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第十章 Butterfly Effect
第十二話 手の鳴るほうへ
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ホテルの一室。
寝台に腰掛け、ぼんやりしていた吾妻の意識を引っ張ったのは、部屋のインターフォンだった。
岩永は部屋の鍵を持っているし、村崎と出かけたばかりで戻ってくるはずがない。
重い身体を立たせ、扉に向かうと開けた。
そこに立っていた岩永の姿に、目を瞠る。
「どうしたの?」
まさか、早々に切り上げてくるはずはない。
わかりにくくも、嬉しそうにしていたのだから。
「村崎は……………」
言いかけて吾妻は気づいた。
「…ああ、なるほど」
驚きが先に来たせいで、気づくのに時間がかかった。
彼は、こちらの世界の岩永だ。
「…静流は?」
これのせいもあるな、と内心思った。
今の彼は、昔の記憶を持っている。村崎を「静流」と呼ぶ。
それが、少し彼のように錯覚を見せた原因か。
「岩永とデート」
意地悪に笑って言ってやると、露骨に傷ついた顔をした。
「別にいいでしょ。
村崎は交換条件で了承したからね。
第一…」
「…」
岩永はそのまま俯き、言葉もなかった。
随分と、わかりやすく、幼い感じだ。
少なくとも、記憶がリセットされる前の彼と比べると、大分違う。
今ならわかる。
あのときの彼が、自分の知っている岩永にどこか似て見えた。
覚悟だ。
自分の命すらいとわない覚悟が、同じに見せた。
「交換条件ってなにかな?」
扉を少ししか開けていなかったせいで、他に人がいることに気づかなかった。
明るい男の声に、ハッとして扉を大きく開けた。
そこには、優衣と流河の姿。
「相変わらず保護者だね、あんたら」
「…俺達はね、一応君のことはそれなりに見直していたんだから、それを損なわれると困るんだ」
流河は腕を組んで、ため息を吐く。
「なに?
そっちが勝手に決めつけただけだろ。
善人扱いして欲しいわけじゃない。
あんたらに見直されたって、いいことない」
「わかってないなあ」
流河はもう一度ため息。
がっかりしたような顔だ。
「連帯責任なんだよ。
君をあのとき知ってて泳がせていた全員が。
俺とか優衣くんとか九生くんたちとか。
君が誰かに危害を及ぼすと俺達の責任になっちゃうからさー」
「そんなこと、自業自得だろ」
「て、いうのは建前なんだけど」
流河はさらっと言って、唇に笑みを乗せる。
さっきまでの落胆した様子は演技か。
「俺達はそんなに馬鹿じゃないから。
君を全部信用してはいないしね、想定内ではあるんだ」
「…そら、まあ、普通だね」
流河は扉に手をかけていた吾妻をどかし、中に足を踏み入れる。
ぶっちゃけ、あれだけで自分を信用するほうがどうかしている。
そこまで思って、白倉の笑顔が浮かんだ。
胸が痛む。
「情にほだされた程度で改心してくれるとは思ってない。
でも、君は白倉くんが相手じゃなきゃ、あそこまで心を開かなかっただろう」
それは事実だ。
だから、苦しい。
「訊こうか?
なんで、君たちはこんな真似をしているのかな?」
「あんたらには関係ない」
「関係ないなら、俺達に危害を加えないで欲しいね」
吾妻はちらり、と流河の背後を見やった。
優衣の傍らで心細そうにしている岩永の姿がある。
「君たちの目的はなに?」
「教える必要ない」
答える気はない。
言いたくもない。
流河をにらみ返した吾妻に、流河はきつい視線のまま、数秒間を作る。
「俺達は、憶測なんだけど、もしかしたらっていうのがあってね」
「……は?」
「君たちの目的。
単刀直入に訊こう」
流河は揺らがず吾妻を見上げて、はっきりした声で言葉にした。
「君たちは、死者をよみがえらせたいのかい?」
心臓が大きく脈打った。
思わず息を飲み、一歩後ずさってしまう。
明らかに狼狽してしまってから、しまったと思った。
これでは、肯定だ。
流河と優衣はその様子を見つめて、顔を歪めた。
出来れば外れて欲しかったと言いたげに。
「…あー、もう。
もっと深刻じゃない目的だったら、俺達もさっさと追い払いたいんだけどねー」
流河は頭を抱えて見せた。
「君たちを追い払って、忘れて生きるのも若干難しいしさ」
「……矛盾してるよ」
さっき、信用なんかしてないと言っていたのに。
敵意を見せたのに。
「君たちは、自分たちが大好きな恋人の姿をした白倉くんや村崎くんにあれだけ執着しておいて、俺たちの気持ちは全く汲めないんだね」
「…お前が、俺達に大した気持ちはなくとも、俺達の方は、お前らが『吾妻』や『岩永』っちゅうだけで、ほっといたら寝覚めが悪い」
ここに来て初めて優衣が口を利いた。
「なんの力を欲しとるんか、うすうすわかっとるけど。
それなら、力を貸して欲しいって、頼んだらよかったんやないか?」
吾妻はさっきとは違う意味で目を瞠る。
「…お人好しに過ぎる。
力になってあげるって?」
「君の世界の流河理人はどうかな?
割と岩永くんのためならなんでもするほうだと思うけど」
流河は全く表情を変えない。
動じない。
その顔を見て、気圧されるのは吾妻の方だ。
「………………………」
その瞳を、顔を見ているのは辛い。
思い出すのは、あの日の記憶。
雨が降っていた街中。
路傍に座り込んでいた自分の元に来て、彼は手をさしのべた。
彼がなにを捨ててきたのか、知っている。
「怖いね」
「…はい?」
不意に呟いた吾妻に、流河は首を傾げた。
「あんたは、怖い」
「…意味がわからないな」
少なくとも、本来なら全く君の相手にならないし、と流河。
そういう意味じゃないと、内心思った。
「静流。
ごめん。
時間かかった」
「遅い」
「………」
そのころの村崎と岩永。
来ていたのは映画館だ。
ドリンクとポップコーンを持って座席に戻った岩永に、開口一番村崎がそう言った。
岩永はわかりやすく固まる。
「…ちょお。
そこはもうちょい優しい言葉かけへん?
『重くなかったか』とか、『大丈夫や』とか」
「嵐にならかけるし、あいつ待ってる分にはなんの不快も疲れもないが、お前相手やと秒刻みで不快と苛立ちが募る」
「……きっついし」
岩永はむすっとして、隣の座席に腰掛けた。
「ポップコーンやらんで」
「お前と同じの食いたない」
「……かわいくない」
まあ、しかたないんだけど。
交換条件を餌に無理矢理デートさせたわけだし、あいつを死なせかけたし、記憶は奪ったし。
まあ、最後のだけはまだばれてないんだが。
「せっかく静流の好きな映画にしたんに」
「………そうか?」
村崎はどこか不満げだ。
その表情に少し臆する。
「なんで?
こういうん、好きやなかった?」
自分の記憶は間違ってないはずだ。
村崎はこういう映画が好きだった。
「好きやが、まだ見てへんかった映画やし」
「なら」
「お前が相手やなかったらなあ」
しみじみと零された言葉に、内心おもしろくない。
しかし、村崎はまだ明るく白い劇場のスクリーンをじっと見たまま、
「……ホラーが見たい」
と真声で呟いた。
岩永の肩が思わず跳ねる。
「和製ホラーが。
やっとったやろ。話題になっとったやつが。
これ終わったらそれ見るか。
ほんならもう少しまともにデートしたるわ」
「…………………………」
わかりやすく凍り付き、青ざめた岩永の顔を見下ろし、村崎は軽く吹き出す。
「…意外やな。
てっきりホラー嫌いは克服しとるんかと」
「…………無理」
岩永は村崎の顔を決して見ないまま、小声で返す。
「……見たいなあ。
そういう反応見ると、余計見たい。
今回のはかなり怖いって訊いとったし、都市伝説が元になっとるし」
村崎がにんまりと笑いながら言うと、岩永の肩がまた震える。
それを横目で見て、
「多分知っとると思うけど、ある男性がいつも通る道に面したアパートに住んでいる女性に恋をしたっちゅう話で、その女性はいつも空を見上げとったそうなんやが」
「っす、ストップ!」
話の途中で堪えられないというように岩永が村崎の口を両手で塞いだ。
よく見るとその茶の瞳が涙目だ。
「…ごめん、マジやめて。
頼むからマジ許して。
マジ堪忍して」
涙目の瞳とシャツから出た腕に浮かんだ鳥肌に、村崎の口元が緩む。
「………言わへん?」
村崎はこくりと頷く。
「ほんま?」
もう一度頷く。
信用したのか、岩永がそっと手を離した。
「そういや、NOAで夏にいつも肝試し大会があるんやが、お前来たらどうや」
「嫌がらせや!」
岩永は頭を抱え、耳を塞いで村崎と反対側の椅子の手すりに突っ伏した。
本気で怖いらしい。
震えている背中を見ると、若干溜飲が下がるような、おもしろいような。
いや、意外だった。
てっきり、怖いものなんかないのだと思った。
そうしたら、彼と変わらずホラー嫌いだし。
「以前訊いた怪談で、夜道を歩いとったらすれ違った男性の顔が上下逆やったって話で、その男がちょうど儂みたいな禿頭…」
「うわーっ!!!」
毛を立てた猫のように悲鳴を上げて、とうとう立ち上がって岩永は劇場から逃げ出ししまった。
村崎は思わずぷっと吹き出してから、前や後ろの座席から「上映前とは言えうるさいなあ」と寄越された迷惑そうな視線に気づき、立ち上がって頭を下げてから後を追った。
映画館内を探すと、岩永は売店のあるフロアの奥の、上映時間待ちの客用の椅子に腰掛け、テーブルに突っ伏していた。
「おい」
声をかけると顕著に肩を震わせる。
おそるおそる顔を上げた彼の顔は、見るからに怯えていた。
「静流って、意外とS…」
「相手によるな。
ここまでいじめた相手はそういやお前以外にはおらんか…」
「ひどい…」
未だ涙目の彼の言葉に眉が寄った。
彼は決して村崎の方を向かない。
「お前達が最初から友好的ならこないな態度はとらん」
言外に誰のせいや、と咎める。
岩永は反論する気もないのか、視線を俯かせ黙ってしまった。
このままいじめていると、いざ本題に入ったときに素直に教えてくれなそうだ。
「わかった。
もう言わへんから」
「……………」
「ほんまに。
言わへん。ホラーには触れへん」
岩永は視線すら向けない。
怒らせてしまったか、とちょっと危ぶむ。
岩永は視線を動かして、こちらを見ようとして、またやめて俯く。
「…悪かった」
いじめすぎたようだ。
しょうがないから謝るか。
今日の目的に差し支えては困る。
しかし、岩永は頑なだ。
と思ったら、片手を伸ばして村崎のシャツを掴む。
「………マジ?」
「は?」
決して村崎の顔を見ないまま尋ねる。
「…顔がさかさまの奴、頭ハゲってマジ…?」
今気づいた。
シャツを掴む手が小さく震えている。
本気で怯えている。
村崎は身体を折って肩を震わせて、くつくつ笑い出してしまった。
「…ひどい」
岩永は未だ自分の顔を見ない。
どうも、本気で怖いらしい。
筋金入りだ。
「……いや」
ひとしきり笑ってから、村崎は痛む腹を押さえながら、緩んだ顔で答える。
「そういう話を聞いたことがあるんはほんまやが、頭がはげとったっちゅう話は聞いたことないわ」
「……」
岩永がやっと、おそるおそる村崎の顔を見た。
「ほんまに。
あれは儂の創作や」
「………」
笑ってはっきり言い切ってやると、岩永は震えた息を吐き出し、安堵した。
迂闊にもその姿をかわいいと思ってしまい、自分に舌打ちをする。
引っかかっていたからって、こいつにほだされるわけにいかない。
なんで、あんなことを言ったのかは気になるが。
「……静流って、ほんまひどい」
浮かんだ涙を拭いながら、岩永はそう言い、椅子から立ち上がる。
「デートやないみたい」
「相思相愛やないからな」
「…意地悪や」
意地悪じゃない。
本当のことだ。
そう言いたいが、機嫌を損ねても困る。
岩永の頭を撫でて、劇場に促した。
「見るんやろ?
ホラーやないやつ」
「……うん」
ホラーは見ないから、と言い置くと、少し顔を赤らめながら頷いた。
上映中、岩永は熱心に見ていた。
村崎自身ちょっとやばいな、と思ったクライマックスで涙ぐんでいた彼に、意外だと思った。
てっきり、こんな作り物じゃ泣かないと思った。
そんなかわいげないと思っていた。
「次は……ご飯か?」
劇場を出てから、腕時計を見て、村崎はそう尋ねた。
「うん。
おなかすいた」
「……」
未だ少し潤んだ茶の瞳を見て、やっぱり意外だと思う。
「…ファーストフードか?」
自分は出かけるとたいていファーストフードだ。
一緒に出かける相手がファーストフードに行きたがるのもあるが。
「うん。
あ、でもレストランでもええかも」
ファミレス、と岩永。
「そうやな。
安いし」
確かこの近くに一軒あった。
そこを次の目的地に決めて、歩き出す。
岩永が隣に並んだ。
「なあ」
「ん?」
「手、繋いでええ?」
甘えた台詞に、頷きそうになって堪える。
彼は違う。
「男同士で、気持ち悪い」
「えー、もう一人の俺も男」
「あいつにはそないな積極性はない」
とにかく嫌だ、と拒む。
ほだされたりしないと誓ったのだ。
厳密には、彼が積極的だったことは一回だけあったのだが。
「ええから、繋いで?」
さっきが嘘のように無邪気に微笑んで、手を差し出す岩永を見下ろし、ため息を吐いた。
「…いつもそういう態度なら、まだマシなんやが」
「静流にはこう」
「他の奴にも」
あんな残虐さがなければ、まだマシだ。
そう、もっと最初から友好的だったなら。
そう思っていると、岩永が隣で、沈んだ声で言った。
「そら無理や」
その声を不思議に思った。
「静流以外、欲しがらへんて、決めたもん」
そう言う横顔が、こちらの胸まで締め付けられるくらい、切ない表情を浮かべていて、息を飲む。
「…静流以外、いらんもん」
村崎は思わず足を止める。
「なんで、そない、儂を」
「……」
前を歩く岩永が立ち止まり、村崎を振り返った。
「静流が好き」
真っ直ぐ村崎を見上げて、そう告げる。
「静流を愛しとる。
静流さえおってくれたらええ。
…静流が」
最後は、あまりに声が小さくて聞こえなかった。
「……静流」
岩永は村崎を見つめたまま、瞳を揺らす。
泣きそうに。
揺らぐ気はないのに、さっき見た無邪気な笑顔が、意外な泣き顔が、胸を震わせる。
「……静流は、もし傷が跳ね返らんなら」
揺れた瞳のまま、はにかんだ岩永は、どう見ても心細そうで、迷子のようだった。
「…俺を、殺せた?」
また、そんなことを言う。
また、そんな言葉を口にする。
死にたがるような素振りを見せる。
わからない。
彼のことが、わからない。
寝台に腰掛け、ぼんやりしていた吾妻の意識を引っ張ったのは、部屋のインターフォンだった。
岩永は部屋の鍵を持っているし、村崎と出かけたばかりで戻ってくるはずがない。
重い身体を立たせ、扉に向かうと開けた。
そこに立っていた岩永の姿に、目を瞠る。
「どうしたの?」
まさか、早々に切り上げてくるはずはない。
わかりにくくも、嬉しそうにしていたのだから。
「村崎は……………」
言いかけて吾妻は気づいた。
「…ああ、なるほど」
驚きが先に来たせいで、気づくのに時間がかかった。
彼は、こちらの世界の岩永だ。
「…静流は?」
これのせいもあるな、と内心思った。
今の彼は、昔の記憶を持っている。村崎を「静流」と呼ぶ。
それが、少し彼のように錯覚を見せた原因か。
「岩永とデート」
意地悪に笑って言ってやると、露骨に傷ついた顔をした。
「別にいいでしょ。
村崎は交換条件で了承したからね。
第一…」
「…」
岩永はそのまま俯き、言葉もなかった。
随分と、わかりやすく、幼い感じだ。
少なくとも、記憶がリセットされる前の彼と比べると、大分違う。
今ならわかる。
あのときの彼が、自分の知っている岩永にどこか似て見えた。
覚悟だ。
自分の命すらいとわない覚悟が、同じに見せた。
「交換条件ってなにかな?」
扉を少ししか開けていなかったせいで、他に人がいることに気づかなかった。
明るい男の声に、ハッとして扉を大きく開けた。
そこには、優衣と流河の姿。
「相変わらず保護者だね、あんたら」
「…俺達はね、一応君のことはそれなりに見直していたんだから、それを損なわれると困るんだ」
流河は腕を組んで、ため息を吐く。
「なに?
そっちが勝手に決めつけただけだろ。
善人扱いして欲しいわけじゃない。
あんたらに見直されたって、いいことない」
「わかってないなあ」
流河はもう一度ため息。
がっかりしたような顔だ。
「連帯責任なんだよ。
君をあのとき知ってて泳がせていた全員が。
俺とか優衣くんとか九生くんたちとか。
君が誰かに危害を及ぼすと俺達の責任になっちゃうからさー」
「そんなこと、自業自得だろ」
「て、いうのは建前なんだけど」
流河はさらっと言って、唇に笑みを乗せる。
さっきまでの落胆した様子は演技か。
「俺達はそんなに馬鹿じゃないから。
君を全部信用してはいないしね、想定内ではあるんだ」
「…そら、まあ、普通だね」
流河は扉に手をかけていた吾妻をどかし、中に足を踏み入れる。
ぶっちゃけ、あれだけで自分を信用するほうがどうかしている。
そこまで思って、白倉の笑顔が浮かんだ。
胸が痛む。
「情にほだされた程度で改心してくれるとは思ってない。
でも、君は白倉くんが相手じゃなきゃ、あそこまで心を開かなかっただろう」
それは事実だ。
だから、苦しい。
「訊こうか?
なんで、君たちはこんな真似をしているのかな?」
「あんたらには関係ない」
「関係ないなら、俺達に危害を加えないで欲しいね」
吾妻はちらり、と流河の背後を見やった。
優衣の傍らで心細そうにしている岩永の姿がある。
「君たちの目的はなに?」
「教える必要ない」
答える気はない。
言いたくもない。
流河をにらみ返した吾妻に、流河はきつい視線のまま、数秒間を作る。
「俺達は、憶測なんだけど、もしかしたらっていうのがあってね」
「……は?」
「君たちの目的。
単刀直入に訊こう」
流河は揺らがず吾妻を見上げて、はっきりした声で言葉にした。
「君たちは、死者をよみがえらせたいのかい?」
心臓が大きく脈打った。
思わず息を飲み、一歩後ずさってしまう。
明らかに狼狽してしまってから、しまったと思った。
これでは、肯定だ。
流河と優衣はその様子を見つめて、顔を歪めた。
出来れば外れて欲しかったと言いたげに。
「…あー、もう。
もっと深刻じゃない目的だったら、俺達もさっさと追い払いたいんだけどねー」
流河は頭を抱えて見せた。
「君たちを追い払って、忘れて生きるのも若干難しいしさ」
「……矛盾してるよ」
さっき、信用なんかしてないと言っていたのに。
敵意を見せたのに。
「君たちは、自分たちが大好きな恋人の姿をした白倉くんや村崎くんにあれだけ執着しておいて、俺たちの気持ちは全く汲めないんだね」
「…お前が、俺達に大した気持ちはなくとも、俺達の方は、お前らが『吾妻』や『岩永』っちゅうだけで、ほっといたら寝覚めが悪い」
ここに来て初めて優衣が口を利いた。
「なんの力を欲しとるんか、うすうすわかっとるけど。
それなら、力を貸して欲しいって、頼んだらよかったんやないか?」
吾妻はさっきとは違う意味で目を瞠る。
「…お人好しに過ぎる。
力になってあげるって?」
「君の世界の流河理人はどうかな?
割と岩永くんのためならなんでもするほうだと思うけど」
流河は全く表情を変えない。
動じない。
その顔を見て、気圧されるのは吾妻の方だ。
「………………………」
その瞳を、顔を見ているのは辛い。
思い出すのは、あの日の記憶。
雨が降っていた街中。
路傍に座り込んでいた自分の元に来て、彼は手をさしのべた。
彼がなにを捨ててきたのか、知っている。
「怖いね」
「…はい?」
不意に呟いた吾妻に、流河は首を傾げた。
「あんたは、怖い」
「…意味がわからないな」
少なくとも、本来なら全く君の相手にならないし、と流河。
そういう意味じゃないと、内心思った。
「静流。
ごめん。
時間かかった」
「遅い」
「………」
そのころの村崎と岩永。
来ていたのは映画館だ。
ドリンクとポップコーンを持って座席に戻った岩永に、開口一番村崎がそう言った。
岩永はわかりやすく固まる。
「…ちょお。
そこはもうちょい優しい言葉かけへん?
『重くなかったか』とか、『大丈夫や』とか」
「嵐にならかけるし、あいつ待ってる分にはなんの不快も疲れもないが、お前相手やと秒刻みで不快と苛立ちが募る」
「……きっついし」
岩永はむすっとして、隣の座席に腰掛けた。
「ポップコーンやらんで」
「お前と同じの食いたない」
「……かわいくない」
まあ、しかたないんだけど。
交換条件を餌に無理矢理デートさせたわけだし、あいつを死なせかけたし、記憶は奪ったし。
まあ、最後のだけはまだばれてないんだが。
「せっかく静流の好きな映画にしたんに」
「………そうか?」
村崎はどこか不満げだ。
その表情に少し臆する。
「なんで?
こういうん、好きやなかった?」
自分の記憶は間違ってないはずだ。
村崎はこういう映画が好きだった。
「好きやが、まだ見てへんかった映画やし」
「なら」
「お前が相手やなかったらなあ」
しみじみと零された言葉に、内心おもしろくない。
しかし、村崎はまだ明るく白い劇場のスクリーンをじっと見たまま、
「……ホラーが見たい」
と真声で呟いた。
岩永の肩が思わず跳ねる。
「和製ホラーが。
やっとったやろ。話題になっとったやつが。
これ終わったらそれ見るか。
ほんならもう少しまともにデートしたるわ」
「…………………………」
わかりやすく凍り付き、青ざめた岩永の顔を見下ろし、村崎は軽く吹き出す。
「…意外やな。
てっきりホラー嫌いは克服しとるんかと」
「…………無理」
岩永は村崎の顔を決して見ないまま、小声で返す。
「……見たいなあ。
そういう反応見ると、余計見たい。
今回のはかなり怖いって訊いとったし、都市伝説が元になっとるし」
村崎がにんまりと笑いながら言うと、岩永の肩がまた震える。
それを横目で見て、
「多分知っとると思うけど、ある男性がいつも通る道に面したアパートに住んでいる女性に恋をしたっちゅう話で、その女性はいつも空を見上げとったそうなんやが」
「っす、ストップ!」
話の途中で堪えられないというように岩永が村崎の口を両手で塞いだ。
よく見るとその茶の瞳が涙目だ。
「…ごめん、マジやめて。
頼むからマジ許して。
マジ堪忍して」
涙目の瞳とシャツから出た腕に浮かんだ鳥肌に、村崎の口元が緩む。
「………言わへん?」
村崎はこくりと頷く。
「ほんま?」
もう一度頷く。
信用したのか、岩永がそっと手を離した。
「そういや、NOAで夏にいつも肝試し大会があるんやが、お前来たらどうや」
「嫌がらせや!」
岩永は頭を抱え、耳を塞いで村崎と反対側の椅子の手すりに突っ伏した。
本気で怖いらしい。
震えている背中を見ると、若干溜飲が下がるような、おもしろいような。
いや、意外だった。
てっきり、怖いものなんかないのだと思った。
そうしたら、彼と変わらずホラー嫌いだし。
「以前訊いた怪談で、夜道を歩いとったらすれ違った男性の顔が上下逆やったって話で、その男がちょうど儂みたいな禿頭…」
「うわーっ!!!」
毛を立てた猫のように悲鳴を上げて、とうとう立ち上がって岩永は劇場から逃げ出ししまった。
村崎は思わずぷっと吹き出してから、前や後ろの座席から「上映前とは言えうるさいなあ」と寄越された迷惑そうな視線に気づき、立ち上がって頭を下げてから後を追った。
映画館内を探すと、岩永は売店のあるフロアの奥の、上映時間待ちの客用の椅子に腰掛け、テーブルに突っ伏していた。
「おい」
声をかけると顕著に肩を震わせる。
おそるおそる顔を上げた彼の顔は、見るからに怯えていた。
「静流って、意外とS…」
「相手によるな。
ここまでいじめた相手はそういやお前以外にはおらんか…」
「ひどい…」
未だ涙目の彼の言葉に眉が寄った。
彼は決して村崎の方を向かない。
「お前達が最初から友好的ならこないな態度はとらん」
言外に誰のせいや、と咎める。
岩永は反論する気もないのか、視線を俯かせ黙ってしまった。
このままいじめていると、いざ本題に入ったときに素直に教えてくれなそうだ。
「わかった。
もう言わへんから」
「……………」
「ほんまに。
言わへん。ホラーには触れへん」
岩永は視線すら向けない。
怒らせてしまったか、とちょっと危ぶむ。
岩永は視線を動かして、こちらを見ようとして、またやめて俯く。
「…悪かった」
いじめすぎたようだ。
しょうがないから謝るか。
今日の目的に差し支えては困る。
しかし、岩永は頑なだ。
と思ったら、片手を伸ばして村崎のシャツを掴む。
「………マジ?」
「は?」
決して村崎の顔を見ないまま尋ねる。
「…顔がさかさまの奴、頭ハゲってマジ…?」
今気づいた。
シャツを掴む手が小さく震えている。
本気で怯えている。
村崎は身体を折って肩を震わせて、くつくつ笑い出してしまった。
「…ひどい」
岩永は未だ自分の顔を見ない。
どうも、本気で怖いらしい。
筋金入りだ。
「……いや」
ひとしきり笑ってから、村崎は痛む腹を押さえながら、緩んだ顔で答える。
「そういう話を聞いたことがあるんはほんまやが、頭がはげとったっちゅう話は聞いたことないわ」
「……」
岩永がやっと、おそるおそる村崎の顔を見た。
「ほんまに。
あれは儂の創作や」
「………」
笑ってはっきり言い切ってやると、岩永は震えた息を吐き出し、安堵した。
迂闊にもその姿をかわいいと思ってしまい、自分に舌打ちをする。
引っかかっていたからって、こいつにほだされるわけにいかない。
なんで、あんなことを言ったのかは気になるが。
「……静流って、ほんまひどい」
浮かんだ涙を拭いながら、岩永はそう言い、椅子から立ち上がる。
「デートやないみたい」
「相思相愛やないからな」
「…意地悪や」
意地悪じゃない。
本当のことだ。
そう言いたいが、機嫌を損ねても困る。
岩永の頭を撫でて、劇場に促した。
「見るんやろ?
ホラーやないやつ」
「……うん」
ホラーは見ないから、と言い置くと、少し顔を赤らめながら頷いた。
上映中、岩永は熱心に見ていた。
村崎自身ちょっとやばいな、と思ったクライマックスで涙ぐんでいた彼に、意外だと思った。
てっきり、こんな作り物じゃ泣かないと思った。
そんなかわいげないと思っていた。
「次は……ご飯か?」
劇場を出てから、腕時計を見て、村崎はそう尋ねた。
「うん。
おなかすいた」
「……」
未だ少し潤んだ茶の瞳を見て、やっぱり意外だと思う。
「…ファーストフードか?」
自分は出かけるとたいていファーストフードだ。
一緒に出かける相手がファーストフードに行きたがるのもあるが。
「うん。
あ、でもレストランでもええかも」
ファミレス、と岩永。
「そうやな。
安いし」
確かこの近くに一軒あった。
そこを次の目的地に決めて、歩き出す。
岩永が隣に並んだ。
「なあ」
「ん?」
「手、繋いでええ?」
甘えた台詞に、頷きそうになって堪える。
彼は違う。
「男同士で、気持ち悪い」
「えー、もう一人の俺も男」
「あいつにはそないな積極性はない」
とにかく嫌だ、と拒む。
ほだされたりしないと誓ったのだ。
厳密には、彼が積極的だったことは一回だけあったのだが。
「ええから、繋いで?」
さっきが嘘のように無邪気に微笑んで、手を差し出す岩永を見下ろし、ため息を吐いた。
「…いつもそういう態度なら、まだマシなんやが」
「静流にはこう」
「他の奴にも」
あんな残虐さがなければ、まだマシだ。
そう、もっと最初から友好的だったなら。
そう思っていると、岩永が隣で、沈んだ声で言った。
「そら無理や」
その声を不思議に思った。
「静流以外、欲しがらへんて、決めたもん」
そう言う横顔が、こちらの胸まで締め付けられるくらい、切ない表情を浮かべていて、息を飲む。
「…静流以外、いらんもん」
村崎は思わず足を止める。
「なんで、そない、儂を」
「……」
前を歩く岩永が立ち止まり、村崎を振り返った。
「静流が好き」
真っ直ぐ村崎を見上げて、そう告げる。
「静流を愛しとる。
静流さえおってくれたらええ。
…静流が」
最後は、あまりに声が小さくて聞こえなかった。
「……静流」
岩永は村崎を見つめたまま、瞳を揺らす。
泣きそうに。
揺らぐ気はないのに、さっき見た無邪気な笑顔が、意外な泣き顔が、胸を震わせる。
「……静流は、もし傷が跳ね返らんなら」
揺れた瞳のまま、はにかんだ岩永は、どう見ても心細そうで、迷子のようだった。
「…俺を、殺せた?」
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