してきた意味が無くなってしまう。
腹をくくって、練習してきた通りにイメージして俺は全力でボールを投げた。
頼むから成功してくれ!!
祈るような気持ちで投げたボールを一樹が受け止める。……そして何事も起きなかった。
よ、良かった。一樹は無事だ……。
プレッシャーから解放されて俺は大きく息を吐いた。
「ほらな! 俺の言った通り、ちゃんとできたじゃねえか!!」
駆け寄ってきた一樹が腕を伸ばして肩を組んでくる。その時俺は一樹の膝が震えているのに気づいた。……さっきはああ言ってたけど、一樹もやっぱり怖かったんだな。
こうして3日間の練習が終わり、俺はどうにかドッジボールだけはまともにできるようになった。
× × ×
そうして迎えた月曜日の朝。
「沢村、約束通り放課後にドッジボールの練習をしようぜ」
「おう!! よろしくな!!」
「まあ、他の連中の参加は期待できないけど、その分は俺が付き合うから」
「えっ!! いいのか!?」
俺の言葉に驚いた沢村が目を丸くする。
「いいって、こんな時ぐらいはな」
「あ、ありがとうな吉村!! よーしやってやるぞ――!!」
そう言うと沢村が心底嬉しそうな顔をした。
……あそこまで一樹が練習に付き合ってくれたんだ。それなら沢村との練習は絶対に半端で終わらせない。
俺は自分なりにそう決心を固めていた。
セレスがバスケットの蓋を開けると、一樹が目を輝かせる。
「このお弁当、セレスさんが作ってくれたんですか!?」
「いえ、カズキさんも練習に加わると聞いて、マサヤのお母様が用意して下さったんです。」
「えっ、そうなんですね! いやー、おばさんには感謝しないといけないなー……」
一樹が取り繕うものの、期待が外れてテンションが落ちたのは隠しきれていなかった。まあ気持ちは分かるけどな。
「カズキさん、お茶を入れますか?」
「はい、お願いします!」
セレスがお茶を入れると一樹が一気飲みしてプハーッと息を吐く。
「ありがとうございます! 美味しかったです!!」
「そ、そうですか……」
いくらセレスが入れたお茶だからってそのリアクションはオーバーだろ。当のセレスも反応に困ってるし。
そんなこんなで昼休みも終わり、守備練習を再開する。
能力の暴発を避けるため、とにかくボールを反射的によけないように、そして腕に力を入れ過ぎないように気をつけながら一樹の投げるボールに対処する。
能力の発動はしないで済んでいるけど、ボールがなかなか捕れない。
「お?」
偶然、ボールを上半身で受け止めながら捕る形になり、今までで一番上手くキャッチできた。
そうか、むやみに腕を使うよりも、胴体で受け止めてからボールを捕る方がやりやすいんだ。頑丈になってるこの身体なら他の人間のシュートなんて当たっても痛くもないし、腕だけの力で捕るよりもボールを潰す危険も少ない。次からはこうしよう。
やり方を変えてから、だんだんボールを捕れるようになり守備に少し自信が付いたところで、シュートの練習に戻る。
あれからさらに距離を縮め、4メートルまで近づいてもエネルギーを使い切れるようになった。しかしそれより近づいてボールを投げると、どれだけ集中したとしても光線が残ってしまう。
それでもかなりの成果だと割り切り、後は光線が見えないようにした上で、4メートル程離れていれば確実に成功できるように練習を重ねた。
そして――。
「じゃあ、行くぞ」
いよいよ周りを囲んでいたシールドとボールに掛けた防御魔法を解除し、実際の状況に近づけた上で、土壁に向けてボールを投げる。
ボールは何事もなく飛んでいき……土壁に当たると普通に跳ね返ってきた。
よっしゃ!! セレスの魔法が無い状況でも成功したぞ!!
それから何度か同様に試し、問題がないのを確認できてホッとしていると、一樹《かずき》が覚悟を決めたような表情でセレスに話しかけた。
「セレスさん、俺に掛かっている防御魔法を解除してください」
「え!? 魔法を外せばあなたの身を守るものが無くなってしまいますよ!?」
「それは分かってます。ただ、本番は魔法無しで聖也がボールを投げなきゃいけないから、どうしてもやる必要があるんです」
「わ、分かりました……」
一樹の言ってることは正しい。だからこそ、被害を出さないようにするためにここまで練習してきたんだし、実際に防御魔法が無くても上手くいった。
だけど、それは命に関わる心配が無いからまだ安心して投げられたって話だ。
防御魔法が無い状態で必殺シュートのエネルギーを受けたら確実に死ぬ。そんな状況では俺にかかるプレッシャーが半端じゃなかった。
そしてセレスが一樹の防御魔法を本当に解除する。
マ、マジでやるのか……。
「大丈夫だって! これまで何回も成功させたじゃねえか!!」
勇気づけるように一樹が俺を励ました。
正直こんな後の無い状況でボールを投げたくなかった。しかし、ここでやめると今まで練習してきた意味が無くなってしまう。
腹をくくって、練習してきた通りにイメージして俺は全力でボールを投げた。
頼むから成功してくれ!!
祈るような気持ちで投げたボールを一樹が受け止める。……そして何事も起きなかった。
よ、良かった。一樹は無事だ……。
プレッシャーから解放されて俺は大きく息を吐いた。
「ほらな! 俺の言った通り、ちゃんとできたじゃねえか!!」
駆け寄ってきた一樹が腕を伸ばして肩を組んでくる。その時俺は一樹の膝が震えているのに気づいた。……さっきはああ言ってたけど、一樹もやっぱり怖かったんだな。
こうして3日間の練習が終わり、俺はどうにかドッジボールだけはまともにできるようになった。
× × ×
そうして迎えた月曜日の朝。
「沢村、約束通り放課後にドッジボールの練習をしようぜ」
「おう!! よろしくな!!」
「まあ、他の連中の参加は期待できないけど、その分は俺が付き合うから」
「えっ!! いいのか!?」
俺の言葉に驚いた沢村が目を丸くする。
「いいって、こんな時ぐらいはな」
「あ、ありがとうな吉村!! よーしやってやるぞ――!!」
そう言うと沢村が心底嬉しそうな顔をした。
……あそこまで一樹が練習に付き合ってくれたんだ。それなら沢村との練習は絶対に半端で終わらせない。
俺は自分なりにそう決心を固めていた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~
ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。
王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。
15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。
国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。
これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
その狂犬戦士はお義兄様ですが、何か?
行枝ローザ
ファンタジー
美しき侯爵令嬢の側には、強面・高背・剛腕と揃った『狂犬戦士』と恐れられる偉丈夫がいる。
貧乏男爵家の五人兄弟末子が養子に入った魔力を誇る伯爵家で彼を待ち受けていたのは、五歳下の義妹と二歳上の義兄、そして王都随一の魔術後方支援警護兵たち。
元・家族の誰からも愛されなかった少年は、新しい家族から愛されることと癒されることを知って強くなる。
これは不遇な微魔力持ち魔剣士が凄惨な乳幼児期から幸福な少年期を経て、成長していく物語。
※見切り発車で書いていきます(通常運転。笑)
※エブリスタでも同時連載。2021/6/5よりカクヨムでも後追い連載しています。
※2021/9/15けっこう前に追いついて、カクヨムでも現在は同時掲載です。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
扱いの悪い勇者パーティを啖呵切って離脱した俺、辺境で美女たちと国を作ったらいつの間にか国もハーレムも大陸最強になっていた。
みにぶた🐽
ファンタジー
いいねありがとうございます!反応あるも励みになります。
勇者パーティから“手柄横取り”でパーティ離脱した俺に残ったのは、地球の本を召喚し、読み終えた物語を魔法として再現できるチートスキル《幻想書庫》だけ。
辺境の獣人少女を助けた俺は、物語魔法で水を引き、結界を張り、知恵と技術で開拓村を発展させていく。やがてエルフや元貴族も加わり、村は多種族共和国へ――そして、旧王国と勇者が再び迫る。
だが俺には『三国志』も『孫子』も『トロイの木馬』もある。折伏し、仲間に変える――物語で世界をひっくり返す成り上がり建国譚、開幕!
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる