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第十章 Butterfly Effect
第十一話 泡沫
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自分を呼ぶ声が聞こえた。
逆らわず、閉じていた瞼を開くと、上から見下ろしてくるのは心配そうな顔の九生と白倉。
「時波。
大丈夫…か?」
不安げな声に軽く笑みを浮かべ、身を起こした。
どうも地下都市らしい。
見覚えのある白い壁の部屋の寝台。
「ああ、すまない」
微笑んでみせると、彼らはホッと息を吐いた。
「よかった…」
「あんなとこで倒れとるけん、心配したぜよ」
「すまん」
繰り返し謝ると、「まあ無事ならええけど」と九生は笑う。
時波はその隣に立つ白倉の顔を見た。
白倉は気づいて、はにかんでみせた。
この二人に嘘を吐かなくてはならないのは、しんどい。
「白倉からも訊いたが、どうも時間凍結があったらしいの?」
まあ、そこはばれるか。
「ああ」
「それからなにがあったか、話せるか?」
優しい聴き方をしてくれる九生に、口が緩みそうになる。
九生は方舟としてこの場にいるのだろうから、聞き出さなくてはならない立場なのに。
「……………」
「時波?」
黙ってしまった自分に、白倉が心配そうな声をかける。
「…すまない」
「いや、そんなに謝らんでも」
時波は寝台の上に座ったまま、軽く頭を下げた。
「なにがあったか、覚えていないんだ」
辛い。
この二人に嘘を吐くのは、辛い。
胸が激しく痛む。
「……嘘じゃろ。
自分の実力で、逆らえんっちゅうのは、考えにくいぜよ」
「…悪い」
それ以上言えない。
やはり、この二人に嘘はつけない。
「すまない。
言えないんだ」
正直に口にした。
九生と白倉は目を瞠る。
「すまない。
まだ言えないんだ。
どうしても。
心配させておいて、本当に悪いが、言えない」
「…覚えとらん、やのうて、言えへん?」
白倉の確認に、こくりと頷いた。
「理由を?
誰かを?」
「……両方だ」
時波は顔を上げる。
眉間に皺を寄せ、苦しげな顔をして、そう言った。
「……俺は方舟じゃ」
「わかっている。
そのうえで、訊かないで欲しい」
「…」
九生は自身の頭を乱暴に掻く。
眉根を寄せ、苦渋の選択をするように。
「俺が方舟じゃなく、ただの幼なじみとして訊いとってもか?」
「…ああ」
「白倉にも?」
時波は視線を逸らさず、もう一度頷く。
「誰にも言わん。
NOAにも」
「それでも、…言えない」
覚悟を決めたように、揺らがずにいる時波の瞳を見下ろし、九生は不意に長いため息を吐いた。
「一応、自分倒れとったけん、こっちはなにがあったか気が気じゃないっちゅうとるのに…」
「すまない。
甘えている」
九生は息を吐きながら、その場にしゃがみ込んでしまう。
「……じゃ、一個だけ。
自分の二つ目の超能力が完全覚醒しとったんじゃが」
その言葉に、知らなかったらしい白倉が息を飲む。
九生は方舟だから、自分の身体を検査したときに気づくだろう。
「もう自分が暴走キャリアじゃねえっちゅうことは、自分は知ってんのか?」
「…ああ」
もう、嘘を吐く気はなかった。
嘘でだます気はなかった。
「その誰かと関わりがあった?」
「ああ」
「その誰かが、覚醒させた?」
時波ははっきり頷く。
九生は顔を押さえて、またため息。
「そんだけのことが出来る奴を野放しにしろってか……」
「…だが、おそらく敵ではない」
「なにを根拠に。
自分に口止めするような奴じゃろ?」
「それはそうだが…」
時波は思い出す。
あの得体の知れない雰囲気。余裕。そして能力。
岩永ではないのに、岩永の姿だった。
一概に、岩永だと言い切れない。
時波は内心考えて、これはばらしたことにならないだろう、と打算した。
「具体的に言うと、俺の知人の顔をしていたのだが」
「えっ!?」
九生と白倉がそろって声を上げ、自分を見た。
「だが、おそらくその顔はカモフラージュだ。
その本人ではないと思った。
別人だった。
…吾妻の例を考えると、身体を乗っ取った、か、あるいは姿をコピーしたか」
「……だから、言えねえ?」
「その姿の持ち主にいらぬ疑いをかけたくない」
時波はそう言い、九生の顔を見下ろした。
「お前の例もあるから、姿形で判断してはいけないと思う。
少なくとも、その顔の持ち主に、時間凍結や暴走キャリアを覚醒させる真似は不可能だ」
「……あー」
九生は立ち上がって、また髪を掻く。
「お前、脅されたんだよな?
言うなって」
「まあ、口止めされたな」
「……結構暴露してねえ?」
九生は「大丈夫か?」と尋ねてきた。
時波は目を瞠った後、ぷっと吹き出してしまう。
「おい」
「いや、さっきまで怒っていたのに、心配しだすから…」
「いやだって、お前に危険があったら困るけん」
白倉を見ると、彼も笑っていた。
「まあ、大丈夫だろう。
……………………………………………全部ばらしたわけじゃないしな」
「その長い間はなんじゃ」
視線まで泳がせて、と九生はつっこむ。
「大丈夫だと思うぞ?」
「自信ないんだろ」
九生と白倉の視線を受けて、時波は長い沈黙の後、
「…まあ、確かに、遅れて、やばいかもしれないと後悔が」
「ほら見んしゃい。
なにを素直に白状しとるんじゃ」
「九生がその台詞を言うのもおかしいよなあ…」
白倉が笑いながら呟く。
「まあ、しかし、一部しか話していないから」
「一部しかって、暗にまだほかにあることばらしとるし…」
「…しかし、暴走キャリアうんぬんは、黙っていてもばれるし…」
内心、あいつが気にしていたのは、おそらく「岩永嵐」だと知られることだ。
操っていたにしろ、姿を模写していたにしろ。
そこは言ってないんだから、大丈夫。多分。
「時間凍結もばれていたし」
「うん、まあそうだけん」
九生は呆れながら、またため息。
「…まあよか。
お前さんはとりあえず無事じゃ」
「うん、よかった」
立ち上がった九生と白倉の姿を見上げて、時波は笑う。
「お前達に嘘を吐きたくなかったからなんだがな」
「…のろけんなよ、当人に」
「愛されてるなあ俺ら」
やっぱり心配そうな九生の横で、白倉は綺麗に微笑む。
「それで、俺はここにいなければならないのか?」
「いや、もう暴走キャリアじゃねえし、一泊くらいで済む」
「そうか。
白倉、すまないが、なにか飲み物が欲しい」
九生の言葉に頷いてから、白倉を見上げた。
「わかった」
白倉は明るく頷いて、部屋を出ていく。
扉が閉まる音がした。
「で?
白倉に訊かせられねえの?」
「まあ」
九生も時波の意図は読めていたらしい。
「じゃ、その誰かは、白倉の姿ってことか?」
「そういうわけではないのだが」
「じゃ、少なくとも違う世界の白倉じゃねえ、と」
「あ」
また一つばらしてしまったことに気づき、時波は間抜けな声を上げた。
「…まあ、ともかく」
こほん、と咳払いをして、寝台から降りる。
「白倉と岩永二人に、リバウンドが起きる話はもう知っているか?」
「ああ、お前も気づいたか」
時波は頷き、真剣な顔をする。
「どうしたらいいだろう。
白倉にどんなリバウンドが還るかも、岩永のことも、どうくい止めたらいいのか…」
「…まあ、それは化野曰く『分岐点』らしいぜ」
「…?」
九生は腕を組み、
「化野が言っていたそうじゃ。
リバウンドをくい止められるか否か。
それが、この世界が、あいつらの世界と同じ未来を迎えるか否かの分岐点」
「………あいつらの世界って」
時波は口元に手をやり、考え込む。
「そういえば、どういう世界なんだ?
こことほとんど変わらないんだろうが」
「知らん。
ただ、『悪い未来』に転じた世界らしい」
それがあいつらの目的にかかるらしいし、と九生。
時波は知らず知らずため息を吐いていた。
寝台に横たわったまま、動けない。
動きたくない。
ただ、息を吐く。
唇にそっと触れた。
確かに、唇の中が少し切れている。痛い。
でも、身に覚えがない。
どうしてあの公園にいたかすら、わからない。
胸が痛む。刺されたみたいに痛んで、涙が浮かんだ。
不意に扉をノックする音が聞こえて、ゆっくりと上体を起こした。
「…」
扉を見つめ、心臓がきつく締め付けられた。
村崎じゃないといい。
「…はい?」
そう思いながら力無く返事をする。
「俺やけど…今ええか?」
聞こえてきたのは優衣の低い声で、ほっと息を吐いていた。
「うん」
答えると扉が開いて、優衣一人が姿を見せた。
村崎はいない。安心した。
そう思ってすぐ、ずきりと胸がきつく軋んだ。
なんで、村崎がいないから安堵するんだ。
村崎がいないことにほっとするなんて。
「…岩永?」
優衣は岩永の顔を見て戸惑い、うろたえる。
岩永はただ呆然として、なにも答えられなかった。
頬を伝う涙は、あとからあとからあふれ出す。
「……っ」
堪えられない。
嗚咽がこみ上げて、口元を押さえた。
「……岩永。
どないした?」
優衣は出来るだけ優しく問いかけた。
そっと肩に触れる。
今目の前で、あまりに辛そうに泣く彼は、少なくともあの男じゃない。
「………俺、今の静流には要らないんやな…」
「…え」
「…静流、ずっと、遠くばっか見とるもん。
俺を見ぃひん。違う誰か、見とる。
…今の静流には、俺は、不要なんやなって」
優衣は息をのみ、固まった。
なにも、すぐに言葉が出てこない。
「………流河が言ってた、静流がすごく好きな俺って、どこにおんの?
…少なくとも、俺のことやないよ」
「…違う…」
「違わない」
はっきり否定できず、優衣はただ悲しくなった。
静かに首を振ったけど、岩永は泣きながら微笑んで、自分の言葉を信じない。
違う。
でも、違わない。
村崎が見ているのは、彼が会いたいのは、記憶をなくしていた彼。
背中を向け続けた村崎をずっと思い続けていた、臆病で純情な彼。
今、ここにいる彼じゃないのは、確かで。
でも、彼は岩永だ。間違いなく。
彼と同じ心を持った、同じ存在。
ただ、記憶があるかないかだけ。そして、記憶をなくしたあとの痛みを知っているかだけ。
それでも、その痛みと共に、一年を生きてきた彼を、村崎がどれほど大事にしていたか。
なにも知らないから純情で、痛みに敏感で、人一倍寂しがりで。
優衣はなにも言えなくて、寝台に腰掛ける岩永の身体を抱きしめた。
「…優衣?」
「ごめん…。
俺も泣きそう…」
「…なんで」
本当に自分まで泣きそう。
だって、それは違う。
そう、村崎に言いたい。
同じ痛みを与えてどうする。
今ここにいる彼に、振り向かないお前を追い続ける痛みを、寂しさを与えてどうする。
今度こそ、大事にしたいんじゃなかったのか。
「…ごめん。
弱音吐いた。
気にせんで」
「…岩永」
「な」
顔を上げて、涙を拭って岩永は微笑む。
そうやって、強がるところも、変わらない。
「ええの。
…ええの」
諦めたように震えた息を吐いて、彼は笑っている。
「…………なんとなくわかった。
俺は陽炎みたいなもんや」
「…陽炎?」
「蜃気楼?
ここにあるはずのないもの。
手の届かないもの。
ここにおったらあかんっちゅうか」
明るく微笑んで、岩永は言う。
「幻?
多分、静流が今会いたいのは、…今ここにいるはずの、俺なんやと思うから」
「………」
優衣は目を瞠り、そして伏せた。
それほどに村崎の態度はあからさまか。
なにも知らない岩永が、気付くほどに。
「時間は巻き戻ったらあかんねん。
未来に過去の存在がおったらあかん。
受け入れられないのは、当然や」
「…でも!」
反射的に岩永の腕を掴み、叫んでいた。
ただなにかを言いたくて、そんな衝動で。
「…それでも村崎はずっとお前に会いたがってた。
お前をずっと探しとった。お前が好きで好きで……やから、ずっと」
ずっと、記憶のない岩永を受け入れられないほどに。
記憶のない彼を否定するほどに。
今目の前にいる彼が、愛しかったはずだ。
「……裏切るみたいで、あかんのやと思う。
今の、記憶のあるお前を受け入れたら……、ずっと傷ついてきた、記憶のないお前を……裏切る気がして」
岩永は静かに瞳を見開き、息をのんだ。
そして、なにか訊きたいだろうに、口を閉ざした。
目を伏せて、動揺を封じるように呼吸を繰り返す。
「……どっちも、俺なのに?」
それでも堪えきれなかった問いを、切なげに微笑んで口にした。
「…俺はずっと、静流が好き。
例え記憶をなくしても、この気持ちが変わると思えない。
…俺はきっとずっと、静流が好き」
「……………」
優衣は今更に気付いて、声も失った。
胸が貫かれたみたいに痛んで、言葉が出ない。
ああ、そうか。
そうだったのか。
記憶を失ったあと、振り向かず、突き放すばかりの村崎を、なぜ彼が好きになったのか。
不思議に思ってきた。
違う。彼は記憶をなくしてから、また一から恋をしたわけじゃない。
その胸の中にある、村崎への恋心は、例え暴走キャリアでも消せなかった。
村崎を想い続けた気持ちは、ずっとずっと前から、繋がっていた。
彼は間違いなく、村崎の愛する人なんだ。
ただ自分まで辛くて悲しい気持ちのまま、一度部屋を出る。
扉の外で待っていたらしい流河は壁にもたれて腕を組んでいた。
「記憶ないみたいだね」
「………ああ。
なにがあったんやろ」
「ほんとだよ」
流河には現在進行形で嘘を吐いている。
彼は人一倍聡いから、少し心配だけれど。
「まあ、当面の問題はリバウンドだから、村崎くんにそれ言わなきゃね」
「ああ。
まあ、一回くらいは行ってもええやろ」
「俺、準備してくる」
流河は202号室の扉に手をかけてから、優衣を振り返る。
「そういえば、時波くんが目を覚ましたらしいよ」
「そうか、よかった」
「うん」
流河は笑うが、影のある笑みだった。
少し後ろめたい。
「……せめてなにがあったかとか、覚えてるといいんだけど」
「せやな」
いや、無理だろう。
おそらく時波にも口止めしているはずだ。
「……化野くんも曖昧なことしか言ってなかったし、俺達も結構蚊帳の外だよね」
「…」
なにも言えない。
自分も流河を蚊帳の外にしている。
「……」
不意に流河は目を瞠り、遅れて息を飲んだ。
まさか気づかれた?と危ぶんだ優衣の顔を見て、流河は言う。
「あれ?
ねえ、化野くん、こう言ってなかった?」
違うらしい。
内心安堵しながら、記憶を検索する。
「『彼らはその未来を変えようとあがいてる』…って」
「………」
そういえば、あの場は岩永のことで頭が一杯で気づかなかったけど。
そう言っていた。
優衣も息を飲んだ。
「…あれ?
もしかして」
「化野くんさ、………………遠回しだけど、彼らの目的教えてくれたんじゃない?」
「…かも」
つまり、彼らはその「悪い未来」を迎えた世界で、その「悪い未来」を変えようとしているということか?
「……悪い未来っちゅうても、いろいろあるけどな」
「…誰かの記憶喪失とかは、あてはまらない、のかな?」
世界をまたいでくるくらいだし、記憶喪失とかそういうのじゃ甘い気がする。
「んなこと言うたかて、あとは誰かが死にましたとかそーゆう」
言いかけて、優衣は口をつぐんだ。
違う、と言い切れない。
「…ありうるかも。それ」
流河もそう思うらしい。
青ざめた顔でそう言った。
「いいの?」
着替えている岩永の背後に立って、吾妻は尋ねる。
「なにがや?」
「教えて」
岩永はくすり、と笑いを漏らした。
「自分も知らない内容を?」
「それもあるけど」
おもしろくなさそうな吾妻を振り返り、岩永は笑う。
「大丈夫や。
ヘマはせん」
「…そうかな」
「第一、俺はまだお前を許したわけやない」
そう言う岩永だが、視線は柔らかい。
それが嘘なのか、村崎と出かける故か。
「…わかってる、だけど」
「俺に限ってない」
お前みたいにほだされるなんて。
その言葉は全く信用出来ない。
「ありうる」
吾妻は岩永の腕を掴んで言った。
少しやせた腕だ。
いくつも超能力を暴走キャリア化させ、無茶な使用をするたび、悲鳴を上げて、寿命を縮め、身体をむしばんだ。
それを見過ごしてきた。
「…あんたは、村崎のためならなんだって」
「言うな」
岩永は微笑んだ。優しい口調。
切なげな笑みだ。悲しそうな声だ。
「……あれは、所詮、俺のもんにはならん」
かすかに揺らぐ茶の瞳。
「…ただ、重ねとるだけや」
珍しく訊いた彼の弱音だ。
「…大丈夫や。
目的を忘れたりせぇへん」
吾妻の手をほどき、鏡に向き直る岩永の格好を見た。
いつもみたいな派手な格好じゃなく、年相応の少年らしい服装だ。
村崎のためだろう。
「…忘れたりせぇへん。
…忘れられるもんか」
「…ああ」
そう、願う。
ただ、そう思うしかない。
彼が諦めないでくれることを。
逆らわず、閉じていた瞼を開くと、上から見下ろしてくるのは心配そうな顔の九生と白倉。
「時波。
大丈夫…か?」
不安げな声に軽く笑みを浮かべ、身を起こした。
どうも地下都市らしい。
見覚えのある白い壁の部屋の寝台。
「ああ、すまない」
微笑んでみせると、彼らはホッと息を吐いた。
「よかった…」
「あんなとこで倒れとるけん、心配したぜよ」
「すまん」
繰り返し謝ると、「まあ無事ならええけど」と九生は笑う。
時波はその隣に立つ白倉の顔を見た。
白倉は気づいて、はにかんでみせた。
この二人に嘘を吐かなくてはならないのは、しんどい。
「白倉からも訊いたが、どうも時間凍結があったらしいの?」
まあ、そこはばれるか。
「ああ」
「それからなにがあったか、話せるか?」
優しい聴き方をしてくれる九生に、口が緩みそうになる。
九生は方舟としてこの場にいるのだろうから、聞き出さなくてはならない立場なのに。
「……………」
「時波?」
黙ってしまった自分に、白倉が心配そうな声をかける。
「…すまない」
「いや、そんなに謝らんでも」
時波は寝台の上に座ったまま、軽く頭を下げた。
「なにがあったか、覚えていないんだ」
辛い。
この二人に嘘を吐くのは、辛い。
胸が激しく痛む。
「……嘘じゃろ。
自分の実力で、逆らえんっちゅうのは、考えにくいぜよ」
「…悪い」
それ以上言えない。
やはり、この二人に嘘はつけない。
「すまない。
言えないんだ」
正直に口にした。
九生と白倉は目を瞠る。
「すまない。
まだ言えないんだ。
どうしても。
心配させておいて、本当に悪いが、言えない」
「…覚えとらん、やのうて、言えへん?」
白倉の確認に、こくりと頷いた。
「理由を?
誰かを?」
「……両方だ」
時波は顔を上げる。
眉間に皺を寄せ、苦しげな顔をして、そう言った。
「……俺は方舟じゃ」
「わかっている。
そのうえで、訊かないで欲しい」
「…」
九生は自身の頭を乱暴に掻く。
眉根を寄せ、苦渋の選択をするように。
「俺が方舟じゃなく、ただの幼なじみとして訊いとってもか?」
「…ああ」
「白倉にも?」
時波は視線を逸らさず、もう一度頷く。
「誰にも言わん。
NOAにも」
「それでも、…言えない」
覚悟を決めたように、揺らがずにいる時波の瞳を見下ろし、九生は不意に長いため息を吐いた。
「一応、自分倒れとったけん、こっちはなにがあったか気が気じゃないっちゅうとるのに…」
「すまない。
甘えている」
九生は息を吐きながら、その場にしゃがみ込んでしまう。
「……じゃ、一個だけ。
自分の二つ目の超能力が完全覚醒しとったんじゃが」
その言葉に、知らなかったらしい白倉が息を飲む。
九生は方舟だから、自分の身体を検査したときに気づくだろう。
「もう自分が暴走キャリアじゃねえっちゅうことは、自分は知ってんのか?」
「…ああ」
もう、嘘を吐く気はなかった。
嘘でだます気はなかった。
「その誰かと関わりがあった?」
「ああ」
「その誰かが、覚醒させた?」
時波ははっきり頷く。
九生は顔を押さえて、またため息。
「そんだけのことが出来る奴を野放しにしろってか……」
「…だが、おそらく敵ではない」
「なにを根拠に。
自分に口止めするような奴じゃろ?」
「それはそうだが…」
時波は思い出す。
あの得体の知れない雰囲気。余裕。そして能力。
岩永ではないのに、岩永の姿だった。
一概に、岩永だと言い切れない。
時波は内心考えて、これはばらしたことにならないだろう、と打算した。
「具体的に言うと、俺の知人の顔をしていたのだが」
「えっ!?」
九生と白倉がそろって声を上げ、自分を見た。
「だが、おそらくその顔はカモフラージュだ。
その本人ではないと思った。
別人だった。
…吾妻の例を考えると、身体を乗っ取った、か、あるいは姿をコピーしたか」
「……だから、言えねえ?」
「その姿の持ち主にいらぬ疑いをかけたくない」
時波はそう言い、九生の顔を見下ろした。
「お前の例もあるから、姿形で判断してはいけないと思う。
少なくとも、その顔の持ち主に、時間凍結や暴走キャリアを覚醒させる真似は不可能だ」
「……あー」
九生は立ち上がって、また髪を掻く。
「お前、脅されたんだよな?
言うなって」
「まあ、口止めされたな」
「……結構暴露してねえ?」
九生は「大丈夫か?」と尋ねてきた。
時波は目を瞠った後、ぷっと吹き出してしまう。
「おい」
「いや、さっきまで怒っていたのに、心配しだすから…」
「いやだって、お前に危険があったら困るけん」
白倉を見ると、彼も笑っていた。
「まあ、大丈夫だろう。
……………………………………………全部ばらしたわけじゃないしな」
「その長い間はなんじゃ」
視線まで泳がせて、と九生はつっこむ。
「大丈夫だと思うぞ?」
「自信ないんだろ」
九生と白倉の視線を受けて、時波は長い沈黙の後、
「…まあ、確かに、遅れて、やばいかもしれないと後悔が」
「ほら見んしゃい。
なにを素直に白状しとるんじゃ」
「九生がその台詞を言うのもおかしいよなあ…」
白倉が笑いながら呟く。
「まあ、しかし、一部しか話していないから」
「一部しかって、暗にまだほかにあることばらしとるし…」
「…しかし、暴走キャリアうんぬんは、黙っていてもばれるし…」
内心、あいつが気にしていたのは、おそらく「岩永嵐」だと知られることだ。
操っていたにしろ、姿を模写していたにしろ。
そこは言ってないんだから、大丈夫。多分。
「時間凍結もばれていたし」
「うん、まあそうだけん」
九生は呆れながら、またため息。
「…まあよか。
お前さんはとりあえず無事じゃ」
「うん、よかった」
立ち上がった九生と白倉の姿を見上げて、時波は笑う。
「お前達に嘘を吐きたくなかったからなんだがな」
「…のろけんなよ、当人に」
「愛されてるなあ俺ら」
やっぱり心配そうな九生の横で、白倉は綺麗に微笑む。
「それで、俺はここにいなければならないのか?」
「いや、もう暴走キャリアじゃねえし、一泊くらいで済む」
「そうか。
白倉、すまないが、なにか飲み物が欲しい」
九生の言葉に頷いてから、白倉を見上げた。
「わかった」
白倉は明るく頷いて、部屋を出ていく。
扉が閉まる音がした。
「で?
白倉に訊かせられねえの?」
「まあ」
九生も時波の意図は読めていたらしい。
「じゃ、その誰かは、白倉の姿ってことか?」
「そういうわけではないのだが」
「じゃ、少なくとも違う世界の白倉じゃねえ、と」
「あ」
また一つばらしてしまったことに気づき、時波は間抜けな声を上げた。
「…まあ、ともかく」
こほん、と咳払いをして、寝台から降りる。
「白倉と岩永二人に、リバウンドが起きる話はもう知っているか?」
「ああ、お前も気づいたか」
時波は頷き、真剣な顔をする。
「どうしたらいいだろう。
白倉にどんなリバウンドが還るかも、岩永のことも、どうくい止めたらいいのか…」
「…まあ、それは化野曰く『分岐点』らしいぜ」
「…?」
九生は腕を組み、
「化野が言っていたそうじゃ。
リバウンドをくい止められるか否か。
それが、この世界が、あいつらの世界と同じ未来を迎えるか否かの分岐点」
「………あいつらの世界って」
時波は口元に手をやり、考え込む。
「そういえば、どういう世界なんだ?
こことほとんど変わらないんだろうが」
「知らん。
ただ、『悪い未来』に転じた世界らしい」
それがあいつらの目的にかかるらしいし、と九生。
時波は知らず知らずため息を吐いていた。
寝台に横たわったまま、動けない。
動きたくない。
ただ、息を吐く。
唇にそっと触れた。
確かに、唇の中が少し切れている。痛い。
でも、身に覚えがない。
どうしてあの公園にいたかすら、わからない。
胸が痛む。刺されたみたいに痛んで、涙が浮かんだ。
不意に扉をノックする音が聞こえて、ゆっくりと上体を起こした。
「…」
扉を見つめ、心臓がきつく締め付けられた。
村崎じゃないといい。
「…はい?」
そう思いながら力無く返事をする。
「俺やけど…今ええか?」
聞こえてきたのは優衣の低い声で、ほっと息を吐いていた。
「うん」
答えると扉が開いて、優衣一人が姿を見せた。
村崎はいない。安心した。
そう思ってすぐ、ずきりと胸がきつく軋んだ。
なんで、村崎がいないから安堵するんだ。
村崎がいないことにほっとするなんて。
「…岩永?」
優衣は岩永の顔を見て戸惑い、うろたえる。
岩永はただ呆然として、なにも答えられなかった。
頬を伝う涙は、あとからあとからあふれ出す。
「……っ」
堪えられない。
嗚咽がこみ上げて、口元を押さえた。
「……岩永。
どないした?」
優衣は出来るだけ優しく問いかけた。
そっと肩に触れる。
今目の前で、あまりに辛そうに泣く彼は、少なくともあの男じゃない。
「………俺、今の静流には要らないんやな…」
「…え」
「…静流、ずっと、遠くばっか見とるもん。
俺を見ぃひん。違う誰か、見とる。
…今の静流には、俺は、不要なんやなって」
優衣は息をのみ、固まった。
なにも、すぐに言葉が出てこない。
「………流河が言ってた、静流がすごく好きな俺って、どこにおんの?
…少なくとも、俺のことやないよ」
「…違う…」
「違わない」
はっきり否定できず、優衣はただ悲しくなった。
静かに首を振ったけど、岩永は泣きながら微笑んで、自分の言葉を信じない。
違う。
でも、違わない。
村崎が見ているのは、彼が会いたいのは、記憶をなくしていた彼。
背中を向け続けた村崎をずっと思い続けていた、臆病で純情な彼。
今、ここにいる彼じゃないのは、確かで。
でも、彼は岩永だ。間違いなく。
彼と同じ心を持った、同じ存在。
ただ、記憶があるかないかだけ。そして、記憶をなくしたあとの痛みを知っているかだけ。
それでも、その痛みと共に、一年を生きてきた彼を、村崎がどれほど大事にしていたか。
なにも知らないから純情で、痛みに敏感で、人一倍寂しがりで。
優衣はなにも言えなくて、寝台に腰掛ける岩永の身体を抱きしめた。
「…優衣?」
「ごめん…。
俺も泣きそう…」
「…なんで」
本当に自分まで泣きそう。
だって、それは違う。
そう、村崎に言いたい。
同じ痛みを与えてどうする。
今ここにいる彼に、振り向かないお前を追い続ける痛みを、寂しさを与えてどうする。
今度こそ、大事にしたいんじゃなかったのか。
「…ごめん。
弱音吐いた。
気にせんで」
「…岩永」
「な」
顔を上げて、涙を拭って岩永は微笑む。
そうやって、強がるところも、変わらない。
「ええの。
…ええの」
諦めたように震えた息を吐いて、彼は笑っている。
「…………なんとなくわかった。
俺は陽炎みたいなもんや」
「…陽炎?」
「蜃気楼?
ここにあるはずのないもの。
手の届かないもの。
ここにおったらあかんっちゅうか」
明るく微笑んで、岩永は言う。
「幻?
多分、静流が今会いたいのは、…今ここにいるはずの、俺なんやと思うから」
「………」
優衣は目を瞠り、そして伏せた。
それほどに村崎の態度はあからさまか。
なにも知らない岩永が、気付くほどに。
「時間は巻き戻ったらあかんねん。
未来に過去の存在がおったらあかん。
受け入れられないのは、当然や」
「…でも!」
反射的に岩永の腕を掴み、叫んでいた。
ただなにかを言いたくて、そんな衝動で。
「…それでも村崎はずっとお前に会いたがってた。
お前をずっと探しとった。お前が好きで好きで……やから、ずっと」
ずっと、記憶のない岩永を受け入れられないほどに。
記憶のない彼を否定するほどに。
今目の前にいる彼が、愛しかったはずだ。
「……裏切るみたいで、あかんのやと思う。
今の、記憶のあるお前を受け入れたら……、ずっと傷ついてきた、記憶のないお前を……裏切る気がして」
岩永は静かに瞳を見開き、息をのんだ。
そして、なにか訊きたいだろうに、口を閉ざした。
目を伏せて、動揺を封じるように呼吸を繰り返す。
「……どっちも、俺なのに?」
それでも堪えきれなかった問いを、切なげに微笑んで口にした。
「…俺はずっと、静流が好き。
例え記憶をなくしても、この気持ちが変わると思えない。
…俺はきっとずっと、静流が好き」
「……………」
優衣は今更に気付いて、声も失った。
胸が貫かれたみたいに痛んで、言葉が出ない。
ああ、そうか。
そうだったのか。
記憶を失ったあと、振り向かず、突き放すばかりの村崎を、なぜ彼が好きになったのか。
不思議に思ってきた。
違う。彼は記憶をなくしてから、また一から恋をしたわけじゃない。
その胸の中にある、村崎への恋心は、例え暴走キャリアでも消せなかった。
村崎を想い続けた気持ちは、ずっとずっと前から、繋がっていた。
彼は間違いなく、村崎の愛する人なんだ。
ただ自分まで辛くて悲しい気持ちのまま、一度部屋を出る。
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「記憶ないみたいだね」
「………ああ。
なにがあったんやろ」
「ほんとだよ」
流河には現在進行形で嘘を吐いている。
彼は人一倍聡いから、少し心配だけれど。
「まあ、当面の問題はリバウンドだから、村崎くんにそれ言わなきゃね」
「ああ。
まあ、一回くらいは行ってもええやろ」
「俺、準備してくる」
流河は202号室の扉に手をかけてから、優衣を振り返る。
「そういえば、時波くんが目を覚ましたらしいよ」
「そうか、よかった」
「うん」
流河は笑うが、影のある笑みだった。
少し後ろめたい。
「……せめてなにがあったかとか、覚えてるといいんだけど」
「せやな」
いや、無理だろう。
おそらく時波にも口止めしているはずだ。
「……化野くんも曖昧なことしか言ってなかったし、俺達も結構蚊帳の外だよね」
「…」
なにも言えない。
自分も流河を蚊帳の外にしている。
「……」
不意に流河は目を瞠り、遅れて息を飲んだ。
まさか気づかれた?と危ぶんだ優衣の顔を見て、流河は言う。
「あれ?
ねえ、化野くん、こう言ってなかった?」
違うらしい。
内心安堵しながら、記憶を検索する。
「『彼らはその未来を変えようとあがいてる』…って」
「………」
そういえば、あの場は岩永のことで頭が一杯で気づかなかったけど。
そう言っていた。
優衣も息を飲んだ。
「…あれ?
もしかして」
「化野くんさ、………………遠回しだけど、彼らの目的教えてくれたんじゃない?」
「…かも」
つまり、彼らはその「悪い未来」を迎えた世界で、その「悪い未来」を変えようとしているということか?
「……悪い未来っちゅうても、いろいろあるけどな」
「…誰かの記憶喪失とかは、あてはまらない、のかな?」
世界をまたいでくるくらいだし、記憶喪失とかそういうのじゃ甘い気がする。
「んなこと言うたかて、あとは誰かが死にましたとかそーゆう」
言いかけて、優衣は口をつぐんだ。
違う、と言い切れない。
「…ありうるかも。それ」
流河もそう思うらしい。
青ざめた顔でそう言った。
「いいの?」
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「なにがや?」
「教えて」
岩永はくすり、と笑いを漏らした。
「自分も知らない内容を?」
「それもあるけど」
おもしろくなさそうな吾妻を振り返り、岩永は笑う。
「大丈夫や。
ヘマはせん」
「…そうかな」
「第一、俺はまだお前を許したわけやない」
そう言う岩永だが、視線は柔らかい。
それが嘘なのか、村崎と出かける故か。
「…わかってる、だけど」
「俺に限ってない」
お前みたいにほだされるなんて。
その言葉は全く信用出来ない。
「ありうる」
吾妻は岩永の腕を掴んで言った。
少しやせた腕だ。
いくつも超能力を暴走キャリア化させ、無茶な使用をするたび、悲鳴を上げて、寿命を縮め、身体をむしばんだ。
それを見過ごしてきた。
「…あんたは、村崎のためならなんだって」
「言うな」
岩永は微笑んだ。優しい口調。
切なげな笑みだ。悲しそうな声だ。
「……あれは、所詮、俺のもんにはならん」
かすかに揺らぐ茶の瞳。
「…ただ、重ねとるだけや」
珍しく訊いた彼の弱音だ。
「…大丈夫や。
目的を忘れたりせぇへん」
吾妻の手をほどき、鏡に向き直る岩永の格好を見た。
いつもみたいな派手な格好じゃなく、年相応の少年らしい服装だ。
村崎のためだろう。
「…忘れたりせぇへん。
…忘れられるもんか」
「…ああ」
そう、願う。
ただ、そう思うしかない。
彼が諦めないでくれることを。
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