9 / 13
秘伝の言葉
しおりを挟む
昔、私たちの先祖はあのお天道様の遥か向こうにある「ウチュウ」という所へ行ってしまわれた。私たちは先祖から伝わる文化や言葉を伝え継ぐ事でその事を忘れずに生きてきたのだ。
僕のお婆ちゃんがいつも寝る前に話してくれた寝物語。僕らのご先祖さまは高度な文明を持っていて、空飛ぶ家に乗って遥か遠くまで飛び立ったのだと言う。「ウチュウ」に行ってしまった人たちは皆「ウチュウジン」になってしまうそうだ。そして、この話はいつも同じように締め括られる。
伝えて頂いた文字の中に1つだけ、意味と読み方を残して貰えなかった言葉があるんじゃ。
そう言うと近くの紙に「დ」と書き僕に見せた。
誰も読み方を知らん。意味も知らん。ただ、大切な言葉だという事だけは知っておる。わしも小さい頃から教わってきた。わしのお婆様から教えて貰うた。わしのお婆様は大婆様から、その大婆様は更に大大婆様から。これは我々一族に伝えられし秘伝の言葉なんじゃ。お前もいつか孫に教える日が来る。
お婆様は読み方すら知らない文字を書いた紙をクシャクシャに丸め、煙草の火を押し付けて燃やした。灰皿の上で燃えていく紙を残して、お婆ちゃんは部屋を出て行く。この焔を見てから寝ると不思議と穏やかな気持ちで寝付く事が出来た。もしかしたら、リラックスの効果でもある言葉なのかも知れない。
それから何年も経った。
僕はいつの間にか父親になり、そして子どもが巣立ち、暫くすると祖父になっていた。今では僕が孫にあの文字を伝えている。今ではあの時のお婆ちゃんよりも歳を取っている。これは秘伝の言葉。大切に語り継ぐものなのだ。
あの言葉を静かに焔が灰にしていく中、孫におやすみを伝えて部屋を出た。するとリビングには奇妙な服を着た男が立っていた。話を聞くとウチュウに旅立ったというご先祖様だという。古い文献ではご先祖様は数千年も前に旅立たれたと伝えられているが、ウチュウでは馬や流れ星よりも早く移動していた為、地球よりも時間の流れがゆっくりだったのだという。言っている意味がわからなかったが、1つだけどうしても聞きたい事があった。
「დ」はどういう意味なのか。僕は近くにある紙に秘伝の言葉を書き、相手に見せた。これは代々語り継がれているが、読み方すら分からない。どういう時に使うか教えてほしい、と。
するとウチュウから来たという男は大変驚き、「こんな言葉がまだちゃんと伝えられて残っているのか!数千年という歴史の中で消えない言葉だったとは何とも興味深いものだ!」と興奮して騒ぎ立てていた。
それで結局、これは一体どういう意味なのでしょうか。僕が尋ねると相手は首を横に振りながら、「いやぁ、あの言葉ってどういう意味だったかなぁ?なんか読み方も良くわかんねぇや」と答えた。
僕は代々語り継いできた神聖な言葉を軽んじられた様に感じ、何とか思い出してくれ、とウチュウから来た男に詰め寄った。すると男は首を振りながら答えた。
「だから、დはそういう意味だって。いやぁ、なんかよく分かんない言葉だなぁ、読み方も良く分かんない、って時に使う言葉だ。」
私は膝から崩れ落ちた。
皮肉にも、私たちの一族は正しい意味で「დ」を使い続けてきたのだった。
おしまい。
僕のお婆ちゃんがいつも寝る前に話してくれた寝物語。僕らのご先祖さまは高度な文明を持っていて、空飛ぶ家に乗って遥か遠くまで飛び立ったのだと言う。「ウチュウ」に行ってしまった人たちは皆「ウチュウジン」になってしまうそうだ。そして、この話はいつも同じように締め括られる。
伝えて頂いた文字の中に1つだけ、意味と読み方を残して貰えなかった言葉があるんじゃ。
そう言うと近くの紙に「დ」と書き僕に見せた。
誰も読み方を知らん。意味も知らん。ただ、大切な言葉だという事だけは知っておる。わしも小さい頃から教わってきた。わしのお婆様から教えて貰うた。わしのお婆様は大婆様から、その大婆様は更に大大婆様から。これは我々一族に伝えられし秘伝の言葉なんじゃ。お前もいつか孫に教える日が来る。
お婆様は読み方すら知らない文字を書いた紙をクシャクシャに丸め、煙草の火を押し付けて燃やした。灰皿の上で燃えていく紙を残して、お婆ちゃんは部屋を出て行く。この焔を見てから寝ると不思議と穏やかな気持ちで寝付く事が出来た。もしかしたら、リラックスの効果でもある言葉なのかも知れない。
それから何年も経った。
僕はいつの間にか父親になり、そして子どもが巣立ち、暫くすると祖父になっていた。今では僕が孫にあの文字を伝えている。今ではあの時のお婆ちゃんよりも歳を取っている。これは秘伝の言葉。大切に語り継ぐものなのだ。
あの言葉を静かに焔が灰にしていく中、孫におやすみを伝えて部屋を出た。するとリビングには奇妙な服を着た男が立っていた。話を聞くとウチュウに旅立ったというご先祖様だという。古い文献ではご先祖様は数千年も前に旅立たれたと伝えられているが、ウチュウでは馬や流れ星よりも早く移動していた為、地球よりも時間の流れがゆっくりだったのだという。言っている意味がわからなかったが、1つだけどうしても聞きたい事があった。
「დ」はどういう意味なのか。僕は近くにある紙に秘伝の言葉を書き、相手に見せた。これは代々語り継がれているが、読み方すら分からない。どういう時に使うか教えてほしい、と。
するとウチュウから来たという男は大変驚き、「こんな言葉がまだちゃんと伝えられて残っているのか!数千年という歴史の中で消えない言葉だったとは何とも興味深いものだ!」と興奮して騒ぎ立てていた。
それで結局、これは一体どういう意味なのでしょうか。僕が尋ねると相手は首を横に振りながら、「いやぁ、あの言葉ってどういう意味だったかなぁ?なんか読み方も良くわかんねぇや」と答えた。
僕は代々語り継いできた神聖な言葉を軽んじられた様に感じ、何とか思い出してくれ、とウチュウから来た男に詰め寄った。すると男は首を振りながら答えた。
「だから、დはそういう意味だって。いやぁ、なんかよく分かんない言葉だなぁ、読み方も良く分かんない、って時に使う言葉だ。」
私は膝から崩れ落ちた。
皮肉にも、私たちの一族は正しい意味で「დ」を使い続けてきたのだった。
おしまい。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします
二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位!
※この物語はフィクションです
流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。
当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる