せっかくBLゲームに転生したのにモブだったけど前向きに生きる!

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プロローグ ~ここがBLゲーム世界だと理解するまで~

メリクルの卒業

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ハーレムに入れるかどうか。

それは実のところ、よっぽど生まれが良くない限り運だと、大人になったオレは思う。

だけど子供の頃のオレは、「可愛ければ入れて貰える」って本気で信じてたんだ。






養育所にいた、ある夜の話。

すっごく小さい子以外は、みんなで一緒に寝るのがルール。
古いベッドをくっ付けて並べて、そこでズラーッと寝るんだ。

夜中に目が覚めたオレは、寝付けなくって起き上がった。

狭いんだよ。
ちょっと前に四人も増えたもんだから、二部屋もある寝室がギュウギュウなんだ。
友達が増えるのは嬉しいし、夜中にウルサくするような子じゃなくて良かったんだけど。


「どこ、行くの……?」

ベッドを下りたオレは、寝惚け眼のビリーに声を掛けられた。

「ん~、おしっこ。」
「一人で……?」

ビリーは不安そうにオレを見上げる。

「俺、も……行く。」

他の子を起こさないように、そっと、でも急いで身体を起こすビリー。

オレはもうシッカリしてるから、一人でトイレに行けるけど。
怖がりのビリーはまだ無理みたいだ。
だからオレが、トイレに連れてってやる。
こういうトコの気遣いがハーレムに入るには必要なんだって、メリクルも言ってた。


トイレに行って、二人で用を済ませてから、部屋に戻る途中。


ギッ、シ……ィッ。


薄暗い廊下で、外の方から何かが軋むような音が聞こえた。

「ひ……ッ!」
「ふぁ……!」

小さく悲鳴を上げて、ビリーがオレに抱き付く。
オレはその衝撃でちょっとマヌケな声を出した。

言っとくけど、驚いて声が出ちゃったワケじゃないから。

「今の……お化け?」

オレにしがみ付いたまま小声で呟くビリー。
唇も指先も睫毛も震えてる。

「そっ、そんなワケないだろ。……ちょっとオレ、見て来る。」
「ど、して…? やめよぅよ……。」
「だって、もし泥棒だったら、気付かなかったらみんなが危ないもん。」
「やだ……怖い……。」

オレだって、怖い。
だけど、もし、さっきの音が。
誰かが養育所の、あの錆びた門をコッソリ開いた音だったら。
後から、後悔したくない。


怯えて足が竦んだみたいになったビリーを、安心させるように一度抱き締めた。
それから廊下の窓に近付いて、なるべく向こうから見えないよう、オレはそっと外を覗く。

「あれ……メリクル?」

星明かりの下、メリクルがいた。

メリクルは、養育所の門に手を掛けてる。
俯いてて顔は見えないけど、その仕草から、なんとなく。

泣いてる……。


「え? なに?」

窓の外を見てないビリーが、キョトンってしてオレを見た。
メリクルの名前は聞こえてないみたいだ。

「ぅううん、大丈夫。たぶん風で、何かが門に当たったんだよ。」
「良かった……。」
「……みんなのトコに、戻ろ?」
「うん。眠たい……。」

オレは、メリクルのことをビリーに言わなかった。

子供なりに、あのメリクルは見ちゃいけないメリクルだって思ったから。




その数日後。


メリクルは養育所を『卒業』した。

オレ達は、養育所のセンセイから「メリクルはハーレムに行く」とだけ聞いた。


それを聞いてビリーもヴィーも、他のみんなも喜んだし、羨ましがった。
もちろん、オレも。

メリクルは『ハーレムに入れて貰った』んだと思ったから。


数日前の夜に、メリクルが泣いてるのを見たことも、すっかり忘れて。
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