せっかくBLゲームに転生したのにモブだったけど前向きに生きる!

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プロローグ ~ここがBLゲーム世界だと理解するまで~

オレの初契約

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なんだかんだ言って、あの養育所にいたオレは幸せだった。

だけどもう、思い出を振り返るのはこれで最後だ。

これはオレの、一番最近の記憶……。






馬車で揺られて、三日目の朝。

予定じゃ昼過ぎには目的の町に着くハズ。

途中の村では泊まらなくて、夜を野営で済ませる旅。
正直言って、養育所のベッド以外で眠ったことが無いオレには、キツかった。


護衛の兵士達は、昨夜の野営の後片付けだ。

オレは馬車の中で、薬草が入ったカゴの位置を入れ替えてたら。


「###っ! ##~!」
「***~っ!」

聞き取れなかったけど、外から大声が聞こえた。
聞き取れなかったけど、なんかヤバそう。


ガダ、ダダッ!

「ひぃ……!」
「馬車を出すぞ! しっかり掴まってろ!」

凄い音がしてビビったら、使用人の一人が乗り込んで来た音だった。

「おい! いいぞ!」

使用人が御者のいる方に声を掛けるのが早いか。
馬車が動き出すのが早いか。

そんなタイミングで、馬車は乱暴に走り出した。

二人いる使用人はいつも、もう一台の方の馬車に乗ってた。
慌ててコッチに乗り込んだってことは、それだけ時間が無いんだ。


この馬車は、御者が乗る場所以外は箱型だ。

少しだけ窓を開けて、隙間から周囲を見たら。


襲われてる! 襲われてるよ!
あれ、山賊だよ!

なだれ込んで来た山賊を、食い止めてる兵士。

奪った馬で追い掛けて来た山賊を、迎え撃つ馬上の兵士。

もう一台の馬車にも兵士が乗ってるみたいで、頑張って山賊を牽制してる。


凄いスピードで馬車が駆ける。

護衛の兵士達のお陰で、山賊にすぐさま追い付かれたりはしないけど。
それでも引き離すことは出来なくて、ある程度の距離でついて来られてる。


車輪が地面を抉る大きな音、引っ切り無しの揺れ、身体の震え……夢じゃ、ない。

オレは、震える手でギュッと握り拳を作った。



「おい、アンタ。次のカーブで降りな。」

降りろ、だって?
嘘だろ、馬車、走ってるんだぞ?

ガビーンって顔のオレに、使用人は淡々と続ける。

「山賊の狙いは物だ。アンタの身なりなら、奴らの気を引く事も無いだろ。」
「や、そうかも知れないけどっ。」
「アンタの体重分だけ馬車が重たいんだ。……突き落とされたいか?」

この人、本気だ。
これ、オレが嫌がったら、マジで突き落とされるヤツだ。

突き落とされて後ろから駆けて来る馬に、踏まれでもしたら……。

最悪の事態を一瞬で想像したオレは、首が壊れた人形みたいにガクガク頷いて。
窓を全開にして、乗り越えられるような感じで身体を預けた。

次のカーブが迫って来る。


「悪いな、センセイ。……今だ!」

なるべく痛くありませんように。
出来れば大きなケガをしませんように。

って、祈りながら。

合図の声に、覚悟を決めて跳んだ。




草むらにバウンドして、ちょっとした下り坂を転がって、どれくらい経ったか。



気付いたら、たぶん昼。

山賊に追われもしないけど、誰かが来てくれる気配も無し。

「……帰らなきゃ。」

養育所に、帰ろう。
みんなが待ってるんだから。


身体を起こしたら、アチコチが痛い。

だけど自分で歩かなきゃ。
ここにはオレしか、いないんだから。

とにかく歩きだせ!



歩いたり、休んだりして、どこをどう彷徨ったか分かんないけど。
やっと、町っぽいのを見付けたときには。

空が朝を迎えようとしてた。
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