転移先は日本でしたが、あまりにも楽しいのでスローライフを目指します!~従者(ヤンデレ)がついてきた件~

雨宮 叶月

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第4章

学園祭①

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 プレゼンコンペティションの余韻が、まだキャンパスに残っている頃。
 大学は、急に慌ただしくなった。

「篠原さん、ちょっといい?」
「星羅ちゃん、今少し時間ある?」
「ごめん、これお願いできないかな!」

 ――気づけば、声をかけられない日がない。

 理由ははっきりしていた。
 プレゼンで名前が出てから、私の印象が少し変わったらしい。

 「落ち着いてて頼れる」
 「話し方が柔らかい」
 「なんか一緒にいると安心する」

 そんな評価が、勝手に広まっていた。

 私は戸惑いながらも、首を傾げる。

「えっと……私でいいなら」

 その一言で、話はどんどん進んでいった。



 学園祭実行委員会の部屋は、資料と装飾案で溢れていた。

「メイドカフェの受付、星羅ちゃんにお願いしたいんだけど!」
「あと、おばけやしき!お化け役、向いてると思う!」

「えっ……二つ、ですか?」

 一瞬、言葉に詰まる。
 正直、そんなに目立つつもりはなかった。

 でも、期待に満ちた視線が集まる。

「絶対いいって!」
「星羅さんなら安心だし!」
「無理なら言ってね!」

 ――無理、ではない。
 むしろ、胸の奥が少しだけくすぐったい。

 必要とされている。
 自分が、誰かの役に立てる。

「……分かりました。やってみます」

 一瞬、場が沸いた。

「やった!」
「ありがとう、助かる!」

 私は思わず小さく笑ってしまう。
 こんなふうに、自然に輪の中に入れる日が来るなんて。



 その日の夜。

 私は少しだけ緊張しながら、隼人さんに話しかけた。

「隼人さん、あの……」

「どうしました?」

 ソファで書類を読んでいた隼人さんが、静かに顔を上げる。

「今度、大学の学園祭があるんです」

「ええ。知っていますよ」

 即答だった。
 やっぱり、何でも知っている。

「それで……私、準備と当日の担当をいくつか任されて」

「任された?」

 ほんの一瞬、声のトーンが変わる。
 でも、すぐに元に戻る。

「メイドカフェの受付と、おばけやしきのお化け役で……」

 言い終える前に、隼人さんが小さく息を吐いた。

「……随分、忙しくなりますね」

「はい。でも、みんなが期待してくれて……」

 私は意を決して、続けた。

「それで、お願いがあって」

「お願い?」

 私は彼をまっすぐ見た。

「学園祭、来てほしいです。絶対」

 一瞬の沈黙。

 隼人さんの視線が、じっと私を捉える。
 逃げ場のないほど、真っ直ぐに。

「……“絶対”、ですか」

「はい。一緒に、回りたいんです」

 それは嘘じゃない。
 ただ、純粋に――隼人さんと楽しみたかった。

 彼はゆっくりと立ち上がり、私の前に立つ。

「分かりました」

優しく微笑む。

「必ず行きますよ。絶対一緒に回りましょうね。俺も楽しみです。」

「ありがとうございます。嬉しいです」

 隼人さんは微笑んだ。
 優しくて、いつも通りで――

 でも、その瞳の奥で何かが静かに熱を帯びていることに、私はまだ気づいていなかった。
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