美醜感覚が歪な世界でも二つの価値観を持つ僕に死角はない。

左側

文字の大きさ
30 / 101
本編●主人公、獲物を物色する

ぼくの話題は乏しいので助けて

しおりを挟む
ぼくの中に、異なる二つの美醜感覚が備わってからというもの、ぼくが目にするのはアドル的な美形ばかり。
ここでせっかく、サトル的な美形に出会えたんだから、もっと親しくなりたいし、出来ればせめて友人ぐらいにはなりたいと思っている。
王子二人は初対面だし、アルフォンソさんとも先に一度会った事があるだけだ。



精一杯に愛想を振りまくぼくの努力の成果か、単なる時間の経過による慣れか。
二人の王子様とアルフォンソさんは、ぎこちないながらも、ぼくの方に顔を向けてくれるようになった。

会話の流れは大体、ぼくが話して、王子二人とアルフォンソさんは頷いたりしながら聞いている。
三人は、ぼくが問い掛ければ、どうにか応えてくれるぐらいにはなった。

良かった……少なくとも、ノーリアクションをずっと続けられるという事態だけは避けられた。
ぼくの話題なんか乏しいものなんだから、それを無言の中で話し続けるのは辛過ぎるから。


アルフォンソさんはエイベル兄さんと同じ学校に通っているが、王子二人は学校に通っていないらしい。
学校に行っていないのはぼくと同じだが、恐らくぼくとは理由が違う。
王子が生徒になるというのも、学校側にとっては、なかなか厳しい事なんだろう。

ぼくを含めて、四人中の三人が学校に通っていないとなると、それを話せるのはアルフォンソさん一人。
元々あまり自分から積極的にお喋りするタイプじゃないのか、それとも、他の三人が知らない事を話題の中心にするのを遠慮したのか、アルフォンソさんから学校の話として聞ける事は多くなかった。
多少の情報収集が出来るかと思っていたんだが、少し残念だな。



実はぼく、来春から……いや、途中からでもいい。
学校に通いたい、と思っているんだ。

ずっと引き篭もっていたぼくだから、同世代の友人がいない。
かろうじて最近、リウイという『麗しい』な人と友人になれたが、彼の場合は特別な理由があっての事だ。
お互いに前世の記憶があって、しかも、前世で友人だったという事情が。
それが無ければ、リウイとも友人になれたかどうか、怪しいからな。

だが学校に通えば、ぼくにも普通に友人が出来るんじゃないかと思う。
ぼくの『格好良い』な顔面を隠さずに通えるのであれば、恐らく、それなり以上に人が寄って来て、快適に過ごせるんじゃないかと。
この世界の美形が寄って来ても良いし、顔面偏差値の低い人が寄って来ても問題無い。

あわよくば、色々なタイプの美形と知り合いになって。
あわよくば、もう少し深い所まで知り合って。
今の所は未経験のアレやコレもしたいと思っている。
本当は成人前に経験したいんだが、出来れば最初は、ぼくの好みにマッチした相手がいい。



この場に出されている料理や紅茶の話、好きな食べ物の話、着ている服の話、動物の話に、ぼくが初めてちゃんと町に外出した時の感想などを話題にして。
それから少しだけ学校について、アルフォンソさんに質問したりした。

……好きなタイプは? なんて色っぽい話題に仕向けるような、そんなテクニックはぼくに無かった。


どうにか会話を続けていると。
アリアノール王子が躊躇いがちに、それでもしっかりとぼくを見詰めて口を開いた。

「あの……学校に、興味があるのですか?」
「えぇ、そうです。もし可能であれば、ですが……通ってみたいとも思っています。」

頷くぼくに、王子二人もアルフォンソさんも、驚いたように目を見開く。

そんなに驚くような事を言ったかな?
ぼくが引き篭もりだと知っていたとしても、その引き篭もり具合の酷さまでは知らないはずだろうに。

「……怖くは、ないのですか?」
「何か怖い事があるんでしょうか。すみません、ぼく、学校の事を何も知らなくて。」
「学校には様々な人がいると、聞きますから……。」

アンドリュー王子とアルフォンソさんが、心配そうに見つめる中。
アリアノール王子は少々口籠ったが、意を決したように続けた。

「貴方から見れば、顔面偏差値が底辺な者も、多くいるでしょう。平気なんですか……?」


今、話しているのは、学校での事だ。
だが、彼の辛そうな表情に、ぼくは気が付いた。


顔面偏差値が底辺な者とは……恐らく、自分の事を指しているんだ。
自分や、弟や、アルフォンソさんの事を。

ぼくから距離を……精神的な距離を……取っているのは、怯えていたから。

王子という重責を背負っている彼を敬いもせず、それどころか、……偏差値の低い彼の立場が高い事を逆に、嘲笑うような人物がいるんだろう。
その所為で、自分の偏差値にコンプレックスを抱いていたとしたら、奇跡ランクのぼくからどんな扱いをされる事かと、警戒したとしても無理は無い。


「勿論、平気ですよ?」

こんな言葉が少しでも慰めになるんなら、幾らでも言ってあげる。

唇に弧を描かせて、ぼくは何でもない事のように言い放つ。
リウイにも言った事のある、『格好良い』が奇跡ランクならではの、傲慢な台詞を。

「ぼくは、人の顔面偏差値が気にならなくなったから。」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

とある美醜逆転世界の王子様

狼蝶
BL
とある美醜逆転世界には一風変わった王子がいた。容姿が悪くとも誰でも可愛がる様子にB専だという認識を持たれていた彼だが、実際のところは――??

推し変したら婚約者の様子がおかしくなりました。ついでに周りの様子もおかしくなりました。

オルロ
BL
ゲームの世界に転生したコルシャ。 ある日、推しを見て前世の記憶を取り戻したコルシャは、すっかり推しを追うのに夢中になってしまう。すると、ずっと冷たかった婚約者の様子が可笑しくなってきて、そして何故か周りの様子も?! 主人公総愛されで進んでいきます。それでも大丈夫という方はお読みください。

【完結】我が兄は生徒会長である!

tomoe97
BL
冷徹•無表情•無愛想だけど眉目秀麗、成績優秀、運動神経まで抜群(噂)の学園一の美男子こと生徒会長・葉山凌。 名門私立、全寮制男子校の生徒会長というだけあって色んな意味で生徒から一目も二目も置かれる存在。 そんな彼には「推し」がいる。 それは風紀委員長の神城修哉。彼は誰にでも人当たりがよく、仕事も早い。喧嘩の現場を抑えることもあるので腕っぷしもつよい。 実は生徒会長・葉山凌はコミュ症でビジュアルと家柄、風格だけでここまで上り詰めた、エセカリスマ。実際はメソメソ泣いてばかりなので、本物のカリスマに憧れている。 終始彼の弟である生徒会補佐の観察記録調で語る、推し活と片思いの間で揺れる青春恋模様。 本編完結。番外編(after story)でその後の話や過去話などを描いてます。 (番外編、after storyで生徒会補佐✖️転校生有。可愛い美少年✖️高身長爽やか男子の話です)

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

処理中です...