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第三章 ~改めてゲームを見守ろうとしてから自分の名前を思い出すまで~
名前も知らない男と●●●2 $リオ$
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おれが養育所を出るよりも先に、奥様がお屋敷を出る事になった。別の所に行くらしい。
だけど村人達は、見送りをするでもなくいつも通り、畑仕事をしたり森に行ったり。
見送りなんか、一時間も掛からないのに……。
その話を聞き付けて、おれはすぐにお屋敷に向かった。
養育所の所長に、村を出るって話はもう済ませてたし、その為の準備もしてたから。
所長に卒業の紙を貰って、皆への挨拶も慌ただしく済ませて、お屋敷へと急いだ。
ギリギリで間に合ったようで、ちょうど馬車に乗り込もうとする奥様を呼び止める。
驚いてる奥様に、所長から貰った紙を見せて。途中までで良いから何処かの町まで連れてって欲しい……そう、お願いした。
後から思えばかなり無茶を言ったなぁ、って。
その時はそんな事を思えないぐらい、町へ行くのに必死だったんだけど。
使用人はちょっと難しい顔をしたけど、奥様が受け入れてくれたら、彼等もすんなりと了承した。
一番最初に立ち寄った町で別れるって約束をして、おれは馬車に乗せて貰える事になった。
おれがまだ未成年だったから、それなりに甘く、親切にして貰えたんだと思う。
じゃなかったら、始めから馬車に乗せて貰えないか、途中の森の中で置き去りにされてても不思議じゃない。
そういう意味でも、成人する前に村を出るって決めて良かったな。
仮にもハーレム妻だから、使用人でもない男……しかも年齢の近い男を拾ったなんて、下手したらかなりの醜聞ものだったろうけど。
使用人からは、幾つかの注意をされただけだった。
例えば、夜に奥様のテントに近寄らないとか。奥様と二人きりにならないとか。奥様の顔や身体に触れないとか。
……当たり前じゃん、そんなの。
馬車に乗せて貰えるだけで有難いんだ。夜だって、野営の隅っこで大人しくしてるって。
おれの予想では、町に行くまで数日。
だけど実際は、もっと日数が掛かった。
どうやら奥様の馬車は、小さな町には立ち寄らなかったらしい。
必要な物は使用人が馬を走らせて、何処かで調達してた。たぶん、使用人だけが町に行ってたんだ。
夜は何処かの村で質素な宿屋に泊まるか、野営で済ませてた。……ハーレムの妻なのに。
やがて大きな町に着いた。
町なんて初めて来たおれでも分かるぐらいの、大きな町に。
「そういう約束で御座いましたよ、奥様。……これが潮時で御座います。」
「そ…だね。……分かってる。」
馬車を降りたおれを、追い掛けるように降りて来た奥様に、使用人がそっと告げる。
奥様はその言葉に頷きながらも、心配そうにおれを見上げた。涙さえ滲ませそうな様子で。
それを見たおれは、何となく、やっぱり奥様は年下……つまりは成人前なんだろうな、って思った。
そして、おれの予想よりも日数が掛かった事や、最初に着いた町がこんなに大きな町な事の、その理由も何となく察した。
馬車に乗せて貰う時にした約束は、一番最初に立ち寄った町で別れる、だ。
だから奥様は、出来るだけおれと一緒にいられるよう、小さな町を素通りしてたんだろう。
そう思えるぐらいには、旅の途中、おれと話してる奥様は楽しそうだったんだ。
考えてみれば奥様は、村の大人達がいる場では、喋る事も笑う事もあまり無かった。
村での嘲笑を知ってたのかも知れない。いや、予想は出来てたのかもな。
奥様が滞在してる間、お屋敷に誰かが訪ねて来る事は一度も無かったから。
天守さまが妻の元へ来る事も、誰かに妻の様子を窺いに行かせる事も無かった。って事だ。
そんな妻がどう噂されるか。陰口を言われてるって事ぐらい、まだ年若い妻でも分かるんだろう。
村人達の前では堂々として、虚勢を張って。
ハーレム妻としての面子を保つ事と、寂しがる子供っぽい気持ちとに、どうにか折り合いを付けてたんだ。
まだ成人もしてない、養育所で世話をされてるような年齢なのに。
「気を付けて、ね? ……これ、あげる。」
名残惜しそうに、奥様はおれの手を取った。
使用人が注意の声を出そうとした瞬間、おれに小袋を押し付けて、奥様の手が離れる。
「嫌なものは嫌って、ちゃんと言うんだよ? ……私みたいに、ならないで……。」
おれがハーレムに入りたがってる話を、奥様にしてたから。
たぶん、そう言われたんだろうけど。最後の方はギリギリで聞こえるぐらい、小さな呟きだった。
奥様が乗った馬車が大通りを曲がって何処かへ行く。
完全に見えなくなってから、袋の中を確認すると、金だった。
風情もへったくれも無いけど有難い。
装飾品だと売らなきゃならないし、下手したら盗品を疑われるもんな。
さっそく使わせて貰って、おれは衣服を買った。
大きな町を歩いてても遜色無いどころか、おれの顔を引き立てるような、着飾る為の華奢な衣装を。
その日の内に、天守さまの代理人に声を掛けられた。
この上無い幸運だったハズなのに……。
おれを待ってたのは。
最低野郎と、最悪の経験だった。
だけど村人達は、見送りをするでもなくいつも通り、畑仕事をしたり森に行ったり。
見送りなんか、一時間も掛からないのに……。
その話を聞き付けて、おれはすぐにお屋敷に向かった。
養育所の所長に、村を出るって話はもう済ませてたし、その為の準備もしてたから。
所長に卒業の紙を貰って、皆への挨拶も慌ただしく済ませて、お屋敷へと急いだ。
ギリギリで間に合ったようで、ちょうど馬車に乗り込もうとする奥様を呼び止める。
驚いてる奥様に、所長から貰った紙を見せて。途中までで良いから何処かの町まで連れてって欲しい……そう、お願いした。
後から思えばかなり無茶を言ったなぁ、って。
その時はそんな事を思えないぐらい、町へ行くのに必死だったんだけど。
使用人はちょっと難しい顔をしたけど、奥様が受け入れてくれたら、彼等もすんなりと了承した。
一番最初に立ち寄った町で別れるって約束をして、おれは馬車に乗せて貰える事になった。
おれがまだ未成年だったから、それなりに甘く、親切にして貰えたんだと思う。
じゃなかったら、始めから馬車に乗せて貰えないか、途中の森の中で置き去りにされてても不思議じゃない。
そういう意味でも、成人する前に村を出るって決めて良かったな。
仮にもハーレム妻だから、使用人でもない男……しかも年齢の近い男を拾ったなんて、下手したらかなりの醜聞ものだったろうけど。
使用人からは、幾つかの注意をされただけだった。
例えば、夜に奥様のテントに近寄らないとか。奥様と二人きりにならないとか。奥様の顔や身体に触れないとか。
……当たり前じゃん、そんなの。
馬車に乗せて貰えるだけで有難いんだ。夜だって、野営の隅っこで大人しくしてるって。
おれの予想では、町に行くまで数日。
だけど実際は、もっと日数が掛かった。
どうやら奥様の馬車は、小さな町には立ち寄らなかったらしい。
必要な物は使用人が馬を走らせて、何処かで調達してた。たぶん、使用人だけが町に行ってたんだ。
夜は何処かの村で質素な宿屋に泊まるか、野営で済ませてた。……ハーレムの妻なのに。
やがて大きな町に着いた。
町なんて初めて来たおれでも分かるぐらいの、大きな町に。
「そういう約束で御座いましたよ、奥様。……これが潮時で御座います。」
「そ…だね。……分かってる。」
馬車を降りたおれを、追い掛けるように降りて来た奥様に、使用人がそっと告げる。
奥様はその言葉に頷きながらも、心配そうにおれを見上げた。涙さえ滲ませそうな様子で。
それを見たおれは、何となく、やっぱり奥様は年下……つまりは成人前なんだろうな、って思った。
そして、おれの予想よりも日数が掛かった事や、最初に着いた町がこんなに大きな町な事の、その理由も何となく察した。
馬車に乗せて貰う時にした約束は、一番最初に立ち寄った町で別れる、だ。
だから奥様は、出来るだけおれと一緒にいられるよう、小さな町を素通りしてたんだろう。
そう思えるぐらいには、旅の途中、おれと話してる奥様は楽しそうだったんだ。
考えてみれば奥様は、村の大人達がいる場では、喋る事も笑う事もあまり無かった。
村での嘲笑を知ってたのかも知れない。いや、予想は出来てたのかもな。
奥様が滞在してる間、お屋敷に誰かが訪ねて来る事は一度も無かったから。
天守さまが妻の元へ来る事も、誰かに妻の様子を窺いに行かせる事も無かった。って事だ。
そんな妻がどう噂されるか。陰口を言われてるって事ぐらい、まだ年若い妻でも分かるんだろう。
村人達の前では堂々として、虚勢を張って。
ハーレム妻としての面子を保つ事と、寂しがる子供っぽい気持ちとに、どうにか折り合いを付けてたんだ。
まだ成人もしてない、養育所で世話をされてるような年齢なのに。
「気を付けて、ね? ……これ、あげる。」
名残惜しそうに、奥様はおれの手を取った。
使用人が注意の声を出そうとした瞬間、おれに小袋を押し付けて、奥様の手が離れる。
「嫌なものは嫌って、ちゃんと言うんだよ? ……私みたいに、ならないで……。」
おれがハーレムに入りたがってる話を、奥様にしてたから。
たぶん、そう言われたんだろうけど。最後の方はギリギリで聞こえるぐらい、小さな呟きだった。
奥様が乗った馬車が大通りを曲がって何処かへ行く。
完全に見えなくなってから、袋の中を確認すると、金だった。
風情もへったくれも無いけど有難い。
装飾品だと売らなきゃならないし、下手したら盗品を疑われるもんな。
さっそく使わせて貰って、おれは衣服を買った。
大きな町を歩いてても遜色無いどころか、おれの顔を引き立てるような、着飾る為の華奢な衣装を。
その日の内に、天守さまの代理人に声を掛けられた。
この上無い幸運だったハズなのに……。
おれを待ってたのは。
最低野郎と、最悪の経験だった。
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~お知らせ~
※第3話を少し修正しました。
※第5話を少し修正しました。
※第6話を少し修正しました。
※第11話を少し修正しました。
※第19話を少し修正しました。
※第22話を少し修正しました。
※第24話を少し修正しました。
※第25話を少し修正しました。
※第26話を少し修正しました。
※第31話を少し修正しました。
※第32話を少し修正しました。
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※感想(一言だけでも構いません!)、いいね、お気に入り、近況ボードへのコメント、大歓迎です!!
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