せっかくBLゲームに転生したのにモブだったけど前向きに生きる!

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第三章 ~改めてゲームを見守ろうとしてから自分の名前を思い出すまで~

年下相手と●●●7 $ルサー$

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そろそろ夕方だ。
まだ俺の仕事上がりの時間じゃねぇが。アイツはいつも少し早めに来て、詰め所の端っこで待ってた。

俺を迎えに来るって言ったアイツはまだ来ねぇ。


「あいつ来ないな~。……あ、時間だ。お疲れーっ。」

先に上がる奴が余計な一言を置いて行きやがる。



俺の勤務時間もあとちょっとなんだが……今日は暇だ。
昨日さんざ苦しんだ報告書も提出し終えた。やる事が無ぇ。
兵士が忙しくねぇのは良い事なんだがな。

あぁそうだ。良い事と言えば。
……最近、探索隊が久々に赤ん坊を発見した。それも続けざまに二人。
ここんトコしばらく成果が無かったからか、頭の出来が良い割に悲観的な上層連中がアレコレ憶測を並べ立ててたんだが、これでちょっとは静かになるだろよ。



俺は無意識の内に、詰め所の入り口を気にしてたようだ。
さっきの同僚と入れ違いでエステードが入って来る。

「今日は夜勤か。お疲れさん。」
「はぁ~。のんびり働いてる場合じゃないのに……。」
「おいおい、働く事を『のんびり』とか言うんじゃねぇよ。」
「現状のんびりしているルサーさんに言われたくないです。」

上着を椅子に引っ掛けたエステードが子供みてぇに言い返して来た。
夕方出勤だってのに若干疲れてるようにも見えるし、珍しい事だ。


「どうした。機嫌悪いなァ?」
「機嫌、と言いますか……。」
「心配事か。」
「えぇ……弟が、ちょっと。」

エステードの弟は確か……。転んで怪我した、ってアイツが言ってたな。


「なんだ? 怪我の具合が酷いのか?」
「おや、知ってましたか。」
「あぁいや、アイツが……。たまたま助けた、ってよ。」
「そうですか……うぅ~。」

こめかみに指を当てて小さく唸るエステード。
……本当にどうした?


「話を変えましょう。面倒を見てるあの子とはどうです?」
「あの子、ってオイ……子供じゃねぇぞ。」
「さり気なく尋ねますが、あの子、タチですよね?」
「ぶっ……!」

全っ然、さり気なくねぇ。不自然としか言いようが無ぇぞ。
カシュに絡まれなくてホッとしてたら、まさかエステードから……とはな。


「違うんですか? ネコなんですか? どうなんです?」
「たっ……タチ、だろぉよ。」

前のめりなエステードに詰め寄られ、俺は言葉を精々濁して答えた。
ネコだって嘘を言うのも違うしな。

返事を聞いたエステードが「タチじゃ駄目って言ったのに…」とかブツクサ言ってるが、知るか。




詰め所が慌ただしくなったのは、ちょうど俺の勤務時間が終わるぐらいだった。
路上で刃物を使った刃傷沙汰があったらしい。しかも現場はルベロとネモーリの店の近くだ。
通行人達で犯人を取り押さえてるって通報で、さっそくエステードが出掛けてった。

詰め所に連行されて来た犯人は、そのまま処置室に直行。
肩の骨を外されてたからな。
被害者の知り合いらしき男がやったらしいが……大した腕前だ。
刃物を持ってる相手を素手で大人しくさせるなんぞ、なかなか出来る事じゃねぇ。兵士にスカウトしたいぐらいだな。


ヒーロー的なその男に運ばれて、被害者は病院に行ってる。
一体どういう経緯での傷害事件なのか、兵士の仕事としちゃあ、犯人だけじゃなく、被害者からも話を聞かなきゃならん。

ちっとも姿を現さねぇアイツを待つのも、詰め所で暇を持て余すのも飽きた。
犯人の方はエステードに任せるとして、俺は病院の方に行くとするか。



「あぁっ、間に合ったか。おい、ルサーっ。」

支度を済ませて同僚と外に出た俺を、呼び止めたのはルベロだった。
走って来たのか知らんが、俺より年上のオッサンがハァハァ言ってる姿はどうかと思うがな。


「あの坊やがな。今、病院に居てな。知り合いに付き添ってるんだ。とりあえず行ってやれ。」
「アイツが? 病院?」
「それと、伝言だ。一人で出歩くな。……じゃな。」




   *   *   *   *   *   *




ルベロの話を信じるなら。刃物を持った男をのしたのは、アイツって事になるんだが。

半信半疑で病院に行き、用件を告げると、看護師に部屋へ案内された。
被害者の処置は一応終わったらしいから、一通りの話が聞けるだろう。


扉の向こうから話し声が聞こえてた。

自分でも笑っちまうンだが、その内の一人がアイツだって分かった。



「好きになって貰うから。よろしくな?」


反射的に扉を開けちまってた。
開けなきゃ良かったかもな。

簡易ベッドの上で、誰かに覆い被さってるアイツが見えた。


しかも、なんでか知らねぇが。
その体勢でアイツと誰かは、俺の話をし始めるようだ。

俺が、アイツの事をどう……思ってるか。





「そうかなぁ……。」
「あぁ、そうだな。」

首を捻ってるアイツの言葉に、俺はすかさず返事をした。

人の話に割って入るなんぞ、行儀の悪い事この上無いが。
アイツに適当な予想をされるより、よっぽどいいだろ。


「嫌いじゃねぇなァ。」



驚いた顔でアイツが振り返る。
だがその表情は一瞬だけで、すぐにアイツは涼しい顔になった。


いつもならもっと、シュンとしたり、表情豊かじゃねぇか。
誰かと一緒だからって……なに、気取ってンだ、オイ。


「ちょろっと話、聞かせて貰えるか?」

なるべく冷静に、だ。
それだけを意識して声を出した。


一応だが……ここに、仕事で来て良かった。同僚が一緒で助かった。
もし個人的にアイツを迎えに来てたンだったら、自分でもどういう反応をしたか、分からねぇ。




横になってアイツへと手を伸ばしてた誰かも、上体を起こして俺を見た。

「……ルサーさん、って言ったっけ。……いいよ?」


見覚えのある、その男は。
リオって呼び名のタチ娼夫だった。


そう、か……。やっぱり、この男が、ビルメリオ……だったんだな。
無事に会えて良かったじゃねぇか……。



「一度ちゃんと話さなきゃ、って思ったトコ。」

リオは俺を見て、何処となく強張った笑みを浮かべた。
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