3 / 4
純粋
しおりを挟む
ゼノは細い路地に入っていった。
そこには、一人の少年がいた。ぼんやりと壁に背を預けている。
少年は光を失った目でゼノを見た。
「……お兄さん、誰?」
「ゼノ」
「はは、そういう意味じゃないよ。」
少年はゼノに一歩近付いた。
「お前の夢は何だ?」
「夢?……まずは、美味しいご飯をお腹いっぱい食べることかなぁ。」
「そうか。」
ゼノは少年の目を見た。
「お前の名は?」
「……ルイ。」
「ルイ、私に着いて来い。夢が叶う。」
「えっ、本当?お兄さんに着いて行くよ!」
ルイは目を輝かせた。
ゼノはとりあえず適当な定食屋に入った。
「好きなものを頼め。」
「えぇ……じゃあこれ。」
ルイが指さしたのはハンバーグ定食だった。
「分かった。」
ゼノは焼き魚定食を頼んだ。
「いただきます。」
少年が一口食べた。みるみる顔が明るくなっていく。
「お兄さん、これすっごく美味しい!人生で一番幸せ!」
「そうか。」
その顔を見るのは苦ではなく、口元がほんのわずか緩んでいた。
やがてゼノとルイは定食屋を出た。
「お兄さんありがとう!夢が叶うってとっても嬉しいんだね……!お腹いっぱい食べれるってこんなにも幸せなことなんだね!」
「そうだな。」
ゼノはルイの目を見つめ返した。
「ルイ、お前はどんな景色が見たい?」
「えー?僕ね、お祭りって言うのが見たい!友達のおじさんが言っていたんだけどね、にぎやかで、楽しいんだって!そのおじさん、死んじゃったけど。」
「祭りなら今からでも見に行けるが。」
ルイは首を振った。
「僕、体が弱いんだ。だからあんまり遠くには行けない。」
ルイは弱々しく笑った。
「……ルイは今何歳だ?」
「分かんない。でも、5年は経ってるよ。」
ルイはうつむいた。
「僕はずっと孤児で、本当はご飯があるだけでも幸せなことなんだ。これ以上良いことがあったら、どんな不幸が待ってるのか、って怖くなっちゃう。」
ルイの目から光が消えた。
「……そうか。では、1週間だけルイと一緒にいてもいいか?」
「いいよ。それくらいなら。」
ゼノは、ここでルイを医者に見せることもできた。しかしそうしなかったのは、『死』の運命を変えることは許されないと知っていたからだ。
それから3日後、ルイが血を吐いた。ゼノは医者のもとへ連れて行った。そして、ベッドに寝かせた。
ルイが咳き込む。体温が急激に下がっていた。
「お兄さん、僕すごく眠いなぁ。寝てもいい?ここって安全?」
「ああ。」
ゼノはルイの手を握った。
「残光《イリュージョン》」
景色が変わった。
ゼノとルイは、海を見ていた。広くて、青くて、空との境界線が滲んでいて、綺麗だと思った。
ああそうか、この少年は海が見たかったのだ。
ルイはきらきらとした目で海を見ていた。
「……友達だったおじさんにね、海ってすっごく広くて、青くて、見てると気分が良いんだって教えてもらったの。その通りだね!」
景色が消えた。しかし、残像が青い。
ルイが瞼を半分閉じていた。
「お兄さん、ありがとう。お兄さんの魔法って、素敵だね!お兄さんの夢も、叶うと良いね。」
ゼノははっとした。私の夢。私の見たい景色は何なのだろう。
「……ルイ。安らかに眠れ。」
ルイは頷いて、瞼を完全に閉じた。
そこには、一人の少年がいた。ぼんやりと壁に背を預けている。
少年は光を失った目でゼノを見た。
「……お兄さん、誰?」
「ゼノ」
「はは、そういう意味じゃないよ。」
少年はゼノに一歩近付いた。
「お前の夢は何だ?」
「夢?……まずは、美味しいご飯をお腹いっぱい食べることかなぁ。」
「そうか。」
ゼノは少年の目を見た。
「お前の名は?」
「……ルイ。」
「ルイ、私に着いて来い。夢が叶う。」
「えっ、本当?お兄さんに着いて行くよ!」
ルイは目を輝かせた。
ゼノはとりあえず適当な定食屋に入った。
「好きなものを頼め。」
「えぇ……じゃあこれ。」
ルイが指さしたのはハンバーグ定食だった。
「分かった。」
ゼノは焼き魚定食を頼んだ。
「いただきます。」
少年が一口食べた。みるみる顔が明るくなっていく。
「お兄さん、これすっごく美味しい!人生で一番幸せ!」
「そうか。」
その顔を見るのは苦ではなく、口元がほんのわずか緩んでいた。
やがてゼノとルイは定食屋を出た。
「お兄さんありがとう!夢が叶うってとっても嬉しいんだね……!お腹いっぱい食べれるってこんなにも幸せなことなんだね!」
「そうだな。」
ゼノはルイの目を見つめ返した。
「ルイ、お前はどんな景色が見たい?」
「えー?僕ね、お祭りって言うのが見たい!友達のおじさんが言っていたんだけどね、にぎやかで、楽しいんだって!そのおじさん、死んじゃったけど。」
「祭りなら今からでも見に行けるが。」
ルイは首を振った。
「僕、体が弱いんだ。だからあんまり遠くには行けない。」
ルイは弱々しく笑った。
「……ルイは今何歳だ?」
「分かんない。でも、5年は経ってるよ。」
ルイはうつむいた。
「僕はずっと孤児で、本当はご飯があるだけでも幸せなことなんだ。これ以上良いことがあったら、どんな不幸が待ってるのか、って怖くなっちゃう。」
ルイの目から光が消えた。
「……そうか。では、1週間だけルイと一緒にいてもいいか?」
「いいよ。それくらいなら。」
ゼノは、ここでルイを医者に見せることもできた。しかしそうしなかったのは、『死』の運命を変えることは許されないと知っていたからだ。
それから3日後、ルイが血を吐いた。ゼノは医者のもとへ連れて行った。そして、ベッドに寝かせた。
ルイが咳き込む。体温が急激に下がっていた。
「お兄さん、僕すごく眠いなぁ。寝てもいい?ここって安全?」
「ああ。」
ゼノはルイの手を握った。
「残光《イリュージョン》」
景色が変わった。
ゼノとルイは、海を見ていた。広くて、青くて、空との境界線が滲んでいて、綺麗だと思った。
ああそうか、この少年は海が見たかったのだ。
ルイはきらきらとした目で海を見ていた。
「……友達だったおじさんにね、海ってすっごく広くて、青くて、見てると気分が良いんだって教えてもらったの。その通りだね!」
景色が消えた。しかし、残像が青い。
ルイが瞼を半分閉じていた。
「お兄さん、ありがとう。お兄さんの魔法って、素敵だね!お兄さんの夢も、叶うと良いね。」
ゼノははっとした。私の夢。私の見たい景色は何なのだろう。
「……ルイ。安らかに眠れ。」
ルイは頷いて、瞼を完全に閉じた。
0
あなたにおすすめの小説
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
王子様への置き手紙
あおき華
恋愛
フィオナは王太子ジェラルドの婚約者。王宮で暮らしながら王太子妃教育を受けていた。そんなある日、ジェラルドと侯爵家令嬢のマデリーンがキスをする所を目撃してしまう。ショックを受けたフィオナは自ら修道院に行くことを決意し、護衛騎士のエルマーとともに王宮を逃げ出した。置き手紙を読んだ皇太子が追いかけてくるとは思いもせずに⋯⋯
小説家になろうにも掲載しています。
さようならの定型文~身勝手なあなたへ
宵森みなと
恋愛
「好きな女がいる。君とは“白い結婚”を——」
――それは、夢にまで見た結婚式の初夜。
額に誓いのキスを受けた“その夜”、彼はそう言った。
涙すら出なかった。
なぜなら私は、その直前に“前世の記憶”を思い出したから。
……よりによって、元・男の人生を。
夫には白い結婚宣言、恋も砕け、初夜で絶望と救済で、目覚めたのは皮肉にも、“現実”と“前世”の自分だった。
「さようなら」
だって、もう誰かに振り回されるなんて嫌。
慰謝料もらって悠々自適なシングルライフ。
別居、自立して、左団扇の人生送ってみせますわ。
だけど元・夫も、従兄も、世間も――私を放ってはくれないみたい?
「……何それ、私の人生、まだ波乱あるの?」
はい、あります。盛りだくさんで。
元・男、今・女。
“白い結婚からの離縁”から始まる、人生劇場ここに開幕。
-----『白い結婚の行方』シリーズ -----
『白い結婚の行方』の物語が始まる、前のお話です。
行き場を失った恋の終わらせ方
当麻月菜
恋愛
「君との婚約を白紙に戻してほしい」
自分の全てだったアイザックから別れを切り出されたエステルは、どうしてもこの恋を終わらすことができなかった。
避け続ける彼を求めて、復縁を願って、あの日聞けなかった答えを得るために、エステルは王城の夜会に出席する。
しかしやっと再会できた、そこには見たくない現実が待っていて……
恋の終わりを見届ける貴族青年と、行き場を失った恋の中をさ迷う令嬢の終わりと始まりの物語。
※他のサイトにも重複投稿しています。
彼女にも愛する人がいた
まるまる⭐️
恋愛
既に冷たくなった王妃を見つけたのは、彼女に食事を運んで来た侍女だった。
「宮廷医の見立てでは、王妃様の死因は餓死。然も彼が言うには、王妃様は亡くなってから既に2、3日は経過しているだろうとの事でした」
そう宰相から報告を受けた俺は、自分の耳を疑った。
餓死だと? この王宮で?
彼女は俺の従兄妹で隣国ジルハイムの王女だ。
俺の背中を嫌な汗が流れた。
では、亡くなってから今日まで、彼女がいない事に誰も気付きもしなかったと言うのか…?
そんな馬鹿な…。信じられなかった。
だがそんな俺を他所に宰相は更に告げる。
「亡くなった王妃様は陛下の子を懐妊されておりました」と…。
彼女がこの国へ嫁いで来て2年。漸く子が出来た事をこんな形で知るなんて…。
俺はその報告に愕然とした。
サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします
二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位!
※この物語はフィクションです
流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。
当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる