5 / 17
開幕前夜
部屋①
しおりを挟む
赤いカーペットが敷かれた廊下を、ディオラルと並んで歩く。
(っ……!びっくりした…)
角を曲がると、首から上が黒い人が待っていた。
「ごゆっくりどうぞ」
そう言うと、私にルームキーを渡してくる。その声は、男とも女ともいえるような中性的なものだった。
「309…309……ありました」
『309』と書かれた部屋の鍵穴に、ルームキーを差し込む。
『認証完了。これからは自動でロックが解除されます』
機械音声。そして部屋に一歩入ると同時にルームキーは消えた。造りは分からないが興味深い。
与えられた部屋は広かった。
白い壁、白い床。ベッドは2つあるし、ちらりと見えた浴室は、体を十分に伸ばすことができそうだった。
ただ気になるのは、窓が1つしかないことだ。
外は黒い。ただそう見えるだけかもしれないが、黒い。風を少し感じる程度。
(でもまあ、別にいいか)
特に気にしない。
私はディオラルのほうにくるりと回った。
「申し訳ございません、自己紹介が遅れました。私は成瀬伊澄と申します。ご迷惑をおかけすることがあると思いますが、この度はどうぞよろしくお願いいたします。」
できるだけ丁寧に、敬語を使って、控えめに微笑む。目尻を下げて、口角を上げて。45度ぴったりお辞儀をする。第1印象は大切にしたい。
「ありがとうございます。もう聞いているとは思いますが、私はディオラル。ディーと呼んでください」
「分かりました。ディー、様…?」
「ディー」
「…ディー」
ディーは花が咲くように笑った。なんだか私も嬉しくなる。
「私も伊澄と呼んでも良いでしょうか?」
「もちろんです。私には砕けた口調で構いません。」
「そう?じゃあ早速。伊澄もタメで話して」
「いえ、私は……うん、じゃあそうする」
向けられた笑顔が何だか怖かったが、敬語は疲れるので従う。
そこで私は部屋の隅にある机の上の紙に気付いた。
「これ、読んでって言われたやつ…?」
私は紙を広げた。
『【部屋に関する注意事項と説明】
①部屋の設備はご自由にお使いください。足りないものがある場合は備え付けてあるタブレットから連絡すること。
②ほかの人の部屋に行ってはいけません。
③一度部屋に入ったら、これからは鍵が自動にロックになります。部屋を出ると
きも鍵のことは気にしなくてかまいません。
【明日について】
部屋はいかかでしたか?皆さんの記憶を覗き、必要だと思うものを揃えました!
さて、明日は朝7時までに大聖堂へ集まってください。朝食を提供します。場所は
本日と同じです。
皆さんと明日会えるのを楽しみにしています! 』
(何て個性的な……)
ディーもちょうど読み終わったようだ。
「えっと、私、先にシャワー浴びてきても良い?」
「いいよ。部屋見て回るね。」
「ありがとう」
私は浴室へと向かった。後ろ手でドアを閉める。
大きいお風呂というものには夢がある。脱衣所も広い。
前方にバスタオルとタオルが並べてある。そして私の隣には、先ほどは死角になっていて見えなかったが、着替えが用意してある。
女性用、男性用と書かれた大きい引き出しが2つずつ。
私は女性用のほうを開けた。
左に下着類、右に部屋着。
部屋着を取ってみた。
黒のパーカーに、太ももまでの白いスウェット。
(かわいい……)
でもきっと私には似合わない。
下の段を開けてみた。
そこにあったのは1枚の紙で、『洗濯したい衣類はここにおいてください』とあった。
制服を脱ぎ、畳んでそこに入れた。
お風呂に近づく。横の台に部屋着とバスタオルを置いた。
『風呂に湯を入れたい場合はこのボタンを押してください。続けて入る場合は湯を張り直してください。』
私は迷わずそのボタンを押す。その瞬間、水音が聞こえた。
「わぁっ……!」
銀色と白しかない景色。軽くシャワーを浴びてから湯船に浸かった。
ゆっくりと体を伸ばす。
(この瞬間はすごく幸せ……)
□
やがて脱衣所に戻った私は、用意されていたものを着た。
(このパーカー、オーバーサイズだ…)
パーカーが思っていたよりも大きく、スウェットが隠れてしまう。
私は気にせずにドアを開けた。
「……ディー?」
「あっ、伊澄………」
ディーが私を見てフリーズし、手で口を覆った。
「めっちゃ可愛い…」
「え?ありがとう…」
そんなお世辞言わなくていいのに。
「…じゃあ俺も入ってくるね」
ディーはドアを閉める寸前まで私を見ていた。
(……私も部屋を見て回るか)
私は方向を変えた。
(っ……!びっくりした…)
角を曲がると、首から上が黒い人が待っていた。
「ごゆっくりどうぞ」
そう言うと、私にルームキーを渡してくる。その声は、男とも女ともいえるような中性的なものだった。
「309…309……ありました」
『309』と書かれた部屋の鍵穴に、ルームキーを差し込む。
『認証完了。これからは自動でロックが解除されます』
機械音声。そして部屋に一歩入ると同時にルームキーは消えた。造りは分からないが興味深い。
与えられた部屋は広かった。
白い壁、白い床。ベッドは2つあるし、ちらりと見えた浴室は、体を十分に伸ばすことができそうだった。
ただ気になるのは、窓が1つしかないことだ。
外は黒い。ただそう見えるだけかもしれないが、黒い。風を少し感じる程度。
(でもまあ、別にいいか)
特に気にしない。
私はディオラルのほうにくるりと回った。
「申し訳ございません、自己紹介が遅れました。私は成瀬伊澄と申します。ご迷惑をおかけすることがあると思いますが、この度はどうぞよろしくお願いいたします。」
できるだけ丁寧に、敬語を使って、控えめに微笑む。目尻を下げて、口角を上げて。45度ぴったりお辞儀をする。第1印象は大切にしたい。
「ありがとうございます。もう聞いているとは思いますが、私はディオラル。ディーと呼んでください」
「分かりました。ディー、様…?」
「ディー」
「…ディー」
ディーは花が咲くように笑った。なんだか私も嬉しくなる。
「私も伊澄と呼んでも良いでしょうか?」
「もちろんです。私には砕けた口調で構いません。」
「そう?じゃあ早速。伊澄もタメで話して」
「いえ、私は……うん、じゃあそうする」
向けられた笑顔が何だか怖かったが、敬語は疲れるので従う。
そこで私は部屋の隅にある机の上の紙に気付いた。
「これ、読んでって言われたやつ…?」
私は紙を広げた。
『【部屋に関する注意事項と説明】
①部屋の設備はご自由にお使いください。足りないものがある場合は備え付けてあるタブレットから連絡すること。
②ほかの人の部屋に行ってはいけません。
③一度部屋に入ったら、これからは鍵が自動にロックになります。部屋を出ると
きも鍵のことは気にしなくてかまいません。
【明日について】
部屋はいかかでしたか?皆さんの記憶を覗き、必要だと思うものを揃えました!
さて、明日は朝7時までに大聖堂へ集まってください。朝食を提供します。場所は
本日と同じです。
皆さんと明日会えるのを楽しみにしています! 』
(何て個性的な……)
ディーもちょうど読み終わったようだ。
「えっと、私、先にシャワー浴びてきても良い?」
「いいよ。部屋見て回るね。」
「ありがとう」
私は浴室へと向かった。後ろ手でドアを閉める。
大きいお風呂というものには夢がある。脱衣所も広い。
前方にバスタオルとタオルが並べてある。そして私の隣には、先ほどは死角になっていて見えなかったが、着替えが用意してある。
女性用、男性用と書かれた大きい引き出しが2つずつ。
私は女性用のほうを開けた。
左に下着類、右に部屋着。
部屋着を取ってみた。
黒のパーカーに、太ももまでの白いスウェット。
(かわいい……)
でもきっと私には似合わない。
下の段を開けてみた。
そこにあったのは1枚の紙で、『洗濯したい衣類はここにおいてください』とあった。
制服を脱ぎ、畳んでそこに入れた。
お風呂に近づく。横の台に部屋着とバスタオルを置いた。
『風呂に湯を入れたい場合はこのボタンを押してください。続けて入る場合は湯を張り直してください。』
私は迷わずそのボタンを押す。その瞬間、水音が聞こえた。
「わぁっ……!」
銀色と白しかない景色。軽くシャワーを浴びてから湯船に浸かった。
ゆっくりと体を伸ばす。
(この瞬間はすごく幸せ……)
□
やがて脱衣所に戻った私は、用意されていたものを着た。
(このパーカー、オーバーサイズだ…)
パーカーが思っていたよりも大きく、スウェットが隠れてしまう。
私は気にせずにドアを開けた。
「……ディー?」
「あっ、伊澄………」
ディーが私を見てフリーズし、手で口を覆った。
「めっちゃ可愛い…」
「え?ありがとう…」
そんなお世辞言わなくていいのに。
「…じゃあ俺も入ってくるね」
ディーはドアを閉める寸前まで私を見ていた。
(……私も部屋を見て回るか)
私は方向を変えた。
0
あなたにおすすめの小説
転生したら4人のヤンデレ彼氏に溺愛される日々が待っていた。
aika
恋愛
主人公まゆは冴えないOL。
ある日ちょっとした事故で命を落とし転生したら・・・
4人のイケメン俳優たちと同棲するという神展開が待っていた。
それぞれタイプの違うイケメンたちに囲まれながら、
生活することになったまゆだが、彼らはまゆを溺愛するあまり
どんどんヤンデレ男になっていき・・・・
ヤンデレ、溺愛、執着、取り合い・・・♡
何でもありのドタバタ恋愛逆ハーレムコメディです。
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
【ご報告】
2月28日より、第五章の連載を再開いたします。毎週金・土・日の20時に更新予定です。
また、誤字脱字の修正および一部表現の見直しを行いました。ただし、記載内容の趣旨に大きな変更はございません。
引き続きよろしくお願いいたします。
最高魔導師の重すぎる愛の結末
甘寧
恋愛
私、ステフィ・フェルスターの仕事は街の中央にある魔術協会の事務員。
いつもの様に出勤すると、私の席がなかった。
呆然とする私に上司であるジンドルフに尋ねると私は昇進し自分の直属の部下になったと言う。
このジンドルフと言う男は、結婚したい男不動のNO.1。
銀色の長髪を後ろに縛り、黒のローブを纏ったその男は微笑むだけで女性を虜にするほど色気がある。
ジンドルフに会いたいが為に、用もないのに魔術協会に来る女性多数。
でも、皆は気づいて無いみたいだけど、あの男、なんか闇を秘めている気がする……
その感は残念ならが当たることになる。
何十年にも渡りストーカーしていた最高魔導師と捕まってしまった可哀想な部下のお話。
ホストな彼と別れようとしたお話
下菊みこと
恋愛
ヤンデレ男子に捕まるお話です。
あるいは最終的にお互いに溺れていくお話です。
御都合主義のハッピーエンドのSSです。
小説家になろう様でも投稿しています。
役立たず霊能者の私が、警視庁怪異特殊対策室に拾われた話 ~そこはヤンデレだらけのイケメンハーレムだった件~
季未
恋愛
ブラック企業で万年ビリの社畜、月島 零(24)。
彼女には昔から、他人の呪いや怪異が視えてしまう不遇な体質があった。
そのせいで会社を理不尽にクビになった金曜日の夜。
新宿駅の地下で最悪の怪異空間に引きずり込まれた彼女を救ったのは、最高級のスーツを着た漆黒の男——警視庁特殊怪異対策室の室長・神宮寺だった。
「お前の眼には価値がある」
命の保証と引き換えに、月給100万の専属鑑定士兼・囮役(!?)として強制契約を結ばされる零。
配属先は、ドSで俺様な神宮寺室長をはじめ、狂犬ハッカー、解剖マニアの変態ドクターなど、顔面偏差値だけは異常に高いハイスペック異常者たちの巣窟で……!?
「俺以外の痕がついているのが気に入らん。次は一秒で助ける」
命がけの怪異事件を解決するたび、逃げ場のない溺愛と執着はエスカレートしていく!
現代オカルト×限界突破の溺愛ホラーサスペンス!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる