98 / 364
第三章 ~改めてゲームを見守ろうとしてから自分の名前を思い出すまで~
しまったと気付くのが遅い
しおりを挟む
「なん、で…」
唸るようなルサーの声。
「なんで知ってる! なんで……お前が…っ!」
「え、っと……それは…」
「来るな……っ!」
どう言おうか言い訳の内容も決められないまま。
とりあえずルサーに向かって一歩踏み出したオレは、ルサーの怒鳴り声で足を止める。
「なんで、お前が……。俺の名、を……なんで…」
「ち、ちがっ……。知らなかったんだ、まさか、ルサーが…」
「……っ! 知ってンじゃねぇかあっ!」
叫んだルサーが、手近にあった物をオレに投げ付けた。
空中で広がった上着を、オレは頭から被る。
それを剥いだ次の瞬間にはまた別な服が飛んで来た。
受け止めたオレをルサーが睨んでる。
眉間にこれ以上は無いってくらい皺を寄せて、青白い唇を戦慄かせて。
猫が全身の毛を逆立てるみたいに、ルサーはオレが近付くのを拒否してる。
「っで……。出てけ…」
「え、えっ?」
声はちゃんと聞こえてるけど反射的に聞き返した。
言葉の意味を理解したくなかったんだ。
反応の鈍かったオレに、ルサーがまた物を投げ付ける。
「出てけ……っ! 顔……、見…な……っ!」
ルサーの手が届く位置にある色々な物が飛んで来る。
幾つかはキャッチしたつもりだけど、たぶん、殆ど当たってただろう。
何がどうしたのか分かんない、けど。
オレがルサーの心のデリケートな部分を踏み抜いた、ってのは間違いないようだ。
それはたぶん、ルサーの過去で……。
思わず名前を呟いたときには、まさか、こんなに怒らせるなんて……全然、考えてもなかった。考え無しだった。
「るっ、ルサ…」
「いいからっ……出てけぇっ!」
投げる物が手近に無くなったルサーは、とうとう小箱にまで手を伸ばす。
それを見たオレの方が焦った。
「分かった! 分かったから!」
両手を挙手状態にして、オレは素早く後ずさる。
開けっ放しのドアから廊下に、自分の身体を出した。
ルサージュ王子にとっての大切な品物であるハズの小箱だから。それを放り投げるなんてダメだ。
小箱がオレに向かって飛んで来たら、ちゃんと受け止める自信はあった。
でももし、ルサーの手元が狂って、小箱が明後日の方向に行っちゃったら。
大事な物入れが壊れたり、傷が付いたりしちゃう。
「出てく、から……。それは乱暴に扱っちゃダメだ。」
ドアを閉めたら何も見えなくなった。
オレに物を投げまくってグチャグチャに散らかった部屋も。
オレのことが嫌いになったルサーも。
「ルサーを傷付けてゴメン。オレ、誰にも言わないから。安心してくれ。」
冷たいドアに額を当てて。オレはどうにか謝罪の言葉を口にした。
向こう側からの返事は無かった。
* * * * * *
オレはルサーのウチを出て来た。
元々持ってたベルトポーチに、元々入ってた物だけを持って。
食費とかの為にルサーから預かってたお金と、せっかく作ってくれた合鍵は、食卓テーブルの上に置いて来た。
あれはルサーのだから、返さなきゃな。
果物屋の前を通り過ぎた。
ルベロさんに会わせる顔が無いな。
夜の坂道をトボトボ上るオレ。
ルサーに投げられた物が身体に当たるのは痛くなかった。
ただ、ルサーに、物を投げ付けられるのがツラかった。
お前に近寄りたくない。俺に近付いて来るな。
……そう言われてるのがハッキリ分かったから。
もしルサーが、オレの身体を思いっきり押して来たんなら。
そうやって追い出しに掛かって来てたら、きっとオレは、ルサーに抱き付いて縋れた。
これからどうしようか。考えなきゃいけないのに、考えられない。
気付けばネガティヴな思考に嵌まってる。
ルサー。……王子だって知られるの、そんなに嫌だったのか。
やっぱり何か事情とか、しがらみとか、あるんだよな。
オレ、言いふらしたりするように見えたのかな。
ルサーが嫌がるなら、もう二度と言わない。黙ってるよ。ルサー……ゴメン。
そこそこ明るいのだけがオレの長所なのに……。
前向きに……明日から、なるから。
……今はダメ、なんだ。
唸るようなルサーの声。
「なんで知ってる! なんで……お前が…っ!」
「え、っと……それは…」
「来るな……っ!」
どう言おうか言い訳の内容も決められないまま。
とりあえずルサーに向かって一歩踏み出したオレは、ルサーの怒鳴り声で足を止める。
「なんで、お前が……。俺の名、を……なんで…」
「ち、ちがっ……。知らなかったんだ、まさか、ルサーが…」
「……っ! 知ってンじゃねぇかあっ!」
叫んだルサーが、手近にあった物をオレに投げ付けた。
空中で広がった上着を、オレは頭から被る。
それを剥いだ次の瞬間にはまた別な服が飛んで来た。
受け止めたオレをルサーが睨んでる。
眉間にこれ以上は無いってくらい皺を寄せて、青白い唇を戦慄かせて。
猫が全身の毛を逆立てるみたいに、ルサーはオレが近付くのを拒否してる。
「っで……。出てけ…」
「え、えっ?」
声はちゃんと聞こえてるけど反射的に聞き返した。
言葉の意味を理解したくなかったんだ。
反応の鈍かったオレに、ルサーがまた物を投げ付ける。
「出てけ……っ! 顔……、見…な……っ!」
ルサーの手が届く位置にある色々な物が飛んで来る。
幾つかはキャッチしたつもりだけど、たぶん、殆ど当たってただろう。
何がどうしたのか分かんない、けど。
オレがルサーの心のデリケートな部分を踏み抜いた、ってのは間違いないようだ。
それはたぶん、ルサーの過去で……。
思わず名前を呟いたときには、まさか、こんなに怒らせるなんて……全然、考えてもなかった。考え無しだった。
「るっ、ルサ…」
「いいからっ……出てけぇっ!」
投げる物が手近に無くなったルサーは、とうとう小箱にまで手を伸ばす。
それを見たオレの方が焦った。
「分かった! 分かったから!」
両手を挙手状態にして、オレは素早く後ずさる。
開けっ放しのドアから廊下に、自分の身体を出した。
ルサージュ王子にとっての大切な品物であるハズの小箱だから。それを放り投げるなんてダメだ。
小箱がオレに向かって飛んで来たら、ちゃんと受け止める自信はあった。
でももし、ルサーの手元が狂って、小箱が明後日の方向に行っちゃったら。
大事な物入れが壊れたり、傷が付いたりしちゃう。
「出てく、から……。それは乱暴に扱っちゃダメだ。」
ドアを閉めたら何も見えなくなった。
オレに物を投げまくってグチャグチャに散らかった部屋も。
オレのことが嫌いになったルサーも。
「ルサーを傷付けてゴメン。オレ、誰にも言わないから。安心してくれ。」
冷たいドアに額を当てて。オレはどうにか謝罪の言葉を口にした。
向こう側からの返事は無かった。
* * * * * *
オレはルサーのウチを出て来た。
元々持ってたベルトポーチに、元々入ってた物だけを持って。
食費とかの為にルサーから預かってたお金と、せっかく作ってくれた合鍵は、食卓テーブルの上に置いて来た。
あれはルサーのだから、返さなきゃな。
果物屋の前を通り過ぎた。
ルベロさんに会わせる顔が無いな。
夜の坂道をトボトボ上るオレ。
ルサーに投げられた物が身体に当たるのは痛くなかった。
ただ、ルサーに、物を投げ付けられるのがツラかった。
お前に近寄りたくない。俺に近付いて来るな。
……そう言われてるのがハッキリ分かったから。
もしルサーが、オレの身体を思いっきり押して来たんなら。
そうやって追い出しに掛かって来てたら、きっとオレは、ルサーに抱き付いて縋れた。
これからどうしようか。考えなきゃいけないのに、考えられない。
気付けばネガティヴな思考に嵌まってる。
ルサー。……王子だって知られるの、そんなに嫌だったのか。
やっぱり何か事情とか、しがらみとか、あるんだよな。
オレ、言いふらしたりするように見えたのかな。
ルサーが嫌がるなら、もう二度と言わない。黙ってるよ。ルサー……ゴメン。
そこそこ明るいのだけがオレの長所なのに……。
前向きに……明日から、なるから。
……今はダメ、なんだ。
0
あなたにおすすめの小説
泥酔している間に愛人契約されていたんだが
暮田呉子
BL
泥酔していた夜、目を覚ましたら――【愛人契約書】にサインしていた。
黒髪の青年公爵レナード・フォン・ディアセント。
かつて嫡外子として疎まれ、戦場に送られた彼は、己の命を救った傭兵グレイを「女避けの盾」として雇う。
だが、片腕を失ったその男こそ、レナードの心を動かした唯一の存在だった。
元部下の冷徹な公爵と、酒に溺れる片腕の傭兵。
交わした契約の中で、二人の距離は少しずつ近づいていくが――。
主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。
小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。
そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。
先輩×後輩
攻略キャラ×当て馬キャラ
総受けではありません。
嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。
ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。
だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。
え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。
でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!!
……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。
本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。
こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。
運悪く放課後に屯してる不良たちと一緒に転移に巻き込まれた俺、到底馴染めそうにないのでソロで無双する事に決めました。~なのに何故かついて来る…
こまの ととと
BL
『申し訳ございませんが、皆様には今からこちらへと来て頂きます。強制となってしまった事、改めて非礼申し上げます』
ある日、教室中に響いた声だ。
……この言い方には語弊があった。
正確には、頭の中に響いた声だ。何故なら、耳から聞こえて来た感覚は無く、直接頭を揺らされたという感覚に襲われたからだ。
テレパシーというものが実際にあったなら、確かにこういうものなのかも知れない。
問題はいくつかあるが、最大の問題は……俺はただその教室近くの廊下を歩いていただけという事だ。
*当作品はカクヨム様でも掲載しております。
実は俺、悪役なんだけど周りの人達から溺愛されている件について…
彩ノ華
BL
あのぅ、、おれ一応悪役なんですけど〜??
ひょんな事からこの世界に転生したオレは、自分が悪役だと思い出した。そんな俺は…!!ヒロイン(男)と攻略対象者達の恋愛を全力で応援します!断罪されない程度に悪役としての責務を全うします_。
みんなから嫌われるはずの悪役。
そ・れ・な・の・に…
どうしてみんなから構われるの?!溺愛されるの?!
もしもーし・・・ヒロインあっちだよ?!どうぞヒロインとイチャついちゃってくださいよぉ…(泣)
そんなオレの物語が今始まる___。
ちょっとアレなやつには✾←このマークを付けておきます。読む際にお気を付けください☺️
ざこてん〜初期雑魚モンスターに転生した俺は、勇者にテイムしてもらう〜
キノア9g
BL
「俺の血を啜るとは……それほど俺を愛しているのか?」
(いえ、ただの生存戦略です!!)
【元社畜の雑魚モンスター(うさぎ)】×【勘違い独占欲勇者】
生き残るために媚びを売ったら、最強の勇者に溺愛されました。
ブラック企業で過労死した俺が転生したのは、RPGの最弱モンスター『ダーク・ラビット(黒うさぎ)』だった。
のんびり草を食んでいたある日、目の前に現れたのはゲーム最強の勇者・アレクセイ。
「経験値」として狩られる!と焦った俺は、生き残るために咄嗟の機転で彼と『従魔契約』を結ぶことに成功する。
「殺さないでくれ!」という一心で、傷口を舐めて契約しただけなのに……。
「魔物の分際で、俺にこれほど情熱的な求愛をするとは」
なぜか勇者様、俺のことを「自分に惚れ込んでいる健気な相棒」だと盛大に勘違い!?
勘違いされたまま、勇者の膝の上で可愛がられる日々。
捨てられないために必死で「有能なペット」を演じていたら、勇者の魔力を受けすぎて、なんと人間の姿に進化してしまい――!?
「もう使い魔の枠には収まらない。俺のすべてはお前のものだ」
ま、待ってください勇者様、愛が重すぎます!
元社畜の生存本能が生んだ、すれ違いと溺愛の異世界BLファンタジー!
メインキャラ達の様子がおかしい件について
白鳩 唯斗
BL
前世で遊んでいた乙女ゲームの世界に転生した。
サポートキャラとして、攻略対象キャラたちと過ごしていたフィンレーだが・・・・・・。
どうも攻略対象キャラ達の様子がおかしい。
ヒロインが登場しても、興味を示されないのだ。
世界を救うためにも、僕としては皆さん仲良くされて欲しいのですが・・・。
どうして僕の周りにメインキャラ達が集まるんですかっ!!
主人公が老若男女問わず好かれる話です。
登場キャラは全員闇を抱えています。
精神的に重めの描写、残酷な描写などがあります。
BL作品ですが、舞台が乙女ゲームなので、女性キャラも登場します。
恋愛というよりも、執着や依存といった重めの感情を主人公が向けられる作品となっております。
イケメンチート王子に転生した俺に待ち受けていたのは予想もしない試練でした
和泉臨音
BL
文武両道、容姿端麗な大国の第二皇子に転生したヴェルダードには黒髪黒目の婚約者エルレがいる。黒髪黒目は魔王になりやすいためこの世界では要注意人物として国家で保護する存在だが、元日本人のヴェルダードからすれば黒色など気にならない。努力家で真面目なエルレを幼い頃から純粋に愛しているのだが、最近ではなぜか二人の関係に壁を感じるようになった。
そんなある日、エルレの弟レイリーからエルレの不貞を告げられる。不安を感じたヴェルダードがエルレの屋敷に赴くと、屋敷から火の手があがっており……。
* 金髪青目イケメンチート転生者皇子 × 黒髪黒目平凡の魔力チート伯爵
* 一部流血シーンがあるので苦手な方はご注意ください
僕がサポーターになった理由
弥生 桜香
BL
この世界には能力というものが存在する
生きている人全員に何らかの力がある
「光」「闇」「火」「水」「地」「木」「風」「雷」「氷」などの能力(ちから)
でも、そんな能力にあふれる世界なのに僕ーー空野紫織(そらの しおり)は無属性だった
だけど、僕には支えがあった
そして、その支えによって、僕は彼を支えるサポーターを目指す
僕は弱い
弱いからこそ、ある力だけを駆使して僕は彼を支えたい
だから、頑張ろうと思う……
って、えっ?何でこんな事になる訳????
ちょっと、どういう事っ!
嘘だろうっ!
幕開けは高校生入学か幼き頃か
それとも前世か
僕自身も知らない、思いもよらない物語が始まった
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる