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本編●主人公、獲物を物色する

ぼくと交流しようよ

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ぼくが対面の美形三人を眺め回している間に、王妃様と母は、着々とぼくの社交界デビューについての話を打ち合わせて行く。
さり気なく話に耳をそばだててみれば、どうやらぼくがデビューする夜会で、王族が正式な立ち合いの下、ぼくの顔面偏差値について貴族達に発表する……という所まで進んでるようだ。

この世界でのデビューは通常、成人年齢である十六歳になる誕生日が属する季節に行うのが慣例となっている。
例えば五月生まれなら春の間に行う、という感じだ。

侯爵以上の貴族は、各家が主催して行われる。
伯爵以下の貴族も各家で主催しても良いんだが、伯爵以下は家の数が多い。
その為、パーティが重なって招待客が出席先の事で頭を悩ませないよう、国王陛下と神殿が、季節ごとにデビュー用の夜会を主催してくれるらしい。
そこに参加すれば良いんだから、ある意味、省エネみたいだね。

ぼくは『格好良い』の奇跡ランクだから、それは出来ないだろうが。
一緒にデビューする他の子が可哀想な事になるからな。


さて、打ち合わせはもう少し続きそうだ。
たっぷり美形オーラも浴びさせて貰った事だし、ぼくはそろそろ、王子様達やアルフォンソさんと交流を図ろうかな。



あぁそうそう。
王族に対するぼくの態度をどうするか、についてだが。

ぼくの顔面偏差値はまだ、国王陛下に正式報告されていない。
だからぼくはまだ、公式には奇跡ランク扱いじゃない。
何かを意見するとなると、また少し微妙な問題になるんだが、王子様達と雑談をする分に限ってはエイベル兄さんと同等ぐらいで良い……という、暫定的な扱いになった。
兄は成人だがぼくはまだ成人前、というのも考慮されたように思う。


よしよし、これでようやく、あまり心配せずに話し掛けられるぞ。
このまま黙っていろ、なんて事にならずに安心したよ。


「良かった。これで、王子殿下お二人やアルフォンソさんと、ちゃんとお話が出来ますね。」

ぼくは本音を、割と綺麗な形に飾り付けて吐露した。
ホッとしたぼくに、向かい側から三人の視線が集まる。

せっかく集まったのに。
ぼくがあからさまに微笑んでみせたら、三人とも視線を逸らしてしまった。

一度会った事のあるアルフォンソさんが、かろうじて頷き返してくれたように見えたものの、彼は微妙に目線を下げてしまい。
年下の割に色っぽいアンドリュー王子は助けを求めるように、自分の隣にいる兄を振り返り。
助けを乞う視線を浴びながら、知的可愛いアリアノール王子は、瞬きをして俯いてしまう。


これは失敗したんだろうか。
丁寧に話したのが『格好良い』じゃないと、ガッカリさせてしまったか。

それとも、ぐいぐい押し過ぎか。
顔面偏差値に差があるぼくから話し掛ける事で、彼等を緊張させてしまっただろうか。
どちらかの王子が口を開くのを待つべきだったのか。


いや、ここでぼくが引いてどうする。


「ぼく達は年齢も割と近い様に思いますし……。」
「「「 ……。 」」」

誰か。誰か、同意してくれないか。


「ぼくは、学校に通っていないので、同じ世代の人とあまり交流が無くて……。」

アンドリュー王子が、流し目をくれるように、ちらっと見てくれた。
アリアノール王子もぼくの様子を窺っているように感じる。


「……そう、言えば。エイベルが……言っていた、覚えがある。」

アルフォンソさんが、話してくれた!
まだ顔は、微妙な角度でぼくとは合ってないが、それでも話してくれた!
一度会っただけだが、初対面とはこれ程までに違うものなんだな。
本当に……。この場にアルフォンソさんがいてくれて、本当に良かった。

「アルフォンソさんは、兄と同じ学校に通われているんですよね?」
「えっ、あ……あぁ。」

話を振ると急に緊張するようだ。
肯定するアルフォンソさん、視線が少し泳いでいる。


ぼくは、落ち着かないのに頑張って平静を保とうとしている二人の王子に、それと分かるように視線を向けた。
それからアルフォンソさんまで、目線を滑らせて行き。

「せっかくこうして、知り合う事が出来たんです。」

三人を視界に入れながら、なるべく落ち着いて聞こえるような声を出した。
それで一応、三人とも遠慮がちに、ぼくの方を見てくれたようだ。

「もっと話をしましょう。こんな素敵な場で出会えたんだから、ぼくは……出来れば今後も、皆さんと親しくしたい……。」

ぼくは本音を力一杯、綺麗な言葉で並べたてる。


皆、もっとぼくと交流しようよ。
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