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空飛ぶくじら
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まだあの広い大空をくじらが飛んでいた時代のお話です。今日も空は突き抜ける様に真っ青に澄み渡っていて、雲ひとつ無い快晴でした。
「いやぁ、気持ちの良ぃ天気だなぁ」
くじらはプカプカと空を漂いながら呟きました。街を見下ろしながら空をアテもなく浮いているのが彼のお気に入りです。
友だちのマンボウが教えてくれた通り、今日は国民の祝日。空の日です。休校になった人間の子ども達が自分に向かって手を振っているのが見えました。
「ねー!くじら!何かお菓子を降らしてよ!」
子ども達は空に届く様に、大きな声でくじらに呼びかけました。すると、くじらはちょっとの間だけ目を瞑って考え事をした後、
「よぉし、じゃぁ、これをあげよう!」
そう言ってぷーーーっとほっぺを膨らませました。頭の上の噴気孔からは雲がもくもくと生まれていきます。その雲はやがてくじらよりもずっと大きなサイズになると、キャンディの形になりました。子ども達は大喜びです。
「まだまだぁ、ここからが本番だよぉ」
暫くすると雲からふわふわと何かが街に向かって舞い降りていきます。どうやらくじらのつくったキャンディ型の雲から、更に小さくなった飴玉型の雲が生まれて地上に落ちている様です。子ども達は我先にとふわふわが落ちる先に駆けていきました。くじらはニコニコとその景色を眺めています。
「やったー!キャンディ型の雲だからきっと飴玉雲が落ちてきてるぞ!急いで拾わなきゃ!」
子ども達は空から降ってきた飴玉雲を口いっぱいに頬張ります。雲で出来た飴はお店で売っている飴と遜色なく、むしろ本物の飴よりもとても甘くて美味しい味をしていました。
くじらは自分で作った何かの形をした雲から、本物の性質をもった小さい雲を無数に降らせることが出来るのでした。
※
今日もくじらが気持ち良さそうに泳いでいます。本日も清々しいほどの晴天。くじら以外にも浮かんでいるのは、こないだ子ども達の為に作ったキャンディ型の雲がひとつだけでした。それを見ると子ども達の喜ぶ姿を思い出してニコニコしてしまいます。
くじらの作った雲は願い事が全て叶えられるまでなくなりません。風が吹いた時に遠くに飛ばされていくだけです。おそらく食いしん坊の子どもが居て、まだ満足出来ていないのでしょう。季節の変わり目のこの時期は風が凪ぎ、空に雲が溜まっていってしまうのでした。
「おーい!くじらさんや!今日は杖みたいなもんを出してくれやせんかのう!」
くじらは微笑んで、ぷーーーっとほっぺを膨らませます。頭の上の噴気孔からはまたもや雲がもくもくと生まれていきます。その雲はやがてくじらよりも大きなサイズになると、ステッキの形になりました。ステッキの雲からはやがてふわふわと杖雲が落ちていきます。
「そうだなぁ、こんなにはいらないかぁ」
くじらは杖雲をひとつだけお爺さんのところにふーーーっと息を吹いて届けてあげました。残りの杖雲とステッキの大きな雲は、尾びれで風を送って地平線の彼方まで飛ばしてしまいました。どこか遠い国のお爺さんとお婆さんに杖雲を降らせてあげることでしょう。
「くじらさんや!ありがとのぉ!」
おじいさんの感謝の言葉を聞くとくじらはニコニコと微笑みました。
※
それからは日夜を問わず街の人々はくじらにお願い事をしていきました。誰のどんな願い事も全て叶えてあげないと。くじらは片っ端から願い事を雲の形にして空に浮かべました。良い人も悪い人もくじらにお願いしていきました。
※
くじらは大変困っていました。空はみんなのお願い事で作った、様々な形の雲でいっぱいになってしまいました。
「これじゃぁ、もうここには居れんのぉ」
くじらの住める空がもうありません。仕方なく海の中に引っ越しする事にしました。空に浮かんだ雲はくっつきあって元の形がわからなくなりました。それから何年も何年も経ちました。
これがくじらが海に住むようになって
空には雲がいっぱいできた理由です。
たまにくっつきあった雲が千切れて
元の形がわかる様になることがあり、
その時に人はくじらの作った願い事を見て
あの形に似ていると喜ぶのでした。
※
「ねー!ママ!あそこにキャンディみたいな雲が飛んでるよ!すごいすごい!」
「あら、ほんとう。凄く可愛くて素敵ね。やっぱりハイキングに来て良かったわ」
「あ!あそこの雲はお爺ちゃんがいつも持ってるステッキにそっくりだよ!」
「ほんとだわ、よく見つけたわね」
「あれ?なんかふわふわがいっぱい出てるよ!あの雲からいっぱい落ちてるよ!」
「あら何かしら?ほんとうね。私たちの街の方に降ってるみたいね」
「あのちっちゃいのが街?すごい遠いや!さっきのふわふわお家に帰ったら拾いに行こうよ!」
「そうだね、あのふわふわが何か気になるわね。遅くなったらパパが心配するしそろそろお家に帰ろうか」
「あ!ママ!あの雲の形もおかしいよ!」
「あらやだ、爆弾みたいな形してるわね」
ふわふわは止まらずに落ち続けている。
おしまい。
「いやぁ、気持ちの良ぃ天気だなぁ」
くじらはプカプカと空を漂いながら呟きました。街を見下ろしながら空をアテもなく浮いているのが彼のお気に入りです。
友だちのマンボウが教えてくれた通り、今日は国民の祝日。空の日です。休校になった人間の子ども達が自分に向かって手を振っているのが見えました。
「ねー!くじら!何かお菓子を降らしてよ!」
子ども達は空に届く様に、大きな声でくじらに呼びかけました。すると、くじらはちょっとの間だけ目を瞑って考え事をした後、
「よぉし、じゃぁ、これをあげよう!」
そう言ってぷーーーっとほっぺを膨らませました。頭の上の噴気孔からは雲がもくもくと生まれていきます。その雲はやがてくじらよりもずっと大きなサイズになると、キャンディの形になりました。子ども達は大喜びです。
「まだまだぁ、ここからが本番だよぉ」
暫くすると雲からふわふわと何かが街に向かって舞い降りていきます。どうやらくじらのつくったキャンディ型の雲から、更に小さくなった飴玉型の雲が生まれて地上に落ちている様です。子ども達は我先にとふわふわが落ちる先に駆けていきました。くじらはニコニコとその景色を眺めています。
「やったー!キャンディ型の雲だからきっと飴玉雲が落ちてきてるぞ!急いで拾わなきゃ!」
子ども達は空から降ってきた飴玉雲を口いっぱいに頬張ります。雲で出来た飴はお店で売っている飴と遜色なく、むしろ本物の飴よりもとても甘くて美味しい味をしていました。
くじらは自分で作った何かの形をした雲から、本物の性質をもった小さい雲を無数に降らせることが出来るのでした。
※
今日もくじらが気持ち良さそうに泳いでいます。本日も清々しいほどの晴天。くじら以外にも浮かんでいるのは、こないだ子ども達の為に作ったキャンディ型の雲がひとつだけでした。それを見ると子ども達の喜ぶ姿を思い出してニコニコしてしまいます。
くじらの作った雲は願い事が全て叶えられるまでなくなりません。風が吹いた時に遠くに飛ばされていくだけです。おそらく食いしん坊の子どもが居て、まだ満足出来ていないのでしょう。季節の変わり目のこの時期は風が凪ぎ、空に雲が溜まっていってしまうのでした。
「おーい!くじらさんや!今日は杖みたいなもんを出してくれやせんかのう!」
くじらは微笑んで、ぷーーーっとほっぺを膨らませます。頭の上の噴気孔からはまたもや雲がもくもくと生まれていきます。その雲はやがてくじらよりも大きなサイズになると、ステッキの形になりました。ステッキの雲からはやがてふわふわと杖雲が落ちていきます。
「そうだなぁ、こんなにはいらないかぁ」
くじらは杖雲をひとつだけお爺さんのところにふーーーっと息を吹いて届けてあげました。残りの杖雲とステッキの大きな雲は、尾びれで風を送って地平線の彼方まで飛ばしてしまいました。どこか遠い国のお爺さんとお婆さんに杖雲を降らせてあげることでしょう。
「くじらさんや!ありがとのぉ!」
おじいさんの感謝の言葉を聞くとくじらはニコニコと微笑みました。
※
それからは日夜を問わず街の人々はくじらにお願い事をしていきました。誰のどんな願い事も全て叶えてあげないと。くじらは片っ端から願い事を雲の形にして空に浮かべました。良い人も悪い人もくじらにお願いしていきました。
※
くじらは大変困っていました。空はみんなのお願い事で作った、様々な形の雲でいっぱいになってしまいました。
「これじゃぁ、もうここには居れんのぉ」
くじらの住める空がもうありません。仕方なく海の中に引っ越しする事にしました。空に浮かんだ雲はくっつきあって元の形がわからなくなりました。それから何年も何年も経ちました。
これがくじらが海に住むようになって
空には雲がいっぱいできた理由です。
たまにくっつきあった雲が千切れて
元の形がわかる様になることがあり、
その時に人はくじらの作った願い事を見て
あの形に似ていると喜ぶのでした。
※
「ねー!ママ!あそこにキャンディみたいな雲が飛んでるよ!すごいすごい!」
「あら、ほんとう。凄く可愛くて素敵ね。やっぱりハイキングに来て良かったわ」
「あ!あそこの雲はお爺ちゃんがいつも持ってるステッキにそっくりだよ!」
「ほんとだわ、よく見つけたわね」
「あれ?なんかふわふわがいっぱい出てるよ!あの雲からいっぱい落ちてるよ!」
「あら何かしら?ほんとうね。私たちの街の方に降ってるみたいね」
「あのちっちゃいのが街?すごい遠いや!さっきのふわふわお家に帰ったら拾いに行こうよ!」
「そうだね、あのふわふわが何か気になるわね。遅くなったらパパが心配するしそろそろお家に帰ろうか」
「あ!ママ!あの雲の形もおかしいよ!」
「あらやだ、爆弾みたいな形してるわね」
ふわふわは止まらずに落ち続けている。
おしまい。
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