せっかくBLゲームに転生したのにモブだったけど前向きに生きる!

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第三章 ~改めてゲームを見守ろうとしてから自分の名前を思い出すまで~

名前も知らない男と●●●3 $リオ$

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おれが声を掛けられたのは、立派なレストランにいた時だ。


大通りに面したレストランの、人目に付きやすいテラス席。その更に目立つ大通り側の、一段高く上がったテーブル席。
そこに置かれた椅子やテーブル、その他も全部が高級そう。
だけど椅子の背凭れや肘掛けは小さくて、腰掛けてる人物の姿を隠さないような物だった。
たった一人で店に入ったおれが、そんな席に通されたのは。おれの見た目が綺麗だったから。

店側もハーレムから言われてたのかも。
天守さまの代理人が通り掛かりそうな所には、身目の良い客がいたら見えやすい席に案内しろ。……とか。


見知らぬ男を信用したのは、確かに天守さまの代理人だって思えたからだ。
間違えようが無い上等な馬車を、他にも沢山の馬車が往来する大通りで堂々と停車しておれに向かって来る。道を行き交う誰も彼もがその男の為に足を止めた。
人々が囁き合う声を聞かなくても、男の身なりや振る舞いで、天守さまの代理人だと名乗った言葉は充分に信用出来た。

男に恭しく手を取られ、見た事も無いような馬車に乗り込む。
おれは有頂天になってた。


田舎の村から町に出て来て、天守さまに見初められてハーレムに入り、そして一生大事にされる。
そんなお伽話みたいな事があるワケ無いのに。
……いや。ハーレム入り自体は嘘じゃなかったな。ただ……。
ハーレムに入るって事が、おれが思ってたようなロマンチックなものじゃ無かった。それだけの話。






おれを乗せた馬車が何処かの門を潜った。
その後も更に馬車は走り、輝くような大きな宮殿が横手に見えたけど、馬車の行き先とは向きが違う。

馬車が着いたのは大きな屋敷。村の外れにあった……奥様が住んでたお屋敷と同じくらい。
でもお屋敷の周りは、北側と南側を、緩くカーブした背の高い建物で挟まれてる。
まるで見張ってるように感じた。


お屋敷の中に入ったおれは、代理人から別な男に引き渡された。

だらしなく脂ぎった男が、おれの身体中を舐めるように眺め回した後、おれの顎を掴んで上を向かせる。
代理人とは、立ち振る舞いが雲泥の差だ。
反射的に身を引こうとしたおれを逃がさないよう、脂男は指に力を入れる。今までされた事の無い乱暴な扱いで、痛み以上の恐怖を感じた。

「確かに似ている……ぐふっ。これなら天守さまも満足だ。」

ニヤけた脂男の言う事は理解出来なかったけど、天守さまって言葉にホッとする。
この男が酷く厭らしくても、この先に天守さまが待ってるんだ、天守さまはこんな乱暴はしない、って。



嫌な気持ちに蓋をして、脂男に付いてく。
浴室に通されたおれを洗う為に、複数の使用人が待ち構えてた。

脂男に洗われるんじゃなくて良かった。


身体の色々な部位を……他人が洗うなんて信じられない所まで……綺麗に磨かれて、おれが町で買った服なんか霞むような衣装を与えられた。
髪も綺麗に整えられ、毛先が揃ってない部分も纏めてワンサイドに流され、天守さまが触れるまでは決して乱さないように言い含められた。


出来上がりを鏡に映した姿は、自分で見ても確かに、これまでで一番美しかった。


広々とした綺麗な浴室。
おれの身体を清める丁寧な使用人達。
美しく着飾らせて貰った姿。

村にいた時には有り得ないような待遇だ。
案内された寝室も、そこにある家具も、全てが豪華で贅沢な物に見える。

ハーレム入りする妻の為にここまで用意してくれるんだ。
そう思ったら、おれの心は恐怖を忘れた。



言い付け通りにベッドへと横たわる。
これから天守さまが来るのに、こんな格好で本当に良いんだろうか、って思いながら。

そう言えば天守さまのお名前を聞いてない。
何て呼んだらいいのか、天守さまにお聞きしなくちゃ。




ぼんやり考えてたおれの肩を、誰かが強い力で掴んで、仰向けにさせられた。
いきなりで驚いた声も出ない。


おれに圧し掛かってるのは、三十代ぐらいに見える男。

「仰向けに寝ろ、と。……言われなかったか?」

抑揚の無い声。おれを見下ろす双眸は全く優しさを感じない。
だけど男の瞳には、天守さまだけが持つシルシがあった。


おれはその段階になって、使用人に言われてた事を思い出す。
考え事なんかしてた所為で、いつの間にか横向きになってたようだ。
寝返りを打ったから髪もきっと乱れてる。

自分の失態を理解したおれは、気付いたら震えてた。


「今日はその顔に免じて許す。脱げ。」

服を脱ぐ為に起き上がろうとしたら、寝たままで脱ぐように言われた。
おれは素直に従って、不自然な体勢で自分の服に手を掛ける。


ベッドで待つよう指示されたんだから、それがどんな意味かはおれも分かってた。
……ツモリだった。



今すぐ逃げ出したい。


そう思ってるのに。怖くて。従うしか無かった。
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