せっかくBLゲームに転生したのにモブだったけど前向きに生きる!

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第三章 ~改めてゲームを見守ろうとしてから自分の名前を思い出すまで~

寂しいと思う気持ちを考えてなかった

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 ※前話のちょっと切ない雰囲気が壊れるかも知れません。


  =  =  =  =  =  =



胸に縋り付いたリッカを抱き締めて、背中を、頭を撫でるオレ。
ヤラシイ気持ちは全然無い。ただリッカの気持ちが落ち着くのをジッと待ってる。

リッカは寂しがりの割に、自分の感情を表に出すのが苦手で。恥ずかしいのもあるだろうけど、黙ったまま色々と考えこんじゃう性格で。何でも平気そうな振りをするから、損しちゃうんだよな。
ハーレムにいた頃だってもっと天守さまに甘えて良かったのに。あの人は子供っぽくて馬鹿だから、ハッキリ言葉で強請らなきゃ分からない男だから。

……って。ウェネットは言ってたんだけどなぁ。



リッカを撫でながら、オレはちょっと考え込んだ。
名前も思い出せないオレだけど、オレとして生まれる前の記憶を思い出したからだ。
いや、えっと、廃人ゲーマーだった日本人の記憶も嘘じゃないぞ。
ただそれが、直近の前世じゃなかった、って分かったんだ。

この流れで大体の予想は付いただろうけど、オレ……。


オレ……。


ウェネット、だった……。


つまり、廃人ゲーマーな日本人が死んで。
その後すぐかどうかは分かんないけど、ウェネットとして生きて、死んで。
それから、オレになった……。ってわけだ。


ゴメン、本当にゴメン。
何がゴメンか分かんないけど、リッカにもユーグにも謝りたい気持ちで一杯だ。



だけど、言い訳だけど。オレだってついさっきくらいに気付いたんだって。

お墓に来るまでは、ネームドキャラの一人であるウェネットが死んでるなんて半信半疑な状態で。
お墓を見て、本当に死んじゃってるんだなぁって思って。
でも冥福を祈ってたら、なんでか「自分の墓前にお祈りってどうなんだろう?」って疑問が急に湧いて来た。
どうしてだろうって不思議に思って、そっちに気を取られて。
だけど。
ユーグの口から「ハーレムが無くなった」って聞いたら、ショックだったんだ。まるで自分のことのように、っていうんじゃなくて『自分のこと』としてショックを感じてた。

そして、かつて自分がウェネットだった記憶が蘇った。
自分が死んだ後、ハーレムが無くなって、ユーグもだけど……この町で身寄りの無いリッカはどれだけ辛かっただろう、って気持ちが押し寄せて来て。
目の前にいるリッカが心の中でずっと泣いてるような、今でも癒えてないような気がして仕方なくなった。

……だから、今ここでリッカを泣かせて、慰めてるのは。
ウェネットのエゴだ。
リッカに、自分の気持ちを晒してスッキリして欲しいっていう、それを慰めたいっていう、ウェネットのエゴ。



「……ゴメン。」

オレの胸に顔を押し当てるリッカに、リッカの髪に顔を埋めて。
ウェネットか、オレか、分からないけど謝罪の言葉を呟いた。






ウェネットは身体が弱くて。入宮後、確か二年ちょいくらいで死んじゃったんだ。
しかも死ぬまでの約二年間は、一度も天守さまと会ってない。

普通に考えたら、ホント、何の為にハーレムに入れたの? って感じだけど。
ウェネットは怒ったり悲しんだりはしてなかった。

ハーレムにいる間に、廃人ゲーマーの記憶が蘇ったから。

切っ掛けは、しょーもない話だけど。
天守さまとの初夜が身体の負担になって、体調を崩して、しばらく寝込んで、ようやく体調が戻ったら余計な記憶までくっ付いて来たってやつだ。


とにかく、ここがゲームの世界だって知ってたウェネットは、天守さまがどういう行動を取るのかも大体分かってたんだ。



ゲームじゃ、ストーリー進行中のヒーローはクリアした町には戻って来ない。
町を選択する画面がどこにも出ないから、戻りたくても戻れないってのが正解か。

ライバルに勝っては、ハイ、次の場所へ。
せっかくハーレムに入れた妻だけど、次の場所には出て来ない。
そこにはまた別の、新たなキャラ達が出る。

つまり、ヒーローと妻が会えるのは、その町にいる間だけ。
イラスト付きのネームドキャラも、適当な名前のモブ妻も、そこは一緒だ。

こういうゲームシステムなの知ってるから。
天守さまはストーリークリアまで戻って来ないんだろうって。
ウェネットは思ってた。


だから、かな。
ちょっと辛そうなリッカと「その内にヒョコッと来るよ」って、宮殿に来なくなった天守さまの話をしてても、心からは寄り添えてなかったんだな。

自分は平気だから。
他の妻も、そうだろって。ちょっと寂しい、くらいだろって。

ゲーマーな感覚があったウェネットは気付いてなかった。
妻にとって、その寂しさが、精神的にどれだけツライかを。




現世のオレも。
幼い頃、ハーレムに入れて貰う夢を持ってたけどさ。
入った後は、天守さまとあんまり会えないだろうけど、先輩妻と上手くやってこう。って考えてたんだ。
頭のどっかにゲームの感覚が残ってたのかもな。

オレは知らなかった。
そんな状況、そんな扱いをされた妻が……寂しい、って思うなんて。





廃人ゲーマーだった……自分が操作するヒーローに『XYZ(イクシィズ)』って名付けた、日本人のオレは。
そもそも寂しいって感覚が設定されてるなんて、思ってもみなかった。
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