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第十章 Butterfly Effect
第二十話 真夏の亡霊
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礼拝堂の中は静かだ。
誰も口を開かない。重苦しい空気が漂っている。
岩永が一つため息を吐いた時、唐突に扉が外から開いて、全員が弾かれたように振り向いた。
「密談ならば場所を選んだ方が良い」
「全くだ」
礼拝堂の中に足を踏み入れた男二人の姿に、岩永が顔を引きつらせた。
彼らは扉を閉めると、出入りを封じるようにその前に立つ。
「…雪代。若松…」
白倉がかすれた声で二人の名を呼ぶ。
村崎、優衣、流河は息をのみ、二人の言葉を伺っている。
「…心配せずとも、朔螺は今はいない」
警戒心をあらわにした岩永の顔を見やり、雪代はふっと微笑んで言った。
「朔螺は今のところ興味がないそうだ。
だからそんなに怯えずとも良い」
「…怯えてはいない」
「そうか?
七月七日の傷が癒えていないのかと思ったよ」
飄々とした雪代の言葉に、岩永が悔しげに顔を歪め、視線を尖らせる。
暗に完膚無きまでに負かされた時のことを指し、雪代は静かに笑っている。
「…しかし、わかっているのだろう?
村崎。
これは立派な不正行為だ」
雪代は全て見透かして、村崎を名指しした。
誰が言い出したかを正確に理解している。
「…わかっとる。
処罰なら儂だけにしてくれ。
流河も御園も儂に従っただけや」
「ちょ、村崎くん…。
俺たちも頷いたんだから、同罪だよ」
「ああ」
村崎の覚悟を決めた言葉に、流河と優衣は慌てて庇う。
雪代は口元をゆるませ、おもしろそうな口調で、
「お前たちは絆が強いな。
見ていて気持ちがよいほどだ」
と賛辞する。
「……今の状況じゃ素直に喜べないけどありがとう」
「喜んでおけ。
俺も征一郎も上に報告する気はないからな」
「…え」
感情の起伏が掴めない声で言われ、すぐに理解できなかった。
「だから、処罰する気はないと言っている。
村崎たちを罰するなら、白倉たちも同罪なんだ」
「吾妻。
そのまま参加すればお前も不正行為を働いたことになる」
「…あ」
今更に思い出して、吾妻は青ざめた。
そうだ。この身体は自分の身体じゃない。
いろいろあって頭の外に追いやっていた。
「しかし、白倉のチームと、岩永のチーム両方が脱落してしまうのは大変つまらない。
あとあと内密に罰を与えればいいんじゃないか――――と朔螺が言ったのでな」
「………個人的な都合だけど正直助かる」
「非常に化野くんらしいな…」
流河と白倉が空笑いを浮かべ呟いた。
確かにものすごく化野が言いそう。
「個人的な都合ではない。
優勝候補のチームが二つも消えては盛り上がりに欠けてしまう。
それは大会全体を見据えた上での判断だ。
…まあ、そうは言っても俺も朔螺のわがままだとは思うが」
「最後までフォローしろ鷹明」
「真実だ」
きっぱり言い切る雪代に、若松はなんとも言えない表情だ。
ちょっと可笑しい。
「…ただ、一つ聴きたい。
岩永」
「…なん?」
扉の前に二人がいるため、逃げることも出来ない。
今逃げることは簡単だが、大会に参加する以上、逃げていては仕方がない。
「大会に参加するということは、我々の手のひらの上に立つということ。
身柄を拘束される危険があるとわかっていただろう。
なぜ来た?」
村崎は思わず岩永の横顔を見下ろした。
その危険はあった。なのに、岩永は頷いた。
そんなにも、自分の存在は彼にとって重いのか。
村崎の視界の中で、岩永は不意に柔らかく微笑んだ。
「確かに。
…でもそれでも力を貸したいと思った。
それくらい、俺には静流が全て」
愛おしむような、切なげな声音。
胸が締め付けられる。
「それに、…ここにいたかった。
あの日以来、俺が失ったもの。
白倉がおって、流河もいて、優衣も、静流もいる。
吾妻も。
俺の大事な人がそろってるこの場所に、立ってみたかった」
嘘だと思えなかった。
それくらい、優しい声だった。
悲しい響きだった。
「………そうか」
雪代も納得したのか、頷いた。
「……で?
俺をどうしたい?」
「今はどうもする気はない。
さっき言ったように、お前たちが脱落するのはつまらないからな」
雪代の言葉に、岩永は満足げに微笑んだ。
「ただし、こちらの世界の岩永が戻ってきた時点で拘留する。
それは承知しておけ」
「わかっとる」
岩永は村崎の提案に頷いた時に覚悟は決めていたのだろう。
ほとんど動じなかった。
「……化野は、嵐の居場所はわからんのか?」
不意に村崎が重苦しい声でそう尋ねる。
岩永はかすかに瞳を揺らしたが、静かに聴いている。
「わかるだろうな。
ただ、言わないということは言う気がないんだろう。
あとは、言っても意味がないというときだ」
「…どういうことや?」
雪代は息を吐き、扉に軽く背を預けた。
「リバウンドだ。
巻き戻った時間は今急速に進んでいる。
それは身体だけでなく精神にも現れる。
今、岩永は記憶を持っているが、いずれ消える。
去年の五月二十日以降のあいつが出てくる。
今の岩永はお前に会う気がない。
記憶が消えれば戻ってくる。
だから今は意味がない」
雪代は淡々と言う。
村崎は息すら止め、凍り付いている。
「よかったじゃないか。
会いたかったんだろう?
記憶のないあいつに」
頭の中に、数日前に見た彼の顔がよぎって消えた。
『……俺のこと要らないくせに、なんで怒るの?
…俺が気付かないと思った?
ずっと、違う誰かを見てたこと』
あんな言葉を言わせたまま、傷つけたまま、そのままで。
もう二度と、会えなくなる?
「…どうしても会いたいと言うなら、明日の夜十二時までに会うことだ。
過ぎれば魔法が解けるから気をつけるんだな」
雪代はいつの間にか薄く笑っている。
優しい声でそう告げた。
「あとでヒントを聴きに来い。
特別に教えてやる」
チャンスを与えられたのだと理解して、拳に力が入った。
「シンデレラみたいやな。
それ」
「あながち間違ってもない。
村崎にとっては」
「…ああ、確かに」
おどけて言う雪代に、優衣も笑みを浮かべて頷いた。
「さて、俺たちの用件はそれだけだ。
どちらも大会で戦えるのを楽しみにしている」
雪代は微笑んで背中を向ける。
若松も無言で倣い、扉を開けて外に出ていく。
二人の背中を見送り、村崎は決意を新たにした。
会いたい。
傷つけたことを謝って、好きだと告げたかった。
その日の晩、202号室。
村崎は雪代に会いに行っていていない。
「よかったの?」
流河に不意に尋ねられ、岩永は不思議そうな顔をした。
テーブルを挟んで腰掛け、向かい合っている。
「なにが?」
「村崎くん。
俺が言うことじゃないけど」
村崎が雪代に彼のことを聴いたとき、気にした顔をしていたから。
「…別に。
そもそも静流は俺のもんやない。
それはわかっとる」
「……それでも、協力したんだ」
「静流やからな」
今目の前にいる岩永がどれだけ、村崎静流という男のことが好きか、掛け替えがないか、わかった気がする。
世界を渡るほど。全てを引き替えにするほどに。
いや、違う。
岩永にとって、村崎こそが全てだ。
「…吾妻くんもそうなんだね。
白倉くんのこと」
「そうやな」
少し不思議な感覚だ。
以前、自分たちをあんなに残酷に傷つけた男と、こんなに穏やかに話せている。
「………吾妻くんてさ、白倉くんにいつ会ったのさ。
吾妻くんがNOAに来たときにはもう亡くなってたんでしょう?」
「…ああ。
俺もよう知らん。
ただ、NOAで会おうって約束したらしい」
「…ふうん」
それで会いに行って、会えなくて、絶望は深かっただろう。
「……俺、ほんまはお前とも話してみたかった」
「…え?
俺?」
「そう」
流河は自分自身を指さし、半信半疑だ。
岩永は優しい顔で微笑んでいる。
「なんや。
俺に好かれとる自信はないんか」
「…いや、仲良いとは自負してますけど、君の場合……」
言いかけて、思い出してはっとした。
そうだ。吾妻と優衣と三人で追いつめたとき、自分を見て、なぜか凍り付いた。
自分を攻撃できたはずなのに、しなかった。
「………え?
特別なんだ…?」
「仲良し。大好き。
みんな死んでもうて、いつも吾妻とお前と三人でおったもん。
…お前がいなかったらとっくに死んでた。俺も多分」
「…」
岩永は屈託なく微笑んで言うが、流河は反応に困った。
それは向こうの流河のことだし、自分のことではないし。
でも、そんな風に思われることは、正直面はゆい。
目の前の岩永に対し、どこか優しくなった村崎の気持ちが少しわかった。
「…じゃあ、彼は?
そっちの世界にいるんでしょ?」
「いない」
「…?」
岩永は笑んだまま、静かに言う。
意味がよくわからない。
壊滅事件で死んだわけじゃない、はずだ。
岩永の言い方では。
でもいない?
死んでいる?
どういうこと?
部屋に戻ると時刻は夜の十時半過ぎ。
遅いし、電車も動いていないので仕方なく寝ることにした。
明日朝早くに起きて探そう。
寝台に横になって目を閉じる。
眠気が襲ってきて、身体から力が抜ける。
夢に落ちる寸前、耳元でスマートフォンの着信音が響いて飛び起きた。
村崎はスマートフォンを掴んで開き、息をのんだ。
岩永だと思った。でも違う。
表示されているのはあり得ない名前。
あり得ない番号が映っている。
これは現実か?
もう本当は眠ってしまっていて、これは夢の中じゃないか?
そうじゃないと、あり得ない。
おそるおそる画面を押す。
瞬間、世界が揺らいだ。
蝉の声に我に返る。
眩しい日差しが降り注いできて、目を細めた。
「……ここは」
見慣れない校舎がそばにあった。
新緑の森の中。
「……NOA……?」
でも、校舎の感じが違う。
戸惑いながら歩き出す。
目的もなく歩いていたのに、なにかに導かれたようにそこに出た。
森の奥にあった、墓所。
大きな漆黒の鉄柵に囲まれている。
「静流!」
不意に背後で声がして振り返る。
白倉が走ってくるところだった。
「静流!」
「白倉はん…?」
なんだろう。
目の前に立つ白倉の姿を見下ろし、村崎は戸惑う。
これは夢か?
「なんで静流もいるの?」
「……なんでて、ここはそもそもどこや?」
白倉は困惑している様子で、眉を下げる。
「……多分、もう一つの世界。
あの、あいつら…あの嵐や吾妻の世界」
「…ここが!?」
「うん。だって、ここはNOAや。
俺らの知ってるNOAにこんな墓所ないじゃん」
白倉は背後の墓を見て言う。
村崎は再度そちらを見て、確かにそうだとも思った。
でも、世界を越えられるわけが。
「俺な、実は一回、ここに来たことあるんだ。
リバウンドのせいで精神体だけが世界の壁越えてしまって。
だからそれみたいな」
「……儂は?」
村崎は自分自身を指さす。
心当たりがない。
「…俺に引っ張られたのかも。
静流も一応、時間巻き戻した中にいたし」
「…ああ、そうか」
それは確かにそうだ。
納得する。
「…精神体てことは、中に入れるんか?」
「え?」
「この柵」
村崎は手を伸ばし、柵に触れる。
柵は村崎の手をすり抜けた。
「……通れるみたいやな。
触れられん」
「…マジか」
でも幽霊みたいなものだし、それが普通か。
白倉も納得して柵をすり抜け、中に入る。
「……あれ」
白倉が茫然として端まで歩く。
「どないした?」
「前に来たときはここに、大きな石碑があったんだ」
白倉は一番奥に立って、手振りで「これくらい大きな」と示す。
「…見あたらへんな。
そんな石碑は」
「うん…おかしいなあ」
端から端まで見ても、あの石碑はない。
ここは本当に同じ場所だろうか。
そう思ってため息を吐いた瞬間、背後に気配を感じた。
弾かれたように二人は背後を振り返る。
柵の前に佇んでいたのはオレンジ色の髪の男。
「…流河」
「やあ。
また来たの?」
白倉はどう答えたらいいかわからない。
そもそも流河のせいかもしれない。
彼はあれからずっと、自分のそばにいたのだ。
「………お前、なんで、」
「なんで幽霊みたいなのかって聴かれても答えられないよって言ったじゃん」
「……」
戸惑う白倉の横で、村崎は二人の会話の意味がわからない。
「…どういうことや?」
「俺に身体がないからだよ。
幽霊みたいなものなんだ」
流河は微笑んで、村崎の疑問に答える。
村崎は息をのみ、彼の笑んだ顔を見つめる。
「ここにあった石碑は…?」
「じゃあ聴くけど、なんの石碑だと思ってる?」
白倉は流河を見つめたまま、唾を飲み込む。
「五月二十日の壊滅事件の」
流河は薄い笑みを浮かべ、目の前に佇んでいる。
精神体なのは同じはずなのに、不気味に感じる。
「その日に起こった暴走が、白倉くんや村崎くんを奪った。
それは変わらないよ」
「………………」
重い真実。喉が張り付いたようだ。
流河は意味深に微笑む。
「ただ、岩永くんと吾妻くんは帰ってくるべきだ。
以前と今とでは、状況が変わっている」
流河はふと視線を逸らし、笑みを消して言った。
「どういう……」
「たとえば、暴走の起こる原因とか。
昔はわかってなかったことがいろいろ解明されてるんだ。
方舟である九生くんたちも頑張ってる」
その言葉に、九生は生きていると知って、少しホッとした。
「……あ、………優衣や夕は」
そういえば、優衣や夕は生きているのか?
彼らがそばにいたなら、岩永を止めたはず。
流河は無言で首を横に振るう。
「……そう」
「…でも、わかってないんだ。
岩永くんも吾妻くんも、君たちも、本当のことをなにも」
流河は笑っている。
明るい微笑みなのに、妖しく感じる。
蝉の鳴き声が響いている夏の世界。
暑さは感じない。
「…お前は、なんで………?
壊滅事件に巻き込まれたのか?」
「………」
流河は腕を後ろで組んで、そこに佇んでいる。
笑った唇は変わらない。
蝉の声だけがうるさい。
なんだか、不気味な感じがする。
「…知りたい?」
その声が、なにか得体の知れない生き物の声のように聞こえた。
風が強く吹いた。
木のざわめきが大きくなる。
「でも駄目。
触れて良いのは、…岩永くんだけだ。
彼が、俺を――――………」
声は遠ざかる。
夏の苛烈な日差しも、虫の鳴き声もなにもかも。
誰も口を開かない。重苦しい空気が漂っている。
岩永が一つため息を吐いた時、唐突に扉が外から開いて、全員が弾かれたように振り向いた。
「密談ならば場所を選んだ方が良い」
「全くだ」
礼拝堂の中に足を踏み入れた男二人の姿に、岩永が顔を引きつらせた。
彼らは扉を閉めると、出入りを封じるようにその前に立つ。
「…雪代。若松…」
白倉がかすれた声で二人の名を呼ぶ。
村崎、優衣、流河は息をのみ、二人の言葉を伺っている。
「…心配せずとも、朔螺は今はいない」
警戒心をあらわにした岩永の顔を見やり、雪代はふっと微笑んで言った。
「朔螺は今のところ興味がないそうだ。
だからそんなに怯えずとも良い」
「…怯えてはいない」
「そうか?
七月七日の傷が癒えていないのかと思ったよ」
飄々とした雪代の言葉に、岩永が悔しげに顔を歪め、視線を尖らせる。
暗に完膚無きまでに負かされた時のことを指し、雪代は静かに笑っている。
「…しかし、わかっているのだろう?
村崎。
これは立派な不正行為だ」
雪代は全て見透かして、村崎を名指しした。
誰が言い出したかを正確に理解している。
「…わかっとる。
処罰なら儂だけにしてくれ。
流河も御園も儂に従っただけや」
「ちょ、村崎くん…。
俺たちも頷いたんだから、同罪だよ」
「ああ」
村崎の覚悟を決めた言葉に、流河と優衣は慌てて庇う。
雪代は口元をゆるませ、おもしろそうな口調で、
「お前たちは絆が強いな。
見ていて気持ちがよいほどだ」
と賛辞する。
「……今の状況じゃ素直に喜べないけどありがとう」
「喜んでおけ。
俺も征一郎も上に報告する気はないからな」
「…え」
感情の起伏が掴めない声で言われ、すぐに理解できなかった。
「だから、処罰する気はないと言っている。
村崎たちを罰するなら、白倉たちも同罪なんだ」
「吾妻。
そのまま参加すればお前も不正行為を働いたことになる」
「…あ」
今更に思い出して、吾妻は青ざめた。
そうだ。この身体は自分の身体じゃない。
いろいろあって頭の外に追いやっていた。
「しかし、白倉のチームと、岩永のチーム両方が脱落してしまうのは大変つまらない。
あとあと内密に罰を与えればいいんじゃないか――――と朔螺が言ったのでな」
「………個人的な都合だけど正直助かる」
「非常に化野くんらしいな…」
流河と白倉が空笑いを浮かべ呟いた。
確かにものすごく化野が言いそう。
「個人的な都合ではない。
優勝候補のチームが二つも消えては盛り上がりに欠けてしまう。
それは大会全体を見据えた上での判断だ。
…まあ、そうは言っても俺も朔螺のわがままだとは思うが」
「最後までフォローしろ鷹明」
「真実だ」
きっぱり言い切る雪代に、若松はなんとも言えない表情だ。
ちょっと可笑しい。
「…ただ、一つ聴きたい。
岩永」
「…なん?」
扉の前に二人がいるため、逃げることも出来ない。
今逃げることは簡単だが、大会に参加する以上、逃げていては仕方がない。
「大会に参加するということは、我々の手のひらの上に立つということ。
身柄を拘束される危険があるとわかっていただろう。
なぜ来た?」
村崎は思わず岩永の横顔を見下ろした。
その危険はあった。なのに、岩永は頷いた。
そんなにも、自分の存在は彼にとって重いのか。
村崎の視界の中で、岩永は不意に柔らかく微笑んだ。
「確かに。
…でもそれでも力を貸したいと思った。
それくらい、俺には静流が全て」
愛おしむような、切なげな声音。
胸が締め付けられる。
「それに、…ここにいたかった。
あの日以来、俺が失ったもの。
白倉がおって、流河もいて、優衣も、静流もいる。
吾妻も。
俺の大事な人がそろってるこの場所に、立ってみたかった」
嘘だと思えなかった。
それくらい、優しい声だった。
悲しい響きだった。
「………そうか」
雪代も納得したのか、頷いた。
「……で?
俺をどうしたい?」
「今はどうもする気はない。
さっき言ったように、お前たちが脱落するのはつまらないからな」
雪代の言葉に、岩永は満足げに微笑んだ。
「ただし、こちらの世界の岩永が戻ってきた時点で拘留する。
それは承知しておけ」
「わかっとる」
岩永は村崎の提案に頷いた時に覚悟は決めていたのだろう。
ほとんど動じなかった。
「……化野は、嵐の居場所はわからんのか?」
不意に村崎が重苦しい声でそう尋ねる。
岩永はかすかに瞳を揺らしたが、静かに聴いている。
「わかるだろうな。
ただ、言わないということは言う気がないんだろう。
あとは、言っても意味がないというときだ」
「…どういうことや?」
雪代は息を吐き、扉に軽く背を預けた。
「リバウンドだ。
巻き戻った時間は今急速に進んでいる。
それは身体だけでなく精神にも現れる。
今、岩永は記憶を持っているが、いずれ消える。
去年の五月二十日以降のあいつが出てくる。
今の岩永はお前に会う気がない。
記憶が消えれば戻ってくる。
だから今は意味がない」
雪代は淡々と言う。
村崎は息すら止め、凍り付いている。
「よかったじゃないか。
会いたかったんだろう?
記憶のないあいつに」
頭の中に、数日前に見た彼の顔がよぎって消えた。
『……俺のこと要らないくせに、なんで怒るの?
…俺が気付かないと思った?
ずっと、違う誰かを見てたこと』
あんな言葉を言わせたまま、傷つけたまま、そのままで。
もう二度と、会えなくなる?
「…どうしても会いたいと言うなら、明日の夜十二時までに会うことだ。
過ぎれば魔法が解けるから気をつけるんだな」
雪代はいつの間にか薄く笑っている。
優しい声でそう告げた。
「あとでヒントを聴きに来い。
特別に教えてやる」
チャンスを与えられたのだと理解して、拳に力が入った。
「シンデレラみたいやな。
それ」
「あながち間違ってもない。
村崎にとっては」
「…ああ、確かに」
おどけて言う雪代に、優衣も笑みを浮かべて頷いた。
「さて、俺たちの用件はそれだけだ。
どちらも大会で戦えるのを楽しみにしている」
雪代は微笑んで背中を向ける。
若松も無言で倣い、扉を開けて外に出ていく。
二人の背中を見送り、村崎は決意を新たにした。
会いたい。
傷つけたことを謝って、好きだと告げたかった。
その日の晩、202号室。
村崎は雪代に会いに行っていていない。
「よかったの?」
流河に不意に尋ねられ、岩永は不思議そうな顔をした。
テーブルを挟んで腰掛け、向かい合っている。
「なにが?」
「村崎くん。
俺が言うことじゃないけど」
村崎が雪代に彼のことを聴いたとき、気にした顔をしていたから。
「…別に。
そもそも静流は俺のもんやない。
それはわかっとる」
「……それでも、協力したんだ」
「静流やからな」
今目の前にいる岩永がどれだけ、村崎静流という男のことが好きか、掛け替えがないか、わかった気がする。
世界を渡るほど。全てを引き替えにするほどに。
いや、違う。
岩永にとって、村崎こそが全てだ。
「…吾妻くんもそうなんだね。
白倉くんのこと」
「そうやな」
少し不思議な感覚だ。
以前、自分たちをあんなに残酷に傷つけた男と、こんなに穏やかに話せている。
「………吾妻くんてさ、白倉くんにいつ会ったのさ。
吾妻くんがNOAに来たときにはもう亡くなってたんでしょう?」
「…ああ。
俺もよう知らん。
ただ、NOAで会おうって約束したらしい」
「…ふうん」
それで会いに行って、会えなくて、絶望は深かっただろう。
「……俺、ほんまはお前とも話してみたかった」
「…え?
俺?」
「そう」
流河は自分自身を指さし、半信半疑だ。
岩永は優しい顔で微笑んでいる。
「なんや。
俺に好かれとる自信はないんか」
「…いや、仲良いとは自負してますけど、君の場合……」
言いかけて、思い出してはっとした。
そうだ。吾妻と優衣と三人で追いつめたとき、自分を見て、なぜか凍り付いた。
自分を攻撃できたはずなのに、しなかった。
「………え?
特別なんだ…?」
「仲良し。大好き。
みんな死んでもうて、いつも吾妻とお前と三人でおったもん。
…お前がいなかったらとっくに死んでた。俺も多分」
「…」
岩永は屈託なく微笑んで言うが、流河は反応に困った。
それは向こうの流河のことだし、自分のことではないし。
でも、そんな風に思われることは、正直面はゆい。
目の前の岩永に対し、どこか優しくなった村崎の気持ちが少しわかった。
「…じゃあ、彼は?
そっちの世界にいるんでしょ?」
「いない」
「…?」
岩永は笑んだまま、静かに言う。
意味がよくわからない。
壊滅事件で死んだわけじゃない、はずだ。
岩永の言い方では。
でもいない?
死んでいる?
どういうこと?
部屋に戻ると時刻は夜の十時半過ぎ。
遅いし、電車も動いていないので仕方なく寝ることにした。
明日朝早くに起きて探そう。
寝台に横になって目を閉じる。
眠気が襲ってきて、身体から力が抜ける。
夢に落ちる寸前、耳元でスマートフォンの着信音が響いて飛び起きた。
村崎はスマートフォンを掴んで開き、息をのんだ。
岩永だと思った。でも違う。
表示されているのはあり得ない名前。
あり得ない番号が映っている。
これは現実か?
もう本当は眠ってしまっていて、これは夢の中じゃないか?
そうじゃないと、あり得ない。
おそるおそる画面を押す。
瞬間、世界が揺らいだ。
蝉の声に我に返る。
眩しい日差しが降り注いできて、目を細めた。
「……ここは」
見慣れない校舎がそばにあった。
新緑の森の中。
「……NOA……?」
でも、校舎の感じが違う。
戸惑いながら歩き出す。
目的もなく歩いていたのに、なにかに導かれたようにそこに出た。
森の奥にあった、墓所。
大きな漆黒の鉄柵に囲まれている。
「静流!」
不意に背後で声がして振り返る。
白倉が走ってくるところだった。
「静流!」
「白倉はん…?」
なんだろう。
目の前に立つ白倉の姿を見下ろし、村崎は戸惑う。
これは夢か?
「なんで静流もいるの?」
「……なんでて、ここはそもそもどこや?」
白倉は困惑している様子で、眉を下げる。
「……多分、もう一つの世界。
あの、あいつら…あの嵐や吾妻の世界」
「…ここが!?」
「うん。だって、ここはNOAや。
俺らの知ってるNOAにこんな墓所ないじゃん」
白倉は背後の墓を見て言う。
村崎は再度そちらを見て、確かにそうだとも思った。
でも、世界を越えられるわけが。
「俺な、実は一回、ここに来たことあるんだ。
リバウンドのせいで精神体だけが世界の壁越えてしまって。
だからそれみたいな」
「……儂は?」
村崎は自分自身を指さす。
心当たりがない。
「…俺に引っ張られたのかも。
静流も一応、時間巻き戻した中にいたし」
「…ああ、そうか」
それは確かにそうだ。
納得する。
「…精神体てことは、中に入れるんか?」
「え?」
「この柵」
村崎は手を伸ばし、柵に触れる。
柵は村崎の手をすり抜けた。
「……通れるみたいやな。
触れられん」
「…マジか」
でも幽霊みたいなものだし、それが普通か。
白倉も納得して柵をすり抜け、中に入る。
「……あれ」
白倉が茫然として端まで歩く。
「どないした?」
「前に来たときはここに、大きな石碑があったんだ」
白倉は一番奥に立って、手振りで「これくらい大きな」と示す。
「…見あたらへんな。
そんな石碑は」
「うん…おかしいなあ」
端から端まで見ても、あの石碑はない。
ここは本当に同じ場所だろうか。
そう思ってため息を吐いた瞬間、背後に気配を感じた。
弾かれたように二人は背後を振り返る。
柵の前に佇んでいたのはオレンジ色の髪の男。
「…流河」
「やあ。
また来たの?」
白倉はどう答えたらいいかわからない。
そもそも流河のせいかもしれない。
彼はあれからずっと、自分のそばにいたのだ。
「………お前、なんで、」
「なんで幽霊みたいなのかって聴かれても答えられないよって言ったじゃん」
「……」
戸惑う白倉の横で、村崎は二人の会話の意味がわからない。
「…どういうことや?」
「俺に身体がないからだよ。
幽霊みたいなものなんだ」
流河は微笑んで、村崎の疑問に答える。
村崎は息をのみ、彼の笑んだ顔を見つめる。
「ここにあった石碑は…?」
「じゃあ聴くけど、なんの石碑だと思ってる?」
白倉は流河を見つめたまま、唾を飲み込む。
「五月二十日の壊滅事件の」
流河は薄い笑みを浮かべ、目の前に佇んでいる。
精神体なのは同じはずなのに、不気味に感じる。
「その日に起こった暴走が、白倉くんや村崎くんを奪った。
それは変わらないよ」
「………………」
重い真実。喉が張り付いたようだ。
流河は意味深に微笑む。
「ただ、岩永くんと吾妻くんは帰ってくるべきだ。
以前と今とでは、状況が変わっている」
流河はふと視線を逸らし、笑みを消して言った。
「どういう……」
「たとえば、暴走の起こる原因とか。
昔はわかってなかったことがいろいろ解明されてるんだ。
方舟である九生くんたちも頑張ってる」
その言葉に、九生は生きていると知って、少しホッとした。
「……あ、………優衣や夕は」
そういえば、優衣や夕は生きているのか?
彼らがそばにいたなら、岩永を止めたはず。
流河は無言で首を横に振るう。
「……そう」
「…でも、わかってないんだ。
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流河は笑っている。
明るい微笑みなのに、妖しく感じる。
蝉の鳴き声が響いている夏の世界。
暑さは感じない。
「…お前は、なんで………?
壊滅事件に巻き込まれたのか?」
「………」
流河は腕を後ろで組んで、そこに佇んでいる。
笑った唇は変わらない。
蝉の声だけがうるさい。
なんだか、不気味な感じがする。
「…知りたい?」
その声が、なにか得体の知れない生き物の声のように聞こえた。
風が強く吹いた。
木のざわめきが大きくなる。
「でも駄目。
触れて良いのは、…岩永くんだけだ。
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